シンポジウム 人口減少社会と防災減災 ― 2024/04/09 14:19
2024年3月25日午後3時半から午後6時50分まで、「第18回防災学術連携シンポジウム 人口減少社会と防災減災」が開かれました。ZOOM webinar とYouTube で公開されました。
プログラムは次のとおりです。
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司会:米田雅子(防災学術連携体代表幹事、東京工業大学特任教授)
田村和夫(日本学術会議連携会員、建築都市耐震研究所代表)
開会挨拶 竹内徹(日本学術会議 防災減災学術連携委員会委員長)
趣旨説明 森本章倫(あきのり:防災学術連携体代表幹事、日本都市計画学会会長)
【セッション 1 人口減少社会における原子力防災減災のあり方について-福島原発事故から 13 年後の福島の実態と課題】
■日本計画行政学会「人口減少社会における原子力防災減災のあり方について」
川﨑興太(福島大学)
■日本地理学会「東日本大震災による不可逆な地域の変容と復興―福島の原子力災害を事例として」
瀬戸真之(福島大学)
■日本災害医学会「人口減少社会における復興支援:福島医療復興支援の経験から」
小早川義貴(国立病院機構本部 DMAT 事務局)
■日本地域経済学会「そこに住み続けることの意味を問う~「複線型復興」と避難住民の「二重の地位」をめぐって」
山川充夫(福島大学)
【セッション 2 人口減少下の防災減災 】
■地域安全学会「人口減少社会における空き家と地域の建物倒壊リスク」
村尾修(東北大学)
■日本火災学会「超高齢・人口減少社会の火災安全」
鈴木恵子(消防庁消防研究センター)
■農業農村工学会「ため池デジタルプラットフォームを活用したため池の遠隔監視体制の整備」
泉明良(農研機構農村工学研究部門)
■日本災害看護学会「人口減少 X 危機多発時代の人々・コミュニティに求められる看護の現場と役割」
神原咲子(神戸市看護大学)
■日本緑化工学会「人口減少社会におけるグリーンインフラを使った防災・減災手法について」木田幸男(グリーンインフラ総研)
【セッション 3 中長期的に人口減少と防災減災を考える 】
■日本第四紀学会「歴史上の気候変動と人口変動の関係性から学ぶ」
中塚武(名古屋大学)
■日本自然災害学会「将来メッシュ人口の推計と洪水暴露評価」
吉田護(長崎大学)
■土木学会「人口減少下における流域治水と新たな地域創造の可能性」
谷口健司(金沢大学)
■日本都市計画学会「人口減少社会の都市計画と防災減災」
姥浦道生(東北大学)
閉会挨拶 目黒公郎(日本学術会議連携会員、東京大学教授)
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<森本章倫氏>
趣旨説明
日本の人口は、2050年には今に比べて1,500万人減少します。減災防災の再構築が必要です。それには、東日本大震災の知見を活かすことが大事です。原発災害にどう対処するのか、医療支援をどうするか、人口減少にどう対応するのか、など中長期的対応が必要です。
<川崎興太氏>
1961(昭和36)年に災害対策基本法ができました。この法律は一過性の災害に対応するもので、昭和時代の復興モデルが出来上がりました。
東日本大震災では、福島の復興は集中復興期間を設け推進しましたが、避難指示解除準備区域が残っています。インフラの再生は進んでいません。避難指示解除地域では29%の人が帰還しています。
福島では空間の復興は出来ましたが、原子力災害である故、人の復興は出来ていません。被災者一人一人の生活の再建が大事ですが、避難した人の7割が避難を継続しています。
事後の対応では、30兆円を使っても人の死を止められませんし、心のケアが大事です。この状態は「復興ごっこ」とでもいうべきものです。一人一人の生活再建が必要です。
<山川充夫氏>
福島では自殺者が増えています。学術会議では、住民に二重の地位を与える複線型復興を提唱しました。帰還、移住のほかに避難継続を選択肢とするもので、帰還しない場合、避難元、避難先のどちらの市民権も保障します。
能登半島地震でも避難の広域化、長期化が進んでいます。2.6万人の避難者が避難先に住み続ける意味が何なのかが問われます。
福島では16.5万人が避難し、1.5万人が国と東電に対し損害賠償を求めて集団訴訟を起こしました。日常生活が変容し、故郷の変容もとらえ直さなければなりません。
帰還しない理由は放射線の影響が一番で、医療環境に対する不安もあります。住民基本台帳の人口と居住人口の乖離が進んでいます。
<中塚 武氏>
農業生産力の変動を見ると飢饉や戦乱の影響で変動しています。人口の変動は100年以上のスケールで見ると出生率の抑制として現れます。
近年、炭素同位体による年代測定の精度が上がり、年単位の乾暖・湿冷の変動が明らかになっています。2,600年間の変動から、400年に1度の周期の変動と数十年周期の変動が明らかになりました。紀元前1世紀ころ、卑弥呼の時代に人口減少が起きています。江戸時代は生産力が増大しましたが、18世紀は停滞しています。
気候悪化によって、農業の生産力が低下し人口が減少した社会は崩壊したという歴史に学ぶ必要があります。
<吉田 護氏>
緯度・経度に基づき格子状に分けた地域メッシュの区画に、国勢調査の人口・世帯数等を編成したものがメッシュ人口です。将来のメッシュ人口の推計を用いて治水の経済評価を行いました。洪水浸水想定区域の人口の将来推移を予測しました。
<目黒公郎氏>
閉会の挨拶です。
いま日本で起きているのは少子化の中での人口減少です。現在、12~13人の働く人が1人の老人を支えていますが、将来は1.1人でサポートしなければなりません。
どうするか。働ける人は分母(支える人)に入れることです。
人口予測は的確にできます。明治維新の時の人口は3,300万人で、戦後急増しました。現在、人口は減少しています。国土つくりをどうするのか。
明治初年の東京の人口は78万人でした。関東大震災(1923年)の時は400万人でした。震災からの帝都復興で人口増が加速しました。戦後、インフラ整備が進みましたが、現在これが一気に老朽化しています。
東京に人を集中させすぎています。近視眼的です。地方に再分配しDX、ICT、IT を活用する必要があります。
子供の教育も重要で、大学は出口で管理するのがよいです。土地の地籍整備は、現在50%程度であまり進んでいません。
今回のシンポジウムでは貴重な話を聞くことができました。
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