本の紹介:9条の挑戦2019/07/01 21:15

9条の挑戦

伊藤 真,神原 元,布施裕仁,9条の挑戦---非軍事中立戦略

のリアリズム.大月書店,2018年11月.


1958年生まれの伊藤氏,1967年生まれの神原氏,1976年生ま

れの布施氏が憲法九条について語った本です.


この本で著者たちが言いたいことは,副題にあるように「非軍事中立戦略」が、最もリアルな安全保障であるということです.


伊藤氏は,軍隊を持つ必要を主張する意見を検討しています.憲法9条の様々な解釈論についても意見を述べています.そして,非軍事中立戦略から見て,自衛隊を憲法に明記することの弊害を述べています.

自衛隊を憲法に明記することは,自衛隊が人を殺すための軍隊として活動するということであり,防衛費は増大し,国民の権利は制限されるということです.


神原氏は,憲法学者の小林直樹氏,深瀬忠一氏,水島朝穂氏が何を主張してきたのかを述べています.

深瀬氏が提案した「総合的平和保障基本法試案」を高く評価しています.基本法では,外交の基本方針,自衛隊を警察や海上保安庁などの規模に縮小するための軍縮計画をつくることが必要です.


布施氏は,日米同盟と「専守防衛」のひずみについて述べています.

海上自衛隊は米軍との一体化がもっとも進んでいます.その理由は,アメリカ第七艦隊の西太平洋での交通線,兵站戦を守るために世界最高水準の「対潜水艦戦」の能力を備えることが求められたからです.世間では「シーレーン防衛」と言われ,日本の石油輸入の生命線とされていますが,本当は米軍のためです.


最後の章は,3人の座談会記録です.「等身大の安全保障論」が展開されています.


憲法の第五十三条に定められている国会の臨時会を開かない,正当な要求があっても予算委員会を開かないなど,特に国会軽視の形で,この国の形が壊れています.


このような時だからこそ,国の大本である憲法,特に憲法九条について深く考えてみる必要があると思います.