放射線量の増加率に変化2018/09/17 17:29


累積放射線量

図1 放射線量の累積変化グラフ


2014年5月15日から測定している累積放射線量のグラフが,特に2018年6月12日頃から勾配が急になっています.徴候は,今年の1月中頃から現れていましたが,ここに来て明らかに増加割合が大きくなっています.


2017年5月初旬頃から6月中旬過ぎまで増加割合が大きくなり,その後,5月初旬前より大きな増加割合を示していましたが,ここに来て,それよりもさらに大きな増加割合で,しかも期間が長く続いていて収まる気配がありません.


一体,何が起きているのか全く分かりませんが,これほどの変化を与える放射線源としては福島第一原子力発電所しか考えられません.

福島原発周辺のモニタリング・ポストを大幅に減らす計画のようですが,日本全国が放射能により汚染されつつあることを示しているようで,非常に気持ちが悪い状況です.


時間当たりの放射線空中線量だけでなく,モニタリング・ポストの累積線量にも注意する必要があると強く感じます.



大雪山系 旭岳2018/09/16 22:02

2018年9月15日,旭岳の姿見の池周辺と裾合平の途中までを歩いてきました.

去年の同じ頃,旭岳に登った時には見事な紅葉でしたので,それを期待していきました.チングルマの草紅葉はそれなりに見応えがありましたが,ナナカマドの葉が枯れてしまっていて,ちょっと寂しい秋の景色でした.


旭岳

写真1 姿見の池に向かう途中から見た旭岳

朝8時半頃です.この日は,ロープウェイの姿見駅から反時計回りに姿見の池へ行きました.天気は良く気温は暑いくらいで,風もほとんどありません.


チングルマ

写真2 チングルマの草紅葉と綿毛

姿見の池へ行く途中のチングルマの群落です.綿毛が朝日に光っています.



旭岳と姿見の池

写真3 旭岳

旭岳と姿見の池です.向かって左側の尖った小さな峰の方が高く見えますが,右のなだらかな尾根が標高2,291m の山頂です.山頂直下の壁を作っているのは,9千年前に噴出した裾合平火砕岩・溶岩で,火砕岩と溶岩が互層しているので縞々が見えます.西に開けた地獄谷は2,000年~3,000年前の爆発で出来たもので,この時に山体崩壊し岩屑なだれが発生しました.現地の説明版と最近の研究成果では異なっています.


構造土

写真4 階段状の構造土

向こう側の草の付いた斜面に階段状の地形が見えます.斜面の土砂が凍結融解を繰り返し受けると,重い石が石垣のように集まって斜面上方の細かい土砂をせき止め階段状の地形を作ると説明されています.階状土と言います.姿見の池から夫婦沼へ行く途中で見ることが出来ます.


シマリス

写真5 シマリス現る


旭岳西面

写真6 鏡池

夫婦池の北側の池です.ここでも水面に映った旭岳を見ることが出来ます.


旭岳西斜面

写真7 旭岳の西面

裾合平火砕岩・溶岩の縞模様が,はっきりと見えます.左手の崖錐斜面の中に突き出している尖った峰は東西性の岩脈です.


旭平溶岩

写真8 旭平溶岩

夫婦池から裾合平に向かう登山道を遮るように尾根をつくっている溶岩です.


旭岳北西斜面

写真9 旭岳北西斜面

裾合平火砕岩・溶岩で覆われた斜面です.頂上付近には盤ノ沢火砕岩・溶岩が分布しています.


地獄谷火山砕屑物

写真10 地獄谷火山砕屑物

鏡池のすぐ北を流れるピウケナイ第三沢(忠別川支流・ピウケナイ沢のさらに支流)の両岸に分布する火山砕屑物です.変質した安山岩など色々な礫を含んでいます.


ハイマツと草紅葉

写真11 旭岳とハイマツと草紅葉


ナナカマド

写真12 葉が枯れてしまったナナカマド

多くのナナカマドは,葉が枯れて黄褐色になっていました.例年のような見事な紅葉は見られませんでした.



札幌市東15丁目の路面陥没2018/09/12 16:06

平成30年北海道胆振東部地震によって札幌市東区の東15丁目通で広範囲にわたって路面陥没などが起きました.

大体,北13条から北46条までとされていて,環状通東駅から栄町駅までの4.3km です.栄町駅は北41条ですが,その北の地下に検車線(極く小規模な車両基地)があるために北46条まで変状が発生したと考えられます.


 東15丁目通の路面陥没の特徴は次のとおりです.


(1)路面陥没は,ほとんど車道に限られていて両側の歩道には見られない.また,道路沿いの建物にも被害は及んでいないようである.

(2)部分的に路面が波打っているところがあるが,ほとんどが陥没である.

(3)連続的に陥没しているところもあるが,飛び飛びの場合が多い.

(4)噴砂は1箇所だけ確認できた程度で,ほとんど見ることは出来ない.


以下の写真は,いずれも東15丁目通で2018年9月11日に撮影したものです.


北41条

写真1 北41条付近から南を見る

地下鉄栄町駅のすぐ南です.大きく陥没しているのは南行きの車道です.


北40条

写真2 北40条付近

路面全体が沈下していて局部的に陥没孔が開いています.右の縁石は中央分離帯です.


北28条

写真3 北28条から南を見る

この先の一区画は,歩道も含めて全面通行止めです.道路の中央部が沈下し,分離帯の縁石が波打っています.


北26条

写真4 北26条付近で北を見る

特に,向側の北行き車線が大きく沈下しています.手前の南行き車線は路面も縁石も波打っています.地下鉄は停電が回復して運行していますから,このような変状の影響は受けていません.


北25条噴砂

写真5 北25条付近の噴砂

中央分離帯の脇から吹き出していました.左手前の小山の砂は粒度が揃っていることや青灰色を呈していることから海砂だと思われます.


北25条

写真6 北25条から南を見る

路面が陥没し波打っています.この日に見た中で最も激しい変状です.


北24条から南は,かなり復旧が進んでいました.砕石類を敷いて転圧して舗装をしているので,地下鉄函体周辺が十分締め固まっているようには思えません.


1983年の日本海中部地震で,地震の震動では N値が大きく向上するほど締め固まらないというのを経験しています.

将来のことを考えると,今回,変状の著しかった箇所については対応が必要だと思います.



積丹半島の神威岬2018/09/02 14:14

北西に向かって日本海に突き出た積丹半島の南西側の岬が神威岬で,先端に神威岬灯台があります.さらに,その沖に神威岩,メノコ岩が,雁行状(ミの字型)に海面から顔を出しています.


国道229号から神威岬灯台への町道を上っていくと広い駐車場があり,岬先端へ遊歩道がついています.海面から50m ほどの高さの 空中回廊といった感じです.


この岬の土台をつくっている地質は,中新世・余別層の石英含有黒雲母角閃石安山岩で,その上に鮮新世・野塚層の砂岩・礫岩・火山円礫岩および輝石安山岩が載っています.

実際に神威岬で見ることの出来る地質は,灰赤褐色のハイアロクラスタイトとそれに挟まれている黄褐色のシルト岩,そして灯台手前にある層状・半固結のシルト岩・砂岩・礫岩です.


昔は灯台には灯台守が常駐していました.その人たちは,海岸伝いで灯台へ行き来していました.そのために掘られたのが「念仏トンネル」です.

国道229号の余別トンネルから少し西に行った所に「食堂うしお」があります.ここから海岸伝いに灯台へ行く道がありました.その途中に念仏トンネルがあります.灯台職員の家族が,天長節(11月3日)のお祝いの買い物に行く途中で波にさらわれたのを機に掘られたと言われています.地理院地図にも道とトンネルが載っています.


このトンネルは海際ですので,岬の土台をなしているハイアロクラスタイトに掘られています.現在,神威岬灯台へ行く遊歩道の途中に念仏トンネルが見える場所の案内板があります.


もう一つ,神威岬から西を見ると沼前(のなまい)地すべりを見ることが出来ます.幅1,000m,奥行き900m,滑落崖の高さは200m 以上あります.末端は海の中なので,それを含めると奥行きはもっと長くなります.

地すべりの基盤岩は,陸側に傾斜した中新世の泥岩・緑色凝灰岩で,滑落崖にはハイアロクラスタイトを含む火砕岩類が露出しています.いわゆるキャップロック型の地すべりです.


沼前は明治初期に青森から移住した人たちが住んでいましたが,1965(昭和40)年頃から家屋の傾動や地割れが発生し,1970(昭和45)年に退去命令が出されて住民全員が退去しました.


神威岬全景

写真1 積丹岬から見た神威岬

岬先端の神威岩,メノコ岩が見えます.


ハイアロクラスタイト

写真2 「食堂うしお」の先から見た神威岬

国道229号が大きく南に曲がる海側にある「食堂うしお」の先に,灯台へ行く旧道跡があります.手前のコンクリートは階段の残骸です.念仏トンネルの東側坑口は,多分,手前左の大きな岩に隠されていると思います.この辺りの地質は,灰色を帯びた赤褐色のハイアロクラスタイトです.


ハイアロクラスタイト

写真3 ハイアロクラスタイト

赤褐色を帯びたハイアロクラスタイトです.安山岩のブロックも基質も全く同じ岩質です.


溶岩

写真4 安山岩溶岩

手前の海食台に出ているのはハイアロクラスタイトの顔つきですが,全体を見ると塊状溶岩の下底部(クリンカー)のようです.


神威岬

写真5 神威岬

灯台,神威岩,メノコ岩です.灯台右側の三角の露頭は,半固結のシルト岩,砂岩,礫岩の互層です.岬と二つの岩は火砕岩類で出来ています.


沼前地すべり

写真6 沼前地すべり

大規模な地すべりです.全体としては背後の滑落崖からストンと落ちている感じで,安定しているように見えます.中央付近の低くなっているところが活発に移動したようです.道路の海側に押え盛土が見えます.

左手前は,鰊を食べ荒らした鯨を退治した大蛸が固まったとされる蛸岩です.現地の説明板では「蛸岩」,地理院地図では「たこ岩」となっています.


念仏トンネル

写真7 念仏トンネル西側坑口

この写真の右側,礫浜の向こうに見える小さな穴が,念仏トンネルです.このトンネルが出来る前は,左側の小さな岬を回って通っていたことになります.神威岬灯台に行く遊歩道から見えます.付近に案内板があります.岩は,写真3,写真4と同じです.


旧道

写真8 海岸から登ってくる道

中央やや左に白く見えるのは海岸から登ってくる階段です.「つづら折り」で斜面を登って右端の所で尾根に達します.念仏トンネルの坑口が見えます.


神威岩とメノコ岩

写真9 神威岩とメノコ岩

手前が神威岩で一番奥の三角の岩がメノコ岩です.海上に出ている岩が「ミの字」に並んでいます.この日は曇り空だったのと強い風が吹いた後だったので,積丹ブルーではありませんでした.


砂岩層

写真10 砂岩層

半固結の砂岩層に大きな亜円礫が散点している地層です.どういう環境で出来たのか不思議です.


岬の根元

写真11 灯台側から岬の根元を見る

尾根伝いに遊歩道が整備されています.手前の一番低い場所に念仏トンネルを通る昔の道路の降り口がありました.



積丹半島の幌武意海岸2018/08/28 18:39

久しぶりに積丹岬の幌武意(ほろむい)と神威岬に行ってきました.まず,幌武意海岸です.


2018年8月27日(月)でしたが,観光客で大賑わいでした.大きく様変わりしたという感じです.


東の幌武意町から西の入舸町(いりかちょう)まで,断崖の上を積丹岬自然遊歩道が整備されています.その途中に有名な幌武意海岸があります.唯一,積丹岬先端付近で北の海岸に降りていける場所です.


5万分の1地質図幅では次のようになっています.


積丹町美国(びくに)から積丹岬までの海岸沿いには,南から美国-湯内累層・上部集塊岩層,同凝灰質砂岩泥岩層,同中部集塊岩(未区分:尾根内層・火砕岩部層・石英含有角閃石安山岩質水冷破砕岩および同質火山円礫岩)が分布しています.これらの分布は,国道229号より海側で,内陸側は積丹岳などの古い火山の溶岩や更新世の火山山麓扇状地などが分布しています.幌武意海岸の崖には流紋岩岩床があります.


展望台から

写真1 展望台から

駐車場の上にあるトンネルを抜けた展望台から見た島武意海岸です.海の中に岩脈群がそそり立っています.これらの岩脈は,石英を含んだ輝石安山岩で,角閃石はあまり目立ちません.黄鉄鉱が散点していますが,ほぼ新鮮です.


変質帯

写真2 展望台東の変質帯

展望台のすぐ東に見える変質帯です.原岩の節理が残っていますが完全に白色化しています.


変質岩

写真3 変質岩

海岸へ降りて行く遊歩道脇に見られる露頭です.原岩は,多分シルト岩でしょう.


遺構

写真4 遺構

遊歩道を降りた所に立派な石垣が残っています.何の遺構か不明です.中央に見える階段の左に,石に刻まれた銘板があります.「記念 大正六年五月 石工 中村○一郎」までは読めますが,肝心の「記念」の下に彫られている字が読めませんでした.銘板の左下にマムシが4匹休んでいました.この写真の反対側にも石垣が残っています.


節理

写真5 岩脈の節理

石英含有角閃石安山岩岩脈です.西に傾斜した柱状節理が発達しています.左側では方状節理になっています.


岩脈

写真6 岩脈の顔つき

斜長石・輝石・角閃石とも数 mm の大きさです。.


出岬

写真7 出岬(でさき:でみさき)の変質帯

海中に非変質の岩脈があり,海岸の崖は変質を受けています.原岩の節理などが残っています.出岬の灯台から東を見ると変質していない火砕岩類は陸側に10°ほどで傾斜しています.この付近全体が,一種のケスタ地形を呈しているようです.


粗粒玄武岩

写真8 粗粒玄武岩

遊歩道を降りて西(左)に行くと玉石を積んだ石垣の遺構があります.その背後斜面は粗粒玄武岩です.安山岩岩脈に比べると節理間隔は広く,灰黒色を呈しています.海岸にほぼ直交する方向(N10゚E)に貫入しているので,海岸の礫の間にも露頭があります.


無線方位信号所

写真9 積丹岬無線方位信号所

沖を通る船のレーダー画面に灯台や灯浮標などを表示させるための施設だそうです.積丹岬には,NTT など幾つかの電波塔が建っています.



本の紹介:海に沈んだ大陸の謎2018/08/25 07:16

海に沈んだ大陸の謎

佐野貴司,海に沈んだ大陸の謎 最新科学が解き明かす激動の地球史.ブルーバックス,2017年7月.


岩石学の立場から,大陸地殻がどのようにして形成されたのかを解説した本です.


ちょっと怪しげな表題に反して,地球科学の最新知識を分かりやすく説明していて,非常に説得力のある内容になっています.

例えば,「ジーランディア」という言葉を知っている人は,多くないと思います.オーストラリアの東の海底にあり.ニュージーランド,ニューカレドニアを含む台地です.ここからはドレッジで大陸地殻を構成する花崗岩が採取されています.


白亜紀と古第三紀の境界の時代に生物が大量絶滅したのは,巨大隕石の衝突によるというのが,ほぼ定説になっています.しかし,デカントラップ形成の火山活動の影響も無視できないということが紹介されています.トラップというのはスカンジナビアの言葉で「洪水玄武岩」を指すそうです.


地球科学の基礎をきちんと説明し,ムー大陸やアトランティス大陸の話の信憑性について解説しています.


非常に面白く読めた本です.



第4回 十勝岳トレイルラン in かみふらの・びえい2018/08/20 16:29

トレイルランの15km に申し込み,一応,完走できました.時間は3時間03分44秒でした.


      

チャレンジコース図

           図1 十勝岳トレラン チャレンジコース図(TrailNoteで作成)

赤は登り,青は下りです.最初は火砕流台地を登って行き,7.5km 付近から長い下りになります.最後の三つの登りがつらいです.


この大会は55km のエキスパートコースと15km のチャレンジコースがあり,15km なら何とか完走できるだろうと思って申し込んだのです.最近は,10km 以上は走ったことがなく,この大会の1週間前に11kmを走って大丈夫という感触をつかんでいました.


私は前日受付をするまで,距離が変わっていることを知りませんでした.チャレンジコースは18.5km になっていました.コースがうまく取れず距離が延びたのだそうです.「制限時間も1時間延長しました」と大会関係者が開会式で気軽に言っていましたが,こちらとしては,やめようかどうしようかという問題です.


リスト GPS を付けて初めて走ったのですが,GPS の距離は19.4km ,累積上昇高度は530m でした.


十勝岳トレイルランのチャレンジコースと言っても,美瑛火砕流の台地を登って降りてくるだけです.台地に上がると十勝連峰が一望できるのは素晴らしいです.この日は,山の上の方は雲がかかっていました.


日の出公園のスタート・ゴール地点のすぐ東にはキャンプ場があり,前日ゆっくりと来てスタートに備えることが出来ます.この日は,夏休み最後の土日だったので家族連れで賑わっていました.8月は,まだテントで暖かく寝ることが出来る気温です.


チャレンジのスタート前

写真1 チャレンジコースのスタート前

三々五々選手が集まってきています.曇り空で肌寒い気温です.正面の丘を展望台まで一気に登り,右手(東)にあるキャンプ場へと降りて行きます.


エキスパートの選手

写真2 エキスパートの選手

朝6時スタートです.日の出公園キャンプ場の中を走って東に向かいます.折り返しは標高1330m の 十勝岳避難小屋です.正面は富良野岳,左に安政火口の岩肌が見えます.


4.5kmの登り

写真3 4.5km 付近の登り坂

ひたすら登ります.舗装された町道です.


砂利道から林へ

写真4 砂利道から林の中の道へ

畑の中を走って下りにかかりました.山は雲に覆われています.6km 過ぎです.


日の出ダム

写真5 長い下り

畑の中と林の中を走って日の出ダムまで,約5.4km の長い下りです.


日の出ダム

写真6 日の出ダム

ここまで下りが続きます.ここから日の出公園の山を含めて,三つの登りがあります.ここまで来ると上り坂は走ることが出来ず,もっぱら歩きです.


アップダウン

写真7 まだまだアップダウン

17.2km 付近の最後から二つ目の登りです.前の二人の女性にも追い抜かれてしまいました.すでに11時40分です.11時30分過ぎから霧雨が降ってきました.日が照るのに比べたらありがたいです.


ゴール

写真8 ゴールが見えた

日の出公園の山を登って下ればゴールです.長かった.人はまばらですが,エキスパートコースの人はまだまだ走っています.



本の紹介:続々・石の上にも五十年2018/08/10 15:27

続々・石の上にも五十年

島﨑英彦,石の上にも五十年 一鉱床学者の閑談36話.明文書房,2018年7月.


シリーズ第三弾です.これで,108話になりました.

日々雑感,旅行記,鉱物・試料整理の三本立てです.


この本に「24.天生(あもう)鉱山の黒鉛」が出てきます.黒鉛を採掘した天生鉱山は岐阜県北部の飛騨市河合町元田にあった鉱山で,下小鳥ダムの下流で小鳥川が東北東に流路を変更する右岸付近にありました.


国道360号は,東から小鳥川沿いに遡って,支流の金山谷,天生谷に沿っていき,天生峠を越えて庄川流域へと出ます.その途中に金を採掘していた天生鉱山がありました.

国道360号は,東海北陸自動車道の飛騨トンネルの北坑口の少し北で白川郷インターチェンジに繋がります.


飛騨トンネルの工事では,避難坑と本坑の掘削に使った TBM 2台が,最後に動けなくなり,その外殻がトンネル支保工として今も眠っています.そのTBM の名前が「天生太郎」と「夢天生2000」です.TBM2台の外殻が埋まっているのは,南の河合側坑口から3,500m 付近の飛騨トンネルの貫通点付近で,地質は飛騨片麻岩です.貫通点は,籾糠山(もみぬか・やま)の東尾根の下で,この付近にも金の鉱山がありました.


以上は,余談です.


島崎氏の文章は読みやすく,読んでいると学生時代を思い出すことがあります.



火山灰分析の手びき(第3版)2018/08/09 22:13

火山灰分析の手びき

野尻湖火山灰グループ,地学ハンドブックシリーズ25 

火山灰分析の手びき(第3版) 双眼実体顕微鏡による火山灰の砂粒分析法.

2018年7月,地学団体研究会.


1983年以来,9万冊刊行された「火山灰分析の手びき」の完全カラー版です.副題にあるように双眼実体顕微鏡によって火山灰に含まれる鉱物を識別する手引き書です.


最初に火山灰に含まれる鉱物のスケッチとカラー写真が載っています.火山ガラス,かんらん石,輝石,角閃石,黒雲母,石英などのほかに,ざくろ石や菫青石の写真などが載っています.これらの写真は鮮明で,非常に分かりやすいです.

火山灰から鉱物を取り出す「わんがけ法」,「ふるい法」が説明されているほか,双眼実体顕微鏡での観察方法まで述べられています.


鉱物の観察は実体顕微鏡で行いますが,10倍程度のルーペがあれば,この冊子を見ながら野外で鉱物を見分けることは出来ると思います.


双眼実体顕微鏡は,比較的手頃な値段で手に入るようになってきました.この本で紹介されている「ライカの ES2」は,4万円弱で手に入ります.理科実験機器を販売している「ナリカ社製の Soreo SR-40」は,6万円弱です.


この冊子は,

( http://www.chidanken.jp/index.html>出版物(会員頒布)>-地学ハンドブック )

で入手可能と思います.



せたな町大成区の太田神社2018/08/08 17:10

北海道せたな町大成区太田にある太田神社本殿は,太田山(標高485m)の山頂直下の崖の洞窟にあります.標高は約340mです.


本殿のある崖を構成しているのはジュラ紀付加体・久遠コンプレックスです.

太田山の南の帆越山トンネル北坑口付近や海岸にある太田神社拝殿付近には白亜紀の花崗閃緑岩が分布しています.一方,太田集落の南550m 付近の岩礁から北には,中新世の流紋岩類が分布し,さらに北の太田トンネル付近からは花崗閃緑岩が分布しています.花崗閃緑岩や流紋岩に挟まれた久遠コンプレックスの分布域は,侵食に弱く海岸侵食が進んで弧状の海岸線を造っていると考えられます.

太田神社付近の地質は,比較的細片化しやすく崩壊が発生しやすいのが特徴です.これは,流紋岩の迸入によって岩盤が変質作用を受けて劣化しているためと考えられます.


海岸にある拝殿から崖の途中にある本殿の洞窟が見えます.当然,本殿から海岸にある拝殿を,はるか下に望むことが出来ます.


太田山

写真1 太田山

道道北檜山大成線・帆越山トンネル北坑口を出た左側にある拝殿から太田山を見たところです.


階段

写真2 道道北檜山大成線から本殿へ向かう階段

この階段を見ただけでやめる人もいるでしょう.上の方で勾配がきつくなっています.両側にしっかりとした手すりがあるので,それにつかまって登れば何とかなります.


小さな祠

写真3 小さな祠

標高130m,全行程の半分の手前付近にある小さな祠です.


女人堂

写真4 女人堂

女人禁制の本殿の代わりに大正時代に女性用の拝殿として建てられたそうです.標高160m 付近にあります.


本殿鳥居

写真5 本殿の鳥居

この先に本殿へ行く桟橋があります.


桟橋

写真6 本殿下の桟橋

足下は何もありません.人が立っているところに本殿に登る鉄輪の梯子があります.


鎖梯子

写真7 本殿へ

ここをよじ登った先に本殿があります.


拝殿を見る

写真8 本殿下の桟橋から拝殿を見る


なお,太田神社を解説したウェブサイトとしては,下のものが優れています.

北海道ファンマガジンこれは過酷すぎる!日本一参拝が危険な「太田山神社」に登ってきた

( https://pucchi.net/hokkaido/trippoint/taisei-ootasan.php )


私のブログでも太田神社を取り上げるのは二度目です.

( http://geocivil.asablo.jp/blog/2014/08/03/ )


その昔,太田集落の先のトンネル調査を担当したことがありました.当時の計画は,短いトンネルを幾つか繋いでいました.

太田漁港から船でボーリング機械などを運び調査しました.天狗山の西斜面は,花崗閃緑岩ですが,岩盤地すべりの地形を呈しています.ボーリングのオペレータが,「そこにマムシの巣がある」と言います.そこと言うのは,ボーリング座のちょっと下です.夏の暑いさなか,カッパを着て,ゴム手袋をして斜面の調査をしました.

その後,豊浜トンネル坑口の岩盤崩壊があり,長大トンネルに変更になりました.現在の北檜山大成線は,太田集落の先は延長3,360m の太田トンネルで一気に舟隠まで抜いています.