北海道新幹線開業2016/03/26 11:11

 北海道新幹線が新函館北斗駅まで,今日(2016年3月26日土曜日)開業しました。

 今回開業した区間では,青森県蟹田での水平ボーリングの仕事が印象的でした。多分,今の大平トンネルだろうと思います。
 この付近は,蟹田層と呼ばれる中新世から鮮新世の砂岩を主とする地層が分布しています。砂岩と言ってもほとんど固結していなくて地下水が豊富です。
 リバース工法で掘削しましたが,ケーシングを出たところでロッドが垂れ下がり折れてしまったり,孔壁が崩れたりとさんざん苦労して,300m の掘進予定を掘り切れずに終わりました。トンネル断面から外した位置で掘ったので,水抜き孔の役割はどうにか果たせたと思います。
 掘り始めは冬のさなかでしたので,ボーリング機械の搬入は雪の上でそれほど苦労しませんでしたが,撤収の時には氷が融け始めていて運搬用の重機が入れるかどうか危機一髪の撤収でした。

 函館から札幌までのルートは,室蘭廻りと今の倶知安廻りが検討されていました。これが決着したのは,1973(昭和48)年だったと思います。1973年11月に靑森−札幌間の整備計画が決定しています。倶知安廻りの方が50km ほど短いというのが主な理由だったように思います。
 当時としては,室蘭,苫小牧,千歳を通る方が良いだろうと思ったものです。今は,ニセコが一大観光地として海外にも有名になっているので,これで良かったのかなと思います。

 函館以北では長万部町の静狩から北東の昆布川に抜ける「内浦トンネル」の調査を行いました。地質調査,弾性波探査,水文調査,長尺のボーリング調査など一通りの調査を経験しました。
 当時は,その年度の調査が終わると,それぞれの区間を担当した地質コンサルタントが,鉄建公団に集まって発表会をやりました。これは,非常に勉強になりました。
 また,試験斜坑の掘削が2箇所で行なわれ,その一つが内浦トンネルで,変質帯での施工実績の収集でした。施工は NATM で行われました。もう1箇所は,大量湧水が予想された黒松内層で行われたと記憶しています。

 あれからすでに40年以上が経っています。新函館北斗と札幌間の工事では,トンネル掘削ズリの処理が大きな問題になると思います。いろいろと検討がされています。新青森までの工事での実績もあるので,より経済的な処理方法が取られるものと思います。
 
 すでに,新函館北斗駅の北1kmに坑口があり木地挽山の南西斜面の下を通る村山トンネル(延長5.265km),八雲町市街南西の野田追トンネル(延長8.170km),八雲町市街北西の立岩トンネル(延長16.980km), 昆布岳の北西斜面の下を通過する昆布トンネル(延長10.410km),赤井川カルデラの南側を通過し小樽の朝里川に抜ける後志トンネル(延長17.975km) などで掘削が始まっています。

 札幌から新函館北斗までは約212km ですから1時間程度で行くことができます。現在,新函館北斗と東京間は4時間ちょっとです。札幌から5時間で東京へ行くことができるようになるでしょう。運賃は片道3万円くらいでしょう。飛行機とどっちを取るか難しいところです。仕事で使うには自由席があると便利なのですが。