ダイヤモンドと地球の物質大循環 ― 2010/08/05 13:32
日本でダイヤモンドの発見が報告されたのは2008年(Mizukami,T. et al)です.場所は愛媛県四国中央市の玄武岩質火山岩露頭からでした.このランプロファイアーと呼ばれる火山岩はマントル捕獲岩を取り込んでいて,その中の輝石の包有物の壁にダイヤモンドが形成されていました.大きさは1μm 程度と極めて微少でした.このダイヤモンドはマントルからもたらされたものと考えられます.この発見は,海洋プレートの沈み込み帯でのマントル上昇流の解明に寄与すると考えられています.
一方,世界各地の大陸間衝突帯には超高圧変成岩が分布していて,ざくろ石の中に微粒のダイヤモンドが形成されています.特に,カザフスタンのコクチェタフ(Kokchetav)変成帯では数多くの微少ダイヤモンドが産することが知られています.そのダイヤモンドの産状,流体中でのダイヤモンドの相平衡と安定性,炭酸塩岩中での変成反応,ダイヤモンドの形成過程,地球物質大循環についての知見などを述べたのが,「超高圧変成作用起源のダイヤモンド−大陸衝突に伴う表層物質深部沈み込みの証拠−」(小笠原義秀,2009年3月,早稲田大学出版部)です.
かなり専門的な内容ですが,写真,図をまじえて分かりやすく説明されています.ダイヤモンド粒の写真や岩石薄片の写真を見るだけでも楽しい本です.
是非,一読をお奨めします.
<参考文献>
鍵 裕之,2010,地球内部関連物質の分光学的研究.岩石鉱物科学,Vol.39,41-49.
Kaneko,Y.,Murakami,S.,Terabayashi,M.,Yamamoto,H.,Ishikawa,M.,Anma,R.,Parkins
on,C.D.,Ota,t.,Nakajima,Y.,Katayama,I.,Yamamoto,J. and Yamauchi,K.,
2000,Geology of the Kokchetav UHP-HP metamorphic belt,Northern
Kazakhstan.The Island Arc,Vol.9,264-283.
水上知行,2008,日本の天然ダイヤモンド〜前弧に浮上したマントルのなぞ〜.日本地
球惑星科学連合ニュースレター,Vol.4,No.1,3-5.
Mizukami, T.,Wallis, S. Enami,,M. and Kagi,H. ,2008,Forearc diamond from
Japan.Geology,Vol. 36, No. 3, 219-222.
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