札幌岳2009/06/22 18:33

札幌岳頂上の安山岩と恵庭岳(中央奥で一部雲に隠れている)
 札幌岳は札幌市街からよく見える山で,三角形の山頂と深く切れ込んだ谷が特徴である.標高は1293.0m で,それほど高くないが標高1,200mを過ぎたあたりからハイマツが目立つようになる.手稲山(標高1023.1m)の山頂付近にも昔はハイマツが生えていたという話があるが,今は見られないようだ.
 登山口は定山渓温泉市街を過ぎた最初の信号を左に入り,定山渓温泉を左に見ながら,「定山渓自然の村」に行かずに広い道路を左に行くと右カーブの所に駐車場がある.入林名簿も備えられている.

 登山道は冷水沢川に沿って登っていく.トドマツの植林地で中にはかなりの樹齢のものもある.しばら行くと沢の中に岩が露出し対岸に露頭が見える.豊平峡ダムのダムサイト付近に分布しているハイアロクラスタイトと同じものであろう.ただし,定山渓図幅では,この付近の沢は標高570m 付近まで 石英斑岩の分布域となっている.
 冷水沢川の右岸の登山道は2度ほど沢を渡る.2度目の横断点付近から地形は緩やかになる.この緩やかな地形は札幌岳基底溶岩の分布域と一致している.
 道の脇には紫色のスミレ,白い小さな花を付けたマイズルソウなどが咲いている.ゆっくり歩いて1時間ほどで林道を横断する.

 この林道は登山道入口向かって左側の林道の続きである.車の轍のある立派な林道である.豊平峡ダムの冷水トンネルと豊平峡トンネルの間を流れる沢付近まで通じているようである.

 林道からしばらくは,なだらかな道が続くが,しばらくすると沢の右岸を高巻きする.この途中に塊状安山岩の露頭がある.10cm ほどの間隔で節理が発達しており陸上溶岩と考えられる.定山渓図幅ではこの付近から札幌岳溶岩の分布域となる.
 この付近から斜面の傾斜がきつくなる.標高は750m 前後である. 再び沢に降りて,沢を渡り,左岸の斜面の途中を這うように道は続く.しばらくすると赤い屋根の冷水小屋が見えてくる.

 冷水小屋付近には白い五弁の花を付けニンジンのような葉を持ったニリンソウ(フクベラ)が群生している.この花は,夕方になると花が半分閉じたようになりスズランのような丸い形になる.何ともかわいらしい風情を示す.また,シラネアオイ,オオバナエンレイソウ,ツツジに似た赤い花も時々見かける.
 冷水小屋は沢の合流点付近にある.向かって左の沢に流水があり右の沢はほとんど水が流れていない.小屋の裏に回り,この二つの沢の間に張り出した尾根を登っていく.ここからが急登になる.

 冷水小屋の標高はほぼ850mで急登は標高1020m 付近まで標高差約170m 続く.この尾根道のところどころに石英安山岩質岩の露頭が見られる.白灰色で縦亀裂が発達し高巻きの所に出ているものと岩質はそっくりである.
 この急登の途中で後ろを振り返ると木々の間から無意根山や喜茂別岳が見える.一度傾斜は緩くなるが標高940m 付近から 再び急な斜面となる.この付近に露出する安山岩は黒色の輝石安山岩で明らかに岩質は異なってくる.クリンカー状のレンガ色をした火山角礫岩状の露頭もある.
 
 急登部を過ぎると道は西に向いた斜面の途中を緩く登り下りしながら続いていく.急登の後ではこの斜面途中の道が結構きつい.標高1020m 付近で平坦面に出る.

 札幌の西の山地は,余市岳,朝里岳,手稲山,札幌岳,空沼岳など標高1000m 程度の平坦面を持っている.これらの平坦面は平坦溶岩と呼ばれる安山岩で構成されている.この溶岩をキャップロックとして手稲山や空沼岳の東斜面に大規模な地すべりが発生している.札幌岳の東斜面には大規模地すべりは見られないが,沢が深く切れ込んで大量の土砂が豊滝の沢(盤の沢川・滝の沢川)を埋めている.
 
 クマザサの中の平坦な道を通り最後の登りにさしかかる.登山道は表流水でぐちゃぐちゃであるが意外に滑らない.標高1200m 付近からハイマツの群落が目立ち始め,シラカバは消えてダケカンバとなる.ヤマザクラが遅い花を咲かせている.

 頂上からの眺めは素晴らしい.この日は札幌市街方面に雲が出ていて見ることが出来なかったが,空沼岳,恵庭岳,漁岳,尻別岳,羊蹄山,喜茂別岳,無意根山,八剣山,藻岩山などぐるりと見渡すことが出来る.
 途中,休み休みゆっくり登って約4時間.この眺めに満足である.

 帰りはちょっととへばってしまい,登山口まで3時間半かかった.それほど厳しいと感じないが,かなり足に負担のかかる不思議な山である.

【END】