本の紹介:災害地質学ノート2019/07/05 17:29

災害地質学ノート

千木良雅弘,災害地質学ノート.近未来社,2018年5月.


この本で,著者が想定している読者は,大学で地質学一般論を学習した人です.


災害を主に扱っていますが,地質学の基本的なことが書かれているので,手元に置いて知識を確かめるのにも便利です.そういう意味では,地質コンサルタントなどに勤め始めた学部あるいは修士課程を卒業した人たちにも役に立ちます.


章立ては次のようになっています.


まえがき

第1章 岩石の種類と特徴

第2章 斜面移動に重要な構造

第3章 斜面移動に重要な地形

第4章 土と岩石の物理的性質,変形と強度

第5章 斜面移動予備物質の生成

第6章 斜面移動の分類と特徴

第7章 高速移動の引き金

第8章 斜面移動の予測と解析

あとがき


2018年北海道胆振東部地震では,広範囲で斜面崩壊が発生しました.崩壊した主体は,支笏カルデラの降下火砕堆積物です.この降下火砕物にはガラスが風化してできたハロイサイトが含まれていることが明らかになっています.ハロイサイトはチューブ構造をしていて,水の出入りが比較的自由に行われます.

著者は,地震時に降下火砕物で発生した崩壊性地すべりのすべり面にハロイサイトが形成されていることに古くから注目していました.ハロイサイトがどうやって形成されるか述べています(125-129ページ).


余談ですが,最後のページで著者の「野外調査の服装とバッグについて」書いています.

バッグは「一澤信三郎帆布」の物が一番だとしています.型番は書いてありませんが,多分 ,横長の "IS18" だろうと思います.

昔は「岩本鉱産物商会」製の野外調査鞄が定番でした.現在,これを引き継いで「ニチカ」が販売しています.