水島朝穂:はじめての憲法教室 ― 2016/03/27 14:43
水島朝穂氏の「はじめての憲法教室−立憲主義の基本から考える」(2013年10月,集英社新書)は,憲法について意見を言うのであれば,少なくとも知っておかなければならないことが書いてあります。
出版されたのは2年半前ですが,今でもその内容は少しも古くなっていません。
憲法とは何か。『憲法には,「国家がしてはならないこと」と「してもよいこと」の基本が書き込まれている。そこに書かれていないことは,原則としてできない。』
『これが憲法のもっとも重要な働きで・・・こうした憲法にもとづく国のありようを「立憲主義」という。』
この本は,2013年5月16日(木)の午後に行われたゼミ討論を活字にしたものです。憲法に関する世論調査結果などの資料,学生たちの意見,水島氏の解説からなっていて大変読みやすい。
近代立憲主義のエッセンスは,個人の自由を守ることと権力の暴走に対する歯止めとしての三権分立の二つです。
『立憲主義を徹底するためのシステム』として,ドイツには『憲法裁判所』があり,500件以上の違憲判決・決定を出しています。これに対して,日本は司法裁判所が個別の事件を通じてのみ憲法判断を行う仕組みです。このような制度の違いがあることにも注意が必要です。
憲法の「改正限界」というのがあります。憲法の根本的な性格−平和主義・人権・主権など−は改正限界と言って,そこには手を付けません。
学生の一人が,映画「ジョニーは戦場へ行った」の中の父親の言葉から,「憲法九条というのは少数派(この場合,戦場に行く若者たち)を守るためにあるんじゃないかと思いました。」と言っています。なるほどなあと感心しました。
自衛隊と国防軍,二院制について,憲法に込められた「言葉の仕掛け」など非常に興味深い話が続きます。
憲法改正には三つの作法が必要です。
一つは,どうしても憲法を変えなければ問題の解決が困難であることをきちんと説明することです。
二つ目は,十分な情報の提供と自由な討論が行われることです。
三つ目は,国民がじっくりと考えるための十分な期間が確保されることです。
この本が書かれたときは,選挙権は20才以上でした。今,18才から選挙権が認められています。
そのような若者,いわば少数者に,憲法に対する理解を深めるきっかけとして読んで欲しい本です。
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