合地信生「考古学と岩石学の接点&ブラタモリ知床」2017/03/04 21:06

 表記の講演が2017年3月3日(金)午後1時から,札幌市の「かでる2・7」で開かれました。北海道総合地質学研究センターの第3回研究セミナーです。


合地信生氏
講演する合地氏

 青森県三内丸山遺跡の石斧について共同研究する機会があり,北海道,北東北の石斧について,材料となっている岩石の種類・出土した遺跡の時代を調べました。石斧の材料としては,平取町額平川産のアオトラ石と神居古潭渓谷産の青色片岩(せいしょく・へんがん)が,広い地域に流通していることが分かりました。

 額平川のアオトラ石は,緑色岩とか緑色泥岩とか言われていましたが,ナトリウム角閃石を含んでいて,ある程度の高圧変成作用を受けた変成岩と考えられます。
 神居古潭渓谷の青色片岩を材料とした石斧は,神居古潭の下流の深川盆地に面した遺跡で発見されています。

 北東北(東北の北部)から北海道にかけての遺跡で出土する石斧の材料は,緑色片岩(アオトラ石)が最も多く,次いで青色片岩,そして花崗岩あるいは安山岩です。南へ行くほどアオトラ石の割合は減っていくこと,太平洋側に比べて日本海側でアオトラ石の割合が少ないことなどの特徴があります。
 また時代によっても石斧に使われている材料が変化します。縄文時代中期(4,500年前頃)までは北筒式土器文化圏では青色片岩が,円筒式土器文化圏ではアオトラ石や安山岩が,大木式土器文化圏では花崗岩が主体となっています。これに対して,縄文時代後期(3,500年前)には二分化されます。

 石斧を作る砥石は,川端層の砂岩などが使われます。これには変成岩起源の鉱物が含まれています。

 石斧材料は,額平川流域や神居古潭から南茅部に運ばれ、ここで加工され三内丸山遺跡など,北東北へ持って行かれたようです。

 次に,土器の材料についてです。
 土器の材料を特定するには,X線回折によって含まれる鉱物を同定し,蛍光X線で成分組成を求めるほかに,示差熱分析によって胎土(たいど:陶磁器の本体を形づくる粘土)の焼成温度を推定することやガラスの含有量,ガラスの水分量をを推定することが有効です。粘土は550℃〜1,150℃の間でガラス化するようです。土器の焼きの良さ(焼成温度)は水分量によって定量化できる可能性があります。

 地質と考古を結ぶ非常に内容のある講演でした。


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