第4回深田研講座 「基礎から学ぶ炭酸塩堆積物」 ― 2026/04/27 16:37
2026年4月23日(木)午後1時から4時まで、松田博貴(ひろき)氏による表記講演会が開かれました。Zoomで視聴しました。
松田氏は千葉県出身で、1968年に東京大学で博士号を取得し、石油関係の仕事をした後、熊本大学に勤め2025年から深田地質研究所の理事長に就任しました。専門は炭酸塩岩石学で、特に炭酸塩の岩石化の過程を研究してきました。
この講座は1時間半ずつの前編と後編があり、非常に充実した内容です。すべてを紹介することはできません。極簡単に紹介します。
なお、深田研講座は第1回が千木良雅弘氏による「災害地質学」で、YouTubeですべてが公開されています。約1時間半の講義が3コマです。
< https://www.youtube.com/@fgi_youtube_official >
松田氏の講座もいずれ公開されると思いますので、そちらをご覧下さい。
さて、大まかな内容です。
炭酸塩岩は現地で生物が生きていたままの状態で堆積している点が、砕屑岩類と大きく異なります。つまり、生産場と堆積場が同じです。
炭酸塩岩は海生生物が起源で、構成されている鉱物が限られます。続成作用により変化します。
炭酸塩岩は、過去の環境を再現できる、ドロマイトという資源になる、世界の約4割の油田の貯留層になっている、地下ダムの建設対象となるなどの特徴があります。
炭酸塩岩を構成する鉱物は、方解石、あられ石、ドロマイトです。方解石のカルシウムはマグネシウムで置換可能です。マグネシウムの置換量により溶けやすさに違いが出てきます。ドロマイトは続成作用で形成されます。
炭酸塩岩の構成物は、原地性生物骨格遺骸、造礁サンゴ、石灰藻、ストロマトライトなどです。基質はシルトサイズの石灰泥です。
炭酸塩岩の分類は、「ダナム(Dunham:1962)の分類」が基本となっています。
炭酸塩岩は熱帯で形成されるのですが、オーストラリアの南岸のような冷温帯でもできます。この地域は流入河川がほとんど無いことが、炭酸塩岩ができる有利な条件となっています。
炭酸塩堆積物が長期間堆積して平坦な地形をつくります。炭酸塩プラットフォームで、いろいろなタイプがあります。風向きによって形が異なってきます。
琉球列島のサンゴ礁は、冬でも海水温が20℃の黒潮によってサンゴ生息の北限に近い場所にできています。西に沖縄トラフと沖縄列島があり、数百種のサンゴが生息しています。
続成作用というのは、変成作用の手前で起こる堆積物の物理化学的変化です。
作用としては、溶解,膠結(びゅうけつ:concretion)、置換・交代、ミクライト化、新生作用、圧密があります。
あられ石は溶解しやすく、表面積が大きい生物は溶けやすいです。ウニのトゲは単結晶です。
土壌中の大気も炭酸塩岩の続成作用に影響してきます。
方解石は圧力が上がると溶解度も上がり、温度が上がると溶解度は下がります。鉱物の粒子の間を方解石が埋めると固結します。貝殻が溶けてセメント物質になります。炭酸塩岩の孔隙率と浸透率が重要です。
鉱物粒子に水滴状に石灰分が付いたり、メカニクス状になったりします。この状態では空気と水が共存しています。サンゴ礁などが海面上に出た場合、この状態になります。海面下ではモザイク状、あるいは鉱物粒子を取り囲んだリム状になります。このリムは、淡水環境では等粒状になり、海水環境では繊維状になります。結晶の周辺にできたリムの形状から生成環境が分かります。
置換・交代作用では、高マグネシウム方解石が低マグネシウム方解石に変化し安定化します。約12万年で低マグネシウム方解石に変化します。
ミクライト化作用というのは微粒の方解石ができる作用で、新生作用は結晶交代作用です。
圧密作用では、石灰岩の堆積構造が消えてスタイロライトという縫合線状の面が形成されます。
さて、ドロマイト化作用です。
鉱物としてのドロマイトは、CaMg(CO3)2です。岩石としてのドロマイトは、苦灰岩と呼んで区別していますが、石灰岩が二次的に変化したものです。
栃木県佐野市葛尾の石灰岩は、直径10kmほどの馬蹄形をしています。中央の100mがドロマイトです。塩分濃度が高い環境で形成されました。淡水と海水の混合でできるのか微生物が関与しているのかです。続成作用が起きた環境は、地表面近くでの続成作用、浅埋没化続成作用、深埋没化続成作用があります。ある程度、圧力溶解が進行しながら埋没していきます。石灰岩体は、上から淡水飽和帯、混合水帯、海水飽和帯に分けられます。
板状石灰岩であるビーチロックは3千〜6千年で形成され、数万年で続成作用が進みます。露頭をたたくのにネジリ鎌かハンマーか迷います。
海水中では何も起きず、海進期には続成作用が効きません。
続成シークエンスは薄片から分かります。
炭酸塩同位体化学についてです。
使用する同位体は、酸素同位対比と炭素同位体比です。
鹿児島県の喜界島では、隆起運動に伴いサンゴ礁の複合体が形成されています。海域ではサンゴの骨格が成長し陸域では鍾乳石が成長します。これらを使って12.5万年前から2万年前までのサンゴ礁の発達史を編むことができます。
沖縄県の南大東島では、三つのドロマイトユニットがあり海面付近でドロマイト化が進行したと考えられます。南大東島では東からの卓越風の影響を受けて、小範囲でもドロマイトの性状が異なっています。
<感 想>
世界の石油貯留層の4割が石灰岩であるとは知りませんでした。
石灰岩を掘削したトンネルは、愛媛県松山から高知県檮原(ゆすはら)に抜ける国道460号の地芳トンネル、高知県道・天崎鍾乳洞トンネル、北陸新幹線・青海トンネル、新帝釈川発電所導水路トンネルなどがあります。いずれも空洞と湧水に悩まされています。
現在、石灰岩が注目されるのが、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の文献調査対象地として南鳥島が挙げられ、国の申し入れに小笠原村長が同意したことです。
南鳥島は、海上保安庁の調査で厚さ1,200mほどの石灰岩が上位にあり、その下は玄武岩(多分、枕状溶岩)であることが明らかにされています。
地質的に見たら、最終処分場の候補地としては明らかに不適地です。
炭酸塩岩の基本的知識が得られました。今回の講座を聴いて非常に得をしました。
本の紹介:氷河の世界ハンドブック ― 2026/04/21 10:09

ドゥニ・メルシエ 著、吉田春美 訳、地図とデータで見る 氷河の世界ハンドブック。2026年2月、原書房。
オールカラーで氷河について述べている本です。
・氷河は一つではない?
南極やグリーランドには氷床と呼ばれる氷河があります。氷帽氷河、谷氷河、圏谷氷河、懸垂氷河などがあります。
・氷河と気候
地球規模での氷河と気候との関係、地域レベルでの話、氷河の流れる速度、氷床コアの掘削、氷河に閉じ込められた気候変動の記憶、氷河と火山活動、古い時代の海水面の上昇などです。
・現在の氷河の融解
現代の氷河の融解、氷河の表面・底面・末端の水、氷河湖の決壊、氷河の融解と海面上昇、沿岸地帯の浸水リスク、氷河の融解と岩壁の崩壊、氷河域への植生進出などです。
・かつての氷河の姿
更新世の氷河、アルプス氷期の復元、古い氷河の年代決定、氷河性地殻均衡、フィヨルド、カールとU字谷などです。
・氷河と人間
グリーランド氷床の探検、南極探検、南極基地、氷河で命を落とした人たち、氷河ツーリズムなどです。
参考文献は、URL付きで掲載されています。
題名のとおり、きれいなカラーの地図が豊富で非常に理解しやすいです。
著者は、ソルボンヌ大学の地理学教授で、極地の環境などが専門です。
シンポジウム 北海道の核ゴミ文献調査から5年 ― 2026/04/20 10:33
2026年4月11日(土)午後1時45分から午後7時半まで、札幌市の自治労会館で、シンポジウム「北海道の核ゴミ文献調査から5年 見えてきた最終処分政策の課題」が開かれました。
プログラムは以下のとおりです。
なお、今回の講演会の内容は、「環境と公害」(第53巻 第3号、岩浪書店、2026年1月)に載っています。
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開会の挨拶
「何が問題だったのか? 文献調査の5年を問う」
・大島堅一(龍谷大学教授):最終処分政策の課題
・寿楽浩太(東京電機大学教授):これまでの政策の経緯と今日的課題
・高野 聡(原子力資料情報室): 文献調査に反対する住民運 動
・岡村 聡(北海道教育大学名誉教授):文献調査報告書の技 術的問題点
・山下英俊(一橋大学准教授):文献調査が地域に与えた影響
パネルディスカッション:「あるべき政策転換に向けて私たちが できること」
☆発表者から
・大島堅一
・高野 聡ほか
☆北海道の市民社会から
・市川守弘(泊原発を再稼働させない・核ゴミを持ち込ませない北海道連絡会)
・南波 久・田嶋真由美(子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会)
・宮崎汐里(核のごみに関する対話を考える市民プロジェ クト)
閉会の挨拶
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以下、概要です。
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<大島堅一氏>
高レベル放射性廃棄物の最終処分場候補地の選定は、これまで公募方式でしたが申し入れ方式に変わりました。
第7次エネルギー基本計画(2025年2月)では、これまで原子力発電は極力低減するとしていたものが「最大限活用」となり、原子力発電所の再稼働と新設を新しい方針としました。この結果、核のゴミが増えることになります。
核燃料サイクルでは、青森県・六ヶ所村の再処理工場の竣工時期が再々変更され、現在も稼働していません。でも、核廃棄物は少なくとも2045年度までに県外に持ち出さなければなりません。
原発の放射性廃棄物には、再処理によってできる高レベル廃棄物、再処理の段階で発生する超ウラン廃棄物(TRU:Trans Uranic Wastes)、低レベル廃棄物があります。これらは10万年〜30万年間、保管する必要があります。最も安全な方法が求められます。
使用済み核燃料の再処理工程は破綻しています。
最終処分場の選定は、2020年11月に北海道の寿都町と神恵内村で文献調査が始まりました。2024年5月には玄海町で文献調査が始まりました。
2017年から公募方式のほかに、申し入れ方式が採用できるようになりました。しかし、NUMOが申し入れた場所が安全であると言うことではありません。申し入れは地元住民が知らないうちに行われ、住民の分断が必ず起こります。
最終処分場選定の規制基準はありません。中・低レベル放射性廃棄物の方法を参考にNUMOがつくっています。
2023年からNUMOは対話の場を設けています。寿都町と神恵内村では違う方法で対話を行っています。
一度候補地になると抜けることができません。法的拘束力は無いのですが、自治体側に拒否権はありません。
文献調査を受け入れると上限20億円の交付金が出ます。
最終処分場選定に国会の関与がありません。ドイツでは選定段階から国会が規制基準を作っています。
世代間倫理の問題はありますが、最終処分場選定を急ぐ必要はありません。現在の処分場プロセスの選定過程を科学的安全性と民主主義的正当性とが確保された制度に抜本的に変えることが必要です。
<寿楽浩太氏>
高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定の「手挙げ方式」(公募方式)は誤算でした。
2002年にNUMOが公募を始めました。2007年には高知県東洋町が文献調査に応募しましたが、反対運動が起きて応募を取りやめました。
2010年には原子力委員会が学術会議に対して「高レベル放射性廃棄物の処分の取組における国民に対する説明や情報提供のあり方についての提言のとりまとめ」の審議を以来しました。日本学術会議は、2012年に回答を行っています。
2014年には総合資源エネルギー調査会の中の放射性廃棄物WGが中間とりまとめを行っています。この中で、国が「なぜここか」を示すことが必要と述べています。
2013年には関係閣僚会議が「科学的有望地」を提示することを決めました。これにしたがって、2015年から2017年に検討が行われて「科学的特性マップ」が提示されました。
寿都町と神恵内村が文献調査に手を挙げた後、玄海町が手を挙げました。しかし、この方式への懐疑から、「科学的有望地」に対して国が申し入れをするという方式を始めました。その第一番が東京都小笠原村の南鳥島です。
南鳥島は「科学的有望地」+土地利用の優位(住民がいない国有地)という観点でのみ見るのは危ういです。南鳥島をめぐる国のさまざまな動きや島嶼国に対する影響などの問題を考える必要があります。
<高野 聡氏>
北海道では寿都町と神恵内村の文献調査が終了し、経済産業省の審議会の下部組織である地層処分技術ワーキンググループでの原案の審議の中で、北海道教育大学名誉教授の岡村 聡氏などが議論に参加しました。また、意見の提出も行いました。これらが、調査結果を議論するワーキンググループに影響を与えた可能性があります。
最終処分場選定過程での大きな問題は、地域の分断です。NUMOが行う対話の場では、多様な住民が参加し、多様な意見を述べることが必要です。特定放射性廃棄物小委員会での検証と市民プロジェクトが結合する必要があります。
最終処分場に公募した対馬市では、市議会特別委員会は文献調査に賛成でしたが、住民運動によってこれを覆しました。
佐賀県玄海町では、町議会が文献調査受入の請願を採択し、町長が受入を表明しました。
<岡村 聡氏>
2017年に「科学的特性マップ」が公表され、2023年には「文献調査段階の評価の考え方」出されました。これらでは、岩盤の特性を考慮していません。
内閣府の審議依頼を受けて、日本学術会議は2012年に「高レベル放射性廃棄物の処分について」と題する回答を提出しました。
フィンランドでは地質的に安全な場所を専門家が絞り込んで、オンカロに放射性廃棄物処分場を造ることを決めました。
神恵内村は、水中溶岩の分布域で岩盤が脆弱です。沖合に海底活断層があり地震のリスクもあります。
寿都町には活断層である黒松内断層があります。地下深くに群発地震の発生域があり、能登半島と同じような地下状況になっていると考えられます。
玄海町は、石炭を含む地層が分布していて、地下を掘ることでメタンガスの発生が予想されます。北海道幌延の深地層研究センターでは、周囲に石炭層はないのですが、泥岩からガスが噴出しています。
南鳥島は、地表から1,000mほどが石灰岩です。水の通りやすい地質です。
<山下英俊氏>
2025年に社会科学者のグループで高レベル放射性廃棄物の文献調査について、寿都町で町民アンケートを行いました。1,291世帯にアンケートを配って197件の回答がありました。回収率は15.3%です。
まず、文献調査まででやめるべきとの回答は53%、概要調査に進むべきは34%、どちらとも言えないが13%でした。
NUMOの説明に納得できたかは、納得できなかった側が42%、納得できた側が18%、どちらとも言えないと未回答が40%でした。
文献調査まででやめるべきとの回答では原子力への懸念が強く、概要調査に進むべきでは原子力の必要性が重視されています。どちらの側にも国などの責任を問う声があります。
<パネルディスカッション>
パネルディスカッションでは、市川守弘氏の発言が印象的でした。大要は次のとおりです。
「最終処分法が一番の問題なので、これを廃止にする必要があります。北海道は幌延などが出発点ですが、中間貯蔵施設も受け入れたらダメです。北海道には核施設は建設できないはずです。過疎地に処分場を押し付けるのではなく、国全体の問題として考える必要があります。」
パネルディスカッションには、寿都町の難波さんが会場で参加し、リモートで田嶋真由美さんが参加しました。宮崎さんはファシリテーターをしているとのことです。

写真 パネルディスカッションが始まる前
立っている人を除いて、左から高野 聡さん、大島堅一さん、寿楽浩太さん、市川守弘さん、南波 久さん、宮崎汐里さんです。
<感 想>
現在、北海道の寿都町と神恵内村、佐賀県の玄海町、そして東京都の小笠原村・南鳥島(国有地)が文献調査の対象となっています。
地質的に見ると寿都町と神恵内村は中新世の水中溶岩が大半を占めています。玄海町は古第三紀の石炭を含む地層が多く分布しています。南鳥島は礁性石灰岩が厚く堆積していて、その下は多分、水中溶岩(枕状溶岩)です。
これらの地質は、最終処分場として適しているとは言えないと思います。
市川さんが言っていたように最終処分法を一度廃止して、一から考え直すことが禍根を残さない方法のように思います。
本の紹介:バリ島の発展と航空輸送 ― 2026/04/08 17:36

伊佐田 剛・NUI LUH SUCIANI、バリ島の発展と航空輸送 日本とインドネシアの友情物語。ブイツーソリューション、2026年1月。
バリ島の空港整備などに貢献してきた人たちの活動と著者の一人伊佐田氏の将来予測について書かれた本です。
目次は次のようです。
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プロローグ
第1章 バリ島の歴史と航空輸送の始まり
第2章 日本の協力
第3章 ングラ・ライ賴国際空港の現状と将来計画
あとがき
本書の監修を終えて
NPO法人アジアの仲間による航空フォーラムの主な活動経緯
筆者略歴
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バリ島の面積は約5,600km2で、人口は約432万人です。面積は愛媛県とほぼ同じで、人口は北海道とほぼ同じです。
この本の中で興味深いのは、地域MAS(Multiple Air System:複数空港システム)です。利用者が1時間ほどで空港にアクセスできるように空港を配置し、その地域全体を覆うという構想です。使用する航空機は、A300やB737のような小型ジェット機とインドネシア国産のN-219プロペラ機です。N-219は19人乗りで、600mから800mの滑走路で離着陸が可能です。
図1 バリ島における地域MAS(本書 124頁)
九つの空港でMASを形成する案です
40年以上にわたり空港業務に従事してきた伊佐田氏の知識が詰まった本です。
amazonやRakutenブックスで入手できます。
本の紹介:百年の挽歌 ― 2026/04/05 14:16

青木 理(おさむ)、百年の挽歌 原発、戦争、美しい村。集英社、2026年1月。
阿武隈高地の北の端付近にある福島県・飯舘村で、102年の人生を過ごしてきた古老が自ら命を絶ったことを描いたルポルタージュです。
2011年の東日本大震災は津波によって多くの犠牲者を出しましたが、高原の里と言われる飯舘村では、福島第一原子力発電所の事故によって多くの人が故郷を失いました。この本の大久保美江子さんとその義父である大久保文雄さんは、原発事故により大きく人生を狂わされたのです。
青木さんが調べるうちに、文雄さんの15歳下の弟、久さんは成人した直後に招集されました。その後、硫黄島に送られました。そこで戦死したのです。
硫黄島は、小笠原群島の西にある西之島(1973年〜1974年にマグマ噴火)に連なる火山島で、飲み水は天水に頼るしかない状況でした。このような硫黄島に送られた21,000名の将兵は、地熱と有毒ガスそして喉の渇きと闘いながら総延長18kmの「地下要塞」を掘ったのです。
飯舘村が全村避難と決まった後、文雄さんは「ちぃっと長く生きすぎたなぁ。イヤなものをみちまった・・・・」と独りごちたのです。
原子炉の爆発という大事故を起こし、未だに生活が戻らない人びとが多くいる状況で、原子力発電が再開されているこの国の状況は、常軌を逸しているとしか思えません。
そのことを強く感じる本です。
