「地盤調査・探査手法の最前線および地質情報のDXによる連携」講演会 ― 2023/07/09 10:10
2023年7月4日、午前10時30分から午後4時45分まで表記講演会が開かれました。一般財団法人災害科学研究所主催の有料講演会で、大阪大学中之島センター、佐治ホールの会場とウェブでの開催でした。
一般財団法人災害科学研究所 理事長 松井 保:はじめに−研究活動の経緯と方向性−
第 1 部:地盤調査・探査手法の最前線
有限会社ネオサイエンス 代表取締役 城森 明:ドローン空中電磁探査による地質調査
応用地質株式会社 技術本部 研究開発センター・グループリーダー櫻井 健:3次元電気探査による高精度の地盤モデル構築に向けた取り組み
ハイテック株式会社 経営企画室 室長 朴 春澤:ハイブリッドボーリング工法工法による地盤調査への最新の取り組み
株式会社安藤・間技術研究所 原子力部 川久保翔平:原位置試験による岩盤応力と変形特性の評価法」
特別講演
関西大学 環境都市工学部 都市システム工学科 准教授 北岡 貴文:テキストマイニングから読み解く調査~設計~施工への地質情報の伝達方法の提案
第 2 部:地質情報の DX による連携
大日本ダイヤコンサルタント株式会社 大阪支社 技術第2部 地質防災室 室長 東 篤義:地形判読の基本と活用事例
中央開発株式会社 技術センター 主任技師 上原 大二郎:地質 DX における点群データと”SV マップ”の活用
基礎地盤コンサルタンツ株式会社 東北支社長 永川 勝久:道路ルート検討段階における地質リスク検討の重要性
川崎地質株式会社 技術部 技術第2グループリーダー 尾嵜 聡史:山岳トンネルにおける BIM/CIM 導入事例
京都大学名誉教授 大津 宏康:今後の展望
いずれの講演も聞き応えのある内容で、非常に勉強になりました。
特に感心したのは川久保氏の研究で、ボアホールジャッキを用いて岩盤の異方性を考慮した変形係数と岩盤応力を測定するという内容です。 岩盤応力(初期応力)がどの程度あるかが判ると、トンネルあるいは地下空洞で岩盤が予想しない挙動をする原因を究明する大きな手がかりになります。
文 献
川久保昌平・村上祐治・長澤寛和・谷 和夫、2000、ボアホールジャッキ試験による新たな岩盤初期応力の評価理論の提案。土木学会論文集C(地圏工学)、Vol.76, No3, 285-294。
日本学術会議学術フォーラム「関東大震災100年と防災減災科学」 ― 2023/07/09 13:53
![関東地震100年 関東地震100年](http://geocivil.asablo.jp/blog/img/2023/07/09/686238.jpg)
2023年7月8日(土)、午前10時から午後6時まで表記講演会が日本学術会議・会議室の会場とオンラインで開かれました。今年は、1923(大正12)年9月1日に大正関東地震が発生してから100年になります。
フォーラムはYouTubeで全編公開されているほか、講演要旨は防災学術連携体のウェブサイトからダウンロードできます。
( https://janet-dr.com>https://janet-dr.com/060_event/20230708.html )
ごくごく一部を記します。
武村氏は基調講演で、明治維新、関東大震災、太平洋戦争、高度成長、東京オリンピックで東京の街がどのように変わってきたのかを述べ、市民に平等に利益をもたらす街づくりが大事だと述べました。
横田氏によると大正関東地震は1703年の元禄関東地震の破壊域の西半分だけが破壊した地震で、東半分は割れ残っています。
藤野氏は首都高速道路では付属物が倒壊するなどの被害が発生する可能性があると指摘しました。
安田氏はJR東海道本線の根府川駅で列車が土石流に巻き込まれた事例を紹介しました。根府川駅の南にある白糸川の上流で崩壊が発生し、土砂が川に流れ込んで土石流となって流下し、海岸沿いを走っていた列車を巻き込んだのです。
以下、省略しますのでYouTubeをご覧下さい。
プログラムは以下のとおりです。YouTubeの録画は8時間40分ほどあります。プログラムの頭の時刻を目安に興味ある部分を見るのが良いと思います。
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司会: 田村和夫(日本学術会議連携会員、防災学術連携体事務局長)
永野正行(日本学術会議連携会員、東京理科大学)
10:00 開会挨拶 米田雅子(日本学術会議会員、防災減災学術連携委員長)
10:03 「関東大震災100年の取組みについて」平田直(日本学術会議連携会員、関東大震災百年行事総括WG))
10:06 挨拶 大西 隆(第22・23期日本学術会議会長)
10:10 来賓挨拶 内閣府政策統括官(防災担当)高橋謙司
10:15 基調講演「1923年関東大震災では何が起きたのか」武村雅之(名古屋大学)
10:40-12:10【第1セッション】 PDF
「今、関東で大地震が起こったら〜過去100年間の社会変容と学術的発展からの展望」
主旨説明:目黒公郎(防災学術連携体副代表幹事、東京大学)
「地震動特性」横田崇(愛知工業大学)
「施設被害(建築系)」楠浩一(東京大学)
「施設被害(土木系)」藤野陽三(東京大学)
「土砂災害」安田進(東京電機大学)
パネルディスカッション
12:10-12:50 休憩(40分間)
12:50-14:20【第2セッション】 PDF
「関東大震災がその後の都市づくりにどのような影響を与えたか」
主旨説明:牧紀男(京都大学)
「都市計画の視点から」中林一樹(東京都立大学)
「都市防火の視点から」関澤愛(東京理科大学)
「生活者の視点から」立木茂雄(同志社大学)
「被災社会の視点から」大矢根淳(専修大学)
パネルディスカッション
まとめ:牧紀男
14:20-14:30 休 憩(10分間)
14:30-16:00【第3セッション】 PDF
「関東大震災から日本の災害医療・救護は何を学び、100年でどのように発展したか」
コーディネータ:大友康裕(東京医科歯科大学)、小井土雄一(DMAT)
「関東大震災における救護体制とその問題点」鈴木淳(東京大学)
「関東大震災の教訓〜災害医療の観点から」眞瀬智彦(岩手医科大学)
「関東大震災における救護活動とそれから」酒井明子(福井大学)
「関東大震災以降の災害医療の発展」近藤久禎(DMAT)
パネルディスカッション
16:00-16:10 休 憩(10分間)
16:10-17:40【第4セッション】 PDF
「関東大震災以降、どのように情報通信技術が開発され、社会的な課題が残ったのか」
主旨説明: 山本佳世子(防災学術連携体幹事、電気通信大学)
「災害対策としてのリモートセンシング技術の利活用」作野裕司(広島大学)
「災害対応におけるGISの利活用」大佛俊泰(東京工業大学)
「災害対応ロボティクスの現状と未来」松野文俊(大阪工業大学)
「災害発生時やその後における無人航空機の利活用」早川裕弌(北海道大学)
「効果的な災害対応を実現するための災害情報の定義」沼田宗純(東京大学)
「過去の教訓をふまえた災害対策・対応における情報科学技術の利活用と課題」三浦伸也(防災科学技術研究所)
まとめ:山本佳世子
17:40-17:52【各セッションのまとめ】
【第1セッション】目黒公郎
【第2セッション】牧紀男
【第3セッション】大友康裕
【第4セッション】山本佳世子
17:52-17:57【総括コメント】森本章倫(防災学術連携体代表幹事、早稲田大学)
17:57 閉会挨拶 和田章(防災学術連携体代表理事、東京工業大学名誉教授)
18:00 【終了】
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日本の一流の研究者が約20分という発表時間を守り、多岐にわたる話題を提供するという防災学術連携体ならではの興味深い講演会でした。
関東地震、南海トラフ地震は、将来、間違いなく日本の主要都市を襲います。多くの人がこのフォーラムを視聴し、災害に備える心構えを持って欲しいと思いました。