モエレ山登り ― 2020/10/06 11:21
大規模災害に関するオンライン・セミナー ― 2020/10/06 17:58
北海道産学官研究フォーラム主催の「大規模災害に耐えうる災害支援システムに関するオンライン・セミナー」に参加しました.2020年9月30日(火)の午後1時半から3時40分まででした.自分の部屋で聞くことができるので集中して聞くことができこと,パソコンで要点をメモしながら聞くことができたことなどが良い点だと思いました.

「大規模災害に耐えうる災害支援システムに関するオンライン・セミナー」の案内ビラ
基調講演:室蘭工業大学 董 冕雄(とう・めんゆう)氏「安心・安全な地域社会のための災害支援システムの研究開発」
菫氏は1981年上海生まれで,2011年の東日本大地震の時はカナダにいました.この時,南三陸町に両親がいて安否確認ができない状態になりました.たまたまインターネットで見た写真の中に両親の家が写っていて,無事だということが確認できました.この地震では,多くの人がツイッターで安否確認を行いました.
災害支援システムとして最も古いのは,西暦132年に中国後漢で発明された感震器でしょう.現在,気象庁の「緊急地震速報」など色々な災害支援システムがありますが,災害発生後の支援・救援のための技術が必要と考えました.
まず,100m程度の範囲で通信可能なD2D通信(Device to Device)を構築します.これは,その名のとおり基地局を介さないで端末間で通信を行えるもので,Bluetooth4.0プロトコルに基づいてネットワークを構築し100m間で通信ができるようにしました.
もう少し広範囲の1,000mほどの距離の通信には,ドローンやロボットを中継してWiFiを使います.ドローンは自律的に移動・飛行し,搭載しているカメラでユーザーを捜索するようにします.
さらに,10,000m(10km)程度の通信にはドローンと基地局をつなげるLPWAN(Low Power Wide-Area Network:省エネ・遠距離広域通信)を使います.
「天・地・人」と名付けたこのシステムのプロトタイプを登別市の防災訓練で試しました.
ESRIジャパン株式会社 工藤大史氏「GIS 防災減災プラットフォームとドローン等を用いた発災時の情報共有について」
災害が発生した時にGISプラットフォームに様々な情報を統合的に管理します.GISデータ,ドローンのデータ,GPSデータ,衛生画像や航空写真などを搭載します.このプラットフォームは.平時には維持管理基盤として活用できます.プラットフォームには正確性,詳細性,迅速性,一覧性といった相矛盾する性能が要求されます.また,それぞれの機関が必要なデータを追加し共有することもできます.
株式会社リアルグローブ 大畑氏「ドローン映像等の遠隔共有システム Hec-Eye(ヘックアイ)」
ドローン活用の主な分野としては,観光地の空撮,農業分野での農薬散布など,自動運転による輸送・物流,生態調査・鳥獣害対策・森林管理など,老朽化した構造物の点検,測量・観測,災害・防災対策,捜索救助・救護支援,警備・監視があります.
Hec-Eyeは,ドローンやスマートフォンで得られた情報を地図上にリアルタイムで集約し,共有するプラットフォームです.自動的にアップロードするので情報の保存や共有に手間と時間がかからず,位置情報付きの情報なので分かりやすいという特徴があります.
酪農学園大学_小川健太氏「災害対応に向けた衛星・ドローン・GIS活用について」
1.林野火災
林野火災は毎年1,000件以上発生しています.2016年の焼失面積は384ha,損害額は1億5千万円で負傷者も出ています.
そこで既存の機材で,どこが燃えているか,これから燃えやすい方向はどっちかを把握するリアルタイム情報共有システムの開発を行いました.
ドローンに積んだカメラで撮影し,火(煙)の出ている点(火点)を探し,座標を取得します.ドローンの高度が140m,火点からの水平距離が150mだと2mくらいの大きさの煙を認識できます.
現場に到着して1時間20分ほどで焼失面積を算出できます.ドローンにサーモカメラを搭載すると火のある地点の探索が容易にできるほか,高度50mで人を認識できました.
衛生画像とドローンの画像を併用して火災のモニタリングが可能です.
2.崩壊地抽出
衛星に搭載された合成開口レーダー(SAR)を使って崩壊地の抽出を行いました.崩壊発生前と発生後の合成開口レーダーのデータと地形データを用いて崩壊地かどうかを推定しました.胆振東部地震の崩壊地を,かなりの精度で抽出できました.
<感 想>
最近,調査・観測へのドローンの活用は大きく発展していることが実感できました.同時に,広域の観測に衛星データが使えるようになってきたのが驚きです.衛星データは広域を観測できる,定期的に情報を得ることができる,取得する情報によって様々な分野に活用できるなどの利点があると思います.合成加工レーダーの画像解析で地盤沈下をミリ単位でモニタリングができるというニュースもあります.
iMac展末記 ― 2020/10/07 09:08
2010年秋に買ったiMacがついにダメになった.
去年くらいから時々何の前触れもなく電源が切れるようになった.これはちょっと危ないと思い,3TBの外付けハードディスクを買ってTime Machineでバックアップを取っていた.
10年使っていると,さすがに1TBの内蔵ハードディスクも残すは100GBくらいになり,いらないファイルの整理のためにClean My Macを導入した.前々からIntegoのVirus Barrierを入れていたが,これのリアルタイムスキャンが効かなくなった.3日⒊晩Virus Barrierでスキャンしたが,どうにもならず諦めた.iMacの動きが極端に遅くなり,漢字変換にも数秒かかるようになってしまった.
2010年製のiMacは捨てられずに,まだ机の下に置いてある.寿命なのかウィルスにやられたのか分からないので点けて見る気にもなれない.
話は変わるが,アップルはCPUを再び自社製作するという.2010年製iMacの前は,アップル製のCPUのMac miniを使っていた.ワードやエクセル,パワーポイントを使っていたがWindowsとの互換性が悪く,いらないところで非常に苦労した.pdfファイルも飛んでしまうという状態だった.それを2010年製iMacに変えたところ,信じられないくらい快適にファイル交換ができるようになった.
もう20年以上Macを使っているので,今更Windowsには戻れない.直感的に操作できるというのが一番良いところだ.写真などのちょっとした加工ならPreviewで十分である.明るさや色の調整,サイズの変更が「私でもできます」というくらい簡単である.案内図のようなちょっとした図なら扱いやすいソフトがある.「北海道自然探検 ジオサイト107の旅」(北大出版会.2016年)の案内図は,2010年製iMacで作った.
と言うことで,メモリ16GBの新しいiMacを買った.この製品はメモリを自分で増設できないそうだ.2010年iMacは,購入した時は4GBだったのを3枚増設して12GBにして使っていた.写真や動画など,だんだんファイルサイズが大きくなるので,16GBのメモリは最低条件のように思う.
現在は条件を整えながら,新しいiMacを使いやすくしている段階である.
日本学術会議は国民にとって必要 ― 2020/10/09 20:07
日本学術会議の新会員105名のうち6名が菅総理大臣によって任命されなかった問題について,テレビやソーシャルネットワークでデマと言って良い言動が流布されています.
その多くが,学術会議の性格や歴史を全く調べようともせずに行われているとしか思えません.さらに悪質なのは,これを機会に学術会議自体を潰してしまえというな話が出ていることです.
戦前,帝国学士院,学術研究会議,日本学術振興会という三つの団体がありました.いずれも東京大学中心の学閥支配のもとにあって,戦争中は大掛かりな研究への軍事動員も行われました.これらの団体を改組する形で学術会議が設けられました.紆余曲折があって,日本学術会議のほか日本学士院,日本学術振興会が現在活動しています.
帝国学士院は日本学士院として現在も存在し,年間予算は一般会計から約6億円(2018年度)が出されています.設置目的は「学術上功績顕著な科学者を優遇するための機関として、学術の発達に寄与するため必要な事業を行う」となっています.会員の定員は150人で終身,会員の選定は学士院が行います.また,年金を支給できるとなっています.この辺を混同して学術会議を非難している人がいるようです.
日本学術振興会は文部省所轄の独立行政法人で,科学研究費助成事業(科研費)や世界トップレベル研究拠点プログラムなどを行っています.2千億円以上の予算を持っています.理事は大学を退職した教官,文部科学省の役人で,評議員には日本経済団体連合会会長や経済同友会代表幹事が入っているほか,学術会議・前会長の山極寿一氏も入っていました.
日本学術会議は「内閣総理大臣の所轄の下、政府から独立して職務を行う内閣府の 「特別の機関」であり、全国約 85 万人の科学者の代表として選出 された 210 名の会員と約 2000 名の連携会員により、組織されてい ます」(「日本学術会議における活動の手引き」より).
学術会議は「勧告」を2010年以来,出していないので行政改革の対象にすると河野大臣が述べているそうです.これだけ聞くと何にも活動していないと思われるでしょう.
しかし,学術会議のウェブサイトを見ると「提言・答申等」のページには,答申,回答,勧告,要望,声明,提言,報告,会長談話,共同声明,幹事会声明の項目があり,例えば提言は,今年の9月だけで24件が掲載されています.また,公開シンポジウムは,やはり9月だけで16件開催されています.連携会員を入れて2,200人以上が活発に活動しているのです.学術会議だからこそできる内容となっています.
学術会議は内閣府に属しているので,予算については内閣府が掌握しています.加藤官房長官は「毎年約10億5,000万円が計上されていて,▽人件費などを含む政府・社会などに対する提言=2億5,000万円▽各国アカデミーとの国際的な活動=2億円▽科学の役割についての普及・啓発=1,000万円、科学者間のネットワーク構築=1,000万円▽事務局人件費・事務費など=5億5,000万円」と述べたとされています(産経新聞2020年10月5日:総額と個々の費目を足した額が合っていません).予算の半分以上が,50人と言われている事務局の経費です.
現在.地球惑星科学分野での学術会議会員は,佐竹健治氏(東京大学),田近英一氏(東京大学,地球惑星科学連合会長)の二人で,連携会員として石渡 明氏(原子力規制委員会委員・元日本地質学会会長),江守正多氏(国立環境研究所),奥村晃史氏(広島大学),川幡穂高氏(東京大学・前地球惑星科学連合会長),木村 学氏(東京海洋大学・元地球惑星科学連合会長),鈴木康弘氏(名古屋大学),佃 栄吉氏(産業技術総合研究所),西山忠男氏(熊本大学)が名前を連ねています(漏れがあるかもしれません).
佐竹氏は津波研究で国際的に活躍している研究者,田近氏は地球をシステムとして考える研究の第一人者です.例えば,この二人が,総理大臣から学術会議会員としての任命を拒否されたら,地球科学に携わるすべての人が疑問に思い異議を唱えるでしょう.
今回の問題を身近に引き寄せて考えるとそういうことです.
学術会議に対する菅政権の対応は何が悪いのか ― 2020/10/10 15:51
まず,今回の対応が学問の自由を犯すものであることは明らかです.
研究してきたことにもとづいて意見を表明し行動したら学術会議のメンバーから外されたのですから.
■芦名定道(京都大教授 ・キリスト教学)
「安全保障関連法に反対する学者の会」や、安保法制に反対する「自由と平和のための京大有志の会」の賛同者。
■宇野重規(東京大社会科学研究所教授・政治思想史)
憲法学者らで作る「立憲デモクラシーの会」の呼びかけ人。 2013年12月に成立した特定秘密保護法について「民主主義の基盤そのものを危うくしかねない」と批判していた。
■岡田正則(早稲田大大学院法務研究科教授・行政法)
「安全保障関連法案の廃止を求める早稲田大学有志の会」の呼び掛け人。沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設問題を巡って2018年、政府対応に抗議する声明を発表。
■小沢隆一(東京慈恵会医科大教授・憲法学)
「安全保障関連法に反対する学者の会」の賛同者。安保関連法案について、2015年7月、衆院特別委員会の中央公聴会で、野党推薦の公述人として出席、廃案を求めた。
■加藤陽子(東京大大学院人文社会系研究科教授・日本近現代史)
「立憲デモクラシーの会」の呼び掛け人。改憲や特定秘密保護法などに反対。「内閣府公文書管理委員会」委員。現在は「国立公文書館の機能・施設の在り方等に関する調査検討会議」の委員。
■松宮孝明(立命館大大学院法務研究科教授・刑事法)
犯罪を計画段階から処罰する「共謀罪」法案について、2017年6月、参院法務委員会の参考人質疑で「戦後最悪の治安立法となる」などと批判。京都新聞に対し「とんでもないところに手を出してきたなこの政権は」と思ったとインタビューに答えている。
(HUFFPOST 2020年10月2日:元記事は共同通信による)
これを見ると,まさに狙い撃ちで気に喰わない研究者を排除しています.
菅総理も周到に用意していたのでしょうが,学術会議も誰を新しく加えるか十分に検討して名簿を提出したはずです.
この件は,いろいろな問題を提起しています.政府と学者の間の問題とは言えない側面があります.
その一つが,1983年に国会で政府が答弁していたことを国会にも諮らず勝手に変更し,それにもとづいて任命を拒否していることです.つまり,国会の承認を得ないで法律の解釈を変えたということです.これが通れば国会は完全に形骸化します.政府は解釈は変えてないと言っていますが,これはどう考えても通らない話です.
安倍政権は2014年に集団的自衛権行使を容認する閣議決定を行いました.これも,それまでの国会での政府答弁を覆すものでした.そして,2015年9月には安保法制を成立させました.
この先,菅政権が何を狙っているのか.ファシスト政権への道をまっしぐらに進むのではないかという不安が大きくなるばかりです.
今回の対応の悪い点の一つと思います.