ドリップ・テクトニクス ― 2014/05/30 12:11
「地球科学」(地学団体研究会)の68巻3号(2014年5月)で宮下 敦氏が「ドリップ・テクトニクス」の紹介をしています。
「ドリップ・テクトニクスは,何らかの原因によって厚くなった地殻下部が,エクロジャイト化して周囲より密度が高くなり,たれさがった液滴(drip)状の塊になってデラミネーションし,マントル下部に沈むというモデルである.」(宮下,2014,25p)。
「デラミネーション(delamination)」というのは,本来は「層状に剥がれること」ですが,地学用語としては,「プレートにつながるスラブなどが切り離れて落ちる現象」(木村・大木,2013,174−175)です。
現在のプレート・テクトニクスによる地球上の構造運動が始まったのは,おおよそ10億年前(先カンブリア時代の中原生代末)以降と考えられていて,それ以前の全世界的なテクトニクスは,ドリップ・テクトニクスであるとされています(例えば,Stern,2013)。
ドリップ・テクトニクスとプレート・テクトニクス
(R. B. Stern, 2013, When did Plate Tectonics begin on Earth, and what came before? . Speaking of Geoscience. Geological Society of America's Guest Blog. )
上が,約10億年前から始まったプレート・テクトニクスの模式図です。
下は,ドリップ・テクトニクスの模式図で,エクロジャイト化したスラブが液滴状になって沈下していきます。
Hadean(ハディアン)と言うのは始生代(Archean:25億年前〜46億年前)の一番古い時代で,40億年前より古い時代のことです。冥王代とも言われますが,非公式の名称です。
現在と同じようなプレートテクトニクスがいつ発生したかについては,いろいろな説があります。西アフリカでは,20億年前(古原生代)に今と同じような沈み込み帯が形成されていたいう説もあります(J.Ganneほか,2012)。
ドリップ・テクトニクスによる現象が現在視られる地域としては,シェラネバダ山脈,コロラド高原,グレート・ベイズン(J.D.Westほか,2009)などがあります。
例えば,南部シェラネバダでは,深さ225km付近まで弾性波速度の速いマントル液滴が垂れ下がっていると考えられています(J.Saleebyほか,2003)。
ドリップ・テクトニクスは,現在の地球とは異なる構造運動や火成活動をしている金星や火星のテクトニクスに示唆を与えるものと考えられています。
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