小林 節氏の講演会2016/03/25 15:58

 あの,小林 節(こばやし・せつ)氏が,2016年3月24日(木)に札幌の東区民センター大ホールで講演した。
 「立憲主義にもとづく政治の確立と安倍政権の早期退陣のために」
が講演のタイトルである。

 今の安倍政権は,立憲主義をわきまえていない。安倍首相は次のように述べたことがある。
「『憲法というのは権力を縛るものだ』という側面はあるが,いわばすべて権力を縛るものであるという考え方は,王権の時代,専制主義的な政府に対する憲法という考え方であって,今は民主主義の国家である」
 しかし,王政の時代には君主が憲法であり絶対的な権力を持っていて立憲主義ではなかった。
 アメリカの独立戦争は攻め込んできたイギリスに対して自衛の戦争を行い勝利した。この時,初代大統領となった G. ワシントンは,王政には反対で大統領制を採用し,2期8年以上はやらないと言うことにし憲法を作った。

 自民党憲法草案にある「緊急事態」条項(第九章 緊急事態)は憲法の否定であり,独裁条項である。

 戦争になった場合,適用される法律は戦時国際法である。戦う人(軍隊)は制服を着て民間人と区別されている。自衛隊は防衛に専念するのが良く,第二警察という位置づけで良い。憲法により交戦権は認められていないが,日本が攻撃された場合は自衛のために防御する。

 護憲的改憲論は,他国を侵略しない,攻めてきたら自衛する,国際的な問題については国連決議にもとづいて動くと言うのが柱である。
 日本の現在の憲法を生かせば,様々な紛争に対して仲裁役として活躍できる。これを放棄するのは,もったいない話である。

 その他,北海道5区の衆議院補欠選挙のこと,野党5党交渉のこと,公明党のこと,共産党のこと,天皇制のことなど話題は多岐にわたった。

 今回は,講演者が写真撮影も録音もよいとのことであった。


小林節氏
講演する小林 節氏
 自分の主張を気持ちを込めて述べる聞き応えのある講演であった。


北海道新幹線開業2016/03/26 11:11

 北海道新幹線が新函館北斗駅まで,今日(2016年3月26日土曜日)開業しました。

 今回開業した区間では,青森県蟹田での水平ボーリングの仕事が印象的でした。多分,今の大平トンネルだろうと思います。
 この付近は,蟹田層と呼ばれる中新世から鮮新世の砂岩を主とする地層が分布しています。砂岩と言ってもほとんど固結していなくて地下水が豊富です。
 リバース工法で掘削しましたが,ケーシングを出たところでロッドが垂れ下がり折れてしまったり,孔壁が崩れたりとさんざん苦労して,300m の掘進予定を掘り切れずに終わりました。トンネル断面から外した位置で掘ったので,水抜き孔の役割はどうにか果たせたと思います。
 掘り始めは冬のさなかでしたので,ボーリング機械の搬入は雪の上でそれほど苦労しませんでしたが,撤収の時には氷が融け始めていて運搬用の重機が入れるかどうか危機一髪の撤収でした。

 函館から札幌までのルートは,室蘭廻りと今の倶知安廻りが検討されていました。これが決着したのは,1973(昭和48)年だったと思います。1973年11月に靑森−札幌間の整備計画が決定しています。倶知安廻りの方が50km ほど短いというのが主な理由だったように思います。
 当時としては,室蘭,苫小牧,千歳を通る方が良いだろうと思ったものです。今は,ニセコが一大観光地として海外にも有名になっているので,これで良かったのかなと思います。

 函館以北では長万部町の静狩から北東の昆布川に抜ける「内浦トンネル」の調査を行いました。地質調査,弾性波探査,水文調査,長尺のボーリング調査など一通りの調査を経験しました。
 当時は,その年度の調査が終わると,それぞれの区間を担当した地質コンサルタントが,鉄建公団に集まって発表会をやりました。これは,非常に勉強になりました。
 また,試験斜坑の掘削が2箇所で行なわれ,その一つが内浦トンネルで,変質帯での施工実績の収集でした。施工は NATM で行われました。もう1箇所は,大量湧水が予想された黒松内層で行われたと記憶しています。

 あれからすでに40年以上が経っています。新函館北斗と札幌間の工事では,トンネル掘削ズリの処理が大きな問題になると思います。いろいろと検討がされています。新青森までの工事での実績もあるので,より経済的な処理方法が取られるものと思います。
 
 すでに,新函館北斗駅の北1kmに坑口があり木地挽山の南西斜面の下を通る村山トンネル(延長5.265km),八雲町市街南西の野田追トンネル(延長8.170km),八雲町市街北西の立岩トンネル(延長16.980km), 昆布岳の北西斜面の下を通過する昆布トンネル(延長10.410km),赤井川カルデラの南側を通過し小樽の朝里川に抜ける後志トンネル(延長17.975km) などで掘削が始まっています。

 札幌から新函館北斗までは約212km ですから1時間程度で行くことができます。現在,新函館北斗と東京間は4時間ちょっとです。札幌から5時間で東京へ行くことができるようになるでしょう。運賃は片道3万円くらいでしょう。飛行機とどっちを取るか難しいところです。仕事で使うには自由席があると便利なのですが。

水島朝穂:はじめての憲法教室2016/03/27 14:43


はじめての憲法教室


 水島朝穂氏の「はじめての憲法教室−立憲主義の基本から考える」(2013年10月,集英社新書)は,憲法について意見を言うのであれば,少なくとも知っておかなければならないことが書いてあります。
 出版されたのは2年半前ですが,今でもその内容は少しも古くなっていません。

 憲法とは何か。『憲法には,「国家がしてはならないこと」と「してもよいこと」の基本が書き込まれている。そこに書かれていないことは,原則としてできない。』
 『これが憲法のもっとも重要な働きで・・・こうした憲法にもとづく国のありようを「立憲主義」という。』

 この本は,2013年5月16日(木)の午後に行われたゼミ討論を活字にしたものです。憲法に関する世論調査結果などの資料,学生たちの意見,水島氏の解説からなっていて大変読みやすい。

 近代立憲主義のエッセンスは,個人の自由を守ることと権力の暴走に対する歯止めとしての三権分立の二つです。
 『立憲主義を徹底するためのシステム』として,ドイツには『憲法裁判所』があり,500件以上の違憲判決・決定を出しています。これに対して,日本は司法裁判所が個別の事件を通じてのみ憲法判断を行う仕組みです。このような制度の違いがあることにも注意が必要です。

 憲法の「改正限界」というのがあります。憲法の根本的な性格−平和主義・人権・主権など−は改正限界と言って,そこには手を付けません。

 学生の一人が,映画「ジョニーは戦場へ行った」の中の父親の言葉から,「憲法九条というのは少数派(この場合,戦場に行く若者たち)を守るためにあるんじゃないかと思いました。」と言っています。なるほどなあと感心しました。

 自衛隊と国防軍,二院制について,憲法に込められた「言葉の仕掛け」など非常に興味深い話が続きます。

 憲法改正には三つの作法が必要です。
 一つは,どうしても憲法を変えなければ問題の解決が困難であることをきちんと説明することです。
 二つ目は,十分な情報の提供と自由な討論が行われることです。
 三つ目は,国民がじっくりと考えるための十分な期間が確保されることです。

 この本が書かれたときは,選挙権は20才以上でした。今,18才から選挙権が認められています。
 そのような若者,いわば少数者に,憲法に対する理解を深めるきっかけとして読んで欲しい本です。