残業の上限規制2017/03/14 15:56

 残業の上限規制が,
<「きわめて忙しい1カ月」の上限は、安倍晋三首相の「裁定」により、連合が主張する「100時間未満」という表現で決着する見通しだ。>
と言う.(朝日新聞デジタル,2017年3月13日21時35分)
 完全な論点そらしである.上限規制の中身より安倍首相の「裁定」に重点を置いた報道である.

☆労働時間の基本は,1日8時間,1週間40時間である.
☆時間外労働の限度は,36協定を結んでいる場合で,1ヶ月45時間,1年間360時間である.
☆月80時間を越える時間外労働は,脳・心臓疾患の発症との関連が強い.

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 労働基準法では,
<(労働時間) 第三十二条  使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
○2  使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。>
となっている.これが基本である.

 厚生労働省の「時間外労働の限度に関する基準」では.延長時間の限度は1ヶ月45時間,1年間360時間(一般の労働者)となっている.
( http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040324-4.pdf )

 2015(平成27)年7月24日に決定された「過労死塔の防止のための対策に関する大綱」では,
<脳・心臓疾患に係る労災認定基準においては、週40時間を超 える時間外労働がおおむね45時間を超えて長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まり、発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できるとされていることに留意するよう周知・啓発を行う。>
となっている.

 塩崎泰久厚生労働大臣は,2017年3月10日の記者会見で,
<労使の代表が真剣に話し合っていただいていますので、良い結論を出していただいて、私達が行動計画に入れ込んでいけるように、お願いできたらありがたいと思っております。>
と記者の質問に応えている.所管大臣としての意見は,ないのだろうか.

 実際に100時間近い残業を経験した人は,この「裁定」に疑問を呈している.
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 私は,会社に入るのが遅かったため,入社当時から時間外手当が付かなかった.時間を気にせず仕事ができるという点では,ありがたい面もあった.もちろん,管理職相当の手当は付いていてそれなりの収入ではあったが,事業所での年収を調べてみると時間外が付く人が収入のピークを示し,その上の年代の手当が付く人(管理職待遇)で年収がガクンと下がっていてびっくりした.時間外労働で生活を維持していたとも言える.

 その後,成果主義というのがはやった.富士通で最初に導入されたと記憶している.かなり,もてはやされた方法であった.しかし,評価が公平に行われるのかという問題が出てきて,いつの間にか廃れたように思う.成果主義では,時間外労働をどう評価するかは難しい面がある.多くの時間を費やしていることを良いと評価するのか,時間を多く費やしているのは能力が無いと評価するのかである.
 自己評価というのも取り入れられたが,結局,人件費の総額は決まっているので,それをどう配分するかという問題になってしまって,最後は帳尻合わせとなる.

 勤務時間の管理は,タイムカードが便利である.しかし,夕方,タイムカードを押した後,さらに仕事をすると言うことも行われていたようだ.サービス残業である.

 過労死がこれだけ問題になっている今必要なことは,最低,月残業時間は45時間(1日平均2.5時間)とし,はっきりとした罰則規定を設けることであろう.


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