積丹町美国の宝島2017/09/04 20:30

 積丹町美国漁港は,北西側を黄金岬で守られている。この岬から北西の海岸は角閃石石英安山岩のハイアロクラスタイト(集塊岩)や凝灰質砂岩・凝灰岩で構成される美国—湯内累層の上部層が広く分布している(5万分の1地質図幅および説明書「美国および幌武意」)。時代は中新世から鮮新世である。
 積丹半島を一周する国道229号は,ここで海岸から離れて標高200m弱の丘陵地へと登って行く。美国漁港のすぐ北の茶津集落から約7km北にある浜婦美の集落までの間,海岸に集落はなく海岸に降りる道もない。

 美国漁港の北にある面積4平方キロメートル,周囲1.5kmほどの島が宝島である。「ハート型の島」としてパワースポットとされている。そう言われてみるとハート型に見えなくもない。
 島の左側(北西側)の標高96mに最高点があり,ハートの右半分はやや標高が低くなっている。

 黄金岬(おうごん・みさき)から見ると南東から北西に上昇してきたことを示す馬蹄形の流理構造が見える。島を北西から見ると南西側(向かって右側)の部分は,西に10°ほど傾いた柱状節理が見える。島の南西側の部分は,南東から北西に貫入してきたドームと考えられる。
 これに対して,島の北東側の部分は,海面から20m付近の高さまで幅の広い西に80゚ほど傾いた柱状節理が見られ,その上にハイアロクラスタイト様の構造を持った溶岩が載っているように見える。

 天気の良い日に行くと,見事な積丹ブルーの海を堪能出来る。


黄金岬
写真1 美国漁港南東の小泊から見た黄金岬(左)と宝島(右)
 赤灯台の向こうが黄金岬で先端付近に展望台がある。宝島は左側の溶岩ドームと右側の平坦なハイアロクラスタイト様溶岩の部分に分かれる。


黄金岬の火砕岩類
写真2 黄金岬
 美国漁港から見た黄金岬である。先端付近は溶岩ドームでその左は二次堆積性の火砕岩類である。部分的に葉裏が発達した凝灰質砂岩が挟在している。


茶津のハイアロクラスタイト
写真3 茶津集落付近のハイアロクラスタイト
 一見土石流のように見えるが,基質もブロックと同じ岩質でハイアロクラスタイトである。灰白色・粗しょうで,一見デイサイトのように見えるが石英はあまり目立たない。


宝島
写真4 黄金岬から見た宝島
 右下から左上に向けて貫入してきたと思われる流理構造が見える。船は,水中展望船「ニュー積丹号」である。水深の浅いところでは石英安山岩の白い色が見える。


積丹半島
写真5 黄金岬から北西を見る
 陸からは近づけない海岸線が続く。一番手前の防波堤が茶津集落の入り江,その向こうにビヤノ岬,一番右の岬はマッカ岬であろう。
 

北西から見た宝島
写真6 北西から宝島を見る
 右側は緩く傾いた柱状節理であるのに対し,左側は下部に急立した幅の広い柱状節理がありその上にブロック状の溶岩が載っている。この二つの岩体の境界が凹んでいて,ハート型の窪みとなっている。ビヤノ岬を回った付近からカモメが船についてきた。