第38回札幌国際スキーマラソン大会 ― 2018/02/04 19:12
2018年2月4日(日)に札幌ドーム発着で開かれました.
久しぶりに,この大会に出てみました.ただし,11kmです.それでも,かなり疲れて帰りの地下鉄の中でぐっすり寝てしまって乗り過ごしました.
11kmコースは,参加者が歩くスキーを楽しむという人や小学生が多く,25kmや50kmとは大分違う雰囲気です.
風がほとんどなく,珍しくオーバー手袋をしないで走り通しました.
写真1 スタート地点
札幌ドームの南西側から市道羊ヶ丘通りを渡った先の北海道農業研究センターの牧草地がスタート地点です.真っ直ぐ南西に向かって突き当たりに見える丘へ登って行きます.
スタート地点の平坦面は中位段丘堆積物で出来ていて,突き当たりの丘は輪厚砂礫層になります.この付近には支笏火砕流堆積物は分布していません.
写真2 輪厚砂礫層の斜面
平均傾斜は4度程度ですが,きつく感じます.ここで5kmコースと別れます.
写真3 標高150m付近の平坦面
右から25kmおよび50kmのコースが合流します.この先にもう一つ登りがあります.その昔,羊ヶ丘展望台が発着点になっていた頃も,このコースでした.
写真4 急な登りが終わる
四望台手前で急な登りが終わり,この後は主に下りとなります.林の中の気持ちの良いコースです.この付近の標高は210mくらいで,札幌ドームの標高が75mですから135mほど登ってきたことになります.
写真5 焼山道
気持ちの良い平坦なコースが続きます.コースが広く,急な下りもないので安心して滑ることができます.
写真6 再び農業研究センターの牧草地
8km付近になります.この後は緩やかに下って行きます.
写真7 札幌ドームを見ながらゴールへ
最後は,緩やかに下って行くとても気持ちの良いコースです.スピードも出ます.
苅谷愛彦氏の講演 ― 2018/02/05 20:16
表記講演会が,2018年2月2日(金)15時~17時まで,北海道総合プラザで開かれました.
この講演会は,北海道地すべり学会北海道支部の研究委員会が開いたものです.この研究委員会は,
「地すべりに関わるテーマ調査・研究について情報交換や話題提供を行う.年2~3階開催.」しています( http://www.hols-net.com/index.html>組織図 ).
興味のある方は誰でも参加できます.
今回の話題提供は,刈谷氏と田近氏でした.取りあえず,刈谷氏の講演を紹介します.
写真 講演する刈谷氏
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苅谷愛彦(かりや・よしひこ)氏(専修大学教授):
最近明らかにされた日本アルプス高山地帯の大規模崩壊と岩盤重力変形
刈谷氏は当初,気候地形学の研究をしていましたが,氷河堆積物とされているものが地すべり堆積物ではないかと疑問を持ち研究を始めました.
<白馬岳(しろうま・だけ)東斜面の堆積物>
JR大糸線の白馬(はくば)駅の北で姫川に西から合流する松川の支流・北股入の谷頭部には,大雪渓があります.モレーンとされている堆積物があり,5期の氷期があるとされていました.
しかし,堆積物の礫種を見ると限られた岩種からなっていて,北股入流域に分布する様々な岩の礫が含まれていません.また,含まれている礫には高速で衝突した証拠であるジグソークラックが見られます.
これらのことから,北股入の堆積物はモレーンとその後の地すべり(岩屑なだれあるいは岩石なだれ)堆積物が重なっていると考えました.
<高天原>
高天原は黒部ダムの上流にある岩苔小谷の右岸にある緩斜面です.ここでも流域に分布する岩種は4種類ありますが,モレーンとされている堆積物は1種のみの礫からなりジグソークラックが見られます.その堆積物の下に半固結礫層があり,材が含まれていて約1万年前のものです.
宇宙線照射年代測定(石英の10Be)の結果は,かなりバラツキが大きくなっています.
この堆積物は単一の生成ではなく,モレーンの上に地すべり(岩石なだれ)堆積物が載っています.
<蝶ヶ岳東斜面>
蝶ヶ岳(標高2677m)は,安曇野市の西の山地にあります.蝶ヶ岳周辺の地質は美濃帯の沢渡(さわんど)コンプレックスで,砂岩泥岩互層とブロック状のチャート・礫岩で構成されています.
蝶ヶ岳ヒュッテに向かって延びている蝶沢では,標高2000m付近までは斜面崩壊堆積物が分布していて,その上方にはクリープした岩盤が分布しています.宇宙線照射年代測定では,6千年前という値が出ています.
<朝日岳周辺>
白馬岳から北東に延びる尾根と北北西に延びる尾根があります.後者の途中に朝日岳(標高2418m)があります.姫川支流の大所川のさらに支流の白高地沢の源頭部付近の長栂山(ながつげ・やま:2267m)南東斜面や赤男山(あかおとこ・やま:2190m)南西斜面などに地すべり地形が見られます.
これらの地すべりは,氷河が前進したときに押し出されたプッシュ・モレーンとされてきました.堆積物に挟まれている泥炭層の年代は約6千年前です.
<鳳凰山 ドンドコ沢>
JR中央本線韮崎駅の西,約14kmにある標高2764mの地蔵ヶ岳を源流とするドンドコ沢左岸には,淘汰の悪い花崗岩礫のみからなる角礫層が沢沿いに3.6km以上分布しています.上端は標高1900m付近,末端は標高1100m付近で小武川との合流点付近に達しています.堆積物の礫にはジグソークラックが認められます.
この岩石なだれが発生した年代は,マグニチュード8.0~8.5とされている西暦887年の仁和の五畿七道地震の可能性があります.この時,八ヶ岳で岩屑なだれが発生し堰止め湖が形成されています.
材化石のセルロースの酸素14による年代測定が,西暦887年を示します.
<その他>
梓川右岸に拡がる田代池のこと,焼岳の岩石氷河とされているものなどについても述べました.
ピアノの調律 ― 2018/02/06 08:49
14年間,調律していなかったアップライトピアノの調律を頼みました.狂っているところだけを直すのかと思ったら,CのA(中央のラ:440Hz)を基本にして230本ほどの弦すべてを調整していくのだそうです.
ピアノの鍵盤は88(白鍵52,黒鍵36)ですが,普通,一つの音に対して最大3つの弦があるので弦の数は多くなるのだそうです.思っていたより大変な仕事です.
約2時間かかりました.音がすっきりして,気持ちよく弾くことが出来るようになりました.
写真 調律の準備が出来たアップライトピアノ
水中火山の話 ― 2018/02/20 09:37
2018年2月3日(土)に,北海道総合地質学研究センター(HRCG)の第7回セミナーが開かれ,山岸宏光氏が「水中火山のはなし」と題して講演しました。
札幌市の「かでる2・7」の会場は,入りきれないほど人が詰めかけました。
北海道総合地質学研究センターのホームページは
< http://www.hrcg.jp >です。
写真1 講演する山岸宏光氏
山岸氏は2017年11月25日(土)にNHKで放送された「ブラタモリ 室蘭~工業都市・室蘭を生んだ奇跡とは!?」に出演し,室蘭絵鞆半島の地形と地質の説明しました。今回は,その時に準備した資料も含めて水中火山噴出物を中心とした話でした。
水中火山から噴出した溶岩が,水で急に冷やされて角礫状になったものに対してハイアロクラスタイトという言葉が使われるようになったのは1965年頃です。最初は玄武岩の枕状溶岩の外周の脆く破片化した部分に付けられた名前です。
1996年に豊浜トンネル,翌年に第二白糸トンネルで岩盤崩壊を起こした地質がハイアロクラスタイトです。
火山の噴火様式には,1)爆発的噴火,2)噴出的噴火があり,爆発的噴火では火砕岩が形成され,噴出的噴火では溶岩や岩脈が形成されます。水中で発生した噴出的噴火で形成されるのがハイアロクラスタイトです。
室蘭絵鞆半島の海岸は,ほとんど水中火山によって形成された地質で,1)ハイアロクラスタイトとその給源岩脈,2)水中軽石流堆積物から構成されています。
1)の給源岩脈の中には溶岩ドームの形を取るものがあり,チキウ岬は溶岩ドームです。その様子は,チキウ岬西側の遊歩道の途中から見ることが出来ます。
室蘭絵鞆半島の海岸に分布する給源岩脈の方向は,チキウ岬付近から西では北西-南東方向であるのに対して,東のトッカリショ付近では北北西-南南東方向になっています。
絵鞆半島には金屏風と呼ばれている崖があります。これは,水冷破砕岩が風化を受けたか,あるいは変質したものと考えられます。
一方,銀屏風は水中軽石流堆積物からできていて,2回の大噴火が認められます。
イタンキ浜の南西には白と黒の縞模様の崖が見えます。白いのは水中軽石流堆積物で黒いのは水中土石流堆積物です。
なお,チキウ岬の北にある母恋富士は陸上火山から噴出した安山岩溶岩です。
写真2 海上から見たチキウ岬
左の天辺の尖った岩体がハイアロクラスタイトを供給した溶岩ドームで,両側にハイアロクラスタイトが縞状に見えます。
写真3 チキウ岬の溶岩ドーム
地球岬の駐車場から西へ向かって降りて行く遊歩道の途中から見ることが出来ます。水平の柱状節理が見られます。
写真4 軽石流堆積物の崖
測量山の真西のハルカラモイ付近の崖をつくる軽石流堆積物です。
写真5 水中溶岩ドーム
水中で岩脈が次々と成長していった同心円状の構造が見られます。測量山の南西のマスイチセの崖です。
南海トラフ地震発生体掘削 ― 2018/02/20 14:13
地質学会誌の2018年1号は,125周年記念特集「深海掘削計画(IODP)10年の成果(その2)」です。
「木村 学ほか,南海トラフ地震発生帯掘削がもたらした沈み込み帯の新しい描像」(47−65)が興味深いです。
この中で,付加体の物性について概要が述べられています。まとめると表1および表2のようになります。
表1 付加体堆積物の圧縮・破壊強度
表2 付加体堆積物の摩擦係数
粘性土では,粘着力を0と考えて一軸圧縮強度から粘着力を求めることが行われます。それを適用すると,表1の上の二つの泥質堆積物の粘着力は,1,350-2,050kN/m^2となります。
地すべりでは経験的に、すべり面の平均鉛直層厚(m)に対して粘着力が提案されています(表-3)。ただし,経験値ですから,せいぜい層厚25m程度までとされています。
これを強引に当てはめると,泥質堆積物のすべり面より上の層厚は約1,000mですから,泥質堆積物の粘着力は,オーダー的には地すべり粘土の経験値が適用できそうに思います。
表3 粘着力の経験値
(道路土工 切土工・斜面安定工指針(平成21年版),日本道路協会)
このように考えると,壮大な沈み込み帯の研究も身近なものに感じられます。
その表題が示すように,この論文には沈み込み帯の新しい像を描こうという意気込みが感じられます。その背景には,地球物理学,地球化学を初めとした地球科学の総力をあげて沈み込み帯の実像を描き出したいという思いがあります。その中で,物質を扱う地「質」学の果たす役割は非常に大きなものがあると思います。