NHKスペシャル「シリーズ東日本大震災 “世界最大”の液状化」2011/07/11 15:17

 首都圏から東北地方に掛けて,今回の地震で広範囲に液状化が発生した.この液状化から得られる教訓は次の三つである.

1)今回の地震は,揺れの時間が1分も続いたために広範囲に液状化が発生した.阪神淡路震災では揺れの継続時間は15秒程度であった(東京電機大学 安田進教授).

2)津波で鉄筋コンクリートの建物が横倒しになった.この原因は,液状化で支持杭の周辺地盤が緩んで引き抜き抵抗力が低下したところに津波が来て,浮力が働き建物が倒れたと推定される.これまで気付かれなかった地震による複合災害である(港湾空港技術研究所 菅野高広氏).

3)臨海埋め立て地では,大規模な側方流動が起こる可能性がある.護岸前面に鋼管杭を打設するなどの対策が必要である(早稲田大学 浜田政則教授).


 高知市では全国地質調査業協会連合会などによって,ハザードマップをとりまとめたが,今回の地震による液状化被害を受けて液状化が発生する地域の見直しを始めているという.堤防破壊と津波被害と言うことは2003年の十勝沖地震などの経験から予想されていたが,液状化と津波被害が複合すると言うことは新しい脅威である.津波襲来時の避難建物の見直しも必要となる.


「高知地盤災害関連情報ポータルサイト」はこちら.→<http://www.geonews.jp/kochi/>


 この番組は7月13日深夜に再放送される.

 シリーズ東日本大震災 “世界最大”の液状化

 2011年7月14日(木)  午前0時15分~1時04分 総合 (13日深夜)

 初回放送 2011年7月10日(日)




「原発からの離脱 自然エネルギーと共同体自治に向けて」2011/07/20 15:04



 この本は2011年6月に講談社現代新書として出版されたものです.社会学者の宮台真司氏と自然エネルギー政策研究と実践を行っている飯田哲也氏との対談です.
 副題からも分かるように,原子力発電から離脱するには,市町村レベル以下での共同体自治を作り出すことが必要だというのが二人の主張です.原子力発電を止める止めないという議論に矮小化するのではなく,今回の災害を機に,新しい社会システムつくり直すという視点がどうしても必要と言います.
 飯田氏は,スウェーデンで自然エネルギーについて研究した後,日本で自然エネルギー普及の実践を行ってきた経歴の持ち主ですが,この本では,自分の生いたち,神戸製鋼や電力中央研究所での経験なども語られています.

 そして,この対談の一番の聞き所は,これからのエネルギーとこれからの政治をどう変えていったら良いのかの方向が示されていることです.「本当に原子力はやめられるのか」と疑問に思っている人にとっては必読の書です.

紹介:「地震と原発 今からの危機」2011/07/26 17:54



 今回の津波と福島第一原子力発電所の事故について,ビデオニュース・ドット・コムの「丸激トーク・オン・デマンド」としてつくられた内容を記事としたものです.2011年6月発行です.
 神保哲生氏,宮台真司氏との鼎談に登場するのは,片田敏孝氏(群馬大学大学院教授),立石雅昭氏(元新潟大学教授),飯田哲也氏(NPO環境エネルギー政策研究所所長),河野太郎氏(衆議院議員),武田 徹氏(ジャーナリスト)で,このほかに電話で,矢ヶ崎克馬氏(琉球大学名誉教授),小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教),松井英介氏(岐阜環境医学研究所所長)が討論に参加しています.また,「あえて原発事故の「最悪のシナリオ」と「冷静な対処法」を考える」では青木理氏(ジャーナリスト)が司会を務めています.
 
 放射能漏れに対する個人対策と言うことで避難すべき数値が示されていて,放射能汚染に対してどう行動したら良いのかという指針が示されている一方で,日本のエネルギー政策の方向性,さらに,どのような社会を目指すべきなのかと言ったことまでが語られています.

 今回の津波,原発事故から何を教訓とするのかを考える助けとなります.

全国七大学対抗陸上競技大会2011/07/26 21:58

 7月23日(土)(オープンの部),24日(日)(対抗の部)の両日,七大戦の陸上競技が札幌の厚別公園陸上競技場で開かれました.どちらの日も天気には恵まれました.
 男子は第62回,女子は第22回です.開催校の北海道大学は,男子は5位と同点の6位,女子は2位で,優勝は男子が大阪大学,女子は名古屋大学でした.

 陸上競技ファンなら誰でも知っていたようですが,3000mでの名古屋大学・鈴木亜由子さんの走りにはビックリしました.ほかの選手とは,まったく別次元の走りで2位に1分近い差をつけての優勝でした.2010年の世界ジュニア選手権の5000mで5位に入った実力者だそうです.今回のレースで2位に入った北海道大学の井上愛恵さんは,北海道の学生では敵無しですが歯が立ちませんでした.

女子3000mで力走する井上選手.東北大学の選手と2位争いです.北大のカラーは緑色です.


男子3000m障害が種目に入っています.北大は2人出場しましたが,入賞できませんでした.


1500m,5000mは力及ばす,8位までの入賞者無しでした.


 北大は,400mリレーはバトンを落としてしまいました.それでも,何とか走りきりました.最終種目の1600mリレーで北大は,第4走者の竹内 敦さんが脅威のがんばりを見せ,ごぼう抜きで2位に食い込みました.なかなか感動的なレースでした.

 今回は,出発係の審判員として大会に関わりました.
 初日のオープンの部では,男子5000mが3組あったのですが,最終組の出発を見送って控え室に戻ろうと歩いていたら,選手が一人も走っていないのに気付きました.狐につままれたような気分で,しばらく事態が飲み込めませんでした.計時が作動しなかったようで,レースはやり直しになりました.
 2日目の男子110mハードルでは,ハードルの位置が違っていて再レースとなりました.風向きによって,どちらをスタート地点にするか変更する場合があるのですが,逆コースの位置に1列だけハードルが間違って置かれていたのです.当然,選手は足が合いませんから気がつきます.
 そんなこともありましたが,何とか無事終わることができました.いろいろと勉強になった2日間でした.


狩勝峠の鉄道遺産2011/07/28 21:53

 2011年7月28日に土木学会北海道支部主催の「北海道の東西を結ぶ峠の物語〜旧狩勝産の鉄道遺産と全線開通間近の道東道」という見学会が行われました.今回は,狩勝峠新得側の鉄道遺産について述べます.

 私が感動したのは新内(にいない)隧道です.今回は新得側の坑口を見ました.1904(明治37)年に完成し,すでに100年以上経っていますが,この工事に携わった人たちの,良いものを造ろうという気迫が伝わってくる佇まいを見せています.
 特に坑門の上半アーチは見事で,天端には一回り大きな要石が配置されています.下半は坑門もトンネル本体も石積みでがっちりと上半を支えています.これらの石が十勝溶結凝灰岩を使っているのか花崗岩や安山岩なのかは判定できませんでした.それぞれの石のブロックは加工に苦労したような形をしています.
 トンネルの形は綺麗な馬蹄形です.見事というほかない形です.下半は坑門部を含めて石積みです.トンネル本体の上半はコンクリート覆工です.
 この付近を構成する地質は,日高変成帯上部花崗岩の佐幌岳岩体です.新内トンネルの落合側は崩落していてマサ状の土砂がトンネル内に堆積しています.トンネルの下からは冷たく清冽な水が湧き出しています.


新内隧道の新得側坑口
綺麗な馬蹄形の断面で,石のブロックでアーチを造っています.


アーチの要石
ちょっと大きめの石を使っています.


トンネル本体下半の石積み
現在でもほとんど狂いはなく綺麗に揃っています.


この感じが何とも言えない趣があります.


 新内隧道の標高は約450mでさらに50mほど登って狩勝トンネルの坑口に達します.次に紹介する小笹川橋梁付近から狩勝隧道までの間は平均勾配25/1000で計画されました.2.5%の勾配ですから鉄道としては急勾配です.この勾配を維持するために4つのヘアピンカーブが設けられました.その中でも,「大カーブ」と呼ばれるものは高さ16mの築堤で線路を通しました.

 新内隧道に行く道の途中に,「新内沢の大築堤」というのがあります.注意していないと通り過ぎてしまいますが,遙か下を沢が流れているので分かります.水路橋を築いて高さ80mの盛土をして線路を確保しています.

 国道38号を新得方向に下っていくと右側に「ラーメンのロッキー」があります.その裏に小笹川橋梁があります.この橋が横断しているのは下新内川です.橋の幅は約9m,高さ約7m,アーチ径4.6mの煉瓦造です.アーチは煉瓦を縦にして6列積んでいます.側壁下部が凍結融解によると思われる剥離を起こしていますが,全体としては十分機能を保持しています.


小笹川橋梁
煉瓦積みのアーチ橋です.


小笹川橋梁の上から下新内川を見たところです.


 そばの里の裏に旧狩勝線の線路跡があります.現在は遊歩道になっています.狩勝峠を新得側に降りてくると,途中から緩い直線の道路になります.この付近は旧狩勝線も直線で一定勾配となっています.その様子がそばの里の裏の遊歩道で良く分かります.狩勝線が使われなくなったあと,この直線は実験線として,衝突,脱線,火災などの実験に使われたそうです.
 現在はマサを敷いて歩道として整備されていてとても歩きやすい,走りやすい道となっています.

 国道38号新得側の3合目付近にウェスタンビレッジサホロがあります.ここは,旧狩勝線の新内駅があったところで,蒸気機関車59672機と寝台車があり,資料館となっています.この59672蒸気機関車は,1922(大正11)年に川崎造船所兵庫工場で製作され,1975(昭和50)年に廃車になるまで53年間で2,537,498.3km走ったそうです.この資料館の鉄道模型は,なかなかの見ものです.また,前と後ろに蒸気機関車がついて大カーブを登っていく写真もあります.

59672機の正面
後ろに資料室となっている車両と寝台車がつないであります.寝台車は匂いまで昔の匂いそのままです.


 狩勝峠の落合側でも旧狩勝線の鉄道遺産を見ることができます.

 新得側,落合側を含めた「旧狩勝線ガイドマップ」(定価200円)があります.A3縦で写真付きの見やすい案内です.