都市近郊林−苫小牧地方演習林−2009/03/11 17:16

石城謙吉(いしがきけんきち)著,森林と人間−ある都市近郊林の物語−

 北海道大学苫小牧研究林での森・小川づくりと森林研究環境の整備と研究成果について面白く語られた本である.
 苫小牧研究林(当時は苫小牧地方演習林)は JR 苫小牧駅の北に広がる2,700ヘクタールの森で,著者が林長として赴任する前は人工造林に失敗し材木として伐採できる木が無くなるほど荒廃していた.
 これをフィールドサイエンスの拠点に育て同時に市民の憩いの場として整備していく過程が楽しく語られている.実際には,予算の獲得や著者の目指す方向への批判など多くの困難があったと思われるが,職員と共に焦らずじっくりと夢を実現していく過程が述べられている.
 森を広葉樹主体に作り替えると共に研究林の中央を流れる幌内川を生かして池や湿地を造成し苫小牧地方の魚や植物が住める環境を整え,鳥や動物がやってくる森に変身させた.そして,森の環境を立体的に把握する研究施設を作りデータを蓄積した.このデータを研究者で共有し多くの優れた研究成果を生み出した.
 研究林の入口には樹木園と森林博物館を設け市民がゆったりと憩える場所とするほか,研究林内に歩道を整備し10km 以上の散策も出来る環境を整えた.
 森が樹冠に囲まれた森林空間を作るのでその中は周囲とは異なる環境となる.これが森が人間に与える安らぎのもとであるという話はなるほどと思う.包み込まれる安心感があり,しかも広葉樹林が主であるため圧迫感がないという環境が出来上がっている.
 苫小牧の市民,小学生から老人までみんなに親しまれる森となっている.

【END】

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