本の紹介:逆流する津波2020/05/27 08:27

逆流する津波

今村文彦、逆流する津波―河川津波のメカニズム・脅威と防災―。成山堂書店、2020年3月。


2011年3月11日の東日本大震災では、河川を遡上する津波が注目されました。この時、北上川では火口から49km上流まで津波が遡上したことが分かっています。


この本では、津波がなぜ起こるのかから始まって、河川を遡上する津波のメカニズムと発生する被害について述べ、津波から身を守る方法までを分かりやすく述べています。


市街地に津波が浸入した場合、川を遡って上流に達した津波が陸側から襲ってきた事例が具体的に示されています。

一般に、膝くらいまでは水に浸かっても大丈夫と思いがちですが、津波の場合、風によってできる普通の海の波とは違い激流に足を突っ込んだ状態となるので、津波の水深が30cm 程度でも流れに足をすくわれて倒れる場合があると言います。


東日本大震災では黒い津波が注目されました。これは海底のヘドロが巻き上げられたもので、普通の海水より密度が大きく波の力が大きくなります。また、この黒い津波を飲んでしまうとノドや気管支が詰まりやすいのではないかと言われています。そのため、「津波肺」となり重度の肺炎を起こすと言います。


津波から身を守るには、日頃から訓練を行うことが大事です。津波が来た時の逃げ道と逃げ場を手書きの地図で表し、当初予定していた逃げ道や逃げ場がダメと判断したときの代替案を持っておくことが必要です。


数多くの津波災害現場を見てきて、理論的にも津波の挙動を解明してきた著者ならではの本です。多くの人に知って欲しいと言う考えのもと、分かりやすく書かれています。



コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://geocivil.asablo.jp/blog/2020/05/27/9251045/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。