雲の中の樽前山と北湯沢温泉2011/06/04 13:40

 6月2日は,天気は何とか持ちそうなので樽前山に登ることにしました.しかし,7合目登山口に着くと,霧というか雲が巻きながら流れていました.それでもせっかく来たのだから登ろうと装備を整え登りはじめました.天気が良ければ外輪山で絶景を眺めながらお湯を沸かしカップヌードルを食べ,コーヒーを入れようと思ったのですが,とてもそんな天気ではなかったので,最低限の水と食料だけを持ってでかけました.


              1)樽前山7合目の登山口
シーズンにはこの駐車場に入りきれないほどの賑わいになります.さすがに山開き前とあって数台の車が停まっているだけでした.


              2)7合目登山口の看板
中央下が登山口で左の登山道を登っていくとすぐに樹木が無くなり吹きさらしとなります.外輪山からの見晴らしはすばらしいはずで、外輪山を1周する予定でした.

 いつもなら,支笏湖が見える広場も霧が舞う状態で,まったく眺めが得られません.外輪山への途中の道には,アカモノの可憐な花が咲いていました.それを見ながら,霧の中を外輪山の縁に到着しました.50m先も見えない状態で,目の前の踏み跡だけが目印です.何とか樽前山神社奥宮まで行きました.眼鏡から滴は垂れる,手はかじかんで感覚が無くなりかける,身体は冷えるという状態でした.奥宮で風をよけながら休憩して元気を取り戻し,引き返すことにしました.この山の外輪山はまったく風をよけるものがないので,悪い風に巡り会うと本当に悲惨な状態になります.



           3)樹林帯の中の見晴台から樽前山を見る.
まだ,沢に雪が残っています.このときは雲が少し上がりましたが,風に流されて霧が舞う状態です.


         4)手入れがされず障害物となっている「階段」
この丸太二つを重ねた「階段」は,土砂止めとはなりますが,階段としての役割は果たしていません.みんな脇を通るので踏み跡が広がっていきます.


                  5)アカモノ
梅沢俊さんの「北海道の高山植物」で見て,一番似ているのがアカモノでした.


                 6)雲の中に突入
50m先が見えるかどうかという状態で,風が強く手が凍えます.


               7)外輪山の上の火山弾


              8)樽前山神社奥宮に到着
風は左からの向かい風です.この神社の入口の壁の中で休憩して戻ることにしました.


               9)外輪山の尾根を行く
踏み跡だけが頼りです.これは帰り道で左側が火口です.


 下りは,荒れた登山道に苦労しました.木の階段が付けてあるのですが,段差が高すぎたり階段の背後がえぐられて壁になっているだけだったりで、特に背の小さい人には,かなりの労力を使わせます.結局,帰りの方が時間がかかってしまいました.



             10)階段に苦労しながら降る
障害物競走です.おそらく,ロープがなければ階段をよけて踏み跡がどんどん拡がるでしょう.


               11)支笏湖は見えず
雲の下に出ましたが支笏湖は見えませんでした.


7合目駐車場の脇でカップヌードルと握り飯の昼食をとり,コーヒーを飲んで,この後どうするか考えました.苔の洞門を除いて,北湯沢温泉で温泉につかり,中山峠を通って札幌に帰ることにしました.


                 12)苔の洞門
閉鎖中でした.トラックの前方が洞門への道です.


          13)ほろほろ山荘の「ワンちゃんの足湯」
この温泉は無色透明,味もありません.温度は80℃以上あります.ほろほろ山荘は大田区クロスカントリースキーの時に泊まる宿です.昔の浴場は巨礫の間に浴槽があるというものでいたが,すっかり新しくなりました.


              14)長流川河床の流紋岩
「白絹の床」として売り出しています.洞爺湖有珠山ジオパークのサイトの一つです.


              15)川岸の泉源の一つ
川岸には泉源がいくつかあります.温泉としてはすばらしいところです.

天気を見て行ったのですが,見事に外れました.でも,温泉に入れたし,それはそれで満足でした.帰りの中山峠で見た無意根連峰は,まだ雪がたくさん残っていました.



山の地質あんない2011/06/10 18:25



 山を,地質から説明している本がいくつか出されています.「自然を読み解く山歩き」(小泉武栄,2007,JTBパブリッシング),「山が楽しくなる地形と地学」(広島三朗,2008,ヤマケイ山学選書)などです.
 また,地質調査総合センターでは「地質で語る百名山」(http://www.gsj.jp/Info/100mt/index.html)というサイトを設けています.さすが,地質の専門家が書いているものだけに内容は充実しています.
 ちょっと毛色の変わったところでは,「超火山[槍・穂高]地質探偵ハラヤマ 北アルブスの謎を解く」(2003,山と渓谷社)があります.これは読み物としても面白いし,槍,穂高に行ってみたくなります.お勧め本です.



 山に特定したものではありませんが,地質案内として,いろいろな山の地質を解説した本もあります.
 最近出版されたものでは,「札幌の地質を歩く【第3版】道央地域の地質あんない」(宮坂省吾ほか編著,2011,北海道大学出版会)があります.この本では,手稲山,藻岩山,恵庭岳,樽前山,羊蹄山,ニセコ,夕張岳などが扱われています.

 山に登りながら地質や地形を観察する助けになるものとして,私が見た中では小泉武栄氏の「自然を読み解く山歩き」が優れていると思います.それぞれの山をつくっている地質というのは,人が一日で歩く範囲でそれほど劇的には変化しません.地質や地形に興味を持ってもらうのが難しいところは,このあたりにあると思います.ですから,地形・地質と植生,特に花との関連などを含めて解説するのが,地質に興味を持ってもらうポイントだと思います.また,花などの植物は季節によって変化します.これも樹木や花の有利な点でしょう.
 小泉氏の本にはこのような工夫が凝らされています.

「札幌の自然を歩く【第3版】」では,カラー口絵で見学コースのそれぞれの地点の地質時代が一目で分かる図が付いています.これは,地質の空間的時代的相互関係を把握する上で大変便利な工夫です.

 地質・地形に対する興味を身近な露頭から持ってもらうことは,これからますます大事になるとおもいます.それは,災害から身を守るという実利的な面もありますが,地質を含めた総合的な自然の理解は,人の考えに深いところで影響を与えると思います.人が自然に対する畏怖の念を持ち,自分の存在を客観的に見つめるような思考を醸成するのではないかと思います.

トレールランニング:砥石山2011/06/13 21:11

 天気はあまり良くないけれど,衛星画像を見ると何とか持ちそうなので,トレールランニングに出かけることにしました.今回のコースは,藻岩山の北西にある小林峠から砥石山へ登り琴似発寒川上流の砥石沢を下るというものです.

 朝7時半頃,札幌の東北部にある家を出て,地下鉄で真駒内まで行きました.駅前で山水団地行きの停留所を探すのに,ちょっと,うろうろしてしまいました.

1)札幌真駒内の定山渓バス停留所
 地下鉄の改札口を出てすぐの所にあります.日曜日でも山水団地行きの便は困らない程度に出ています.
 ここは真駒内で開かれるランニング大会で良く来るのですが,道路の向かい側がアカマツの並木になっているとは気がつきませんでした.


 バスで藻岩山の裏の北ノ沢の奥の山水団地まで行きました.ここのバスの停留所で,身支度を調えて走り始めました.山水団地停留所の標高は約230m,今日の最高点である砥石山の標高は827mですから約600mの標高差です.

 上はランニングシャツにTシャツの2枚重ね,下は膝上のタイツにランニング用のパンツという出で立ちです.リュックは12リットルのトレラン用(グレゴリー)で,2リットルのハイドレーションパック(プラティパス)を背負いました.とにかくこれで,水については,ほぼ心配なくなりました.
 一般に登山の時に必要な水の量は,1時間当たり(体重÷2)×10ミリリットルだそうです.体重はkgです.私の場合,体重は70kgちょっとですので,時間当たり350ミリリットル必要と言うことになります.2リットルあれば5時間は大丈夫という計算です.

2)小林峠の登山口
 南東から延びている尾根にとりつきます.左に見える石碑には,北ノ沢の住民にとって小林峠を通る道路が大事であったと書いてあります.


 最初は急な登りですが,それを過ぎると上り下りを繰り返すものの,走りやすい柔らかい道です.途中から雲の中に入ったので幽玄な雰囲気になりました.ツツジがまだ咲いていました.

3)気持ちの良い登山道
下は柔らかくほんとに走っていて気持ちが良い.


4)T4分岐手前のツツジ
やっぱり,花を見ると,ほっと心が和みます.


5)標高約700mの通称三角山からの眺め
 雲の中でまったく見晴らしは効かない.


6)砥石山頂上手前の急な登りに咲いているシラネアオイ
シラネアオイは結構あちこちにあります.砥石山から福井への道は,あまり人が入らないこともあり花は豊富です.


 砥石山の頂上も雲の中でした.今日は日曜日なので何人かの登山者がいました.やっぱり,まったく一人旅と言うよりは寂しくなくて良いです.
 小林峠の登山口から頂上まで約1時間15分でした.雲の中を走ったせいもあるのでしょうが,上半身はびっしょりです.ここで約10分ほど休憩を取りました.パンを食べ,飴をなめ,水を飲み,自分でもビックリするくらい元気になりました.

7)砥石山頂上
 なかなか風情のある風景です.天気の良い日も良いですが,こんな雰囲気も,また良いものです.


 ここからは,初めてのコースです.地図で見る限り,あまり登りはないはずです.でも,あまり人が通ったあとが無く道は草で覆われているところもあります.草に弱い人はロングタイツが必要でしょう.雰囲気も,いかにも熊が出そうな感じです.例によって,呼吸に合わせて声を出しながら走りました.これは,裏声で「ホー,ホー」と声を出します.呼吸が乱れないし声も良く届きます.地質踏査でこの声を出していたら,遠くにいた仲間が犬が来たと思って慌てて逃げたそうです.地質踏査では,熊避けに一番良いのは石を叩くことです.硬い石であれば鈴や笛などよりも一番遠くまで音が伝わるし,何と言っても地面を叩くので熊は気付いてくれるはずです.
 でも、先行している人が居たので,それほど心細い感じではありませんでした.

8)草に覆われた登山道とニリンソウ
 ニリンソウの群落がありました.道を覆うように生えています.


9)ニリンソウ
 スズランのような形の花が二つずつ付いています.


 標高750m付近から急な下りになります.凍結融解作用によると思われる岩塊が斜面にへばりついています.足下に注意しないと足を取られます.岩の上は結構滑ります.
 札幌の西の山々は,どこも安山岩の山で雰囲気がよく似ています.割合なだらかな裾野と急な山頂付近の斜面という組み合わせです.手稲山の西斜面の岩塊原が見事ですが,藻岩山でも頂上直下に岩塊だけの崖錐堆積物があります.夏には,この岩塊の隙間から冷たい風が吹いてきます.

10)凍結融解作用によると思われる崖錐堆積物


11)トドマツの林の中を下る


 急な下りを過ぎて標高550mくらいで小さな沢に出ます.沢沿いの道も草で覆われています.何となく人里に近くなった感じがします.ここにもトドマツの林があります.

12)草で覆われた道
 踏み跡はしっかりしているので迷うことはありません.左側は小さな沢です.


 やがて,林道との合流点に出ました.札幌周辺遊歩道というのがこの登山道の名前のようです.砥石山山頂まで3.1kmとありました.ここまで山頂から40分くらいです.小林峠登山口からは8.3kmで,2時間10分でした.登山案内書では,このコースのタイムは4時間になっていますから,まあ,曇りが続いて道がぬかるんでいた割には良いペースで走れたのかなと思います.

13)砥石沢コースの登山口
 左が登山道で,砥石沢の支流に沿って登っていきます.


 この後,中ノ沢との合流点を過ぎ,採石工場の間を通り,市道西野−真駒内−清田線の脇にある福井堰堤バス停まで道路を走りました.福井堰堤のJRバス停留所は,今は使われていないようです.さらに500mほど先の五天山公園の停留所まで行かないとバスに乗れません.インターネットの時刻表では30分おきくらいにバスが出ているはずだったので,ちょっと慌てました.

14)採石工場の中
 採石場の中を走ります.この先の福井堰堤前停留所の近くにゲートがあります.


 札幌のバスの時刻表は,定山渓バスのものが一番使いやすく情報も新鮮です.JRバスの時刻表は何とか改善して欲しいです.中央バスの時刻表も,いまいち使いにくいと感じます.
 ついでに言うと,これまで乗ったバスの中では,遠鉄バスが一番好きです.運転が優しいですし,電子カードが使えますし,バスの運行状況が停留所で分かります.
 札幌の市バスもそうでしたが,中央バスも運転が乱暴です.まるで荷物を運んでいるような運転をします.交差点を加速しながら曲がるなんていうのは,旧札幌市営バスと中央バスだけのように思います.まあ,これは時刻表から見直さないと改善されないでしょうが,一度,運転手が立ってバスに乗って,自分たちの運転を経験するというのも良いかもしれません.

 五天山公園は安山岩を大規模に採掘した跡地を公園にしたものです.炊事広場はバーベキューをする人たちで大賑わいでした.パークゴルフ場も人気があるようです.
 ここでシャツを取り替えて,ウインドブレーカーを着てバスを待ちました.

 バスで地下鉄東西線の琴似駅に行きました.西11丁目から「よさこいソーラン祭り」の踊り子がどさっと乗ってきました.街は,「よさこいソーラン祭り」最終日でした.

15)よさこいソーラン祭り
 大勢の人で賑わっていました.でも,道路の両側に作られた見物席は空席が目立っているようでした.6月だというのに,曇り空で何となく肌寒い季候です.


モエレ沼4時間耐久ままちゃりレース2011/06/21 19:35

 今年も恒例のままちゃりレースが,モエレ沼公園で開かれました.風もあまりなく,ひどく暑くもなく絶好の天気に恵まれました.例年より参加者が少ないような気がしました.

 終わってから公園を散歩していたら,沼にたくさんの鯉が死体で上がっていました.モエレ沼に水の流れを作ることはできないのだろうか.


写真1 モエレ山から見たスタート・ゴール地点
中央の白いテントのあるところがスタート.ゴール地点です.正面のプレイマウンテンをぐるっと回って外周道路を走ります.


写真2 野球場の周りを回る
野球場を回って外周道路をスタート地点に戻っていきます.去年より距離が短くなったようです.


写真3 ゴール地点を通過する選手
この時は,まだ残り30分くらいありました.ほとんどプロ並みの選手から,のんびり楽しみながら走る選手までいろいろです.


写真4 公園の外側から見たモエレ沼
沼にはヒシの葉が茂り始めました.白く点々と見えるのは鯉の死骸です.


写真5 酸欠で浮き上がった鯉
結構大きな鯉です.


「地質と調査」の小特集「地球温暖化と斜面.水災害」2011/06/30 11:54



「地質と調査」(全国地質調査業協会連合会 編集)は,2011年の第2号で標記のような特集を組んでいます.小特集の本体は,斜面崩壊,地すべり災害,土石流,河川管理,海岸(港湾)への影響といった内容です.

 興味を引かれた記事は,木村龍治氏(東大名誉教授)の総論「地球温暖化と気候変化」と桜井邦朋氏(早稲田大学客員顧問研究員)の教養読本(1)「気候温暖化に関わるもう一つのシナリオ−地球環境を操る宇宙線−」でした.

 木村氏は,二酸化炭素の増加によってグローバルな気候が変化したという仮説を聞いたときに,「ずいぶん,いい加減なことをいう研究者がいるものだ」と思ったと言います.そして「私には非常識に思えることが社会の常識になった」として,現在の気候変動についての考え方に対する違和感を述べています.気温,大気汚染,降水,海水位,気象予測の「常識」について.現在の地球温暖化の仮説が出始めた1988年以前の常識と対比しています.
 なお,木村氏は普及的な書物をいろいろと書いていますが,気軽に読めるものとして「自然をつかむ7話」(岩波ジュニア新書,2003)がお薦めです.

 桜井氏は,太陽活動の長期変動と地球環境の変動を研究してきました.太陽活動との関係を見ると,宇宙線の大気中への進入の流れが減少すると平均気温が増加するというはっきりとした傾向が見られます.そして,2000年頃から世界の平均気温の上昇は停まっているというデータが示されています.現在太陽活動のサイクルは,1996年から始まったサイクル23が終わり,次のサイクルに入る時期に来ています.太陽活動は平均11年ですので,2007年には次のサイクルに入ってよいことになります.このような太陽活動の衰退化が数10年続くと気候の寒冷化が起こる可能性があると言います.
 もう少し詳しく知りたい場合は,「眠りにつく太陽−地球は寒冷化する」(祥伝社新書,2010)が分かりやすいと思います.地質時代を含めた超長期的気候変動については,「不機嫌な太陽 気候変動のもう一つのシナリオ」(恒星社厚生閣,2010,スベンスマルク・コールダー著,桜井邦朋監修)が面白い内容です.