防災学術連携体 緊急報告会「令和6年能登半島地震の概要とメカニズム」2024/01/24 17:06

 2024119日(金)、午後5時半から同7時まで、表記報告会がzoomYouTubeで行われました。

 

 この緊急報告会の様子は、防災学術連携体のウェブサイトで質疑応答を含めてYouTubeで視聴できます。

 < https://janet-dr.com/index.html 

  

 プログラムは以下のとおりです。

 1)令和6年(2024年)能登半島地震の概要:平田 直氏(防災学術連携体幹事 東京大学名誉教授)

 2)地殻変動データ等からみた令和6年能登半島地震と発生メカニズム:西村卓也氏 (京都大学 防災研究所地震災害研究センター教授)

 3)質疑応答 司会:米田雅子氏(防災学術連携体 代表幹事)

 

 司会は松本正行・東京工業大学教授でした。

 

 以下に講演の概要を記しますが、正確なところはYouTubeを見て下さい。

 

<平田 直氏>

 今回の地震は、2024111610分に発生、マグニチュード7.6、震源は珠洲市で深さは16km、南東側の地盤がせり上がりました。志賀町で最大震度7を記録し、300kmの範囲で強い揺れがありました。同日の166分に「前震」と思われる地震が発生しています。

 長周期地震動は最大級の4でした。

 

------------------------------------------------------------------------------------------*長周期地震動:地震で発生する約2 - 20秒の長い周期で揺れる地震動のことである。(ウィキペディアによる)

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 今回の地震では、広い領域で多数の地震が発生しました。11日に発生した余震の範囲は長さ150kmに及んでいます。能登半島では、202012月から地震が活発になっています。その前の2007325日にはマグニチュード6.9の地震が発生しています。

 

 津波の高さが3m以上になると予想して、大津波警報が出されました。輪島港の潮位は1,2m上昇しました。地震調査委員会の調査では、赤崎漁港で4.2mの津波痕跡を確認しています。

 地殻変動は、輪島で西に1.2m移動し1.0m以上隆起しています。国土地理院は4mの隆起を確認しています。

 

 空中写真解析によると半島の西から北にかけての海岸が陸化しています。鹿磯(かいそ)漁港などです。

 

 震源断層モデルは、64km76kmの長さの断層が4mずれたとされています。遠地実体波のデータから、40秒で震源断層が形成されたと推定されます。北西傾斜の断層による地震もあった可能性があります。

 

 被害状況は、死者は石川県が多いですが、建物被害は新潟県や富山県でも発生しています。

 今後、震度5強以上の地震が起こる可能性があります。

 

<西村卓也氏>

 能登半島を含む日本海東縁は、日本海拡大時の変動帯です。今回の地震は、半島の北の海底にある活断層が原因です。2020121日から1230日にかけて能登半島の先端付近で、時計回りに震源が移動する地震が発生しました。このような本震がなくて地震が長期間続く地震を群発地震と言います。原因は、1)応力が攪乱された、2)流体が上昇してきて流体圧が増しスロースリップ地震が発生した、3)地震を伴わないすべりが起きていた、などが考えられます。

 

 能登半島には20-30km間隔で観測点があります。さらにソフトバンクや大学の観測点が利用できます。能登半島の先端付近の珠洲市の隆起が大きかったです。20226月にはマグニチュード5.4の地震、その後マグニチュード6.5の地震が発生し、変動が急速に大きくなりました。

 

 地盤変動の原因としては、1)球状の圧力源の存在、2)開口クラックの発生、3)逆断層すべり、の三つが考えられます。震源断層は南東傾斜で、Stage1でクラックが開口し断層帯に流体が浸入、Stage2で断層すべりが卓越し、Stage3-4で浅部での地震が発生したと考えます。地震を起こさないで地殻変動が発生し深度15km付近で地震が発生したのです。

 

 断層に浸入してきた流体の起源は、1)海洋プレートからの脱水、2)日本海拡大時に正断層の断層帯に取り込まれた流体、3)マントル起源の流体が考えられます。マントル起源の流体の可能性が高いです。

 

 GPS1秒ごとの地盤変動を捉えることができます。今回の地震は、20秒かけて隆起していて本震の13秒前にマグニチュード5.9の地震が発生しています。

 

<質疑応答>

 質疑応答での回答を列挙します。

 

1995年の阪神淡路大震災以降、陸域の活断層の調査が行われ地震動予測地図が作られました。陸域の地震は、発生頻度は低いですが被害は大きくなります。全国に2,000ある活断層のうち100の活断層が調べられています。海域活断層については、日本海南部は調査が済んでいますが、北部はまだです。(平田)

・地震は確率的に起こるので予知はできません。不意打ちで来るので、揺れても良いように備えることが必要です。日本では、マグニチュード7クラスの地震が毎年1回は起きています。2000年に改訂された耐震基準に適合した住宅にすることが大事です。(平田)

・長時間警報が発令されたままだと救助活動の遅れを招きますが、どの時点で警報を解除するかは難しい問題です。今回、津波警報が、なかなか解除されなかったのは合理的であったと考えます。と言うのは、反射津波があり、日本海の対岸で反射した津波が襲ってくる可能性があったためです。(平田)

・今回は半島の北側の海岸が隆起したので、津波が陸域に到達しにくかったということがあります。しかし、安全側を取るのが良いと思います。(西村)

・今回の地震では地盤の隆起によって船での救助ができませんでした。太平洋側は隆起・沈降はそれほど大きくはありません。能登半島では、平均すると年1mmの速度で隆起していて、地震のあと沈降するということはありません。(西村)

・流体の浸入が原因での地震は、松代地震が知られています。規模の大小はありますが流体供給による地震はあります。(西村)

・能登半島の地震は2020年から活発化していました。全国どこでも地震が起きます。自分の所は安全とは考えないことです。特に地盤が悪い所は常に準備しておくことが必要です。(平田)

・珠洲市の群発地震が起きたときには、将来大きな地震が起きる可能性があるとは考えていましたが、公式の情報として出すまでには至りませんでした。(西村)

 

 

 



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