水中火山の話 ― 2018/02/20 09:37
2018年2月3日(土)に,北海道総合地質学研究センター(HRCG)の第7回セミナーが開かれ,山岸宏光氏が「水中火山のはなし」と題して講演しました。
札幌市の「かでる2・7」の会場は,入りきれないほど人が詰めかけました。
北海道総合地質学研究センターのホームページは
< http://www.hrcg.jp >です。
写真1 講演する山岸宏光氏
山岸氏は2017年11月25日(土)にNHKで放送された「ブラタモリ 室蘭~工業都市・室蘭を生んだ奇跡とは!?」に出演し,室蘭絵鞆半島の地形と地質の説明しました。今回は,その時に準備した資料も含めて水中火山噴出物を中心とした話でした。
水中火山から噴出した溶岩が,水で急に冷やされて角礫状になったものに対してハイアロクラスタイトという言葉が使われるようになったのは1965年頃です。最初は玄武岩の枕状溶岩の外周の脆く破片化した部分に付けられた名前です。
1996年に豊浜トンネル,翌年に第二白糸トンネルで岩盤崩壊を起こした地質がハイアロクラスタイトです。
火山の噴火様式には,1)爆発的噴火,2)噴出的噴火があり,爆発的噴火では火砕岩が形成され,噴出的噴火では溶岩や岩脈が形成されます。水中で発生した噴出的噴火で形成されるのがハイアロクラスタイトです。
室蘭絵鞆半島の海岸は,ほとんど水中火山によって形成された地質で,1)ハイアロクラスタイトとその給源岩脈,2)水中軽石流堆積物から構成されています。
1)の給源岩脈の中には溶岩ドームの形を取るものがあり,チキウ岬は溶岩ドームです。その様子は,チキウ岬西側の遊歩道の途中から見ることが出来ます。
室蘭絵鞆半島の海岸に分布する給源岩脈の方向は,チキウ岬付近から西では北西-南東方向であるのに対して,東のトッカリショ付近では北北西-南南東方向になっています。
絵鞆半島には金屏風と呼ばれている崖があります。これは,水冷破砕岩が風化を受けたか,あるいは変質したものと考えられます。
一方,銀屏風は水中軽石流堆積物からできていて,2回の大噴火が認められます。
イタンキ浜の南西には白と黒の縞模様の崖が見えます。白いのは水中軽石流堆積物で黒いのは水中土石流堆積物です。
なお,チキウ岬の北にある母恋富士は陸上火山から噴出した安山岩溶岩です。
写真2 海上から見たチキウ岬
左の天辺の尖った岩体がハイアロクラスタイトを供給した溶岩ドームで,両側にハイアロクラスタイトが縞状に見えます。
写真3 チキウ岬の溶岩ドーム
地球岬の駐車場から西へ向かって降りて行く遊歩道の途中から見ることが出来ます。水平の柱状節理が見られます。
写真4 軽石流堆積物の崖
測量山の真西のハルカラモイ付近の崖をつくる軽石流堆積物です。
写真5 水中溶岩ドーム
水中で岩脈が次々と成長していった同心円状の構造が見られます。測量山の南西のマスイチセの崖です。
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