道東自動車道 夕張ー占冠2011/07/31 14:10


 道東自動車道の夕張-占冠間が2011(平成23)年10月29日に開通する予定です.開通に先立ち,土木学会北海道支部主催の見学会が7月27(水)に開かれました.旧狩勝線の土木遺産を見学したあと,占冠インターチェンジから工事中の自動車道に乗り入れ,最も夕張側にある久留喜トンネルを除く7つのトンネルを通り抜けました.案内は東日本高速道路株式会社 北海道支社 千歳工事事務所の友尻工務課長でした.
 現場は最後の仕上げの段階でしたが,工事中の道路を観光バスが行くという滅多に経験できない見学会でした.

 占冠インターチェンジから自動車道に入り最初のトンネルが,長さ507mの占冠中央トンネルです.このトンネルは,占冠の道の駅の向かいのスキー場の下を通ってタンネナイ沢で地表に出ます.この沢を渡ってすぐ長さ816mのタンネナイトンネルに入ります.このトンネルは後期白亜紀の地層(帯広側)と蛇紋岩を貫いています.国道274号から赤岩青巌峡の赤岩トンネルに向かう途中の対岸に出ている,どろどろの粘土状蛇紋岩がその一部です.
 タンネナイトンネルを出ると鵡川を横断し,長さ3,825mの占冠トンネルです.この坑口の地形は,地形図で見ると地すべり地形です.ニニウで地表に出て,鵡川を2度渡り穂別トンネルになります.穂別トンネルは長さ4,318mで,この区間で最長のトンネルです.土かぶりが約400mと大きく,しかも蛇紋岩を貫いています.掘削中は長尺先受け工,薬液注入工で切羽を安定させ,さらにインバートを円形に近くし,早期閉合し,覆工は二重支保工にするなどして完成させました.工事費は1メートル当たり1,000万円に達した区間もあったそうです.

占冠トンネル内を通過中


鵡川を渡る橋梁から穂別トンネルの帯広側坑口を見たところです

 穂別トンネルとその夕張側の長和(おさわ)トンネル(長さ1,541m)の間は短いため,路面の積雪を防ぐためにスノーシェッドとスノーシェルターでつないでいます.ここから夕張側は,しばらく明かり区間が続きます.途中に「むかわ穂別インターチェンジ」があります.穂別ダム左岸から道々穂別インター線でアクセスできます.このインターは夕張インターから14.4km,占冠インターから20.1kmで,緊急時のことも考えて設けられたそうです.


穂別トンネルと長和トンネルの間のスノーシェッド
前方のアーチがスノーシェッドで,トンネルの排煙を逃がす構造となっています.

 大夕張トンネルは長さ4,175mです.地質は後期白亜紀の地層です.このトンネルはJR 根室線の登川トンネルの上を鉛直距離33mで通過しているそうです.この距離を確保するために交差付近を最も高くして東西にそれぞれ2%の勾配で下がるという縦断線形を採用しています.
 最後に通ったのは長さ1,955mの楓トンネルです.このトンネルとその西側の久留喜トンネルは古第三紀の地層を通過しています.

大夕張トンネルの避難坑と本坑の連絡通路
避難坑は二次覆工をせず,吹付けコンクリートと鋼製支保工のみです.

 夕張インターから占冠インターまで34.5kmのうちトンネル区間は17.6kmで,約半分がトンネルと言うことになります.造ることに対していろいろと議論のあった道東自動車道ですが,積雪時の運転を考えると非常にありがたい道路であることは確かです.
 積雪初期の樹海ロード(国道274号)の橋の上はそこだけ凍っていることがあり,よほど注意していないとスリップすることがあります.また,日勝峠ではトレーラトラックが,運転席とトレーラーが折れ曲がるジャックナイフ現象を起こし道路をすべて塞いでしまい,30分以上足止めを食ったこともあります.


バスに同乗し説明をして下さった友尻工務課長.感謝です.

札幌西部山地の最高峰ー余市岳2011/07/31 21:52

 札幌の西には手稲山を初めとして1,000m級の山々が連なっています.それらの中で最も高いのが余市岳です.余市岳は,北東にある朝里岳から続く1200mほどの平坦な尾根から突き出た北東-南西に延びる三角の山頂を持っていて,標高は1448.0mです(印刷版の1:25,000地形図では1448.1mとなっています).
 
 現在,余市岳には白井右股川コースと赤井川コースがあります.赤井川からは林道を上って登山道にとりつくコース(赤井川コース)とキロロスキー場のゴンドラで1180m付近まで行き,1時間50分ほどで山頂に達するコース(ゴンドラコース)とがあります.
 今回現地を見た感じでは,白井右股川コースはあまり登山道の伐開がされていない感じでした.ですから,このコースを取るときは余分に時間を見た方が良いかもしれません.

1)キロロのマウンテンホテル脇の林道入口
左側の台形の山が余市岳です.

 今回は赤井川コースを上りました.マウンテンホテルに向かって右の道路を行くと登山ポストがあります.かっては簡易舗装をしていた跡のある林道をひたすら上っていきます.最初は道路の補修に珪化した白い石が使われています.しばらくするとそれもなくなり,スキー場への分岐を過ぎて,やがて下りになってリフトの広場に出ます.ここから登山道になります.

2)林道脇の採石場跡
黒灰色の輝石安山岩ですが,全体に緩んでいて地すべり移動土塊と考えられます.

3)林道終点付近の熊の糞
子熊の糞と考えられます.ここでも今年は熊の目撃が多いようです.


4)林道終点
朝里No.1LIFTに下をくぐって右股の沢沿いの登山道に入ります.中央の緩斜面はゴンドラ終点駅付近を頭部とする地すべりの一部です.

5)右股の沢沿いの登山道
この先の徒渉部では右手前方に道が続いています.前ばかり見ていると見逃します.

 しばらく右股の沢沿いに登ったあと沢をわたり尾根道に出ます.この沢を渡るところでは前だけ見ていると道がありません.右手やや下流の対岸に道が続いています.30分ほど歩くと小さな沼の跡があり急登が始まります.この付近で標橋1010mほどです.
 この付近まではすべて地すべり移動土塊のなかを歩いています.キロロのゴンドラの山頂駅は地すべりから外れていますが,その西側の馬蹄形の急斜面は地すべり滑落崖です.林道に安山岩の露頭がありますが,これも地すべり移動土塊と考えられます.右股の沢を渡った付近からの緩やかな斜面も地すべり移動土塊が形成したものです.

6)標高1180m付近の安山岩
黒っぽく赤褐色を呈していて朝里岳火山噴出物の自破砕状溶岩と考えられます.この先からハイマツが出てきます.

 急登部を登り終わると緩斜面に出てハイマツが出てきます.その途中に暗赤褐色の安山岩の転石(露頭?)があります.これは朝里岳火山噴出物と考えられます.朝里岳溶岩の形成年代は約260万年前とされています.藻岩山の最も新しい溶岩や無意根山の山頂付近の溶岩と大体同じ頃噴出したものです.


7)ゴンドラコースとの合流点
クマザサ,ハイマツで周りは見えません.踏み跡からはゴンドラコースがメインストリートのようです.

 クマザサに両側を囲まれて緩斜面を登っていくとゴンドラコースからの登山道と合流します.この付近が見晴台と呼ばれている所です.この付近から朝里岳にかけてはビックリするくらい平坦な尾根となっています.平坦面溶岩と呼ばれた理由が良く分かります.

8)余市岳南東斜面の地すべり地形
木の生えていない平坦面は地すべりブロックの頭部です.巾500m,奥行き1,000mの規模の地すべりです.滑落崖の高さは90mほどです.


9)白井右股沢コースとの合流点
標高1239mのコルで合流します.右の踏み跡のあるところが登山道ですが,笹で覆われています.

 ここから白井右股川コースとの合流点のある北東コルに下ります.左手に遠く定山渓天狗岳の岩峰が見えます.余市岳の南東斜面は比高300mほどの急斜面となっていて,その下部には地すべりがいくつも存在しています.地形図で湿地や沼が描かれていますが,これらは地すべりの頭部陥没部に形成されたものです.

10)北東コル付近から見た定山渓天狗岳
遠くの尖った山が定天で,雲に半分隠れている左の山が白井岳です.


11)急登部の輝石安山岩の露頭

 北東コルを過ぎると急登が始まり登山道には白っぽい安山岩が目立つようになります.これが余市岳の山頂付近を構成している余市岳火山噴出物の安山岩溶岩で,頂上まで同じ安山岩が露出しています.白濁した斜長石と黒い輝石が目立つ石です.この最後の急登は足場の悪さもあり結構きつく長く感じます.ハイマツのなかを登って古い山火事の跡を過ぎると観音像とケルンのあるところに出ます.頂上はここからさらに500mほど行ったところですが,ハイマツの中の平坦な道で気持ちよく歩くことができます.


12)頂上の平坦な尾根
道の向こうに見えるのは観音像とケルンのあるところです.

13)頂上を望む
一面,ハイマツの群落です.


14)余市岳の頂上
標高1448.1m,三角点があります.急登部から同じ岩質の安山岩が続いています.



 頂上は,時々雲がかかりこの日は眺望は得られませんでした.ただ,定山渓天狗岳だけが見えていました.この時期,ハイマツの上をブヨが飛び交っています.でも,人慣れしていないのか刺すことはありませんでした,夏の無意根山は行ったことがありませんが,余市岳山頂付近のハイマツの群落は見事です.

15)頂上のハイマツの群落
南西方向を望む.雲のためにこの方向の景色はまったく見えません.一面のハイマツの上をブヨが飛び回っています.

16)ハイマツの松ぼっくり

 頂上で昼飯を食べ,30分ほど休憩して下りにかかりました.夏の暑い日で,雲がかなり上昇していたので雷を心配しましたが,雷鳴もせず静かな山頂でした.この日,出会った人は2人でした.

17)下山途中で出会った「はまなす2号」(北海道消防防災ヘリ)
何の目的で飛んできたのか分かりませんが,1100m付近からの急登部を降りている時に頭上の木すれすれまで飛んできました.

 帰りは林道に出てからが,長くてつらい歩きでした.午前9時前にマウンテンホテル脇の登山ポストを出て,頂上には12時過ぎに到着しました.帰りは頂上を12時半過ぎに出て午後3時20分頃,登山ポストに着きました.登り3時間30分,下り2時間30分でした.

18)キロロマウンテンホテル
長い林道歩きでした.行きよりも長く感じました.