第55回試錐研究会2017/03/03 10:17

 2017年2月23日(木),午後1時15分から午後5時30分まで,札幌市北区の札幌サンプラザで,表記講演会が開かれました。

 今年の特別講演は,北大農学研究院の丸谷知巳特任教授による「地震・火山・豪雨による連鎖複合型土砂災害」でした。
 一般講演は,地質研の石丸 聡氏の「2016年8月の台風による斜面災害」,防災地質工業の雨宮和夫氏による「最近の北海道における斜面災害と周氷河性斜面堆積物」,アクアジオテクノの石塚 学氏による「熊本地震 水井戸被害調査」でした。


丸谷氏
講演する丸谷知巳氏

<丸谷氏の講演>
 日本での地震は,2000年以降マグニチュード8以上の地震が多くなっています。火山噴火は1900年以降やや多い傾向にあります。豪雨は1960年頃から増加傾向にあります。

 熊本地震では地震によって大規模な崩壊が発生した後,雨によって側部に崩壊が発生しています。地震による崩壊は遷急点の上辺りで起こっています。

 2016年8月の台風による北海道の災害では,十勝川で河床の上昇が起こっています。主に火山噴出物が移動しているのですが,川によっては花崗岩地域で土石流が発生しています。芽室川では横方向の移動が顕著でした。冬山川では河床が2m上昇しました。
 豪雨により土砂が移動・堆積し河道閉塞を起こし水害が発生するという複合型の災害が見られました。
 豪雨により土砂が運ばれて河床が上昇しても,ある程度年月が経つと浸食によってほとんどもとの河床に戻るというのがこれまでの状態でした。しかし,豪雨の間隔が狭くなってくると河床が元の状態に戻る前に次の土砂によって河床が上昇するということがおきます。そのため,全体として河床が上昇して新たな災害が発生する可能性が生じます。典型的な例をニュージーランドの河川で観測しました。
 災害を減らすための対応方法は,固定観測を継続して行うこと。広範囲を頻度高く移動観測すること,避難経路の伝達,そして最後は災害を受けにくい土地利用を行うことです。
 

石丸氏
講演する石丸氏


雨宮氏
講演する雨宮氏