本の紹介:一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教2015/02/12 10:36


内田 樹・中田 考,一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教.2014年2月,岩波新書.

 思想家で武道家の内田 樹氏とイスラーム学者でイスラーム教徒である中田 考氏との対談である.

 まず,イスラームとは何か,から始まって,一神教の風土について話しています.

 横道にそれた話ですが,日露戦争の時,日本の公債を買い取ったのが,ジェイコブ・シフと言うユダヤ人を中心としたユダヤ金融ネットワークだったそうです.また,石原莞爾が,満州にユダヤ人を集めて,その資金と技術力と知識を使って一大産業王国をつくろうという計画を練り上げたといいます.ここから,日猶同祖論(にちゆ・どうそろん)が出てきたそうです.

 ユダヤ教もキリスト教もイスラームも一神教です.ユダヤ教は国を持たない民が作った宗教であり,キリスト教は定住した民俗が信仰した宗教という性格を持っています.これに対して,イスラームは遊牧民の宗教です.遊牧民は一箇所に留まらず移動していると同時に,交易の文化を創り出しました.これが,イスラームの性格を大きく規定しているそうです.

 中田氏はカリフを復活させたいと考えています.カリフというのは,イスラーム共同体を率いる政治的な後継者であり,同時にアッラーの意志であるイスラーム法を代行する者のことです.これによって,モロッコからインドネシアまでの広大なイスラーム圏ができ,資源を適切に分配することで連帯と相互扶助のシステムが賦活させることができると言います.

 話は大変面白いのですが,現在のイスラームの宗派間の争いを見ていると,前途多難だなという感じがします.