共謀罪2017/03/02 21:34

共謀罪法案は「市民が長期4年以上の刑を定める犯罪に違反する行為を話し合い合意すれば,実際に実行しなくとも処罰できるといいう法律」(「秘密保護法」廃止へ!実行委員会ほか編集,20171月,一から分かる共謀罪 話し合うことが罪になる。5p)である。

201731日の新聞報道によると,共謀罪法案で対象となるのは,91の法律の277の罪であるという(朝日新聞デジタル,201731日)。この中には,例えば「【不正競争防止法営業秘密侵害等不正競争等 」といったものが含まれている。

 

日本の法律は,法律違反の「行為」を処罰するという「法益保護主義」に基づいているので,悪い「意志」を持って相談しても実行しなければ処罰しないというのが原則である。この原則を崩すことになる。

この原則を崩している法律としては,「特定秘密の保護に関する法律」(平成二十五年十二月十三日)がある。この法律では,「・・行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、五年以下の懲役に処する。」(第二十五条)と規定されている。ここで言う「行為」とは,業務で知り得た特定秘密を漏らすことである。そして,第二十六条では,「・・行為の遂行を共謀したものが自首したときは、その刑を減軽し、又は免除する。」としている。

 

今回の共謀罪は,「国連越境組織犯罪防止条約」の批准のために必要であるとして「テロ等組織犯罪準備罪」として提案されるようである。共謀罪法案が通らなければ,東京オリンピックが開けないという理由がまことしやかに宣伝されている。

しかし,この条約の適用範囲は「・・性質上国際的なものであり,かつ,組織的な犯罪集団が関与するものの防止,捜査及び訴追について適用する。」(第三条1項)となっている。「テロ等組織犯罪準備罪」がなければ条約を批准できないというのは真っ赤な嘘と言ってよいであろう。ましてや,東京オリンピックが開けないというのであれば,オリンピックを招致したことが間違いだということになる。

 

「心で思ったことを人に話したら罰せられる」というのは,ほとんど小説の世界だと思っていたが,現実になろうとしている。なんとしても,やめて欲しいと思う。    


第55回試錐研究会2017/03/03 10:17

 2017年2月23日(木),午後1時15分から午後5時30分まで,札幌市北区の札幌サンプラザで,表記講演会が開かれました。

 今年の特別講演は,北大農学研究院の丸谷知巳特任教授による「地震・火山・豪雨による連鎖複合型土砂災害」でした。
 一般講演は,地質研の石丸 聡氏の「2016年8月の台風による斜面災害」,防災地質工業の雨宮和夫氏による「最近の北海道における斜面災害と周氷河性斜面堆積物」,アクアジオテクノの石塚 学氏による「熊本地震 水井戸被害調査」でした。


丸谷氏
講演する丸谷知巳氏

<丸谷氏の講演>
 日本での地震は,2000年以降マグニチュード8以上の地震が多くなっています。火山噴火は1900年以降やや多い傾向にあります。豪雨は1960年頃から増加傾向にあります。

 熊本地震では地震によって大規模な崩壊が発生した後,雨によって側部に崩壊が発生しています。地震による崩壊は遷急点の上辺りで起こっています。

 2016年8月の台風による北海道の災害では,十勝川で河床の上昇が起こっています。主に火山噴出物が移動しているのですが,川によっては花崗岩地域で土石流が発生しています。芽室川では横方向の移動が顕著でした。冬山川では河床が2m上昇しました。
 豪雨により土砂が移動・堆積し河道閉塞を起こし水害が発生するという複合型の災害が見られました。
 豪雨により土砂が運ばれて河床が上昇しても,ある程度年月が経つと浸食によってほとんどもとの河床に戻るというのがこれまでの状態でした。しかし,豪雨の間隔が狭くなってくると河床が元の状態に戻る前に次の土砂によって河床が上昇するということがおきます。そのため,全体として河床が上昇して新たな災害が発生する可能性が生じます。典型的な例をニュージーランドの河川で観測しました。
 災害を減らすための対応方法は,固定観測を継続して行うこと。広範囲を頻度高く移動観測すること,避難経路の伝達,そして最後は災害を受けにくい土地利用を行うことです。
 

石丸氏
講演する石丸氏


雨宮氏
講演する雨宮氏


かでる2・7 ひな祭りコンサート2017/03/04 18:05

 「かでる2・7」で合地信生さんの「考古学と岩石学の接点&ブラタモリ」の講演があったので少し早めに行ったら,入ってすぐのホールでピアのコンサートをやっていました。約30分の短い時間でしたが,愉しむことができました。
 演奏者は,戸田浩子氏で「ティアレ・マオリの里にて」など6曲くらいを演奏してくれました。
 なかなか良かったです。


戸田浩子氏
演奏する戸田氏


戸田浩子氏
演奏の合間に話をする戸田氏


合地信生「考古学と岩石学の接点&ブラタモリ知床」2017/03/04 21:06

 表記の講演が2017年3月3日(金)午後1時から,札幌市の「かでる2・7」で開かれました。北海道総合地質学研究センターの第3回研究セミナーです。


合地信生氏
講演する合地氏

 青森県三内丸山遺跡の石斧について共同研究する機会があり,北海道,北東北の石斧について,材料となっている岩石の種類・出土した遺跡の時代を調べました。石斧の材料としては,平取町額平川産のアオトラ石と神居古潭渓谷産の青色片岩(せいしょく・へんがん)が,広い地域に流通していることが分かりました。

 額平川のアオトラ石は,緑色岩とか緑色泥岩とか言われていましたが,ナトリウム角閃石を含んでいて,ある程度の高圧変成作用を受けた変成岩と考えられます。
 神居古潭渓谷の青色片岩を材料とした石斧は,神居古潭の下流の深川盆地に面した遺跡で発見されています。

 北東北(東北の北部)から北海道にかけての遺跡で出土する石斧の材料は,緑色片岩(アオトラ石)が最も多く,次いで青色片岩,そして花崗岩あるいは安山岩です。南へ行くほどアオトラ石の割合は減っていくこと,太平洋側に比べて日本海側でアオトラ石の割合が少ないことなどの特徴があります。
 また時代によっても石斧に使われている材料が変化します。縄文時代中期(4,500年前頃)までは北筒式土器文化圏では青色片岩が,円筒式土器文化圏ではアオトラ石や安山岩が,大木式土器文化圏では花崗岩が主体となっています。これに対して,縄文時代後期(3,500年前)には二分化されます。

 石斧を作る砥石は,川端層の砂岩などが使われます。これには変成岩起源の鉱物が含まれています。

 石斧材料は,額平川流域や神居古潭から南茅部に運ばれ、ここで加工され三内丸山遺跡など,北東北へ持って行かれたようです。

 次に,土器の材料についてです。
 土器の材料を特定するには,X線回折によって含まれる鉱物を同定し,蛍光X線で成分組成を求めるほかに,示差熱分析によって胎土(たいど:陶磁器の本体を形づくる粘土)の焼成温度を推定することやガラスの含有量,ガラスの水分量をを推定することが有効です。粘土は550℃〜1,150℃の間でガラス化するようです。土器の焼きの良さ(焼成温度)は水分量によって定量化できる可能性があります。

 地質と考古を結ぶ非常に内容のある講演でした。


残業の上限規制2017/03/14 15:56

 残業の上限規制が,
<「きわめて忙しい1カ月」の上限は、安倍晋三首相の「裁定」により、連合が主張する「100時間未満」という表現で決着する見通しだ。>
と言う.(朝日新聞デジタル,2017年3月13日21時35分)
 完全な論点そらしである.上限規制の中身より安倍首相の「裁定」に重点を置いた報道である.

☆労働時間の基本は,1日8時間,1週間40時間である.
☆時間外労働の限度は,36協定を結んでいる場合で,1ヶ月45時間,1年間360時間である.
☆月80時間を越える時間外労働は,脳・心臓疾患の発症との関連が強い.

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 労働基準法では,
<(労働時間) 第三十二条  使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
○2  使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。>
となっている.これが基本である.

 厚生労働省の「時間外労働の限度に関する基準」では.延長時間の限度は1ヶ月45時間,1年間360時間(一般の労働者)となっている.
( http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040324-4.pdf )

 2015(平成27)年7月24日に決定された「過労死塔の防止のための対策に関する大綱」では,
<脳・心臓疾患に係る労災認定基準においては、週40時間を超 える時間外労働がおおむね45時間を超えて長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まり、発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できるとされていることに留意するよう周知・啓発を行う。>
となっている.

 塩崎泰久厚生労働大臣は,2017年3月10日の記者会見で,
<労使の代表が真剣に話し合っていただいていますので、良い結論を出していただいて、私達が行動計画に入れ込んでいけるように、お願いできたらありがたいと思っております。>
と記者の質問に応えている.所管大臣としての意見は,ないのだろうか.

 実際に100時間近い残業を経験した人は,この「裁定」に疑問を呈している.
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 私は,会社に入るのが遅かったため,入社当時から時間外手当が付かなかった.時間を気にせず仕事ができるという点では,ありがたい面もあった.もちろん,管理職相当の手当は付いていてそれなりの収入ではあったが,事業所での年収を調べてみると時間外が付く人が収入のピークを示し,その上の年代の手当が付く人(管理職待遇)で年収がガクンと下がっていてびっくりした.時間外労働で生活を維持していたとも言える.

 その後,成果主義というのがはやった.富士通で最初に導入されたと記憶している.かなり,もてはやされた方法であった.しかし,評価が公平に行われるのかという問題が出てきて,いつの間にか廃れたように思う.成果主義では,時間外労働をどう評価するかは難しい面がある.多くの時間を費やしていることを良いと評価するのか,時間を多く費やしているのは能力が無いと評価するのかである.
 自己評価というのも取り入れられたが,結局,人件費の総額は決まっているので,それをどう配分するかという問題になってしまって,最後は帳尻合わせとなる.

 勤務時間の管理は,タイムカードが便利である.しかし,夕方,タイムカードを押した後,さらに仕事をすると言うことも行われていたようだ.サービス残業である.

 過労死がこれだけ問題になっている今必要なことは,最低,月残業時間は45時間(1日平均2.5時間)とし,はっきりとした罰則規定を設けることであろう.