ラスコー展2017/02/19 14:04

上野の国立科学博物館で開かれているラスコー展を見てきました。

 ラスコー洞窟は,フランス南西部のドルドーニュ県にあります。ドルドーニュ県にはドロンヌ川,イール川,ドルドーニュ川が北東から南西に流れています。ドルドーニュ川の支流のヴェゼール川流域には,分かっているだけでラスコー洞窟を含め八つのクロマニョン人の壁画遺跡があります。
 ラスコー洞窟の壁画が描かれたのは,最終氷期の最寒冷期に近い2万年前です。この頃,ヨーロッパ氷床はドイツやイギリスの大部分を覆っていて,マンモス,オオツノジカ,バイソン,オーロックスなどの大型哺乳類が生息していました。

 ラスコー洞窟は約1,000万年前に形成された石灰岩中の鍾乳洞です。この鍾乳洞の上に,200万年前頃に泥灰岩(マール:粘土鉱物成分の多い不純な細粒石灰質堆積物)が堆積したため雨水が浸透しにくくなり,鍾乳石や石筍が発達しなくなり安定した状態が保たれました。洞窟の壁には石灰岩が結晶化した方解石が出ている部分があり,絵を描くのに適した場所でした。

 洞窟は,現在非公開となっています。今回は,精密に復元された実物大の壁画が展示されています。日本の後期旧石器時代についても展示されていて,この時代全体の状態を体感することができます。
 また,一部を除いて写真は自由に撮ることができます。


ラスコー洞窟全体図
写真1 ラスコー洞窟の全体図
 洞窟は七つの部屋に分けられています。もっとも謎の多いのが「井戸状の空間」で5mほど下がったところにあり,発見された時ネズノキの木炭を含んでいた赤色砂岩のランプがあった場所です。


牡牛の広場
写真2 「身廊」の壁画
 両側の壁面に絵が描かれています。


大きな黒い牝牛
写真3 「身廊」の「大きな黒い牝牛」
 ここでは,線刻と彩色の二つの技を使った絵が描かれています。

 なお,この展示は,出品資料は異なりますが,
 2017年3月25日(土)〜5月28日(日)に宮城・東北歴史博物館、
 同年7月11日(火)〜9月3日(日)に福岡・九州国立博物館
に巡回するそうです。


真鶴半島2017/02/19 16:07

 真鶴半島は箱根火山の南東にあり,相模湾に角のように突き出ている。半島根元のJR東海道線・真鶴駅から先端の真鶴岬まで,直線距離で3kmである。先端の真鶴岬の先に三ツ岩があり,条件が良ければ歩いて行けるという。

 半島を構成する地質は,箱根火山のカルデラ形成期(22万年前〜13万年前)の噴出物である真鶴溶岩グループの安山岩質溶岩ドーム,火砕丘堆積物とされている。JR真鶴駅から真鶴漁港の北にかけては白磯溶岩グループ,岩漁港の北側には岩溶岩グループが分布している(日本地質学会国立公園地質リーフレット編集委員会,2007,1.箱根火山.日本地質学会)。

 真鶴半島は,北西−南東に並んだ単成火山の集合体と考えられている。

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 余談であるが,箱根火山の基盤岩は,南側の伊豆弧の地層と北側の本州弧の地層に分けられる。

伊豆孤の地層
 湯ヶ島層群:1,000万年前の地層で火砕岩、溶岩、貫入岩からなり変質作用を受けている。真鶴半島の南の藤木川流域に,やや広く分布している。
 早川凝灰角礫岩:400万年前〜300万年前の地層で,伊豆弧の海底に堆積した海底土石流堆積物である。国道1号の箱根湯本から宮ノ下の崖で見ることができる。
 須雲川安山岩類:安山岩質凝灰角礫岩,火山角礫岩,溶岩からなる。箱根湯本から畑宿にかけての須雲川や湯本温泉のホテル天成閣の玉簾ノ滝の下半分がこの地層である。

本州孤の地層
足柄層群:伊豆孤と本州孤の間のトラフ堆積物で,200万年前〜100万年前に形成された。箱根カルデラの北の内川より北に広く分布している。地蔵堂から足柄峠へ登る道路の金時山溶岩(玄武岩質)の下に見られる。
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岩溶岩
写真1 岩海水浴場北側の岩溶岩グループ
 安山岩溶岩の末端を見ているのかもしれない。橋は真鶴道路の岩大橋である。


真鶴溶岩
写真2 琴ヶ浜南の真鶴溶岩グループ
 安山岩であるが細かい流理が発達している。赤褐色の自破砕部を挟んでいる。


クスの大木
写真3 クスの大木
 先端の真鶴岬に向かう道路脇に生えているクスの大木である。江戸時代に小田原藩が松苗を15万本植林したと言われ,その後,皇室御用林となったため大きな木が残った。


三ツ岩
写真4 三ツ岩
 右の二つが少し重なっているが,三つの岩の峰がある。
 ここからは,三浦半島,房総半島,大島,利島,新島,初島,神津島,伊豆半島の小室山,大室山が見える。条件が良ければ三宅島も見えると言う。


番場浦の安山岩
写真5 番場浦の岩溶岩グループの安山岩
 これも流理がはっきりしている。しかも直立している。岬の南の番場浦まで,海岸沿いに遊歩道がついている。


お林展望台
写真6 お林展望公園の満開の寒桜(多分)



明神ヶ岳2017/02/20 17:47

 箱根火山外輪山の北東に明神ヶ岳がある。カルデラ形成前・外輪山形成期の溶岩で構成されていて,溶岩は四つに分けられている。初期はデイサイト質で,その後,安山岩質に変わり,山頂付近を構成するもっとも新しい溶岩は玄武岩質である。この火山体の溶岩は,北東に流れ南足柄市の標高100m付近までを覆っている。

 2017年2月10日(金),大山などは雪ですっかり白くなっていたが,行けるところまで行こうと出かけた。最初の目論見は,大雄山線の大雄山駅(すぐ隣のバスの停留所名は「関本」)からバスで地蔵堂まで行き,金時山へ登るつもりであった。しかし,大雄山駅に着いた時は,地蔵堂行きのバスは出た後で,1時間以上待たないと次のバスがない。そこで,バスが割合頻繁に出ている「道了尊」行きに乗ることにした。

 大雄山線というのは,「大雄山最乗寺」への参拝客を運ぶための鉄道として始まったようである。最乗寺は,1394(慶永元)年3月に建立されたという(http://www.daiyuuzan.or.jp/index.html)。
 1392年に南北朝が合体した直後で,後小松天皇の時代ということになる。道了尊というのは,最乗寺の守護で修験道満位の行者・相模房道了尊者のことである。道了大薩埵(どうりょう・だいさった:薩埵というのは菩薩のこと)とも呼ばれている。

 バスは,大雄山駅(関本)から南東に向かい狩川を渡ってしばらく行くと,いきなり山の中へ入っていく。ヘアピンカーブのある杉林の中の道を登っていく。大雄山茶屋天んぐ本店を過ぎたところから,遊歩道があるらしい。終点の「道了尊」停留所は杉林の中である。


最乗寺
写真1 登山道入口付近から見た最乗寺
 杉の大木の間にお寺の建物が散在している。天狗が出そうな雰囲気である。


明神ヶ岳溶岩
写真2 明神ヶ岳溶岩
 登山道の標高400m付近,林道に交差する手前に露出する明神ヶ岳溶岩グループ(Mj2)の安山岩露頭である。


変質した明神ヶ岳溶岩
写真3 明神ヶ岳溶岩
 標高410m付近,林道黄砂直前の安山岩露頭である。変質している。


見晴小屋
写真4 明神ヶ岳見晴小屋
 登山道が横断する上の林道の少し上にある小屋である。標高660mである。この付近から雪が一面に積もっている。


明神ヶ岳山頂溶岩
写真5 標高790m付近の岩塊
 この付近の尾根には明神ヶ岳山頂溶岩グループ(Mj4:玄武岩質)が分布しているとされている。


明神ヶ岳山頂溶岩
写真6 明神ヶ岳山頂溶岩グループの顔つき
 斜長石の斑晶の目立つ安山岩である。登山道の標高810m付近である。


標高810m
写真7 標高810m付近からの眺め
 酒勾川と小田原市街,不動山・曽我山の向こうに相模湾。


標高880n
写真8 標高880m付近から上を見る
 雪がくるぶしまであり,足下がかなり滑る。時間も午後1時を過ぎたので下ることにした。この尾根は,明神ヶ岳山頂溶岩グループの流走面のようである。この付近の尾根の平均傾斜は12°である。この直線の登山道は,昔,木材を出した索道跡のようである。


碧落門
写真9 碧落門を見上げる
 二つある本堂に向かう門のうち,山側の碧落門を見上げる。「碧落」というのは「青い空」のこと。


大涌谷2017/02/20 21:03

 箱根火山は2017年1月現在,「噴火警戒レベル1」である。大涌谷周辺の想定火口域では,噴気や火山ガスに注意が必要である。( 箱根火山の火山活動解説資料。平成29年1月。気象庁地震火山部 )

 2017年2月8日(水)に家族と箱根に行った。須雲川沿いの箱根新道を行き,元箱根の海賊船乗り場へ着いた。冬の普通の日とあって全く渋滞することはなかった。
 今年の春節は,1月27日から2月2日の7日間だそうで,すでに時期は過ぎていたが,中国からの観光客が多かった。

 元箱根から桃源台へ海賊船に乗って行った。天気が良く山々がよく見えた。
 桃源台から箱根ロープウェイで大涌谷へ。現在,大涌谷と早雲山の間のロープウェイは休止している。同じコースを小田原に戻った。


芦ノ湖
写真1 箱根ロープウェイと芦ノ湖


冠ヶ岳
写真2 ロープウェイから見た冠ヶ岳と大涌谷


大涌谷
写真3 大涌谷


元箱根
写真4 海賊船から見た元箱根
 背後の山は上二子山(左)と下二子山。