南海トラフ地震発生体掘削 ― 2018/02/20 14:13
地質学会誌の2018年1号は,125周年記念特集「深海掘削計画(IODP)10年の成果(その2)」です。
「木村 学ほか,南海トラフ地震発生帯掘削がもたらした沈み込み帯の新しい描像」(47−65)が興味深いです。
この中で,付加体の物性について概要が述べられています。まとめると表1および表2のようになります。
表1 付加体堆積物の圧縮・破壊強度
表2 付加体堆積物の摩擦係数
粘性土では,粘着力を0と考えて一軸圧縮強度から粘着力を求めることが行われます。それを適用すると,表1の上の二つの泥質堆積物の粘着力は,1,350-2,050kN/m^2となります。
地すべりでは経験的に、すべり面の平均鉛直層厚(m)に対して粘着力が提案されています(表-3)。ただし,経験値ですから,せいぜい層厚25m程度までとされています。
これを強引に当てはめると,泥質堆積物のすべり面より上の層厚は約1,000mですから,泥質堆積物の粘着力は,オーダー的には地すべり粘土の経験値が適用できそうに思います。
表3 粘着力の経験値
(道路土工 切土工・斜面安定工指針(平成21年版),日本道路協会)
このように考えると,壮大な沈み込み帯の研究も身近なものに感じられます。
その表題が示すように,この論文には沈み込み帯の新しい像を描こうという意気込みが感じられます。その背景には,地球物理学,地球化学を初めとした地球科学の総力をあげて沈み込み帯の実像を描き出したいという思いがあります。その中で,物質を扱う地「質」学の果たす役割は非常に大きなものがあると思います。
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