泊原発の再稼働を阻む5つの問題 ― 2018/01/29 18:00
「2018年 Shut泊」の連続講座の第1回がエルプラザで,2018年1月25日(木)午後6時半から8時半まで開かれました.
講師は北大名誉教授の小野有五さんで演題は「泊原発の再稼働を阻む5つの問題」で,司会は川原茂雄さんでした.
Shut泊の連続講演会は,今回で15期だそうです.2月と3月に講演会があります.詳しくは下のウェブサイトを見て下さい.
( http://japansafe.net )
写真1 講演する小野有五氏
手にしているのは「泊原発 再稼働してはいけない 8つの理由」というパンフレットです.最初1万部印刷し改訂しながら,さらに5千部作ったそうです.
8つの理由は,大要,次のとおりです.
(1)泊原発なしでも,北海道の電力は余裕があり,将来はあり余るほどになる.
(2)原発のコストは高い.
(3)再生可能エネルギー導入に消極的な北電は,北海道経済の足を引っ張る.
(4)泊原発の敷地内には「活断層」がある.
(5)積丹半島の海岸地形は「地震性隆起」を示している.
(6)洞爺火砕流は泊原発まで行ったはず.ニセコ火山群からの火砕流も発見.
(7)避難場所に指定されている札幌は風下にある.
(8)危険な核のゴミを10万年も管理できるか.
今回の話の主題は,上の「 (4)活断層」です.問題点は5つあります.
1)原発敷地内に活斷層がある.
この場合,設置取り消しとなります.
2)海底活断層がある.
北電は海底活断層の延長は11kmとしていますが,120kmになる可能性があり,基準地震動の見直しが必要となる可能性があります.
3)防潮堤が液状化で壊れる可能性があります.
原発敷地は背後の丘陵を削り,防潮堤のある海側は埋め立てられています.この埋め立て地で,地震による液状化が起こる可能性があります.
4)火山災害対応が考慮されていません.
泊原発から10kmほど東で厚さ22mの洞爺火砕流が確認されています.また,ニセコ火山群の火砕流もあります.
5)津波襲来時の避難方法が検討されていません.
過去の津波堆積物から最大15mの津波が襲来する可能性があります.
活斷層は色々な定義がありますが,現在の原子力規制委員会では「12~13万年前以降に活動した断層」としています.ただし,「12~13万年前の地層がなく,判断が難しい場合でも,40万年前まで遡って検討すること」としています.
活断層の活動年代を出すには,変位している地層の形成年代が必要です.北電が120万年前の「岩内層」としている地層は,12.5万年前に海面が上昇した時期に形成された砂層で,その上位には11.5万年前の洞爺火山灰が載っています.
原発の南東の丘陵で実施したトレンチ(C地点)では,「岩内層」の上部に角礫とシルト質砂の基質からなる地層が確認されています.これは,最終氷期の斜面堆積物で「岩内層」を削っています.この斜面堆積物のあるところでは,2万年前より古い時代に形成された断層などの地質構造は消されている可能性があります.
写真2 司会の川原茂雄氏
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感 想
活斷層は地形学の問題であると同時に,その最新活動時期や活動間隔,変位量を調べるのは地質学の問題です.その基礎には正確な地質の判断が必要です.
原発の活断層問題が各地で問題となるのは,やはり建設時の地質調査が正確でなかったことが大きいと感じます.膨大なデータが揃えられているにもかかわらず,大局観に欠けた地形・地質の解釈がなされてきたのだろうと思います.
例えば,渡辺満久氏の『土地の「未来は」地形でわかる』(日経BP社,2014年12月)に島根原発に関わる鹿島断層の例が述べられています.
泊原子力発電所についても,過去の行きがかりを捨てて正確な地形・地質の判断をする必要があると感じました.
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