「社会インフラ メンテナンス学と健康診断」講習会2017/05/24 09:15

 土木学会が出した「社会インフラ メンテナンス学」の講習会が,2017年5月23日に北大工学部フロンティア応用科学研究棟レクチャーホールで開かれました。

 この研究棟の入口ホールには,鈴木彰氏の胸像が置かれています。
 レクチャーホールはゆったりとした座席の配置で緩い階段式になっていて,落ち着いて話を聞くことができます。


鈴木彰氏胸像
写真1 鈴木彰氏胸像
 北大工学部フロンティア応用科学研究棟のエントランスホールにあります。

 社会基盤の維持・運用管理(社会インフラ メンテナンス)については大部前から問題となっていますが,全体として体系立った分野とはなっていないのが弱点でした。
 2012(平成2)年に発生した中央自動車道・笹子トンネルの天端崩落事故は大きな衝撃でした。トンネルの付帯設備である天井板の落下で起きた事故で,9名の犠牲者を出しました。

 この事故が大きな契機となり,第101代土木学会会長の橋本鋼太郞氏(元建設省事務次官)を頭にタスクフォースを結成してまとめたのが,「社会インフラ メンテナンス学と健康診断」(土木学会,2015年12月,I 総論編,II 工学編。同,2016年9月,III 部門別編,DVD付)です。


横田弘氏
写真2 開会の挨拶をする横田 弘北大教授

 トピック的な話題としては,橋梁の健全度判定のために「サンプリングモアレカメラ」の話がありました。
 北大工学部の佐藤靖彦准教授の講演で紹介されました。モアレというのは,編み目の重なりによって生じる「まだら模様」のことで,橋桁に網目模様を張って,車を走行させて写真を撮り,モアレによって変位を見るという方法です。


佐藤靖彦氏
写真3 講演する佐藤靖彦北大准教授

 また,河川管理では,空中あるいは水中でのドローンによる調査,水位計・浸水センサーのデータをクラウドに蓄積し共有する方法,100kmくらい飛行できるドローンでの広域的調査,強風のもとでも安定した飛行をしてデータが取れる全天候ドローンなどの案が紹介されました。

 土木学会では「インフラ健康診断書」の道路部門試行版を公開しています。
 全国のデータを集めて橋梁やトンネル,舗装などの健康度を5段階で評価し,維持管理体制が今後どうなるかを判定するという試みです。
 これは,個々の施設の評価ではなく,構造物毎に国内全体の状況を診断するものです。施設の健康度をA〜Eの5段階で評価し,施設の維持管理体制については上向き,水平,下向きの矢印で表すというものです。その他に,診断結果の簡潔な文章が付きます。道路部門の試行版を下のURLで見ることができます。
( http://committees.jsce.or.jp/reportcard/ )

 基礎資料としては,「道路メンテナンス年報」(国交省 道路局,最新版は平成28年)を使っています。
( http://www.mlit.go.jp/road/sisaku/yobohozen/yobohozen_maint_index.html )


岩波光保氏
写真4 講演する岩波光保東工大教授

 立派な会場に立派な出版物の割に,参加者が少なかったのは残念でした。


水出しコーヒー2017/05/23 09:19

 水出しコーヒーを飲ませてもらいました。
 それだけを飲むと,こんなものかという感じですが,普通に淹れたコーヒーと飲み比べると違いがはっきり分かります。
 後味がすっきりしているのです。全体に平坦な味になり雑味が消えます。ちょうど,評判になったばかりの頃の「越乃寒梅」に似た感じです。越乃寒梅に失礼かもしれませんが。

 1,500円くらい出せば専用の容器を売っていますが,家にあった「お茶パック」にコーヒー豆を入れ,冷蔵庫に4時間程度置いておくとそれなりのコーヒーができます。普通の大きさの「お茶パック」だとカップ2杯分くらいの水がちょうど良い分量です。

 昔,出張や山歩きが多かった時は,ペットボトルに水を入れ「お茶パック」を押し込んで持ち歩いていました。最初のお茶の味は結構いけます。味に文句を言わなければ,水だけ足して2回目も何とか飲めます。
 ペットボトルは口が狭いのが難点です。当時,1社だけ口のやや広いペットボトルを売っていました。これだとお茶パックの出し入れが楽で重宝しました。

 ネットを見たら同じ方法が載っていました。例えば,
( http://lightupcoffee.com/magazine/1181/ )


増田隆一氏講演会2017/05/22 09:43

 地質調査でヒグマに遭うことがあります。
 最初は,歩いている時ではなかったのですが,車で国道277号(八雲熊石線)を八雲町熊石から八雲町市街に向かっている時でした。夜8時過ぎでしたが,かなり大きな熊が道路を横断するように車の前を横切っていきました。
 道道知床公園羅臼線で覆道背面の岩塊除去工事に立ち会っていた時は,削岩機の音がしているにもかかわらず,子どもを2頭連れた熊が斜面を降りてきて,しばらく覆道の付近で草を食べていました。この時は,羅臼ビジターセンターの方が花火などで山へ追い返しました。
 北見の山の中で,下山中に小熊に出会ったことがあります。また,八雲厚沢部線では,道路脇で何かを夢中で食べている,割合小さな熊を見たことがあります。


ヒグマ
写真1 道路脇で食事中のヒグマ

 「ヒグマの遺伝的多様性と移動の歴史」と題する増田氏の講演会がありました。2017年5月20日(土),場所は北大のクラーク会館でした。
 この講演会は北海道自然保護協会が,一般の人も対象として総会後に開いたものです。


在田一則氏
写真2 挨拶する北海道自然保護協会会長・在田一則氏


増田隆一氏
写真3 講演する増田隆一氏

増田隆一・北大大学院理学研究院教授「ヒグマの遺伝的多様性と移動の歴史」

 増田氏の専門は動物地理学,分子系統進化学です。今回の話は,ヒグマをDNA解析によって分類すると3種に分かれるという内容です。

 ヒグマは北海道やシベリア,アラスカからカナダ,チベットやトルコに生息しています。
 北海道では毎年2〜300頭が捕獲されていて,数千頭が生息していると考えられています。
 北海道のヒグマ50数頭のミトコンドリアDNA(mtDNA)の解析から,北海道のヒグマは,道央・道北に棲むグループA,道東に棲むグループB,道南に棲むグループCの三つに分けられることが分かってきました。これは雌のヒグマの生息域で,雄の場合は行動範囲が広いため,これほどはっきりとは分かれないと言います。

 ユーラシア大陸とアメリカ大陸で見ても,この3種に分かれるとのことです。ヒグマのルーツはシベリアにあり,そこから拡散したと考えられます。世界的に見ると,北海道のように狭い地域に3種のヒグマが棲んでいる所はありません。

 熊送りの儀式で使われたヒグマは,道央や道北では春に捕獲した成獣を使いますが,道南では子どもを育てて熊送りに使います。「飼育型熊送り儀式」と言います。どこに住んでいるヒグマを儀式に使ったかが分かるので,その当時の交流範囲を推定することができます。

 今年6月中旬に増田氏の著書「哺乳類の生物地理学」(東大出版会:本体3,800円)が出版されるそうです。


北海道立総合研究機構 地質研究所 調査研究成果発表会2017/05/20 12:44

 2017年5月19日(金),北海道立道民活動センター かでる2・7で表記の発表会が開かれました。
 重点研究「十勝岳」の成果と戦略研究「地域・産業特性に応じたエネルギー分散型利用モデルの構築」の中間報告,それに2つの口頭発表と13のポスター発表がありました。
地質研究所の研究が色々な方面で発展しているのを実感できた講演会でした。


遠藤祐司氏
写真1 開会の挨拶をする遠藤祐司I氏(北海道立総合研究機構 地質研究所 所長)


橋本武志氏
写真2 講演する橋本武志氏(北大地震火山観測センター)

 十勝岳については,札幌管区気象台,北海道大学と共同で研究を進め,火山体内部の構造が浅部,深部とも,かなりはっきりと明らかになってきました。熱水の流動状況やマグマの位置と地震発生域など貴重な情報が得られています。これらが噴火予知に役立つ可能性があります。


鈴木隆広氏
写真3 質問に応える鈴木隆広氏(地質研究所 資源環境部主査)

 北海道の温泉放出熱量については,全道約2,000箇所の温泉の位置と利用可能量をデータベース化することから始めています。
 地中熱については,富良野盆地を例に地下水流道の経路を明らかにし,地下水流同・熱輸送モデルを構築しました。地下水による熱の移流効果を見込んだ採熱が可能になります。


三上智さんの講演会2017/05/20 12:06

 現在の日本をめぐる状況は,国民が選んだ結果です。そんなことも含めて,色々と考えさせられる講演会でした。 

 2017年5月13日(土)午後6時半から8時半まで,かでる2・7で三上智恵さんの講演会が開かれました。

 北海道平和委員会が行っている「沖縄連続講演会 標的の大地 沖縄,そして北海道」の一つです。
 講演のタイトルは「いくさば(戦場)の今,沖縄と不屈の精神」でした。


三上智恵さん
講演する三上智恵さん

 辺野古の新基地は自衛隊が使うことを前提に造られていて,滑走路,軍港,弾薬庫が一体となった基地です。普天間基地の代替基地などではけっしてありません。
 沖縄は,ヴェトナム戦争,イラク戦争で出撃基地となっています。
 また,第二次世界大戦の沖縄戦の教訓は,軍隊がいなければ沖縄で9万4千人という民間人の犠牲はは出なかったと言うことです。
 そして今,先島諸島にも自衛隊の基地を造ろうとしています。

 北海道にも矢臼別演習場があります。古くは長沼ナイキ訴訟などの歴史があります。

i石狩海岸周辺の風車事業2017/05/17 20:56

シンポジウム
石狩海岸周辺の大規模風力発電事業計画の危険性

 世の中には知らないことが沢山あることを痛感したシンポジウムでした。
 低周波音による健康障害は「気のせい」ではなく、人の内耳の仕組みによるものだと言うことでした。

 2017年5月13日,午後1時半から午後5時まで,北海学園大学で開かれたシンポジウムです。ここでは,北大工学研究院教授の松井利仁氏(大気環境保全工学)の講演内容を紹介します。

 なお,北海道自然保護協会の活動については,( http://nc-hokkaido.or.jp )をご覧下さい。
 また,石狩の風力発電を考える会のホームページは,
( https://blogs.yahoo.co.jp/isokomorigumo )です。


松井利仁氏
写真1 講演する松井利仁北大大学院工学研究院教授
 松井教授は,米軍嘉手納基地の騒音による死者は年4人という推計を出しています。裁判の原告側証人を数多く引く受けましたが,全敗だと言っていました。
( 参考:http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/24298 )

松井利仁氏「風車騒音による健康影響と石狩湾新港周辺の3事業の影響評価」
 札幌では騒音で多くの人が亡くなっています。大気中の有害現象で最も死者が多いのは,PM2.5を含む微少粒状物質によるものです。交通騒音での死者は,受動喫煙などと同じ程度で,ベンゼンやダイオキシンなどの化学物質による死者に比べ多くなっています。
 札幌市での交通騒音など環境騒音による死者の推計値は,約21人╱年です。

 低周波音とは何か。
 環境省では周波数が100Hz以下の音を低周波音としています。その中で20Hz以下の音を超低周波音と言います。
 低周波音は,高架橋の揺れによって発生したり,エコキュート(ヒートポンプ式の給湯器)から発生したりします。風力発電の風車も低周波音を出します。
 低周波音の大きな特徴は,減衰しにくいことです。例えば,4,000Hzの音は2km程度で−70dBくらいになりますが,100Hzくらいの低周波音は−30dB程度にしかなりません。
 低周波音は室内にも侵入してきます。部屋の中では分布が不規則で,壁の近くで共鳴した音のレベルが高くなります。縦方向でも床や天井でレベルが高くなります。

 低周波音が健康に及ぼす影響は様々です。1977年の西名阪自動車道の事件で,低周波音が健康に影響を及ぼすことは明らかにされていました。症状は,頭痛,肩こり,めまいのほか,睡眠障害(不眠),イライラなどです。これは,発電風車による健康影響と全く同じです。

 音は,内耳にある前庭を通して蝸牛に届きます。耳は,40Hzくらいの低周波音に敏感で,めまいなどの平衡機能が障害を受けます。低周波音の特徴は,小さな音でも蝸牛に影響し,気になって眠れないという状況を起こします。この「気になる」というのは騒音計では測定が難しいのです。
 蝸牛の前にある前庭への低周波音の刺激では,圧迫感や振動感で眠れなくなります。風車病の特徴である,めまい,頭痛,肩こりが出ます。これは,「気になる」と言うことではなく,低周波音の物理的刺激によって起こるものです。


風車騒音と健康障害
風車騒音と風車病・睡眠障害の因果関係(松井,当日配付資料による)

 日本では,2004年に環境省が「低周波音問題対応の手引書」を出していて,その中で低周波音による物的苦情に関する参照値,心身に関わる苦情に関する参照値というのを示しています(表1)。
 ここで注意しなければならないのは次の点です。
(1)環境省の参照値は,10人に1人が寝室で「気になる」レベルです。
 *苦情者における許容レベルの周波数特性は、全体として一般成人における寝室の許容レベルの 10 パーセンタイル値に近い傾向を示した。(手引,26p)
(2)参照値を下回れば苦情が無くなるわけではないです。1%の人が「気になる」音は,参照値より約10dB低いという結果が出ています。
(3)参照値は対策などの目標値ではありません。しかし,低周波音発生源の事業者は,この参照値よりも緩い環境基準値などを比較対象としています。
(4)室外機など定常的・連続的な低周波音であれば参照値は適用可能ですが,風車騒音は連続的であるものの規則的な変動があり,より「気になる」音です。
(5)広帯域の低周波音は,内耳で加算され,より「気になる」のです。

表1 物理的苦情(上:建具のがたつきなど)・心身に係わる苦情(下:睡眠障害)に対して,低周波音が原因かどうかを判断するための「目安」(松井,当日配付資料による)
 *A特性音圧レベルでは,極めて低いレベルでも「気になる」。
風車騒音レベル


 現在,工事に着工していたり計画されてたりしている石狩湾岸の風力発電所について,公表されているデータをもとに評価すると次のようになります。

<石狩コミュニティウィンドファーム>
(1)圧迫感・振動感を知覚することによる睡眠障害などの健康リスクが,300人以上に発生する可能性があります。
(2)工業団地で,極めて高い健康障害の発症率が予想されます。低周波音の曝露人口1,000人に対して,32人が影響を受け,そのうち18人が就労困難になるリスクを負います。
(3)北側と南側の住宅地で100人に1人以上の健康障害発症率となります。

<銭函風力発電>
 曝露人口は87,250人で,影響人口は384人と推計されます。圧迫感・振動感を知覚することによる睡眠障害などの健康リスクです。

<石狩湾新港区域内洋上風力発電>
 曝露人口は348,876人,影響人口は1,899人という結果になります。

 風車騒音に対する日本の現状は,水俣病への対応と共通点があります。
 水俣病では,経済成長のブレーキになるとして当時の通産省は,「原因は厳密には特定できない」とし,これに多くの科学者が同調しました。1956年に公式に「発見」されたあと,1959年に熊本大学水俣病研究班が原因物質は有機水銀であると発表しました。

 風車騒音被害では,環境省が「原因は厳密に特定できていない」とし,日本騒音制御工学会を中心に科学者が被害を否定しています。

 その特徴は以下のようなものです。
(1)低周波音などによる環境性睡眠障害を「不快感」による睡眠への影響とし,心理的反応であるかのように矮小化しています。
(2)「風車病」は知見が不十分だとしています。
(3)内耳にある前庭がどのような働きをしているのかを知りません。
(4)平均値によって評価して,個人差や高感受性の人たちを考慮していません。
(5)疫学・公衆衛生,過去の公害事件を知らず,学ぼうともしていません。

 風車病を防ぐ方法は八方ふさがりのように見えます。その中で,かなり難しいですが,騒音規制法の指定地域とすることは,一つの方法と思います。これは,自治体(市)の権限でできることです。


総合討論
写真2 総合討論の様子


共謀罪(その3)2017/05/16 15:03

 何のために共謀罪法組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律を作ろうとしているのだろうか。

 やはり,大きな動機は安倍政権が自分のやりたいことをやるために,反対意見を押さえ込むというのが一番大きいのではないかと思います。
 一つの意見として,アメリカで発生した9.11テロ以後,できるだけ早い段階で犯罪を防止するという流れがあるといいます。
 そのために,通信傍受やGPSによる捜査などが取り入れられるようになっています。日本では1999年に盗聴法が成立します。2003年に有事法制成立,2013年に特定秘密保護法成立,2015年に安保法成立,2016年に改正通信傍受法施行,同じく改正刑事訴訟法で司法取引・通信傍受対象拡大などができるようになりました。

 日本でのテロ行為としては,オーム真理教の地下鉄サリン事件が引き合いに出されます。オーム真理教は,1989年に坂本 堤弁護士一家殺害事件を起こしています。しかし,警察は事件性無しとして,この事件の捜査を行っていませんでした。
 オーム真理教は,1995年に地下鉄サリン事件を起こし,その捜査の中で坂本弁護士一家を殺害したことが明らかになりました。
 警察が,適切な対応を取っていれば,地下鉄サリン事件は防げた可能性があったと考えます。何しろ,警察は坂本弁護士一家が失踪したとするデマ情報を流していたのですから。

 日本での犯罪は減っているという,はっきりとした統計があります。例えば,一般刑法犯の発生率は,2002年の2,240人╱10万人を最高値として,2016年には780人╱10万人と激減しています。一般刑法犯というのは,刑法犯から自動車運転による業務上過失致死傷と危険運転致死傷を除外したものです(ウィキペディア,日本の犯罪と治安,最終更新 2017年5月6日 (土) 22:18 )。

 情報通信技術が発達する一方で,犯罪発生率は減少しているという状況があるわけです。そこで,警察の仕事が少なくなるのを防ぐために,犯罪のにおいがしただけ捜査ができる共謀罪を成立させたいという強い意志が法務省・警察庁にあるのではないかという話が出てきます。


共謀罪の過程
図1 犯罪に至る過程と共謀罪(ビデオニュース,2017年4月22日をもとに作成)
 左から右へと犯罪の確実度が高くなります。「漠然とした考え」ではさすがに共謀罪は成立しないでしょう。しかし,法定刑4年以上の犯罪を「決意」した段階で共謀罪は成立します。
 殺人については準備をした段階で殺人予備罪が適用され,窃盗は実行に着手すれば未遂でも窃盗未遂罪があります。

 この法律によって,どれだけ多くの犯罪が作られるかを考えると恐ろしくなります。当然,情報通信技術のための予算と人員が大幅に増えるでしょう。


青井未帆氏講演会2017/04/22 15:37

 2017年4月15日(土)に北大学術交流会館で,青井未帆学習院大学大学院教授の講演会が開かれました。主催は,「北海道の大学・高専関係者有志アピールの会」ほか3団体です。
(https://www.facebook.com/peace.hokkaido/)を見て下さい。
 講演のタイトルは 「−政治が憲法を強引に乗り越えようとしている、今−私たちに何が問われているのか」 です。

 現在の日本の状況は,「制約されたくない国家」によって国の形が変わりつつあります。2014年9月19日に成立した「安保法制」の成立過程では,法の安定性が失われ,これまでの常識が通じない状況になっています。国家の存在意義を改めて問わなければならない状況です。

 日本は自由な社会だと思っている人は多くいます。しかし,それは「分をわきまえていれば」という制限付きです。これは,江戸時代以来の「皇国史観」の必然的な帰結として形づくられてきたものです(尾藤正英)。

 日本国憲法の原点はどこにあるのか。明治憲法では,天皇を権威として政治を行う仕組みであったので,近代合理主義に基づいて人為的に国家を制御することは難しかったのです。軍事力を制御できない,戦争遂行のために人の心に国家が入り込んだ,などによって 「焼夷弾を箒で叩き消せ」 というような非科学的な命令を国家がしました。しかし,戦争へと強制的に国民を動員することには成功しました。ある種の「成功体験」が残りました。

 戦前,個人を否定する様々な文書が発表されました。1882(明治十五)年の「軍人勅諭」(明治天皇),1890(明治二十三)年の「教育勅語」(明治天皇),1910(明治四十三)年の「家族国家」(文部省),1937(昭和十二)年の「国体の本義」(文部省思想局),1941(昭和十六)年の「臣民の道」(文部省教学局)などです。これらは,それなりによく練られた文章です。

 日本国憲法は,個人主義を基本に置いています(憲法第十三条)。しかし,個人主義に対する違和感や嫌悪感は依然くすぶっていて,国家や組織が個人に優先する状況は,今もあまり変わっていません。

 今,改めて日本国憲法が制定された出発点に戻る必要があります。「騙されていた」 は二度は言えません。個人として国家に異議申し立てをすることが大切です。

*この講演会では,事前に申し出た人以外は写真を撮らないで下さいということでした。
**「家族国家」という考えが,かなり重要なのではないかと思います。つまり,「近代日本においては,天皇を親に,臣民(国民)を子になぞらえ,両者の家族的情緒による調和を目指した。」
(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説:https://kotobank.jp/word/家族国家-44836)
 教育勅語の「父母に孝行をつくし」という文言は,心情的に臣民の親である天皇につくせということに繋がります。


渡邊達也氏講演会(防災地質工業株式会社 技術研修会)2017/04/13 16:13


渡邊達也氏
                           渡邊達也氏
 渡邊氏は,北見工業大学工学部 地球環境工学科 環境防災工学コース 助教です。
 氏は,筑波大学出身で,2012年にスバルバール大学北極地質学科博士コースを終了し,帰国後,北海道立総合研究機構地質研究所に入り,その後,北見工業大学に移りました。

 2017年4月10日(月)にセンチュリーローヤルホテルで「凍結融解による斜面プロセスと周氷河堆積物」と題する北見工業大学の渡邊達也氏の講演会が行われました。この講演会は,防災地質工業株式会社の技術研修会の特別講演として行われたものです。

 周氷河環境というのは,地表面が凍結融解を繰り返す環境のことで,生態学的には森林限界,気候学的には年平均気温が3℃で,季節凍土や永久凍土が分布していて周氷河地形が発達している環境です。現在は,北極圏,ヨーロッパアルプス,チベット高原やアンデス山脈,南インド洋のケルゲレン諸島(フランス領南方・南極地域:49S, 69E)などで周氷河環境となっています。

 現在の日本列島の周氷河環境の限界は,南アルプスより北の高い山で,北海道でも日高山脈や大雪山,利尻岳などで見ることができる程度です。これに対して最終氷期最盛期(約2万1千年前)には,北海道では低地でも周氷河環境にあったと考えられます。

 凍上現象というのは,土の中の水が凍結して地表面を持ち上げる現象です。地表付近の水が凍ると霜柱ができます。やや深いところで土の中の水が凍るとアイスレンズができ,地表面が持ち上げられます。このような凍結と融解を繰り返すのが凍結融解作用です。この作用によって斜面上の土砂の移動が起こります。

 凍結融解作用は大きく二つに分けられます。日周期型と年周期型です。
 日周期型は,夜に気温が低下して地表面付近の土の中の水が凍り,昼になると融けてしまいます。
 年周期型は季節凍土帯と永久凍土帯に分けられます。
 季節凍土帯では,冬になると地表から数m程度までが凍土層(季節凍土層)になり,夏になると融けてしまいます。
 永久凍土帯では,夏でも永久凍土層が地下に残り,その上に活動層(季節融解層)ができます。活動層の最大厚さは,土の場合数10cm〜2m,岩屑の場合2〜4m,岩盤の場合5〜8mです。

 永久凍土帯では永久凍土層と活動層の間に遷移層が出来ます。下にある永久凍土の方が温度が低いために下から冷却してきます。すると,永久凍土層の中にアイスウェッジが形成され上方に成長していきます。

 スピッツベルゲン島の沖積扇状地での凍結融解作用では,扇状地の上方の土質は粘土質シルトであるのに対し末端では細粒砂です。土質が違うために形成される構造土が違い,水分量や凍結状態にも違いが表れます。

 周氷河環境での地盤の変化としては,永久凍土層の融解によって生じる地盤沈下(サーモカルスト)や活動層の崩壊があります。

 周氷河環境での斜面変動は,その地域を構成する地質の相違が現れます。例えば,石灰質結晶片岩地域では永久凍土層のクリープによる岩石氷河が形成されます。頁岩地域では,岩片が細片化しソリフラクション・ロウブが形成されます。

 ソリフラクションというのは,凍結融解サイクルによるゆっくりとした斜面の土層移動のことで,周氷河環境で発生します。この土層の特徴は,1)シルト・砂を多く含む,2)液性限界・塑性指数が低い土層で起こりやすいということです。
 ソリフラクションには二つの土砂移動形態があります。
 一つはフロストクリープで,凍結によって斜面に垂直に持ち上げられた土砂が融解によって鉛直に近い角度で落ちることによって斜面下方に移動する形態です。
 もう一つはジェリフラクションで,融解した土層が斜面下方にクリープすることによって発生します。

 細粒岩屑斜面では,ソリフラクションのほかに凍結面の上面をすべり層としたスライド・フローが発生します。斜面背後から融雪水が供給され,地表面近くの融解層に浸透し凍土層との境界をすべり面として急速に移動する形態です。

 厚い周氷河堆積物ができるには,ソリフラクションや活動層崩壊のほかに永久凍土層のクリープが関わっている可能性が指摘されています。

* 2014年8月の礼文島の豪雨による斜面崩壊,2016年8月の日勝峠付近を中心とした地域や知床半島での斜面崩壊など,山麓緩斜面堆積物の崩壊が注目されています。今回の講演は,周氷河環境での斜面プロセスについて基礎知識を含めて紹介してくれたという点で時宜にかなったものでした。
 災害業務では,復旧工事を睨んで迅速な対応が求められます。その中で,崩壊機構や原因を解明する調査を行い,まとめるのは厳しいものがあります。しかし,先入観にとらわれないで事実を積み上げていくことが必要だろうと思います。

** 日本列島の周氷河環境については,貝塚(19689)の図が最初のものだと思います。その後,この図は,<塚爽平,1998,発達史地形学(182p:東大出版会)>にも掲載されました。
 現在では,山関係の本にきれいな図が掲載されています。例えば,<小泉武栄,2007,自然を読み解く山歩き(88p:JTBパブリッシング)>などです。


13歳からの夏目漱石2017/04/09 17:27


13歳からの夏目漱石
           小森陽一,13歳からの夏目漱石。2017年3月,かもがわ出版。

 漱石の作品を時代背景とともに語ったものです。帯にあるように「そうだったんだ!」と唸ってしまう内容です。

 1905(明治三十八)年に発表された「吾輩は猫である」について述べているところは感心することしきりです。
 主人公の猫に名前がないこと,友達の猫の名前が,軍人の家で飼われている「白君」,となりの「三毛君」,車屋の「黒君」となっていることが意味しているものは何か。その他,時代背景を頭に入れて考えると,この小説が単なるユーモア小説でないことが浮かび上がってくるという趣向です。

 以下,それぞれの作品の時代背景から作品を読み解いていきます。そこまで読むか,と思うところもありますが, 実践的な活動と並行して漱石を読み直したという著者の到達点が示されていると思います。

 『二〇〇五年から、あらためて百年という歴史的な距離を意識しながら、漱石夏目金之助のすべての小説を読み直すことが、私の日課になっていった。「九条の会」の憲法講演と漱石小説の読み直しは私にとって不可分の実践になった。その営みを一二年近く持続する中で、百年後の今だからこそしっかりと受けとめることのできる漱石の言葉と出会い直すことができると確信していった。』(同書,21ページ)

 この本の基本的内容は,2016年8月に長野市で中学生や高校生を聞き手として行った授業だそうです(本書,2ページ)。巻末には生徒達の感想が載せられています。
 
 74歳の私が読んでも面白い本です。