本の紹介:私たちは戦争を許さない2017/10/13 11:29


私たちは戦争を許さない
安保法制違憲訴訟の会 編,私たちは戦争を許さない−安保法制の憲法違反を訴える.2017年8月,岩波書店.

 この本は,2015年9月19日未明に強行採決によって成立した安保法制(平和安全法制)の違憲訴訟を行っている「安保法制違憲訴訟の会」が,裁判での陳述書をもとに編集した本です。

 項目別に4つに分けられていますが,全部で 49 編の文章が収録されています。
 安保法制によって現在どんなことが起きているのか,太平洋戦争を体験した人たちの証言,安保法制が成立したことによって今現在感じている不安,立憲主義・平和的生存権などが侵される危機感など,様々な文章が載っています。

 現在行われている衆議院選挙では,憲法改悪が争点となっています。
 この本を読むと,憲法を変えたいと考えている人たちが,いかに想像力に欠けているかが良く分かります。戦争をするということは,アフガニスタン,イラク,シリアで起きてきて,今も起きている事態が日本で起こるということです。
 また,戦争をするということは,膨大なお金を必要とします。普通の生活を送ることができなくなります。

 自衛隊は,その誕生からアメリカ軍の手先としての役割を与えられてきました。
 今の憲法がアメリカに与えられたものだから変えたいという。であれば,自衛隊をアメリカ軍の指揮系統から独立させることを何故しないのか。在日アメリカ軍と外務省の間(日米合同委員会)で決められているアメリカ軍の特権を何故,認め続けるのか。

 脱線してしまいましたが,この本を買って読み始めましたが,二話くらい読むとその先読む続けられず読み終わるのに,かなり時間がかかりました。

 私は,1943(昭和18)年生まれですから戦争の記憶はありません。横浜で空襲に遭って父や母の実家に疎開したそうです。
 戦争が終わって横浜の田舎に引っ越しました。今のこどもの国,戦争中は陸軍の田奈弾薬庫補給廠,その後はアメリカ軍の弾薬庫になっていた場所の近くです。
 その頃から記憶があります。家の近くは田んぼでしたのでアカガエル,ドジョウなどを食べました。桑の実がものすごく美味しかったのを覚えています。
 アメリカ軍の弾薬庫前の広場に十輪(ダンプカー)が荷台からチョコレートやお菓子をばらまくのを先を争って拾いました。

 先に紹介した海老名香葉子さんの「いつも笑顔で」を読んでも感じましたが,戦争は絶対に起こしてはダメだと強く思います。( http://geocivil.asablo.jp/blog/2017/08/ )


放射線量の測定結果2017/10/18 14:41

 2014年5月25日から,「はかるっち2」(ひさき設計株式会社:郡山市)で空間放射線量(ガンマ線)の計測を行っています。測定器は,いつも身近に置いていて,北海道内を旅行した時や関東へ行った時も,鞄に入れて持って歩いています。

 2017年4月初めから,累積放射線量に大きな変化が見られました。

 測定から1,000日頃(2017年4月初め)までは日増加率は 0.002ミリ・シーベルト/日でした。年間に換算すると0.7ミリ・シーベルトです。
 ところが,2017年4月初め頃から増加率が急激に増え,7月3日頃まで 0.006ミリ・シーベルト/日で推移しました。
 それ以後は,増加率は多少減少しましたが,0.003ミリ・シーベルト/日で,以前に比べて1.6倍の増加率を示しています。このまま,この増加率が続いた場合,年間0.9ミリ・シーベルトとなります。

 この原因が何なのか,分かりません。
 測定器の劣化については,メーカーに問い合わせましたが劣化防止策は採っているので3年程度では大丈夫とのことでした。
 今後,どのような変化をするか注目です。

 なお,2014年5月25日から2017年10月16日までの1,240日間の累積空間放射線量は,2.50ミリ・シーベルトですので,平均 0.08マイクロ・シーベルト/時間です。最小値は 0.05マイクロ・シーベルト/時間以下(測定限界以下),最大値は 0.54マイクロ・シーベルト/時間(2016年4月3日)です。


累積空間放射線量
図1 2014年5月25日から2017年10月16日までの累積空間放射線量
 放射線の増加率は約 0.002ミリ・シーベルト/日で,年間累積量は0.73ミリ・シーベルトです。




2017年4月10日から7月3日
図2 2017年4月10日から同7月3日までの累積空間放射線量
 この期間は,0.006ミリ・シーベルト/日で,全累積量の3倍の増加率です。このグラフでは,系列1は省略しています。

2017年7月5日から2017年10月16日
図3 2017年7月5日から同10月16日までの累積放射線量
 累積放射線量が急上昇した期間に比べると緩やかな勾配となりましたが,急上昇以前に比べて約1.6倍の増加率です。

                   表1 累積空間放射線量のまとめ
君感放射線量のまとめ_20171014




北海道らしい 無電柱化を考える2017/10/20 21:48

北海道らしい 無電柱化を考える 
風土と景観を活かしたまちづくりのために

 2017年10月19日(木)午後2時から5時半まで,札幌市の「かでる2・7」のホールで,表記シンポジウムが開かれました。会場が,ほぼ一杯になる400人近くが参加しました。
 以下,主な講演の概要を述べます。

<神田大朗氏(北海道開発局建設部 道路維持課 課長補佐)>
「無電柱化の現状とこれから〜北海道における無電柱化の推進に向けて〜」


神田開発局道路維持課長補佐
写真1 神田課長補佐

 北海道における無電柱化の必要性は次のようにまとめられます。
1)道路の防災性の向上:台風などの強風,大雪,地震で電柱が倒れ,送電が止まってしまうような事態を避けることができます。
2)安全で快適な通行空間の確保:電柱が歩道を塞いでいることがあったり,大雪の時の除雪で電柱が邪魔になったりと言うことがなくなります。
3)良好な景観形成による観光振興:電柱がなくなることによって街の景観が改善されたり,道路からの眺めが良くなります。

 全国的に見ると無電柱化は東京が約5%,兵庫,岐阜,大阪が約2.5%であるのに対して北海道は約1%です。ロンドン,パリ,香港は無電柱化100%です。
 北海道の国道は約6,600kmで,そのうち無電柱化延長は約50kmです。

 北海道における無電柱化の課題は,
1)凍結深より深く管路を埋設する必要があります。ただし,光ケーブルは凍結してもそれほど劣化しないという結果が出ています。(山下氏の講演)
2)無電柱化の費用が高くなり,施工に時間がかかります。これについては,専用のアタッチメントなどの開発が進んでいます。(同上)

 無電柱化の整備手法は色々あります。
1)地下への埋設:根本的な方法です。美瑛町では,区間を切って地中化をした場所があります。(浜田美瑛町長の講演)
2)裏配線:眺めを邪魔している電線を道路の反対側に移すことで改善できる場合があります。例としては,国道276号の倶知安町八幡ビューポイントでは,羊蹄山の眺めの手前にあった電柱を反対側に移設しました。

 そのほか,コストの問題,関係者間での事業調整の難しさ,職員の能力の問題などがあります。
 既設施設を電線共同溝として利用する,管路整備に関する民間の技術などを活用するといった整備手法があります。

 コスト低減の手法としては,1)管路を浅いところに埋設する,2)小型のボックス内に電力ケーブルと通信ケーブルを一緒に埋設する,3)ケーブルを埋設管を使わないで直接埋設する,などの手法が検討されています。

<石田東生氏(日本みち研究所 理事長)>
「無電柱化と道路製作のイノベーション」

石田理事長
写真2 石田理事長

 平成29年8月22日に社会資本整備審議会・道路分科会で建議『道路・交通イノベーション〜「みち」の機能向上・利活用の追求による豊かな暮らしの実現へ〜』を決定しました。石田氏は分科会長を務めました。その中の資料の一つに,「無電柱化の取り組みについて」というものがあります。
( http://www.mlit.go.jp/common/001202621.pdf )
 そこでは,道路・交通から社会経済を変革することを目指していて,その一つが無電柱化です。

 イノベーションというは,技術革新という狭い意味ではなく「経済・社会システムを改革」することです。J. シュムペーターが,1911年に『経済発展の理論』の中で提唱した「新結合」が初出です。
 この社会資本という概念は,社会基盤の整備ということだけでなく,自然環境,道路などの社会的インフラストラクチャー,教育や医療・金融・司法などの制度資本を含むものと拡大されてきました(*例えば,宇沢弘文,社会的共通資本.岩波新書)。

 2016年3月に閣議決定された「北海道総合開発計画」では,食と観光を担う生産空間をつくることを謳っています。そのためには,北海道だけの感動を与える風景をつくり出すことが必要です。
 2003年から始まったシーニックバイウェイ(景色の良い脇道)では,道路周辺の景観を整える試みも行われています。例えば,国道276号・倶知安町八幡駐車場(ビューポイント・パーキング)では,電柱を移設して羊蹄山の眺めを確保しています。
( http://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kn/dou_kei/ud49g7000000tflt.html )

*シーニックバイウェイとは「主に自動車の走行する道路からの視点で、景観、自然、文化、レクリェーションといった要素によって観光や地域活性化などを目的として、地域の魅力を具現化するための取り組み、またはそのためのルートのこと。」(ウィキペディア,最終更新 2016年10月4日 (火) 11:55)

<その他の講演>
 山下彰司氏(寒地土木研究所):北海道から見た無電柱化に必要な技術開発〜自然・田園地域及び寒冷地における方策〜
 浜田 哲氏(美瑛町長):まちづくりと景観育成
 室谷元男氏(江差町歴まち商店街協同組合監事):歴史資源を生かした交流の町づくり 無電柱化のいにしえ街道
 奥村敦史氏(北海道電力 流通本部 配電部長):無電柱化の取り組み


石田理事長
写真3 パネルディスカッションのメンバー
 左から石田日本みち研究所理事長,浜田美瑛町長,室谷歴まち商店街協同組合監事,奥村北電配電部長です。

<パネルディスカッション>
 佐々木 葉氏(早稲田大学創造理工学部教授)の司会で行われました。これについては省略します。

*1週間くらいでも外国,例えばイギリスに行って帰ってくると,高圧送電鉄塔が異様に見えます。
 このシンポジウムでも電柱のない街の風景が紹介されていましたが,街の中に電線と電柱がある光景は,うっとうしいと感じます。それは,景観と言うことだけでなく,街の中の安全を確保するという点でも大事だと思います。
 それと,北海道の場合,広い低地が多いので高圧送電線を何とかして欲しいとも思います。例えば,札幌の北にある当別町辺りから西を眺めると,平野の向こうに手稲山などの高さの揃った山々が見えます。しかし,送電線の鉄塔が並んでいるので写真を撮るのに良い場所がありません。鉄塔も景色の一部と割り切れば良いのでしょうが。


北海道ロードレース2017/10/23 10:46

 2017年10月22日(日),豊平川河川敷コースで今年最後のランニング大会がありました。
 肌寒く風の強い日でしたが,何とか10kmを完走できました。タイムは1時間09分42秒,1km7分のペースです。
 走る前は調子が良いと感じていましたが,走り始めたら最後まで走りきれるのか心配になりました。ほとんど余力のない状態でゴールしました。

 この大会は,北海道のシーズン最後の大会として開かれました。最初の頃は11月初めでしたが,天候の条件が悪くミゾレの中を走ったこともありました。今は,10月下旬に開かれるようになり,気候としては問題なく走れるようになりました。

 今年は紅葉がきれいです。真駒内公園のカエデ,ナナカマド,シラカバは見事でした。

 日本ハムファイターズの根拠地として真駒内公園が上がっているそうですが,ここは豊平川の段丘が何段か残っていて,地形的には非常に貴重な場所です。
 戦後は,進駐軍に占拠されたり冬季オリンピックの会場,選手村になったりしましたが,それほど大きく改変されていません。
 このまま,公園として残したい場所です。


真駒内駅の紅葉
写真1 地下鉄真駒内駅前の紅葉
 この日は,曇り空で肌寒かったですが,走るのにはちょうど良い条件でした。

ナナカマド並木
写真2 真駒内スタジアムに向かう道のナナカマド
 この左に選手村の宿舎があります。現在はアパートとして利用されています。


真駒内公園
写真3 真駒内公園


真駒内駅
写真4 地下鉄真駒内駅
 後ろの山も見事に紅葉しています。支笏火砕流堆積物の丘です。


本の紹介:海の底深くを探る2017/10/24 16:36


海の底深くを探る
白山義久・赤坂憲雄 編,フィールド科学の入口 海の底深くを探る.2015年9月,玉川大学出版部.

 I 部の海洋生物学者・白山(しらやま)氏と民俗学者・赤坂氏の対談が非常に良いです。フィールド科学の魅力と重要性が伝わってきます。
 赤坂氏が衝撃を受けた本として,宮本常一の「忘れられた日本人」を挙げています。民俗学もフィールド調査が重要です。白山氏と共鳴できる部分があることが分かります。

 白山「・・基礎科学としての海洋学は,海洋の基本的な理解をとおして,このような社会(*サステイナブルな社会)をつくりあげるために必要不可欠な科学的知見を提供することが,最大の社会貢献だと思っています。」
 赤坂「・・海っていうのが,領海とかいうレベルではなく,ある種の可能性の宝庫として再発見されていかないと,この国の将来イメージ,将来像っていうのがたぶん豊かに描けないな,って感じています。」(本書61-62)

 II 部の藤倉克則氏の「深海生物研究のフォールドワーク」,III 部の青山 潤氏の「ニホンウナギの大回遊を追いかける」は,海での仕事の魅力が十分に伝わってきます。

 2年前に出版された本ですが,面白い内容が満載です。

 この「フィールド科学の入口」シリーズには,小泉武栄・赤坂憲雄 編「自然景観の成り立ちを探る」があります( http://geocivil.asablo.jp/blog/2014/01/08/ )。この本も面白い本です。