本の紹介:先生がいなくなる2023/06/10 14:44

先生がいなくなる

内田 良・小室淑恵・田川拓磨・西村祐二、先生がいなくなる。集英社新書、20235月。

 

 201410月、採用されてから半年の若手中学校教師が自死しました。中学校時代から欠かさずつけていた日記の表紙の裏には「疲れました。迷わくをかけてしまいすみません」と最後の言葉が走り書きしてありました。

 2021年度、精神疾患を原因として休職している教師は5,897人となっています。

 

 この事態の根っこにあるのが1971年制定の「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与に関する特別措置法」(給特法)です。この法律では残業代を払わない代わりに、基本給の4%を「教職調整額」として支給するとしています。つまり、いくら働いても一定額の賃金しか払わないということです。40年前に定額働かせ放題が行われて今日に到っています。

 

 教師がいくら働いても一定額のお金しか、かからないのですから時間管理をしないですみます。根本問題は、教師の忙しさは児童・生徒の教育の質に直接響いてくることです。

 この本では、教師が子どもに直接接する時間を増やし、質の高い教育を実現するにはどうしたら良いかに焦点を当てています。

 

 著者の小室氏と田川氏は、株式会社ワーク・ライフバランスの所属で、学校での働き方改革を実践してきています。現在の制度のもとでも、教師の残業を減らすことは可能であることが示されています。

 

 色々な問題が絡んでいますが、児童・生徒により良い教育を受けてもらうために、少しずつですが実践が進んでいることは希望です。

 教師になりたい若者にとって魅力的な職場にしなければ、公立学校の「先生がいなくなる」が現実になりかねません。

 子育て真っ最中の親だけでなく、かわいい孫の成長を楽しみにしている、おばあさんやおじいさんにも興味を持ってもらいたい問題です。



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