本の紹介:南海トラフ地震2016/07/19 21:10



南海トラフ地震
山岡耕春(やまおか・こうしゅん),南海トラフ地震.2016年1月,岩波新書.

 フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込んでいる南海トラフでは,100年から200年間隔で巨大地震が発生している.最新の地震は,1946年12月21日に発生した昭和南海地震である.近い将来,必ず次の南海トラフ地震が発生する.その場合,強い揺れや巨大な津波によって日本が回復不能な影響を受けるおそれがあるというのが,著者がこの本を執筆した動機である.

 目次は次のようになっている.

 はじめに
 序章 巨大地震の胎動
 第1章 くり返す南海トラフ地震
 第2章 最大クラスの地震とは
 第3章 津波,連動噴火,誘発地震
 第4章 被害予測と震災対策
 終章 それでも日本列島に生きる
 おわりに

 第4章で「予測の費用対効果」が述べられている.
 地震が起きると公表して,そのための応急対策にかかる費用と予測が的中した場合の利益を比較する.東海地震の場合,応急対策費用は1日あたり1,700億円とされていて,予測が出され警戒宣言が1週間続くと1兆2千億円かかる.一方,予測が的中した場合の利益というのは,道路交通の制限,鉄道の運行停止,店舗や工場,事務所の営業停止などによって被害が減少した額である.2003年,内閣府の試算によると利益は約6兆円とされている.
 予測を行った回数に対して地震が実際に発生した回数(=的中率)が20%以上であると利益に対して応急対策コストが下回ると言う.つまり,予測する価値があるということである.

 一番の問題は,「直前予知は可能か」ということを考える場合,「地震が起きる」ということが公表された時に,どのような対策をとるのかが決まらなければ,予測の評価ができないということである.

 少し分かりにくい議論であるが,実用的には納得できる.

 2011年の東北地方太平洋沖地震以来,内閣府で巨大地震・津波に対する検討が進められてきて,その成果が発表されている.
( http://www.jishin.go.jp )
 「平田 直,首都直下地震」(2016年2月,岩波新書)もそうであるが,その内容をわかりやすく解説した本である.


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