本の紹介:トルコ ― 2024/01/10 20:05

内藤正典、トルコ 建国100年の自画像。岩波新書、2023年8月。
< こういうトルコの「表の顔」を知らずに、西欧世界のフィルターを通してトルコを見るならば、いくらでも「政権の思惑」や「裏の顔」を描くことは可能だろう。だが、それはいわば他者の描く肖像画である。本書の目的は、そこにはない。トルコという国が、どのようにして「自画像」を描こうとしてきたのか、それを描くうえで、どのような困難に直面したのかを明らかにしていくことである。>
(本書 はじめに viiiページ)
ここで言っている「こういうトルコの表の顔」というのは、近代国家トルコになる以前からトルコ人とその社会に備わっていたイスラム的精神のことです。
1923年10月にトルコ共和国として独立宣言をして以来、トルコが歩んできた道を述べた本です。特に、エルドアン政権が成立する過程とその後の世俗主義をめぐる闘いが述べられています。
現在のトルコは、世俗主義をとっています。国が世俗主義をとると言うことは「政治や社会において、宗教的な考え方や影響を排除し、宗教と国家を分離することを指します」(Microsoft Bingによる)。
しかし、政治や社会の至る所にイスラムの考え方が浸透しているという現実があります。
< 二〇〇九年のダヴォス会議では、イスラエルのシモン・ペレス大統領に向かって「あなた方は人殺しの仕方をよくご存じだ。あなた方がガザの浜辺にいた子どもをどうやって殺したか、どうやって撃ったか、私はよく知っている」と言い放った。弱者への不正を許さない姿勢は、イスラムの倫理から来るものである。>
(本書 はじめに ivページ:ダヴォス会議でのトルコのエルドアン大統領の発言)
<感 想>
オスマントルコからトルコ共和国に代わり100年が経った時点で、トルコが何を目指しているのかはある程度理解できた気がしますが、まだまだ、よく分からないことがあります。
EU加盟の交渉を粘り強く続けていること、憲法裁判所の強さ、軍の態度などなどです。そして、市民の生活がどの程度向上しているのかも知りたいところです。
ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ地区でのジェノサイドなど、武力による現状変更が行われている地域に囲まれたトルコが、それぞれの問題にどう関わっていくのか興味深いです。
東北大学災害科学国際研究所 令和 6 年能登半島地震に関する速報会 ― 2024/01/16 11:21
表記講演会が2024年1月9日午後1時から午後4時頃まで、同研究所の多目的ホールとzoomで行われました。zoomで視聴しました。
2024年1月16日現在、同研究所のホームページに速報会の発表資料および速報会の討論を含めたYouTubeでの映像が公開されています。
< https://irides.tohoku.ac.jp >
プログラムを以下に示します。
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1.地震メカニズム解説と現地報告
・遠田 晋次:地震発生場と余震活動、長期予測の問題点
・アドリアノ ブルーノ、マス エリック、永田 彰平、武田 百合子、越村 俊一:津波災害の即時解析と現地調査について
・マス エリック、永田 彰平、武田 百合子、アドリアノ ブルーノ、越村 俊一:発生時の人流解析
・柴山 明寛、榎田 竜太、森口 周二、呉 修一(富山県立大学):穴水町 と七尾市の現地調査結果(建物・地盤関係)
・江川 新一、佐々木 宏之:医療活動の実際
2.学際的情報提供及び連携・実践の報告
〇理学・工学
・今村 文彦、サッパシー アナワット:今次津波の特性と被害状況
・福島 洋:SAR画像解析による地盤変動の特徴
・大野 晋:地震動特性
〇医学
・江川 新一、佐々木 宏之被災地の医療ニーズと災害医療対応
・栗山 進一インクルーシブ防災と防災コミュニケーション
〇人文社会科学
・ゲルスタ ユリア、サッパシー アナワット、ヌイン デビッド、北村 美 和子、モリス F ジョン:災害時の多様なニーズ
・齋藤 玲、小田 隆史(東京大学)、桜井 愛子、福島 洋、佐藤 健:令 和6年能登半島地震における即応的・継続的学校教育支援:学校教育 関連情報の集約と発信
・蝦名 裕一、川内 淳史:文化遺産防災マップから推定する文化遺産の 被害状況
〇防災実践と連携
・小野 裕一:国内外との連携
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司会は東北大学災害国際研究所長の栗山進一氏でした。
能登半島地震の犠牲者への黙とうの後、今回の参加者が1,860人であること、報道関係者が150人参加していること、視覚・聴覚障害者が参加していることが述べられました。
趣旨説明では、能登半島地震で何が起きたのか、今後どうすればよいのかを考えるのがこの速報会の趣旨であると説明しました。
いくつかの発表を紹介します。
遠田晋次氏(東北大学災害国際研究所):地震発生場と余震活動,長期予測の問題点
今回の能登半島地震は、活断層型の大地震です。兵庫県南部地震のモーメントマグニチュード(Mw)を1とすると、能登半島地震は9になります。2016年4月14日の熊本地震は2,1891年10月28日の濃尾地震は6、2023年2月6日のトルコ地震は非常に大きくて21でした。
能登半島の地形横断を見ると北岸の最高点が標高550mで、南へ向かって次第に低くなっています。半島が傾動しているためです。
地質は、約1,000万年前の火山岩類が基盤となっていて、断層や褶曲が多いのが特徴です。
応力場は、数百万年前から圧縮となっていて、半島の北の海底には西南西―東北東に延びる半島に並行した活断層が分布しています。この活断層によって半島は1mm/年の平均速度で隆起しています。
今回動いた活断層は、南東に約50°で傾斜している逆断層で最大4m隆起しています。平均隆起量から推定するとこれだけ隆起するには3~4千年かかります。
能登半島では2020年11月30日以降、それまでの400倍の地震が起きていました。活断層沿いに熱水が上昇してきたために発生した地震で、地盤の上昇も確認されています。
今回の地震の余震は、1993年7月14日の北海道南西沖地震と同程度の頻度で起きています。余震域が広く、1983年5月26日の日本海中部地震と北海道南西沖地震を併せたほどの規模です。周辺活断層への影響としては富山湾の活断層群への影響は起きにくいと考えています。
国土交通省は2014年に「日本海における大規模地震に関する検討会 報告書」を発表しました。日本海東縁は活断層帯で、特に稚内沖から能登半島付近までは海底活断層の密集域です。この中でF42とF43が能登半島の北に分布する活断層です。この活断層帯では、津波と強震動が発生します。これらの沿岸地域の活断層を考慮に入れた津波、強震動の評価が必要です。
越村俊一氏ほか(東北大学災害国際研究所ほか):令和6年能登半島地震津波災害の即時解析と現地調査調査について
今回の地震では大津波警報が出されました。国土地理院の津波発生断層モデルでは137kmの断層を想定しています。震央は能登半島先端の日本海側でした。富山湾に面した珠洲市では半島を回り込んできた津波で、津波高は3mに達しました。七尾市では津波高は小さく、震央の東南東95kmの上越市で2.5mの津波を観測しました。津波波形を見ると初動が引き波の場合と押し波の場合があります。富山で観測された津波波形の初動は、大きな引き波となっています。これは断層破壊モデルでは説明できません。
2024年1月4日に津波の現地調査をしました。珠洲市の飯田港では2.5mの津波高で、300m遡っていました。その南の見附島、鵜飼漁港では津波高3.3mで遡上距離は150mでした。能登半島先端の東の海底には、飯田海脚と呼ばれる浅い海が広がっています。この存在が津波の波高・遡上高などに影響していると考えられます。
今村文彦氏・アナワット・サッパシー氏(東北大学災害国際研究所):今次津波の特性と被害状況
2014年の国交省報告書のF43断層の東側は急激に海底谷が深くなっていて、そこで津波が発生し飯田階脚の浅い海を通って珠洲市方面へ向かった波と能登半島を回り込んで西側に向かった波があります。波源が陸に近いので津波到達時間が短かったです。反射津波が発生し波高が大きくなりました。ロシア側にも30㎝の津波が到達しています。
津波波形を見ると津波到達前に大きな波が来ていて、富山湾で地震によって海底地すべりが発生した可能性があります。津波高は3~4mですが、船や養殖筏に被害が出ました。
南海トラフ地震でも同様の被害が発生します。
福島 洋氏ほか(東北大学災害国際研究所ほか):令和6年能登半島地震SAR画像解析による地盤変動の特徴 ASLOS-2(だいち2号)衛星データを用いた解析
InSAR解析は精度があります。ピクセルオフセット解析は大変動に対応できます。
半島北岸に大きな変動が認められます。活断層の動きそのものと浅い地震であったことから大きな変動が生じたと考えられます。半島屈曲部日本海側の猿山岬付近で4.9mの隆起がありました。
大野 晋氏(東北大学災害国際研究所):地震動特性
今回の地震では、沖積低地で計測震度6.2~6.6を記録しました。周期は1秒付近が卓越しています。最大速度は穴水町で150cm/secを超えています。最大加速度は志賀町で2,500cm/sec2を超えています。
当初想定よりも大きな被害が発生しています。
<感 想>
今回、紹介しませんでしたが速報会のプログラムを見てわかるように、理工学だけでなく医学、人文社会科学、防災実践の講演もありました。この研究所自体が6部門、2センターを持ち、災害に対して総合的に取り組んでいます。
今回は速報会なので今後詳細な調査・解析によって色々な教訓が引き出されると思います。
今回の地震は「地震大国」日本に、また新たな課題が突きつけられたように思います。
2024年1月14日の朝日新聞デジタルで、石川県の災害危機管理アドバイザーである神戸大学名誉教授の室崎益輝氏が、やるせなさ、自戒も込めて「初動に人災の要素もある」と述べていることは肝に銘ずるべきと思います。
歩くスキー ― 2024/01/19 15:38
20224年1月も上旬を過ぎ、正月のお酒も抜けてきたので1月10日、吹雪の中をモエレ沼公園で歩くスキーをしてきました。
1月12日は天気が良かったので再びモエレ沼公園に行きました。
その後、雪かきが続いたので歩くスキーはやめていましたが、18日に滝野すずらん丘陵公園で歩いてきました。大雪の影響と思いますが、3kmコースと6kmコースだけが整備されていました。歩くスキーのトラックが付いていないので少々歩きにくかったです。
<1月10日のモエレ沼公園>
ホワイトアウトと言うほどではないにしろ、先は見えない、コースは見えない、風で押し戻されそうになる中、1.4km歩いて逃げ帰ってきました。
写真1 モエレ山
左のカラマツの向こうにモエレ山があり、まだ3学期が始まっていない小学生が元気に遊んでいました。
写真2 プレイマウンテン
正面にプライマウンテンがあるはずですが、全く見えません。コースも雪で埋まっていて全く分かりません。
<1月12日のモエレ沼公園>
曇りでしたが、風は穏やかで気持ちよく滑ることができました。
写真3 モエレ山
写真4 プレイマウンテン
写真5 モエレ山とガラスのピラミッド
<1月18日の滝野すずらん丘陵公園>
風はなく穏やかな天気でした。雪が降った後なのでスキーはよく滑りました。
図1 6m+3kmのコース
北の青と赤の境付近がスタートゴールです。東口駐車場のすぐそばです。
南東に延びる青い線が6kmコースで3kmコースは西の端付近で折り返します。
帰りは多少の登りがありますが、ほぼ下っています。
写真6 スタート、ゴール地点の広場
気持ちの良い天気です。
写真7 最初の長い上り
最初は長い上りが続きます。この日はスキーがよく滑るのであまり苦になりません。
写真8 帰り道
気持ちよく滑れます。さすがにちょっとバテ気味です。
等々力渓谷 ― 2024/01/23 12:06
等々力渓谷は多摩川の北岸にある渓谷で、深さは約20mあります。この渓谷をつくっている川は、谷沢川(やざわ・がわ)で、似たような川は丸子川、仙川、野川などがあります。
「谷沢川は、世田谷区桜岡付近に源を発し、上用賀、等々力など世田谷区南東部を南へ流下し、多摩川左岸に合流する一級河川です」(東京都建設局)。
渓谷と呼ばれるほどの深い谷が残っているのは等々力渓谷だけのようで、奇跡的な地形です。
地質的には、東急大井町線・等々力駅の南西にある「成城石井」のすぐ裏の橋(通称ゴルフ橋)付近で、上総層群の露頭を見ることができます。等々力不動尊付近では、上から関東ローム層(東京軽石:Hk-TPテフラ;約6.5万年前を含む)、武蔵野礫層、東京層が東の崖面で観察できるようです。「ようです」というのは、昔は見えていたけど今は見えない地層があるからです。
図1 等々力渓谷(地理院地図に加筆)
綠の範囲が、ほぼ自然状態で残っている等々力渓谷です。谷沢川が多摩川と合流点する地点には水門があります。上流の中町から先は完全に改修された直線の流路となっています。
渓谷沿いの遊歩道は、等々力駅のすぐ南、渓谷が直角に曲がる付近から下流に付けられています。2023年12月27日の時点では、不動尊から上流は通行止めになっています。
図2 不動尊付近の断面図(地理院地図により作製)
図1の断面線の横断図です。渓谷の底からの崖の高さは約20mあり、渓谷にふさわしい地形です。
今回は、東急田園都市線の二子玉川駅で降りて、多摩川の河川敷を下流に歩いて渓谷と多摩川の合流点まで行き、渓谷の遊歩道を遡り、不動尊から右岸(西側)の台地に上がって渓谷を時々見下ろしながら、環八通りの歩道橋を渡って左岸に移り、谷沢川が直線になっている中町まで歩きました。ゆっくり見ながら歩いて3時間ほどでした。
写真1 多摩川河川敷から見た東急田園都市線・二子玉川駅
右手、遊歩道の先の白い建物が二子玉川駅です。二子玉川駅から等々力渓谷の入口までは約2.5kmあります。
写真2 等々力渓谷(谷沢川)と多摩川の合流点
多摩川の河川敷から見た谷沢川の出口です。水門が設けられていて、少し上流まで矢板で護岸された流路となっています。この日は暖かかったため、上半身裸で魚を捕っている子供たちがいました。
写真3 都道312号を横断する丸子川
この道をまっすぐ行って台地に上に出ると、左手に等々力不動尊があります。手前の橋は谷沢川と交差して東に流れる丸子川を渡る玉根橋です。この橋の手前を左に行くと谷沢川に行けます。
写真4 谷沢川分水路工事の看板
上流の国道246号脇の玉川台広場から谷沢川の河口まで、約3.2kmの水路トンネル工事を行っています。
写真5 谷沢川の下流部
丸子川と多摩川の交差点付近(無名1号橋)から谷沢川の上流を見たものです。矢板で完全に護岸されていて川幅よりも深さが大きい感じです。正面の森のあたりが武蔵野台地の縁になります。
写真6 等々力渓谷の案内板
等々力渓谷の下流入口右岸の遊歩道脇にある案内板です。不動尊から上流は通行止めとなっているので、不動尊まで登ったあと渓谷に下りて右岸(西側)の日本庭園を通って環状8号線の玉沢橋へ行きました。
一番右(北)のゴルフ橋が遊歩道の最上流です。
写真7 不動尊手前の左岸(東)に露出するローム層
表面は風化して崩れやすくなっています。私の記憶では、冬には数十cmの霜柱ができることがあります。
写真8 等々力不動尊下の湧水群
この露頭では、上部の関東ローム層、湧水している武蔵野礫層と東京層(下末吉層)の境界が分かります。ローム層の下底付近にHK-TPテフラがあるはずです。上総層群は、ここでは見えていません。
写真9 環八通り(都道311号)の玉沢橋
中央の左右に森がある所が等々力渓谷です。道路の標高は約33mで、渓谷の底は約17mです。歩道橋の上から東を見たものです。
写真10 玉沢橋から遊歩道を見下ろす
通行止めになっている遊歩道には落ち葉が積もっています。5万分の1地質図福「東京南西部」では環八通りから等々力駅付近まで上総層群(高津互層)が渓谷の両岸に露出しています。
写真11 等々力渓谷遊歩道の最上流の案内板
等々力駅のすぐ南にあるゴルフ橋の左岸にある案内板です。ここが遊歩道の最上流で谷底までの深さは5〜8mです。ゴルフ橋はスーパーマーケット「成城石井」のすぐ南の東西方向の道路に架かる橋です。
写真12 ゴルフ橋から下流を見る
遊歩道は左岸(東側)に付いています。右岸の水の上の黒灰色の平坦面とシュロの木の下の崖は、上総層群と思われます。
写真13 ゴルフ橋の上流を見る「
ここからは、がっちりと護岸が施工されています。カモの絶好の休み場となっています。
写真14 等々力渓谷に沿って走る東急大井町線
等々力駅のすぐ南西でほぼ90°曲がり、この付近では西から東へと流下します。両岸は護岸されて住宅が「渓谷」まで迫っています。
写真15 直線化された谷沢川
この先は直線化された開水路になります。グーグルアースでは首都高速3号渋谷線の脇の玉川台広場(玉川台一丁目)まで追うことができます。5万分の1地質図福「東京南西部」では、さらに北の桜丘4丁目付近まで河川流路を描いています。
<参考文献>
岡 重文・菊地隆男・桂島 茂、1984、地域地質研究報告 5万分の1地質図幅「東京南西部」。
七山太・重野清之・石井正之、2023、武蔵野台地(山の手)の地質断面とそこから読み解ける地形発達史―世田谷区、等々力渓谷でのジオ散歩のススメ—。GSJ地質ニュース、Vol.12(NO.12)、336-349。
( GSJトップページ> 出版物とサービス( https://www.gsj.jp/publications/gcn/index.html ) > GSJ 地質ニュース> GSJ 地質ニュース Vol.12 No.12> p336-349 )
防災学術連携体 緊急報告会「令和6年能登半島地震の概要とメカニズム」 ― 2024/01/24 17:06
2024年1月19日(金)、午後5時半から同7時まで、表記報告会がzoomとYouTubeで行われました。
この緊急報告会の様子は、防災学術連携体のウェブサイトで質疑応答を含めてYouTubeで視聴できます。
< https://janet-dr.com/index.html >
プログラムは以下のとおりです。
1)令和6年(2024年)能登半島地震の概要:平田 直氏(防災学術連携体幹事 東京大学名誉教授)
2)地殻変動データ等からみた令和6年能登半島地震と発生メカニズム:西村卓也氏 (京都大学 防災研究所地震災害研究センター教授)
3)質疑応答 司会:米田雅子氏(防災学術連携体 代表幹事)
司会は松本正行・東京工業大学教授でした。
以下に講演の概要を記しますが、正確なところはYouTubeを見て下さい。
<平田 直氏>
今回の地震は、2024年1月1日16時10分に発生、マグニチュード7.6、震源は珠洲市で深さは16km、南東側の地盤がせり上がりました。志賀町で最大震度7を記録し、300kmの範囲で強い揺れがありました。同日の16時6分に「前震」と思われる地震が発生しています。
長周期地震動*は最大級の4でした。
------------------------------------------------------------------------------------------*長周期地震動:地震で発生する約2 - 20秒の長い周期で揺れる地震動のことである。(ウィキペディアによる)
------------------------------------------------------------------------------------------
今回の地震では、広い領域で多数の地震が発生しました。1月1日に発生した余震の範囲は長さ150kmに及んでいます。能登半島では、2020年12月から地震が活発になっています。その前の2007年3月25日にはマグニチュード6.9の地震が発生しています。
津波の高さが3m以上になると予想して、大津波警報が出されました。輪島港の潮位は1,2m上昇しました。地震調査委員会の調査では、赤崎漁港で4.2mの津波痕跡を確認しています。
地殻変動は、輪島で西に1.2m移動し1.0m以上隆起しています。国土地理院は4mの隆起を確認しています。
空中写真解析によると半島の西から北にかけての海岸が陸化しています。鹿磯(かいそ)漁港などです。
震源断層モデルは、64km+76kmの長さの断層が4mずれたとされています。遠地実体波のデータから、40秒で震源断層が形成されたと推定されます。北西傾斜の断層による地震もあった可能性があります。
被害状況は、死者は石川県が多いですが、建物被害は新潟県や富山県でも発生しています。
今後、震度5強以上の地震が起こる可能性があります。
<西村卓也氏>
能登半島を含む日本海東縁は、日本海拡大時の変動帯です。今回の地震は、半島の北の海底にある活断層が原因です。2020年12月1日から12月30日にかけて能登半島の先端付近で、時計回りに震源が移動する地震が発生しました。このような本震がなくて地震が長期間続く地震を群発地震と言います。原因は、1)応力が攪乱された、2)流体が上昇してきて流体圧が増しスロースリップ地震が発生した、3)地震を伴わないすべりが起きていた、などが考えられます。
能登半島には20-30km間隔で観測点があります。さらにソフトバンクや大学の観測点が利用できます。能登半島の先端付近の珠洲市の隆起が大きかったです。2022年6月にはマグニチュード5.4の地震、その後マグニチュード6.5の地震が発生し、変動が急速に大きくなりました。
地盤変動の原因としては、1)球状の圧力源の存在、2)開口クラックの発生、3)逆断層すべり、の三つが考えられます。震源断層は南東傾斜で、Stage1でクラックが開口し断層帯に流体が浸入、Stage2で断層すべりが卓越し、Stage3-4で浅部での地震が発生したと考えます。地震を起こさないで地殻変動が発生し深度15km付近で地震が発生したのです。
断層に浸入してきた流体の起源は、1)海洋プレートからの脱水、2)日本海拡大時に正断層の断層帯に取り込まれた流体、3)マントル起源の流体が考えられます。マントル起源の流体の可能性が高いです。
GPSで1秒ごとの地盤変動を捉えることができます。今回の地震は、20秒かけて隆起していて本震の13秒前にマグニチュード5.9の地震が発生しています。
<質疑応答>
質疑応答での回答を列挙します。
・1995年の阪神淡路大震災以降、陸域の活断層の調査が行われ地震動予測地図が作られました。陸域の地震は、発生頻度は低いですが被害は大きくなります。全国に2,000ある活断層のうち100の活断層が調べられています。海域活断層については、日本海南部は調査が済んでいますが、北部はまだです。(平田)
・地震は確率的に起こるので予知はできません。不意打ちで来るので、揺れても良いように備えることが必要です。日本では、マグニチュード7クラスの地震が毎年1回は起きています。2000年に改訂された耐震基準に適合した住宅にすることが大事です。(平田)
・長時間警報が発令されたままだと救助活動の遅れを招きますが、どの時点で警報を解除するかは難しい問題です。今回、津波警報が、なかなか解除されなかったのは合理的であったと考えます。と言うのは、反射津波があり、日本海の対岸で反射した津波が襲ってくる可能性があったためです。(平田)
・今回は半島の北側の海岸が隆起したので、津波が陸域に到達しにくかったということがあります。しかし、安全側を取るのが良いと思います。(西村)
・今回の地震では地盤の隆起によって船での救助ができませんでした。太平洋側は隆起・沈降はそれほど大きくはありません。能登半島では、平均すると年1mmの速度で隆起していて、地震のあと沈降するということはありません。(西村)
・流体の浸入が原因での地震は、松代地震が知られています。規模の大小はありますが流体供給による地震はあります。(西村)
・能登半島の地震は2020年から活発化していました。全国どこでも地震が起きます。自分の所は安全とは考えないことです。特に地盤が悪い所は常に準備しておくことが必要です。(平田)
・珠洲市の群発地震が起きたときには、将来大きな地震が起きる可能性があるとは考えていましたが、公式の情報として出すまでには至りませんでした。(西村)

























