憲法施行79周年 STOP改憲! 5・3憲法集会2026/05/07 16:27

 53日午前10時から、憲法施行79周年の集会が開かれました。主催は「戦争をさせない北海道委員会」です。

 

2026年5月3日憲法集会

 パネルディスカッションでは、北星学園大学教授の岩本一郎さん(写真左)が司会兼パネリストで、室蘭工業大学大学院教授の清末愛砂さん(オンライン参加)、弁護士の池田賢太さん(写真右)がパネリストとして意見を述べました。なお、清末さんは神奈川からのオンライン参加でした(以下、敬称は略します)。

 

<岩本>

 現在、国民の憲法意識はどうなっているのか、改憲論議のどう対応したら良いのかの二つが今日の議題です。

 

<池田>

 憲法の三つの原理は、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義です。この原理と生活の回路とが繋がっていない人がいます。

 

<岩本>

 世代間ギャップの話をしたいと思います。

 東大などが行った憲法についての調査があります。それによると

A:憲法は国の理想の姿を示したもの

B:憲法は国を縛るもの

 という二つを選んでもらったところ、Aだという人が64%Bという人が34%でした。Aと応えた人の多くは、憲法は柔軟に適用すれば良いと考えていました。時代に合わないのであれば改憲するのが良いと言うことです。Aと答えた理由は、憲法前文に国の理想の姿が書かれていると考えていることのようです。

 北星学園大学で学生にアンケートを実施したところ、Bと応えた人が多かったです。立憲主義の考え方が浸透していると感じました。

 

<清末>

 私は、憲法24条(家族生活における個人の尊厳と両性の平等)の研究を長年やってきました。学生の意識の変化を感じています。学生が保守化しているというのは疑問に思っています。リベラルだしパワハラはダメと考えています。

 憲法を教えるのは難しいです。単位が欲しいという学生もいれば教職のために必要という学生もいます。

 学生には基本的人権を中心に九条、前文を教えています。学生は貧困に関しては敏感です。

 授業では1回目と2回目の授業が重要です。立憲主義というのは自分の権利を発揮できるようにするものです。前文を音読すると人権の問題をクリアにしやすいです。九条は難しいです。

 二つの暴力、つまり軍事力と家父長制という近代世界からの脱却が大切だと思います。

 

<池田>

 私は、いわゆる左の弁護士です。企業の法律顧問などをやっているある弁護士と話したとき「憲法と商法(?)をやっていれば左になるよ」と言われてビックリしました。

 安倍晋三元首相の国葬は違憲だとする裁判では、裁判所は取り合わない態度を示し、市民の訴えを棄却しました。憲法を出したら負けだと言われています。

 自衛隊イラク派兵差止訴訟では、憲法九条一項違反であるという判決が出ました。同性婚裁判でも違憲判決が出ました。

 元最高裁判事の宇賀克也氏は、説明責任があると言って幾つもの個別意見を出しています。

 

<岩本>

 国民は勤労の権利を持っています(憲法二七条:勤労の権利および義務、勤労条件の基準、児童酷使の禁止)。働く場を設けるのは国の責任です。この点で、裁判官の意識と国民の生活との間にギャップがあるように感じます。

 

<池田>

 裁判官の裏での議論では、人権侵害を認めないことがまかり通っているようです。

 

<岩本>

 裁判官の間では、憲法は法律よりも下の最低ランクとされているようです。

 

<清末>

 憲法と家族法でも司法、立法の場で、憲法が軽視されています。

 憲法第242項と民法2条は、両性の平等を謳っていますが、司法、立法では生活に生かされていません。

 夫婦別姓の裁判では少数意見ですが司法が憲法を考慮しました。

 

<岩本>

 社会的に立場の弱い人が求めるのが人権で、憲法第25条(生存権、国の社会保障的義務)は憲法草案の国会議論の中で発議され付け加えられたものです。権利ですから国は保障する義務があります。

 権利を侵害されている当事者のことを具体的に考える必要があります。例えば、婚外子の子を持つ女性で二重国籍であると言った人です。 優生保護法は立法目的自体が違憲だとされました。市民の連帯が大事です。

 

<清末>

 家族法は弱い者を守る法律です。憲法第24条と第25条は連なっています。近代からの脱却です。

 第24条の1項は明治憲法の反省の上に書かれたものです。育児とか介護の負担は夫婦平等にと言うことです。家父長制からの開放であり力による支配の否定です。これは憲法前文の「恒久の平和を念願し」という平和主義に連なっています。

 反抗すると暴力でたたきのめすといった家庭内暴力は、イスラエルがパレスチナに対して行っているのと同じ論理です。

 

<池田>

 現在、武器輸出の5類型を撤廃しようとしています。スパイ防止法ではスパイと判断する根拠が不明で、すべての日本人が対象となり市民監視が強まります。これらの流れは、個別法で憲法を実質的に破るものです。

 自衛隊の情報保全隊裁判というのが仙台高裁であり、情報保全隊の情報収集は違法であるという判決が出ました。しかし、今進められている国家安全保障会議の強化では、閣議よりも国家安全保障会議の方が上位に位置付けられる可能性があります。

 

<岩本>

 憲法は国の権力を縛るものですから、政治家をイライラさせるものです。憲法に緊急事態条項を加えることは、議会での審議なしに内閣が命令をすることができる状態をつくることになります。

 

<清末>

 九条改定については、来年の地方選挙が大事です。緊急事態条項については、自民党案と維新の会案があります。維新の会案は2012年の自民党案とほぼ同じ内容です。

 衆議院では憲法改定に動いています。後から加わった条項が力になります。また、自衛権という言葉は、イスラエルがパレスチナで行っているジェノサイドを見ても分かるとおり、敵をたたきのめすと言うことです。

 

<岩本>

 いろいろな意見の人たちが共通認識を持てるようなプラットフォームが必要だと思います。

 

<感 想>

 憲法の第24条と第25条が繋がっていること、さらに前文の平和主義が連なるというのは、目からウロコの感じでした。

 そして、家庭内暴力がイスラエルのパレスチナでのジェノサイドと同じ論理にあると言うのも、なるほどと思いました。


 憲法を読んでみれば分かりますが、前文の主語は「日本国民は、・・」で始まります。「日本国は」でも「日本政府は」でもありません。国民が決意し宣言し憲法を確定しているのです。この前文から、「憲法は国の理想の姿を示したもの」という考えが出てくるのは、完全な誤読です。あるいは前文を読んでいないかです。

 

 現実的に考えて、中国やロシアあるいは北朝鮮が日本を攻撃するという動機は、ほとんど無いと思います。現在、政府が進めている九州や南西諸島方面へのミサイル配備は一体何を目的にしているのか、理解に苦しむところです。2倍以上に増えた防衛費を使うために行っているのではないかと勘ぐりたくなります。


 余談ですが、北海道大学理学部の故湊 正雄氏は、助手・助教授時代に陸軍省燃料廠勤務となり、主にスマトラで油田の探査、開発に従事しました(井尻ほか編、氷雪に甦り氷雪に消ゆ、築地書館、1985)。

資源争奪戦争となった場合、地質関係者は軍隊に取られ、海外に派遣されることを覚悟しなければならないでしょう。

 

始めて53日に行われる憲法集会に参加しましたが、非常に勉強になりました。

 


日本応用地質学会北海道支部・北海道応用地質研究会 令和8年度 特別講演会・特別報告会2026/05/03 18:25

  2026422日(水)午後250分から午後450分まで、表記行事が行われました。会場は北大学術交流会館で、私はZoomで視聴しました。

 

 特別講演と特別報告の概要を紹介します。

 

<本山 功氏>

 山形大学 学術研究院 教授 

 「北海道日高・十勝地域の白亜系・新生界の地質と放散虫化石層序」

 

 本山氏は現在、山形大学で環境変動、深海掘削計画、自然災害などの研究を行っています。

 1964年生まれで、卒業研究は大夕張地域の有孔虫化石層序です。修士論文は十三湖東方地域の放散虫の研究を行い、博士論文は北西太平洋亜寒帯の放散虫の研究でした。微化石による地質年代学が専門です。琉球大学、筑波大学を経て山形大学に移りました。

 

 放散虫は二酸化ケイ素の殻を持つ大きさ0.1mmほどの動物性プランクトンで海洋のどこにでもいます。放散虫化石帯が確立されています。


 東北地方太平洋沖地震の震源断層掘削では、仙台東方沖のプレート境界での深海掘削によって、深度800m840mでプレート境界断層を捉えました。断層には多量のスメクタイトが形成されていることが分かりました。

 放散虫化石は、断層の上下で種が異なっていました。また、断層直下は地層が逆転していました。大陸プレートの堆積物は二つの分岐断層で乱されていました(Iwai,M. et al,Island Arc,2025)。

 

 山形大学には災害環境科学研究ユニットがあります。

 バーチャルの研究所で、大学や民間の研究者が手弁当で災害緊急調査、災害についての普及活動や教育連携、災害についての基礎研究を行っています。

( https://yu-rcned.amebaownd.com 

 

 20228月の山形県南部の大雨、20263月の鶴岡市の土砂災害、20196月の山形県沖地震、20221231日の鶴岡市で2名の死者を出した地すべりなどの調査を行いました。

 

 20189月に発生した胆振東部地震の時は、学生の一人が卒業研究で北海道のクジラ化石の研究をすることになっていましたが無理となりました。

 そこで急遽、地震による墓石の転倒率の調査に切り替えました。由仁町や日高町で1ヶ月かけて62の墓地を調査しました。

 墓石の移動形式は、転倒、回転、並進などがあり、墓石の形式は和型、洋型、五輪塔、無縫塔などがあります。

 震源を中心に同心円状の震度分布を示しましたが、谷底低地では転倒率が小さく、斜面上部では転倒率が高いことが分かりました。転倒方向はランダムでした。

 

 穂別・平取の白亜系の調査を行っていたところ、中新世の地層から白亜紀の化石が出ました。穂別と振内の境界付近です。地質図を作成し化石に記載を行いました(内村ほか、地球科学、2020)。

 

 日高のクジラ化石の調査を行いました。日高町の波恵川(はえ・がわ)の河川改修工事で出たノジュールに含まれていました。波恵川のルートマップを作りました。770万年前〜740万年前(後期中新世)の地層の分布域です。露頭の岩石の年代は1,000万年〜930万年前です。この露頭から、770万年前〜650万年前の別のクジラの化石が出ました。これは、謎です(本山ほか、むかわ町穂別博物館研究報告、)2016

 

 波恵川の河床には日高前縁褶曲帯の衝上断層である平取断層の露頭が出ています。この断層を水中めがねで観察し追跡しました。

 

 浦幌町厚内から釧路市阿寒にかけての白糠丘陵周辺の放散虫化石層序を調査・研究しました。

 阿寒地域で言えば、前期中新世のチチャップ川層、中期中新世の知茶布層、後期中新世〜鮮新世の古譚層などです。海陸環境での放散虫生層序を確立し、白糠丘陵全体の地史を編みたいと思っています。

 

 20221231日に鶴岡市で地すべりが発生し、2名が死亡したことは前に述べました。この地域は、1970年代から1980年代にかけて採石を行っていました。地すべりを起こした地質は、強風化した赤褐色の玄武岩質安山岩で一部は自破砕状になっています。形成されている鉱物は、ハロイサイトと赤鉄鉱、針鉄鉱です。すべり面は不明で、全体の岩盤強度が低下したことが原因と考えられます。前兆はなく、音もなく滑ったと言われています。深層風化による岩盤強度の低下と長雨が原因と考えられます。土砂の移動距離が大きい長距離流動の地すべりでした。202412月に頭部切土と法枠工で復旧しました。

(この地すべりについては、地すべり学会誌の2025年5号に二つの論文が載っています。) 


長川善彦氏>

 独)鉄道・運輸機構 北海道新幹線建設局 技術管理部 技術調整課 課長補佐

 「北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)のトンネル施工について」

 

 北海道新幹線は、2016年に函館までが開通しました。札幌までの延伸は当初予定では2035年度だったものが、一度2030年度に前倒しされました。現在は、2038年度末(20393月)頃開通となっています。総距離は約212kmで、そのうちトンネルが約170km8割)となっています。

 工事が難航しているのは延長32.7kmの渡島トンネルと延長9.7kmの羊蹄トンネルです。

 

 渡島トンネルの台場山工区の地質は、上磯層群で硬質な破砕された頁岩です。20223月に天端崩落を起こしています。天端沈下量が50mm、内空変位が150mmです。円形断面を採用し脚部補強と注入式先受け工(AGF工法)で施工していますが、突発湧水にも見舞われ、月間20mの掘進です。

 同トンネルの南鶉工区では熱水変質帯に遭遇し、内空変位が平均100mm、最大200mmに達しました。円形断面を採用し仮インバートを施工しながら掘進しています。月間30mの掘進量です。

 

 延長9.75kmの羊蹄トンネルの地質は、湖成堆積物で地下水位が高く、高圧湧水に見舞われています。

 比羅夫工区では羊蹄山の岩屑なだれ堆積物の巨大岩塊に遭遇しました。事前調査の予想では、礫に当たったとしても最大径50cm以下としていました。調査不足でした。

 対応は迂回トンネルを掘削し、巨大岩塊を前方から砕いて除去しました。岩塊は一軸圧縮強度が150MPaと非常に硬質でした。24ヶ月掘削が停止し、弾性波探査とボーリングで前方の地質状況を把握して再開しました。

 

 これらのことを教訓として、地質リスク管理を見直すと同時にオンラインでの勉強会を行っています。

 

<感 想>

 本山さんは、学生たちと山を歩いて地質図を作ることを基本に、放散虫を武器に地質史を編む研究を行っています。学生は地質コンサルタントに就職している人も多いとのことですが、最近は公務員志望が多いそうです。

 地質分野でもレーザによる高精度の測定やAIを使った地質判定などが使われています。しかし、山を歩いて地質図を作るというのは、人間にしかできない作業だと思います。

 

 長川さんが羊蹄トンネルの岩塊遭遇について、調査不足だったと述べているのは印象的でした。低土被りでの掘削が長くなるのでシールド工法を採用したことは仕方ないのかもしれませんが、岩塊に遭遇することは事前に予想できたはずです。

 渡島トンネルの松前層群の区間で難工事となったのは意外な気がします。松前層群はジュラ紀付加体なので、ある程度の変位が出ることは考えられます。しかし、円形断面にしなければならなかったというのは、それだけでは説明しきれないように思います。

 



令和8年度 (公社)日本地すべり学会北海道支部・北海道地すべり学会 特別講演・研究発表会2026/04/29 08:36

 表記行事が2026424日(金)午後1時から午後440分まで、札幌市の「かでる27」の会場とオンラインで開催されました。Zoomで視聴しました。

 

 森林総合研究所の岡本隆氏の特別講演と若手部門(4件)と一般部門(3件)の研究発表がありました。

 

 プログラムは以下のとおりです。

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■ 特 別 講 演(一般公開)

・『 雪がもたらす斜面安定のパラドックス-近年の観測に基づく積雪期地すべりの実態- 』
 ☆国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 岡本 隆氏

■ 
研 究 発 表 会 【 若 手 部 門 】
・ 現地踏査から得られた知見と今後の展望
  髙木 優真斗/鈴木 朝陽/大塲 悠希
・ 地すべり観測・解析業務の事例紹介と実効雨量法適用の検討
  佃 芽衣/秋山 道生
・ 積雪・融雪状況の再現計算に基づく2012  3  7 日 新潟県上越市国川地区での地すべりの発生要因の検討
  矢野 樹生/桂 真也
・ 深層学習を用いた地すべり抽出における地質条件と教師データの違いが検出精度に及ぼす影響
  佐藤 弓響/渡邊 達也/古木 宏和


■ 
研 究 発 表 会 【 一 般 部 門 】
・ 最高度続成帯地すべりにおけるすべり面粘土の鉱物学的特性
  -四国東部四万十帯宝蔵山地すべりおよび釣の口地すべりの例-
  前田 寛之/河野 勝宣/進藤 治美
・ 斜面災害リスクに及ぼす気候変動の影響評価手法の提案
  石川 達也/山田 遙/熊田 大晃/岡地 寛季
・ 地すべり地形活動度評価における評価者・評価項目間の評価傾向
  日本地すべり学会北海道支部令和7年度技術講習会を例に
  宇佐見 星弥/石丸 聡/石田 博英/本間 宏樹/中鶴 真也/永井 啓資
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<岡本 隆氏>

 岡本氏は東京農業大学の林学科を卒業して森林総合研究所に入りました。

 雪と地すべり、地震と地すべりなどの研究、治山技術の適用手法と開発、大規模林野火災後の土砂災害・リスク評価といった研究を行ってきました。

 

 まず、雪と地すべりの話です。

融雪時に地下水位が上昇して地すべりが発生しやすくなることは知られていました。しかし、雪の荷重などが地すべりにどう作用するかは、はっきりしていませんでした。

 20144月に北海道苫前町で幅200m、奥行き200mの地すべりが発生しました。

 1997510日には秋田県鹿角市の澄川で地すべりが発生し、土砂が川に流れ込んで泥流となりました。地すべりの規模は、幅400m、奥行き700mで、土砂は500m3でした。澄川地すべりでは、下流に温泉宿があったのですが、宿の人が沢水の濁りと音に気づいて宿泊客を避難させ犠牲者は出ませんでした。

 202134日には新潟県糸魚川市の来海沢(くるみ・さわ)で地すべりが発生しました。融雪水を誘因とするキャップロック型地すべりでした。

 新潟県の伏野(ぶすの)地すべりでは、地すべり移動体は緩い傾斜の窪地となっていて、積雪期には地すべりの外形は、はっきりしません。

 山形県の銅山川地すべりでは、道路に亀裂が発生し積雪層にも亀裂が連続していましたが、雪が融けるまで全体像は把握できませんでした。

 

 地すべり観測技術は、1960年代は人力で、アナログレコーダーを使って連続データを取っていました。1980年になるとデジタルレコーダーになり、さらに太陽電池を使っての観測機器を動かし無線でデータを転送するようになりました。これによって地すべりが、いつ動き出したのかが分かるようになりました。


 それによると、融雪期の34月に動き出している地すべりは少なく、多くが1112月に動き出していることが分かりました。地すべりの動きが見えた時期と実際に動き出した時期が異なっていたのです。

 佐藤ほか(2014)は、積雪期の地すべり変動パターンを5つに分類しました。

  1)積雪期速度一定型(45%)、2) 積雪期加速型(32%)、3)積雪初期活動型(12%)、4)融雪期活動型(6%)、5)積雪期2段階活動型(5%)です。

 

 この結果から、地すべり活動の直接の原因(誘因)が何なのかを考え直さなければならなくなりました。考えられたのが、雪の荷重の作用と雪のせん断抵抗の役割です。

 雪の荷重は、比重を0.5とすると積雪深が4mであれば2,000kgf/m220kN/m2)になります。

 新潟県の伏野地すべりに試験地を設けて研究を行いました。この地すべりは、谷堆積物が移動しています。移動体の長さは235m、幅は3050m、すべり面深度は37mです。移動量は最大2m/年程度です。

 釣り合っている地すべり土塊に雪荷重が加わると、すべり面の応力も強度も増加します。また、すべり面勾配が小さいほど積雪荷重は斜面を安定させ、すべり面の内部摩擦角が大きいほど雪荷重は斜面を安定させます。

 

 地すべり土層が積雪によって鉛直圧縮を受けることを実証するため、高精度鉛直変位計を開発しました。

 伸縮性の小さいカーボンロッドを孔内に挿入し底を固定しました。すべり面深度は3.62mで、深度3.5mまでボーリング掘削しロッドを固定しました。

 観測の結果、2030mm、歪みにして0.60.8沈み込むことが分かりました。変位はもとに戻りません。

 

 間隙水圧の上昇で活動する例について話します。

 ノルウェーにクイッククレイがあります。この粘土は水を含むと流動しますが、水は通しません。融雪期には間隙水圧が低下し、積雪が多いときに間隙水圧が上昇します。雪の重さと間隙水圧が比例します。

 

 地すべり活動に対する積雪の影響についてです。

 積雪期に地すべりが動くと積雪層の側部の抵抗力が効いて地すべりが安定化します。雪のせん断抵抗力を原位置せん断試験で測定しました。シアーフレームを使った方法では、7.9kN/m2という結果でしたが、円筒型せん断試験器で測定したところ11.1kN/m2という値が得られました。

 

 長さ120m、幅40m、厚さ5m、積雪深3.1mの数値モデルを作って実験しました。積雪がない場合の安全率1.0とすると、このモデルでは安全率は1.135となりました。地すべりの面積が大きくなるにつれて安全率は低下し、4倍モデルで1.00となりました。

 

 気候変動が地すべりにどのような影響を与えるかについてです。

 「日本の気候変動2025」(気象庁)によれば、日本海側の年最深積雪は減少傾向にあり、大雪は減っていますが極端な大雪は継続して起きています。

 気候変動が地すべりに与える影響は、融雪期の地すべりは減少しますが、厳冬期の異常高温で大量の融雪水が発生したり、積雪の上に雨が降ったりすることなどが考えられます。

 

<感 想>

 融雪期の地すべりが少ないというのは、かなりショッキングな内容でした。

 ボーリング孔を使っての歪みや地下水の観測では、測定器を現場に持っていって手で測っていた頃に比べて精度が上がったことはもちろん、労力も格段に減っているようです。

 

 予稿集が充実しているので、若手と一般の研究発表は、そちらを読んでください。


第4回深田研講座 「基礎から学ぶ炭酸塩堆積物」2026/04/27 16:37

 2026423日(木)午後1時から4時まで、松田博貴(ひろき)氏による表記講演会が開かれました。Zoomで視聴しました。

 

松田氏は千葉県出身で、1968年に東京大学で博士号を取得し、石油関係の仕事をした後、熊本大学に勤め2025年から深田地質研究所の理事長に就任しました。専門は炭酸塩岩石学で、特に炭酸塩の岩石化の過程を研究してきました。

 

 この講座は1時間半ずつの前編と後編があり、非常に充実した内容です。すべてを紹介することはできません。極簡単に紹介します。

 

 なお、深田研講座は第1回が千木良雅弘氏による「災害地質学」で、YouTubeですべてが公開されています。約1時間半の講義が3コマです。

< https://www.youtube.com/@fgi_youtube_official 

 

 松田氏の講座もいずれ公開されると思いますので、そちらをご覧下さい。

 

 さて、大まかな内容です。

 

 炭酸塩岩は現地で生物が生きていたままの状態で堆積している点が、砕屑岩類と大きく異なります。つまり、生産場と堆積場が同じです。

 炭酸塩岩は海生生物が起源で、構成されている鉱物が限られます。続成作用により変化します。

 炭酸塩岩は、過去の環境を再現できる、ドロマイトという資源になる、世界の約4割の油田の貯留層になっている、地下ダムの建設対象となるなどの特徴があります。


 炭酸塩岩を構成する鉱物は、方解石、あられ石、ドロマイトです。方解石のカルシウムはマグネシウムで置換可能です。マグネシウムの置換量により溶けやすさに違いが出てきます。ドロマイトは続成作用で形成されます。

 炭酸塩岩の構成物は、原地性生物骨格遺骸、造礁サンゴ、石灰藻、ストロマトライトなどです。基質はシルトサイズの石灰泥です。

 

 炭酸塩岩の分類は、「ダナム(Dunham1962)の分類」が基本となっています。

 炭酸塩岩は熱帯で形成されるのですが、オーストラリアの南岸のような冷温帯でもできます。この地域は流入河川がほとんど無いことが、炭酸塩岩ができる有利な条件となっています。

 炭酸塩堆積物が長期間堆積して平坦な地形をつくります。炭酸塩プラットフォームで、いろいろなタイプがあります。風向きによって形が異なってきます。


 琉球列島のサンゴ礁は、冬でも海水温が20℃の黒潮によってサンゴ生息の北限に近い場所にできています。西に沖縄トラフと沖縄列島があり、数百種のサンゴが生息しています。

 

 続成作用というのは、変成作用の手前で起こる堆積物の物理化学的変化です。

 作用としては、溶解,膠結(びゅうけつ:concretion)、置換・交代、ミクライト化、新生作用、圧密があります。

 あられ石は溶解しやすく、表面積が大きい生物は溶けやすいです。ウニのトゲは単結晶です。

 

 土壌中の大気も炭酸塩岩の続成作用に影響してきます。

 方解石は圧力が上がると溶解度も上がり、温度が上がると溶解度は下がります。鉱物の粒子の間を方解石が埋めると固結します。貝殻が溶けてセメント物質になります。炭酸塩岩の孔隙率と浸透率が重要です。

 

 鉱物粒子に水滴状に石灰分が付いたり、メカニクス状になったりします。この状態では空気と水が共存しています。サンゴ礁などが海面上に出た場合、この状態になります。海面下ではモザイク状、あるいは鉱物粒子を取り囲んだリム状になります。このリムは、淡水環境では等粒状になり、海水環境では繊維状になります。結晶の周辺にできたリムの形状から生成環境が分かります。

 

 置換・交代作用では、高マグネシウム方解石が低マグネシウム方解石に変化し安定化します。約12万年で低マグネシウム方解石に変化します。

 ミクライト化作用というのは微粒の方解石ができる作用で、新生作用は結晶交代作用です。

 圧密作用では、石灰岩の堆積構造が消えてスタイロライトという縫合線状の面が形成されます。

 

 さて、ドロマイト化作用です。

 鉱物としてのドロマイトは、CaMg(CO3)2です。岩石としてのドロマイトは、苦灰岩と呼んで区別していますが、石灰岩が二次的に変化したものです。


 栃木県佐野市葛尾の石灰岩は、直径10kmほどの馬蹄形をしています。中央の100mがドロマイトです。塩分濃度が高い環境で形成されました。淡水と海水の混合でできるのか微生物が関与しているのかです。続成作用が起きた環境は、地表面近くでの続成作用、浅埋没化続成作用、深埋没化続成作用があります。ある程度、圧力溶解が進行しながら埋没していきます。石灰岩体は、上から淡水飽和帯、混合水帯、海水飽和帯に分けられます。

 板状石灰岩であるビーチロックは3千〜6千年で形成され、数万年で続成作用が進みます。露頭をたたくのにネジリ鎌かハンマーか迷います。

 海水中では何も起きず、海進期には続成作用が効きません。

 続成シークエンスは薄片から分かります。

 

 炭酸塩同位体化学についてです。

 使用する同位体は、酸素同位対比と炭素同位体比です。

 鹿児島県の喜界島では、隆起運動に伴いサンゴ礁の複合体が形成されています。海域ではサンゴの骨格が成長し陸域では鍾乳石が成長します。これらを使って12.5万年前から2万年前までのサンゴ礁の発達史を編むことができます。

 沖縄県の南大東島では、三つのドロマイトユニットがあり海面付近でドロマイト化が進行したと考えられます。南大東島では東からの卓越風の影響を受けて、小範囲でもドロマイトの性状が異なっています。

 

<感 想>

 世界の石油貯留層の4割が石灰岩であるとは知りませんでした。

 

 石灰岩を掘削したトンネルは、愛媛県松山から高知県檮原(ゆすはら)に抜ける国道460号の地芳トンネル、高知県道・天崎鍾乳洞トンネル、北陸新幹線・青海トンネル、新帝釈川発電所導水路トンネルなどがあります。いずれも空洞と湧水に悩まされています。

 

 現在、石灰岩が注目されるのが、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の文献調査対象地として南鳥島が挙げられ、国の申し入れに小笠原村長が同意したことです。

 南鳥島は、海上保安庁の調査で厚さ1,200mほどの石灰岩が上位にあり、その下は玄武岩(多分、枕状溶岩)であることが明らかにされています。

 地質的に見たら、最終処分場の候補地としては明らかに不適地です。

 

 炭酸塩岩の基本的知識が得られました。今回の講座を聴いて非常に得をしました。

 



本の紹介:氷河の世界ハンドブック2026/04/21 10:09

保谷の世界のハンドブック

 ドゥニ・メルシエ 著、吉田春美 訳、地図とデータで見る 氷河の世界ハンドブック。20262月、原書房。

 

 オールカラーで氷河について述べている本です。

 

・氷河は一つではない?

南極やグリーランドには氷床と呼ばれる氷河があります。氷帽氷河、谷氷河、圏谷氷河、懸垂氷河などがあります。

・氷河と気候

地球規模での氷河と気候との関係、地域レベルでの話、氷河の流れる速度、氷床コアの掘削、氷河に閉じ込められた気候変動の記憶、氷河と火山活動、古い時代の海水面の上昇などです。

・現在の氷河の融解

現代の氷河の融解、氷河の表面・底面・末端の水、氷河湖の決壊、氷河の融解と海面上昇、沿岸地帯の浸水リスク、氷河の融解と岩壁の崩壊、氷河域への植生進出などです。

・かつての氷河の姿

更新世の氷河、アルプス氷期の復元、古い氷河の年代決定、氷河性地殻均衡、フィヨルド、カールとU字谷などです。

・氷河と人間

グリーランド氷床の探検、南極探検、南極基地、氷河で命を落とした人たち、氷河ツーリズムなどです。

 

 参考文献は、URL付きで掲載されています。

 

 題名のとおり、きれいなカラーの地図が豊富で非常に理解しやすいです。

 著者は、ソルボンヌ大学の地理学教授で、極地の環境などが専門です。