江ノ島の地形と地質(1) ― 2024/06/11 13:54
2024年6月4日(火)、江ノ島の地形と地質を見に行ってきました。休日ではありませんが、外国人を含む人たちで大賑わいでした。
今回は小田急江ノ島線で片瀬江ノ島駅へ行き、歩き始めました。
国道134号の片瀬橋から江の島全体を見ることができます。ここからは、丹沢や箱根の山々が見えるほか、富士山も見ることができるはずです。この日は、あいにく雲が多く富士山は見ることができませんでした。
相模湾の茅ヶ崎沖には姥島(うばじま:烏帽子岩)があります。この島の地質は三浦層群下部の地層(約10-8Ma)とされています(森・小川、2021)。
江の島は、境川の河口にできた砂州で繋がっていて、昔は干潮時には歩いて江の島へ渡ることができました。現在は、江ノ島大橋の歩道橋を歩いて渡ることができます。
江の島の地形は、ヨットハーバーがある東の低平地と神社や展望灯台のある西の高台とに分かれます。
東の低平地は岩屋面と呼ばれる波食棚と聖天島(しょうてんじま)のような小島からなっています。この岩屋面は鎌倉時代以前の地震によって隆起したと考えられています。
西の高台は最高点が60.2mで、北西―南東方向の「山二つ断層」でくびれています。この高台の南海岸は高さ50m程の断崖となっていて、崖の下には広い波食棚が広がっています。
江の島の地質は新しい順に、関東ローム層、砂礫で構成される段丘堆積物、凝灰質砂岩・シルト岩で構成される三浦層群、細礫混じり砂岩・シルト岩から構成される葉山層群です。

写真1 国道134号の片瀬橋から見た江の島
この正面の、こんもりした地形は葉山層群がつくる地形で、左手(東側)に三浦層群がつくる平坦な地形があります。中央の塔は江の島展望灯台で、その右のやや低くなっている尾根との間に「山二つ断層」が通っています。
写真2 ヨットハーバー奥の防波堤から見た江の島
江ノ島大橋を渡って広い道路をまっすぐ行くと、聖天島の脇を通って広い駐車場に着きます。その南側の防波堤の上から江の島の全景を見ることができます。
左の崖はすべて葉山層群でシルト質泥岩と砂岩・細粒礫岩で構成されています。
写真3 葉山層群を覆う関東ローム層
写真2の左上に見える茶色の露頭が関東ローム層です。三層の淡黄白色の層が見えます。上から箱根三色旗軽石(Hk-SPテフラ)、東京軽石(Hk-TPテフラ:約6.5万年前)、三浦軽石(Hk-MPテフラ)と想定します。
写真4 葉山層群がつくる波食棚
葉山層群は細粒砂岩〜シルト岩が主体で比較的均質であるため、平滑な波食棚が形成されています。
写真5 葉山層群
砂質シルト岩と砂岩〜細礫岩です。下のシルトを削って礫が流下したものと考えられます。地層の連続性はきめて悪く断層でブロック化しています。この面は水平面です。
写真6 葉山層群の大露頭
ヨットハーバー奥から海岸に下りると南海岸の波食棚を歩き地層を観察できます。堆積面も断層も連続性がありません。成層構造をとる聖天島の三浦層群と全く違う岩相を示します。
写真7 山二つ断層
南の海岸から見た山二つ断層です。断層面をはっきりと識別できませんでした。この写真の左側の崖面の高角右傾斜の線状構造が断層の可能性があります。
<参考文献>
江藤哲人・矢崎清貫・卜部厚志・磯部一洋、1998、地域地質研究報告 5万分の1地質図幅「横須賀」同説明書。地質調査所。
森 愼一・小川勇二郎、2021、相模湾北縁部,姥島群島の三浦層群の層序と構造─火砕岩鍵層の追跡による複合デュープレックス構造と断層伝播褶曲─ 。地学雑誌、130(1)、1-26。
七山 太・重野聖之・石井正之、2024、湘南海岸の景勝地 “江の島” で学ぶ相模トラフ変動帯の地形・地質と自然災害−“江の島”ジオ散歩のすすめ−。JGS地質ニュース、13、101-117。
(続く)
掘削技術専門学校 ― 2024/06/14 14:00

ジオルジュの2024年前期号
日本地質学会が発行しているフリーペーパー「ジオルジュ」の2024年前期号(2024年5月10日発行)に、北海道白糠町大楽毛にある学校法人ジオパワー学園 掘削技術専門学校の記事が載っています(正木裕香氏:掘削技術専門学校のホームページは、
https://www.geopower-academy.ac.jp)。
背後に標高30mほどの丘を背負った低地に校舎やボーリング櫓などがあり、海側は道路を隔てて工業団地になっています。
学校は、4月入学で翌年3月に卒業する1年制です。コースは、ロータリー掘削コース、スピンドル式掘削コース、掘削管理者養成コースの三つがあります。
教員の方々、設備とも一級で、非常に濃密な学校生活を過ごすことができそうです。
この号には、「急峻な斜面の暮らしを守る地すべり対策」(阪口有人氏)という記事も載っています。
ジオルジュは、ジュンク堂書店の札幌店、仙台TR店、池袋本店、名古屋栄店、梅田店、福岡店と丸善の博多店に置いています。
また、日本地質学会のジオストアで、1部250円で販売しています。
(日本地質学会HP:http://geosociety.jp>出版物>ジオルジュ>ジオストア)
生田緑地 ― 2024/06/15 18:35
生田(いくた)緑地は、川崎市多摩区にあり、小田急小田原線・向ヶ丘遊園駅南口から歩いて15分ほどで東口ビジターセンターにたどり着きます。
標高84mの枡形山(ますがた・やま)を中心とした緑地で、川崎市立 日本民家園、かわさき宙(そら)と綠の科学館、川崎市 岡本太郎美術館などが緑地内にあります。
今回は、東口ビジターセンターの右手の遊歩道を上りながら地質露頭を見ました。
この付近の地質は、下から内湾性の塊状無層理の青灰色シルト岩からなる飯沼層(上総層群:前期更新世)、礫層・砂層・シルト層からなるオシ沼砂礫層(相模層群:中〜後期更新世)、多摩ローム層、枡形山の北斜面に分布する武蔵野ローム層です。
写真1 枡形山への登り口
東口ビジターセンターに向かって右側にある枡形山への道の入口です。この写真の右後ろにビジターセンターがあります。「生田緑地MAP」をもらうと道に迷わず済みます。
写真2 地質の説明板
この道を上っていくと見ることができる地質が説明されています。
写真3 飯沼層のシルト岩
説明板から少し登ったところの露頭です。層理面らしきものが認められますが、塊状で均質です。一応、固結しています。
写真4 写真3の部分
層理面らしきものがありますが、堆積面かどうか判断できません。岩相としては細粒砂岩です。
写真5 飯沼層中の砂脈
シルト質砂岩中に見られるほぼ鉛直の細粒砂の脈です。幅は35cmで上が幅広くなっています。走向・傾斜は、N30°E, 85°SEで、この露頭で同じ方向のより細い脈が少なくともあと2条見られます。
写真6 写真5の部分
露頭を削っていないので詳細は分かりませんが、形態と破砕されていないことから見ると液状化による砂脈と考えられます。
写
真7 オシ沼砂礫層
半固結の地層で、この露頭の下位はシルト質砂岩で上位は砂岩・礫岩の互層です。部分的に腐植土らしき層が挟まっています。礫は完全に円磨された円礫です。吉澤・高橋(2011)によると礫種はチャート・砂岩・閃緑岩とされています。
写真8 関東ローム層
この付近では関東ローム層の良好な露頭はありません。
写真9 枡形山頂上広場と展望台
枡形山には源頼朝の重臣・稲毛三郎重成の居城がありました。さらに遡ると縄文時代のイノシシの落とし穴が発見されています。眺めも良く東京スカイツリーが見えます。
<参考文献>
吉澤健吾・高橋 修、2011、都会で見られる露頭を題材にした環境教育−神奈川県生田丘陵に分布する更新統を例に−。東京学芸大学紀要 自然系学系、63、41-52。
江の島の地形と地質(2) ― 2024/06/18 18:05
江の島の南海岸の波食棚を伝っていくと、グーグルアースで長磯と記された突き出た波食棚に至ります。ここから、江の島岩屋の第二岩屋入口付近の桟道が見えます。
このもう一つ先の波食棚まで行けますが、その先は水深が深くて渡ることができません。
波食棚の上を戻り、途中から細道を辿って八坂神社の前に出て、山二つ断層を横切って稚児ヶ淵から岩屋を見学しました。
帰りは、庚申塔の所を左に折れ、山二つの谷に沿った道を下りました。
写真7 中津宮への道の途中からヨットハーバー
急坂の階段を上る途中でのヨットハーバーと葉山方面の風景です。
写真8 中津宮への参道の絵
昔の江の島を描いた絵が参道沿いに立てられています。これは歌川広重の絵で、砂州を大勢の人が渡っている様子を描いています。

写真9 歌川国芳の江の島
江の島の南海岸を描いた絵です。左の大きな海食洞が岩屋です。参拝する人たちや海に入っている人たちが描かれています。一番左の岩棚は稚児ヶ淵(児ヶ淵)です。
写真10 山二つへ下りていく途中の関東ローム層
解説版には武蔵野ローム層であると書かれています。平安時代に書かれた江の島縁起には大地震や空から石が降ってきた話があるそうです。
写真11 パミス層
細礫サイズのパミス(軽石)が挟まれています。
写真12 山二つ断層
稚児ヶ淵へ向かう御岩屋道通りから見た山二つ断層です。植生の付いている部分は関東ローム層と推定されます。
写真13 江の島の西端
葉山層群の波食棚と急崖が続きます。ここから江の島弁天橋の途中にあるべんてん丸乗り場まで遊覧船が出ています。
写真14 葉山層群
江の島岩屋の桟道(参道)付近の葉山層群です。塊状で層理面ははっきりしません。
写真15 江の島弁天橋
写真16 三浦層群
朱の鳥居の少し西の山二つへ向かう参道で見られる露頭で、岩相から判断すると三浦層群の可能性があります。
2024年テイネトレイル ― 2024/06/19 21:02
2024年6月16日(日)に行われたテイネトレイル2024のミドルに出ました。
スーパーロング(約50km)、ロング(約34km)は、午前7時と8時にスタートしました。ところが、ミドル(約16km)のスタート時間に雷雲がやってきて、スタートは30分延期になり午前10時となりました。
雨がポツポツ降ったりしましたが、何とかもっていました。ところが、私がゴールする30分前くらいから土砂降りになり、全身びしょ濡れでようやくゴールにたどり着きました。当然、雨具は持っていましたが、もう少しだし雨具を出す気力もなく走り続けました。
それなりに練習はしたつもりでしたが、やはり頂上付近で折り返してからの長い下りが足に来て、11km過ぎからの上りを終わった付近から足が攣り難儀しました。
写真1 スタート地点のオリンピアスキー場
ここからスキーの初心者コースを上ってハイランドまで行きます。スタート地点の標高は約420mです。正面左の山はネオパラ山と呼ばれていて標高は約840mです。まだ、雲に隠れてはいません。
写真2 スキーのレインボーコース
約1.5kmのスキーコースを上ってハイランドまで行きます。正面はネオパラ山です。
写真3 女子大回転コース
1972年の札幌オリンピックの女子大回転コースです。標高670mの林道から取り付き、850mまで急登が続きます。
写真4 標高770付近
急登の途中からの眺めです。観覧車のあるオリンピアスキー場の向こうに石狩湾が広がります。対岸の山は雲に隠れています。
写真5 最後のひと登り
標高980mの折り返しの最高点が見えてきました。標高930m付近です。
写真6 下りの始まり
ここから長い下りが始まります。遠く右手の三角の山は藻岩山です。スキー場としてはシティビュークルーズコースです。途中から左に折れて作業道を下っていきます。
写真7 林道
エイドステーションのあるパラダイスヒュッテ付近を過ぎて、登山で滝ノ沢コースとされている林道に入ります。標高550mほどで、平らな道が続き走りやすいところです。
写真8 林道
滝ノ沢の上流の沢を横切り北に向かいます。この先、沢を時々横切りながら下っていきます。
写真9 ゴールが見えた
14.5km付近でゴールが見えます。この時は、まだ雨は降っていませんでした。
写真10 土砂降り
聖火台からゴールに下りて行くところでは土砂降りとなり、芝生の斜面には水が溜まっていました。