海老名香葉子 いつも笑顔で2017/08/17 10:52


いつも笑顔で
海老名香葉子,いつも笑顔で—あの戦争と母の言葉—。2017年6月,新日本出版社。

 著者は1933(昭和8)年生まれです。1937(昭和12)年7月には盧溝橋事件が起こされ日中全面戦争が始まっています。それから1945(昭和20)年8月の日本の敗戦まで著者は12年間,戦争の時代を生きたことになります。
 
 この本では,母の想い出から空襲により兄一人のほかすべての家族を失った著者が三遊亭金馬師匠を訪ねて救われるまでが語られています。
 書かれている体験は本当に辛いものですが「いつも笑顔で」生きてきた著者の語りに救われます。

 表紙の絵と挿画は,いわさきちひろのカラーの絵です。

 戦争はけっして起こしてはいけない,ましてや隣国との戦争は多くの犠牲者を出すことを忘れてはならないと強く思います。


本の紹介:自然由来重金属と環境汚染2017/08/30 20:51


自然佑雷獣金属と環境汚染
島田允堯(しまだ・のぶたか),自然由来重金属と環境汚染—応用地質学・地球化学的データバンク—.愛智出版,2,014年2月.

 ちょっと古いですが,重要な内容の本です。

 建設工事による掘削で発生する土砂や岩塊などの掘削ズリに自然由来の重金属が基準値以上含まれている場合,処理が必要になります。
 この本は,土壌汚染対策法の対象となっている第二種特定有害物質(重金属等)のうち,シアン化合物を除く八つの重金属について述べています。

 トンネル工事では,比較的早くから掘削ズリ中の重金属について調査・対策が行われてきました。私の知る限りでは,道道洞爺湖登別線のオロフレトンネルで行われたヒ素についての対応が最も古いようです(例えば,原田,1989)。

 著者は,2,006年4月に発行された「地下水からなぜヒ素が検出されるかーグローバルな環境問題—」(深田研ライブラリー No.87)で,ヒ素についての総括的な解明を行っています。ヒ素は,硫黄鉱床などの酸性環境で溶出すると考えられていました。しかし,粘板岩などではアルカリ環境で溶出してくる例が知られ始めました。その溶出機構を酸化還元電位と水素イオン濃度の図(Eh-pH図)で説明していました( http://www.fgi.or.jp で入手可能)。

 この本は,A4版で240頁で内容が濃いので,全部読み通すのは時間がかかります。ざっと目を通し必要に応じて熟読すれば,得るところは非常に大きいと思います。
 そして,それぞれの重金属ごとの章の最後に挙げられている参考文献が圧巻です。例えば,ヒ素の章だけで215の文献が挙げられています。

 建設工事の調査・設計・施工に関わる人は,一度は目を通しておくことをお薦めします。

<参考文献>
・原田勇雄,1989,4.北海道の主要プロジェクトに関する土質・基礎の話題 5.オロフレトンネルの設計施工—鉱化変質帯のトンネル施工例.土と基礎,37巻,9号(No.1965).