山の地質あんない2011/06/10 18:25



 山を,地質から説明している本がいくつか出されています.「自然を読み解く山歩き」(小泉武栄,2007,JTBパブリッシング),「山が楽しくなる地形と地学」(広島三朗,2008,ヤマケイ山学選書)などです.
 また,地質調査総合センターでは「地質で語る百名山」(http://www.gsj.jp/Info/100mt/index.html)というサイトを設けています.さすが,地質の専門家が書いているものだけに内容は充実しています.
 ちょっと毛色の変わったところでは,「超火山[槍・穂高]地質探偵ハラヤマ 北アルブスの謎を解く」(2003,山と渓谷社)があります.これは読み物としても面白いし,槍,穂高に行ってみたくなります.お勧め本です.



 山に特定したものではありませんが,地質案内として,いろいろな山の地質を解説した本もあります.
 最近出版されたものでは,「札幌の地質を歩く【第3版】道央地域の地質あんない」(宮坂省吾ほか編著,2011,北海道大学出版会)があります.この本では,手稲山,藻岩山,恵庭岳,樽前山,羊蹄山,ニセコ,夕張岳などが扱われています.

 山に登りながら地質や地形を観察する助けになるものとして,私が見た中では小泉武栄氏の「自然を読み解く山歩き」が優れていると思います.それぞれの山をつくっている地質というのは,人が一日で歩く範囲でそれほど劇的には変化しません.地質や地形に興味を持ってもらうのが難しいところは,このあたりにあると思います.ですから,地形・地質と植生,特に花との関連などを含めて解説するのが,地質に興味を持ってもらうポイントだと思います.また,花などの植物は季節によって変化します.これも樹木や花の有利な点でしょう.
 小泉氏の本にはこのような工夫が凝らされています.

「札幌の自然を歩く【第3版】」では,カラー口絵で見学コースのそれぞれの地点の地質時代が一目で分かる図が付いています.これは,地質の空間的時代的相互関係を把握する上で大変便利な工夫です.

 地質・地形に対する興味を身近な露頭から持ってもらうことは,これからますます大事になるとおもいます.それは,災害から身を守るという実利的な面もありますが,地質を含めた総合的な自然の理解は,人の考えに深いところで影響を与えると思います.人が自然に対する畏怖の念を持ち,自分の存在を客観的に見つめるような思考を醸成するのではないかと思います.

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://geocivil.asablo.jp/blog/2011/06/10/5904645/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。