神保哲生氏 民主市議の危機に立ち向かう ― 2017/09/13 08:52
2017年9月11日(月),札幌市のエルプラザで開かれた第60回人権擁護大会 プレシンポジウムで,表記の講演が行われました。
「第60回人権擁護大会 プレシンポジウム 民主主義の危機に立ち向かう 報道現場から語るメディアと知る権利」のチラシ
神保氏はコロンビア大学のジャーナリズム大学院修士課程を卒業し,AP通信記者などを経て1999年にニュース専門のインターネット放送局「ビデオニュース・ドットコム 」( http://www.videonews.com )を立ち上げました。
講演の中で神保氏が明らかにしていましたが,ビデオニュース・ドットコムは,現在,会員は16,000人で,広告を一切出さずにニュース放送を行っています。
☆メディアとは
メディア(media:mediumの複数形)とは,媒体・仲介者という意味です。
1445年頃までに J. グーテンベルクが活版印刷技術を考案し,革命が起きました。これはコンテンツ革命つまり中身の革命であったのです。この発明によってコンテンツを大量に複製することが出来るようになりました。
コンテンツには報道,教育,娯楽,広告などがあります。報道(ジャーナリズム)は,社会生活の上で必要な情報を伝えることです。それには,中立性(独立性),信頼性,課題の共有が必要です。
そこで問題となるのは,そのコンテンツをどうやって多くの人に伝えるかです。この伝送路(メディア・ルート)を押さえているのがマス・メディアです。
☆メディアの危機
アメリカでは良質な地方紙が激減しています。その結果,地方の政治が腐敗するという事態が生じています。
日本では,基本的に1県1紙で,ブロック紙として北海道新聞,中日新聞,西日本新聞があります。ただし,沖縄と福島には2紙あります。
最近は,インターネットによる伝送路が出来ました。
インターネットの普及は,次のような変化をもたらしました。
伝送路:極少→無限
参入障壁:極高→低下
マスメディアの影響力:大→低下
マスメディアの収益性:高→低下
アメリカほど急激な変化は起きていませんが,日本でも大手メディアは危機を迎えています。
☆メディアの構造問題
国連人権理事会の特別報告者 D.ケイ氏は,2017年6月に次のように述べています。
・放送法4条は曖昧で,改正の必要がある。
・政府とメディアの距離が近すぎる。
・特権を守るためにメディアは自主規制をしている。
・秘密保護法は,メディアが萎縮しないように改正する必要がある。
・メディアが分断されている。
マス・メディアの特権には次のようなものがあります。
・記者クラブ制度:それぞれの役所に記者クラブがあり,そこに所属している会社しか情報が貰えない。
・再販制度により新聞,雑誌,CDなどは勝手に値段を決めることが出来る。つまり,独占禁止法の対象から除外されている。
・新聞社とテレビ局を同じ資本が持つことが出来るクロスオーバー制となっているので新聞とテレビの相互批判がなされない。
これによって,圧力をかけなくても自主規制が行われるという構造になっているそうです。
☆どうするか
一人一人が受け手としてのマインドを変えることが必要です。
また,オープンになった伝送路を活用してコンテンツを発信することが大事です。
☆質疑応答で
質疑応答で出た話を紹介します。
・安倍首相の記者会見
安倍首相の記者会見での冒頭の発言は,プロンプター(原稿を流し伝える装置)を見て行っています。質疑応答になるとプロンプターは引っ込みます。質問,回答とも,すべて役人が準備したもので,質問者は決まっています。
神保氏は,質問をしたくて何回も手を挙げていますが,一度も当ててもらったことは無いと言います。
・管官房長官の記者会見
官房長官の記者会見は慣習として時間制限はありません。内容は,ほとんどが業務連絡のようなものです。
そこへ,東京新聞・社会部の望月衣塑子記者が本質的な質問をしました。これに対して管氏が,まともな返事をしないために何回も同じ趣旨の質問をしているのです。記者会見場の他社の記者は,早く終わって欲しいというのが本音でしょう。記者会見の最中,ひたすらパソコンを打つ音が会見場に満ちています。つまり,やり取りを聞いて自分も質問をして内容を深めるという感じではなく,記録を取って上に上げることが使命になってしまっています。
民主主義社会におけるメディアの重要性を痛感したシンポジウムでした。