本の紹介:ハマスの実像2024/11/27 21:19

ハマスの実像

 川上泰徳、ハマスの実像。集英社新書、20248月。

 

 20061月のパレスチナ自治評議会選挙でハマスが過半数の議席を獲得しました。

 20076月にハマスがガザを支配しました。同時にイスラエルがガザを封鎖します。この状況でハマスは貧困救済や孤児救済を行います。

 16年後の2023107日にハマスの軍事部門であるイッズディン・カッサーム軍団がイスラエル領に越境攻撃を行い、民間人を殺害し、捕虜を連れ去りました。

 その後のイスラエルによるジェノサイドと思えるガザへの攻撃に対して、「西側諸国」はほとんど効果的な手を打てていません。それどころか、イスラエルが民間人を殺傷していることを知りながら軍事援助をしています。

 

 この本では、パレスチナの歴史を通じて、ハマスが何故ガザを支配するようになったのか、何故ガザの人びとの支持を得ているのかを具体的に述べています。端的に言えば、ハマスの政治部門がガザで行ってきている住民の生活の安定のための色々な施策が支持されているのです。

 

 そして、著者によれば『「犠牲を出し続けても、抵抗運動を止めない」というハマスのスタンスを、パレスチナ人の多くが共有しているということであろう。これだけの犠牲を出しても、イスラエルの占領を終わらせる戦いに意味と希望を見出すしかないというパレスチナの人々の思いを、ハマスやカッサーム軍団が担っているという構図が見えてくる。』ということになります。

 

 「本書は、ハマスという日本人にとっては見えにくい存在、日本人が見ないようにしてきた存在をジャーナリズムの視点から、その実像に光を当てようとしたものである。」

 

 ぜひ、多くの人に読んで欲しい本です。

 



国道13号・福島西道路の浅川トンネル2024/11/22 21:08

 日経XTECH202411221)によると、一般国道13号の福島西道路・浅川トンネル(延長1,767m)の工事が難航していて、予定していた2026年度の開通が困難になり、開通時期は未定だと言います。

 NATM工法で掘進していて、202310月から202410月の1年間で530mの掘進とのことです。稼働日数を250日とすると12.1mの進行です。ごく一般的には、14mは掘進できますから、半分の掘進速度ということになります。

 難航している原因は、大きな岩塊に遭遇し発破で小割しながら掘進しているためだそうです。同記事の切羽写真を見ると、岩塊は白灰色でデイサイト質の火山岩のように見えます。

 

 浅川トンネルの地質は、地質図ナビでは第四紀更新世のカラブリアン(約180万年前〜約80万年前)のデイサイト・流紋岩 大規模火砕流となっています。

 5万分の1地質図幅の「福島」は刊行されていませんが、南隣の「二本松図幅」の伏拝(ふしおがみ)岩屑なだれ堆積物に相当すると考えられます。 伏拝というのはJR東北本線南福島駅の南東約1kmにあります。

 この岩屑なだれ堆積物は、安達太良火山噴出物の基底をなしています。二本松図幅を見ると、岩屑なだれ堆積物の発生源はJR東北本線松川駅の西、約11.5kmにある黒森山(標高760.4m)のようです。しかし、黒森山は安山岩から構成されていること、岩屑なだれを発生させた山体崩壊の地形が見られないこと、などの疑問があります。

 

 北海道新幹線の羊蹄トンネル(延長9,750m)の札幌側の比羅夫工区では、シールド工法(シールド機で掘削し、場所打ちコンクリートで一次覆工を行う工法:SENS工法)で掘削していましたが、20217月に巨大岩塊に当たって掘削不能となり、地表に陥没が生じました。小断面の迂回トンネルを掘って岩塊を除去して、202311月に掘削を再開しました。

 

 同トンネルの函館側の有島工区でも岩塊に遭遇し工事が止まっていましたが、20241118日から掘削を再開しました。しかし、22日に再び停止したとのことです。

 

 これらの岩塊は、古羊蹄火山の山体崩壊による岩屑なだれ堆積物です。

 古羊蹄火山の山体崩壊堆積物については学会発表や論文が出ていて、分布も示されています(例えば、吉田、2015や江草・中川、2001など)。羊蹄火山の西の麓を通る国道5号の脇には、真っ黒な安山岩の巨大な岩塊が鎮座しています。山体が崩壊して移動してきた岩塊ですから、非常に硬いのが一つの特徴だと思います。

 

 シールド工法で掘削することに決めた時期と、古羊蹄火山の岩屑なだれ堆積物の分布が明らかになった時期との前後関係があると思いますが、地質調査をおろそかにしているとしか思えない「事故」という感じがします。

 

 二昔前は付加体堆積物中を掘削するトンネルで切羽崩壊などの事故が起きました。

 ジュラ紀付加体の美濃帯・味噌川コンプレックス分布域(粘板岩主体)を掘削した国道361号の権兵衛トンネルや紀伊半島西海岸の四万十帯・音無川帯(無層理の泥岩主体)を掘削した阪和自動車道・高田山トンネルなど、大変苦労して掘削したトンネルがあります。

 

 最近は、岩屑なだれ堆積物中での事故が多いようです。

 岩屑なだれ堆積物は、まず地形図をじっくりと見ることが大事です。山麓に離れ山の凸地形が分布しているのが特徴です。凸地形以外は比較的平坦な地形が広がっているので、この平坦面にだけ注目すると痛い目に遭うことになります。また、崩壊源を特定できる場合があります。

 ニセコ連山の一つ、チセヌプリの北斜面とその麓にある神仙沼は岩屑なだれ堆積物の典型的な地形でしょう。

 

 建設工事に伴う地質調査に従事する技術者は、工学的素養が大事です。しかし、それ以上に地形を見る、地質を三次元的に見る訓練を積む必要があります。



第41回地質調査総合センターシンポジウム2024/11/19 10:31

 20241025日(金)午前10時から午後5時まで、表記シンポジウムが開かれました。今回の表題は「デジタル技術で繋ぐ地質情報と防災対策〜活断層-火山-斜面災害-海洋地質〜」でした。

 Microsoft Teamsで視聴しました。

 

 午前の司会は小松原純子氏で、まず、中尾信典センター長と経済産業省の大出真理子氏の挨拶がありました。午後の司会は古川竜太氏でした。

 

 以下、講演の概要を述べます。メモをもとに書いていますので、勘違いしているところがあるかもしれません。

口頭発表のほかにポスター発表もありました。講演要旨は、下のURLから入手できます(20241119日現在)。

( https://www.gsj.jp/index.html>

 https://www.gsj.jp/publications/pub/openfile/openfile0758.html 

 

藤原 治氏(活断層・火山研究部門長)が趣旨説明を行いました。

 

 産総研 地質調査総合センターでは、高精度デジタル情報の整備を進めています。国が進める国土強靱化では、情報を集約して提供することが求められます。知的基盤整備では高精度のデジタル情報が必要です。

自然災害による死者は年間数百人です。近年、災害は頻繁に起こり激甚化しています。活断層、海洋地質、火山情報、斜面災害などの情報が重要です。

 災害に対しては、第一に人命を失わないこと、重要な社会的機能を維持できること、人びとの財産を守ること、そして復旧・復興に資することが必要です。

 活断層については、都市直下型の地震を起こす活断層や都市沿岸部の海底活断層に注意が必要です。活断層の位置、長さ、走向、ズレの向き、傾斜、平均変位速度、最新活動時期、平均活動間隔、30年間の発生確率などを明らかにしてきました。5万分の1地形図に表示して公開しています(地質図ナビなど)。

 火山については、50の火山について火口位置データベースを作成し、2.5万分の1デジタル地形図に表記しています。

斜面災害については、凡例の構造化を行い、衛星情報と現地調査を組み合わせ、災害履歴を調査しています。衛星データでは干渉SARにより斜面変動を抽出し、それを参考に斜面変動発生の地質的要因を推定しています。

 海洋については、データのデジタル化とシームレス化を行い、統合表示を行っています。

 地質については、機械で利用可能な形でデータを提供し、図幅とその説明書を公開しています。さらに、API(アプリケーション・プログラム・インターフェイス)を整備することにより利用しやすくします。

 災害に強い社会とすることに貢献するため、デジタル化の一層の推進とワンストップでのデータの活用をすすめます。

 

西山昭一氏(全地連情報化委員会):地盤情報・地盤モデルの利活用と確実な継承に向けて

 

 地盤情報は、国土地盤情報センターや産総研 地質調査総合センターによって公開されていて、ボーリングデータや主題図を見ることができます。

 地盤モデルについては、土木地質図やダム建設に伴う地質平面図や断面図があります。

 地質リスクについては、構造物ごとに地質リスク・スコアで表示するという方法があります。

 3次元地質解析システムは、資源分野での開発が先行していました。システムの流れは同じです。

 建設分野でのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデル)は、オブジェクト指向となっています。オープンBIMには、さまざまなものがありますが、BIM/CIMが連携し地形モデル、地質・土質モデル、線形モデルなどを使い情報の受け渡しを行います。地盤モデルを継承するための継承シートがあります。

 

宮下由香里氏(地質調査総合センター 活断層・火山研究部門):防災情報はどこにある?−活断層データベース、地質図ナビの活用−

 

 2016年に熊本地震が発生しました。この時活動した布田川断層帯・日奈久断層帯については、2013年に地震調査研究推進本部(地震本部)が評価を行っていて、新聞報道もなされました。しかし、大半の住民は、熊本地方に活断層があることを知りませんでした。

 自然災害には、地震・気象・火山・土砂などの災害があります。災害マネジメントサイクルは、災害が発生した場合、緊急対応→復旧・復興→次の災害に向けた防止・減災対策→次の災害に向けた事前準備という四つの段階を言います。

 地域防災計画は、1961(昭和36)年の災害対策基本法がもとになっています。

 災害発生時には情報を瞬時に理解して行動することです。熊本地震の時、海沿いの地域の人たちは津波を予想して山側に逃げました。ところが、地震によって発生した活断層によって行く手を阻まれてしまいました。

 地震調査研究推進本部では、産総研、気象庁、防災科研、国土地理院、海上保安庁、大学が連携して調査研究を行っています。地震本部の中に地震調査委員会があり地震の評価と自治体への説明を行っています。

 それとは別に、内閣府には中央防災会議というのがあります。これは、1961(昭和36)年の伊勢湾台風を契機に造られた組織です。地震本部は文科省の管轄で全国を一律に評価し発生確率を予測します。

 活断層は約2,000あると言われていますが、そのうちの114の活断層の長期評価を地震本部で行っています。海底活断層も含まれます。地震本部では揺れの予測図を作っています。これらを分かりやすい情報として発信すること、活断層の正確な位置を決めること、揺れの予測・地盤情報・活断層からの距離などを情報ポータルとして公開しています。

 

大上隆史氏(地質調査総合センター 活断層・火山研究部門):レジリエンス向上に向けた都市・沿岸域における活断層調査

 

 2016年の熊本地震で布田川断層帯・日奈久断層帯が活動しました。その北西側に水前寺断層と立田山断層があります。

1995年、地震本部は長さ20km以上で都市・沿岸域にある活断層の調査を行いました。立田山断層は1889年の地震で出現しました。水前寺断層は2016年の熊本地震で出現しました。

立田山断層の調査は熊本城公園で群列ボーリングを行い、断層を確認しました。

 海域の活断層調査の例としては、周防灘での調査があります。音波探査と海上ボーリングを行いました。瀬戸内海は活断層調査の空白域です。周防灘には北西−南東方向の菊川断層帯、ほぼ南北方向の宇部南方沖断層、北東−南西方向の小郡断層があり、これらが会合しています。

 海上での音波探査では、震源により探査深度が異なります。エアガン(GIガン)では200万年前までの地下構造が明らかになり、ブーマー震源では数十万年以降の地質構造を把握できます。

 周防灘で実施した音波探査で得られたサブボトムプロファイラー(SBP)では、海底直下では地層は撓んでいないことが分かりました。周防灘で掘削深度40mのボーリング、炭素年代測定、火山灰同定を行って、大きな地震が発生したのは4千年前以前と分かりました。

 周防大島周辺など坊予諸島地域にも海底活断層の存在が予想されます。

 

及川輝樹氏(地質調査総合センター 活断層・火山研究部門):噴火口図・火口位置データの作成とその活用

 

 地質調査総合センターでは、全国の51火山について火口位置を特定しています。位置の確実度、噴出が予想される位置、噴火口図を付けています。

 きっかけとなったのは2014927日の御嶽山の噴火でした。御嶽山では北西−南東方向に火口が並んでいます。確実度、地形判読によって噴出物の分布・構成する地質を示し、既存文献を表示しています。1mDEMの地形図で赤色立体地図を作成し判読しました。

 日光白根火山は、既存の火口の北西に火口があることが分かりました。噴火口図で火口の位置とイベントを表示しています。

 

石塚 浩氏(地質調査総合センター 活断層・火山研究部門):伊豆大島火山−海陸統合調査の試み−

 

 沿岸海域の海底火山と陸上火山の噴出物を総合的に見る必要があります。そのために、水中ドローン、グラブ・ドレッジなど、すべての探査手法を使います。

 伊豆大島は、北西−南東方向に火山列が並んでいます。ある程度の水深があれば観測船で調査できますが、水深の浅い岸付近のデータが欠損しています。これらを補う形で探査した結果、大島空港の西にある三ッ峰から北西に延びる火山列が明らかになりました。塊状溶岩や枕状溶岩が分布していて、斜面勾配の変化が観測されました。2,170年前に海底溶岩の活動があったようです。火口の大きさは500m規模です。

 島の南東側の波浮の港付近には割れ目噴火を示す火口があり、1,500年より新しい後カルデラ期の火口です。

 島の南西にある千波岬は、12,550±40BPの年代の溶岩があり、北北東−南南西の火口列があります。

 大島火山はマグマ組成の変化があり、Ba/Laの変化と年代が対応しています。

 

川端大作氏(地質調査総合センター 地質情報研究部門):地すべりハザードマップにつながる地質情報

 

 斜面変動によって斜面災害が発生します。斜面変動には素因と誘因があります。

 斜面変動は、時間スケールとしては何年かに一度発生し、空間スケールとしては広域的な場合もあり構造物単位の場合もあります。

 経産省では知的基盤整備計画で九州地方を対象として、斜面リスクマップを整備しています。地すべりハザードマップとしては、過去の発生場、地すべりの起こりやすさを示す感受性マップの作成、地質と地すべりの情報の統合を行っています。

 九州北部地方と佐世保地域で斜面災害評価に役立つデジタル地質情報の整備と災害リスク主題図を作成しています。九州の特徴は火山岩地域が多いこと、テフラや熱水変質を素因とする地すべりが多いことです。

地すべり感受性マップの改良やパラメーターをどう選定するかなどの課題を解決していきます。

 

内藤一樹氏(地質調査総合センター 地盤情報基盤センター):地質DXのためのデータ統合とデータ連携

 

 地質情報をより広く活用するためには、デジタル化と機械可読化が必要です。

 地質図はベクトルデータで提供し、説明書はXLMデータとして示します。専門用語を分かりやすく解説します。

ネット空間で、それぞれのデータを結合させます。「Findable(見つけられる)、Accessible(アクセスできる)、Interoperable(相互運用できる)、Reusable(再利用できる)」のフェア原則を採用しています。

位置を緯度経度で検索できるようにします。データの流通性にも留意しAPIは国際標準を用います。地質標本、データカタログなども提供します。

 信頼性と品質を保持し生成AIとの区別もつけ、改ざん対策を行い、高品質な学習データを提供します。同時に機械可読性が高いデータとします。

 

<感 想>

 地質調査業務に携わっていた者としては、比較的早い時期から行われていた地質図ナビの整備は、広域の地質を掴むのに大変役に立ちました。5万分の1地質図幅とその説明書をネットで見ることができるのも大いに助かりました。元データを簡単に見ることができるというのは、かなり大事なことだと思います。

 地すべりの安定度の評価は災害防止の点で大事で、地すべり学会など色々な機関が評価方法を提案しています。その一つの重要な要素として地質構成・地質構造があります。地質調査総合センターに期待するのは、最新の地質学的観点から地質データを整備することです。

 これからも、色々なシンポジウムが計画されているので大いに期待しています。



地学団体研究会第70回理論の学習会2024/11/15 20:02

  表記学習会が、20241110日(日)10時から午後3時半まで昼休みを挟んで行われました。Zoomで視聴しました。

 

 今回は、午前中が

 山田博文氏(群馬大学名誉教授)の「物価高・異次元リスクに沈む国と21世紀の展望」、

 午後が

 原田浩二氏(京都大学医学部准教授)の「有機フッ素化合物PFASによる汚染と健康影響」

でした。参加者は最大で51名でした。

 

<山田博文氏>

 現在、世界の大変動が起きています。アメリカ大統領にトランプ氏がなり、世界の株価が暴騰しています。トランプ氏は、中国に対して60%の関税をかけ、他の国に対しても20%の関税をかけると言っています。

 

 日本では物価高が進んでいますが、賃金の上昇がそれに追いついていません。2022年は値上げ率14%・賃金上昇率1.4%、2023年は同15%・2.1%、20024年は同17%・5.1%です。

 この現象は、円安→輸入物価の高騰→企業の物価高騰→国内の物価高騰→生活と経営の破壊という流れで起きています。

 

 円安の原因は、海外が高金利であるのに対して日本は低金利ですから、日本からマネーが出て行っているためです。中期的には貿易が赤字になり、長期的には日本の国際的地位が低下します。1億ドルの物資を輸入するのに、1995年は84億ドルで済んだのですが、2023年に149億ドルが必要となり、国民は2023年で年14万円の負担増となっています。

 政策金利は、日本が0.25%に対して、アメリカ4.75%、ユーロ3.65%となっていて、日本から金利の高いアメリカに資本が逃避しています。

 

 日本の公的年金積立金は、258兆円ありますが128兆円(約50%)が海外への投資となっています。アメリカ、中国、ASEANなどは外国法人の比率は30%程度です。円安と株式バブルが崩壊すれば価値は1/10になります。

 

 2012年〜20233年の間に、「持つ者」は株の時価総額2.9倍、利益剰余金1.9倍となっています。それに対して、「持たざる者」は消費税が10兆円から23兆円に、税などの負担率は約40%から48%に増えています。賃金が減って負担が増えているのです。政府債務は、991兆円から1,339兆円に増えました。

 

 アベノミクスで円安と株高が進行し、政府債務はGDP2.6倍となっています。終戦後は、ハイパーインフレが進行し、新円に切り替えることなどで債務を解消しましたが、国民はタケノコ生活を強いられました(タケノコの皮を剥ぐように、持っている物を売って金に換えて生活すること)。現在、海外に逃避した資産は411兆円、富裕層の資産は333兆円、企業の内部留保は678兆円です。しかし、経済成長率は0.2%で大企業は海外へ出て行っています。日本は、日昇る国から日沈む国になりました。

 

 現代の経済は、カジノ型金融独占資本主義です。モノの生産をするより、デジタル空間を利用してカネを瞬時に動かして儲けをあげます。資本の自由が最優先で、社会保障は国家による富の窃盗という考え方です。

 世界の金融資産は約274兆ドルで実体経済の規模は約92兆ドル、日本は約18兆ドルに対して約5兆ドルです。日本は海外投資から35兆円の配当・利子を受け取っています。貿易黒字国・物づくり国から貿易赤字国・海外投資国へと変貌したのです。

 

 アジア経済圏を見てみると、1820年には中国とインドが世界の6割を占めていました。2023年にはアジア3割、北米3割、ヨーロッパ2.5割となっています。経済圏の中心はアジアへ移りました。

 そして、日本の貿易相手国は中国(22兆ドル)、ASEAN15兆ドル)、アメリカ(14兆ドル)、EU10兆ドル)、台湾と韓国が5.5兆ドルの順になっています。観光収入も中国からの観光客による収入が4.8兆円で、アメリカ分は0.32兆円です。

 ですから、中国と戦争をして中国からの輸入の8割が2ヶ月止まれば、生産額で53兆円が消失し日本はたちまち破綻します。食糧不足になるのは目に見えています。

 

 日本は、東アジア連合を結成し平和・福祉国家として立ちゆくことです。国民生活と国民の権利を大切にし、アメリカに従属することをやめるのです。

 今の日本は、企業国家+軍事国家に向かっています。しかし、福祉と経済成長は両立できます。地域内循環を作り出し、富の公平な分配を行うことです。

 

 最後に、世界のニュースを知るには、

1.ブルームバーグ社:https://www.bloomberg.co.jp 

2.ロイター社:https://jp.reuters.com 

3.中国人民網:http://j.people.com.cn/94476/index.html 

がグローバルな視野で世界を分析しています。いずれも日本語版をネットで見ることができます。

 

<原田氏>

 PFASは、「ペル/ポリフルオロアルキル物質」の略です。炭素とフッ素を含む人工の有機物です。これまで4,700種以上が使われてきていて、10,000種以上はあるといわれています。分解しにくく耐熱性、耐光性に優れています。今、特に注目されているのがPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)です。

 用途は、撥水・撥油コーティング剤や泡消火剤に使われていて、3M社が開発したゴアテックスにも使われています。PFAS1940年代に3M社が開発し、2002年まで使われていました。

 

 原田氏は、2003年にはPFASの分析法を確立しました。

 その前、2002年に多摩川の河口から奥多摩までPFOSの調査をしました。多摩川上流下水処理場の下流では36-157ng/LPFOSが検出され、その下流の砧浄水場の水道水からは43-50ng/LPFOSが検出されました。軍事基地や航空関連施設、半導体工場などから出ていることが分かります。

 *ng/L1リットル当たり10-9グラム(10億分の1グラム)の含有量。

 

 淀川水系では、河口で非常に高い値を示します。京都市や大阪市の下水処理場、ダイキンの工場、フッ素樹脂製造工場などが原因です。

地下水がPFASに汚染されている例として、手水に使うお寺の井戸から57,000ng/L検出されました。大気によって運ばれたものが地下に浸透したと考えられます。

 

 世界各地で汚染が広がっています。生物への蓄積では、ホッキョクグマやペンギンなどの海棲哺乳類、鳥類、魚類などに蓄積されています。1970年代から鳥の卵で含有量が上がっています。

 

 普段の食事から人が摂取していると考えられます。化粧品では,水に濡れても落ちない種類に含まれています。バーガーを包む耐油紙にも含まれています。

 樹脂製造工場から大気によって拡散していると推定されます。

 

 健康への被害としては、甲状腺異常や腎臓ガン、肝ガン、胎仔成長阻害などが報告されています。低出生体重、発達障害、前立腺ガンなどもあります。

 

 沖縄の宜野湾市では、2016年から企業局が調査を始めました。北谷浄水場の取水源や普天間飛行場周辺の湧水から高濃度のPFOSが検出されています

 2020410日には普天間飛行場からでた泡消火剤の泡が飛び回りました。2021226日には自衛隊の那覇基地からPFOSを含んでいる泡が飛び散りました。

 

 健康へ影響が出る血中濃度は、ドイツではPFOS20ng/mLPFOA10ng/mLとされています。

 

 多摩地域では、国分寺市を中心にPFOAなどの血中濃度が高いことが分かってきました。

 全国的には、各務原市、自衛隊浜松基地、三沢基地、岩国基地、東広島市の米軍弾薬庫、静岡市清水区、四日市市のキオクシア工場、吉備中央町、熊本市、綾部市、相模原市などで汚染が見つかっています。水を浄化するために使った活性炭の廃棄物から検出されています。

 

 日本では50ng/Lが環境基準になる可能性が高いです。ドイツなどのように血中濃度の基準が必要でしょう。

 

<感 想>

 最近の物価上昇の原因は、円安やウクライナ戦争だと言うことが言われます。しかし、一番の元凶は、アベノミクスによって日本の金利が低いままであることだと、山田氏は指摘しています。

 政府は、NISAなどで一般市民を投資に向かわせようとしています。しかし、預金は元本が保証されているのに対し、株は元本割れをする危険性が高いという違いがあります。このことを考えて「自己責任」で投資をすることが必要でしょう。

 中国とは社会体制の違いを認め、お互いを尊重して経済的に付き合うことが大事であるというのはもっともな話です。南西諸島に自衛隊基地を造っている現状では、もしアメリカが中国と戦争を始めた場合、真っ先に攻撃されるのはアメリカ軍基地を含めたこれらの施設でしょう。

 日本は未だに主権国家ではないです。日米地位協定によるアメリカ軍の特権を見れば、はっきりしています。つまり、この協定は、「米軍の様々な行政上の特権(国や地方自治体の立入りを拒否し、基地を管理・警護する権限、課税を免除される特権等)を定めています 」(日本弁護士連合会、20243月、日米地位協定の改定を求めて−日弁連からの提言(新版)−)。アメリカの51番目の州から抜け出す必要があります。

 そして、日本国内に関しては、選挙の投票率が7080%位までいかないとダメです。若い人が政治を語る風土をつくっていくことが大事だと感じます。

 日本の文化には俳句や季語などで中国、韓国、インドなどのDNAが流れています。歴史的に深い結びつきがあるのです。

 

 新しい環境汚染問題が有機フッ素化合物によって引き起こされています。石綿汚染と似た状況にあります。つまり、有機フッ素化合物は分解しにくく、体内に入ると長いこと留まり続けます。そして、健康被害を起こします。

 最新の研究成果をもとに早急に基準値を制定し、人びとの健康を守ることが大事だと感じました。

 



2024年札幌マラソン2024/10/11 16:19

 2024106日(日)に札幌マラソンの10kmに出ました。今年最後のレースです。

 天気は最高で、風はなく、多分、湿度が低かったのだと思いますが、あまり汗をかきませんでした。

 

 今年は給水での紙コップがなくなり、小さく畳める200ミリリットルの「コップ」が、ビブナンバーや電子チップと一緒に郵送されてきました。

 

携帯コップ

支給されたコップ

 小さく丸めてパンツのポケットに入れて走りました。給水所では自分でタンクの栓をひねってコップに水あるいはアミノバイタルを入れて飲みます。給水所は2kmごとに置かれていました。私は、4km8kmで水とアミノバイタルを飲みました。

紙コップの回収がないのは、主催者側の手間がかからず良いと思いました。

 

コース図

10kmのコース

 真駒内の屋外スケート場の北の道路(道道西野真駒内清田線)からスタートして、国道453号を北上し、ミュンヘン大橋の少し上流で豊平川の河川敷に下りて北に向かった後、折り返して真駒内公園に戻るコースです。

 前半4kmくらいまでは基本的に下りで、6.4km付近で標高60mほどの河川敷から堤防に上がり、8.5km付近で標高120mまで上ります。

 

朝焼け

写真1 当日の朝焼け

 朝5時半に起きて支度をして、6時半のバスに乗って出かけました。市内のバスの便が少なくなって、地下鉄駅まで行くのが一仕事になりました。

 

ナナカマド

写真2 真駒内公園のナナカマド

 以前は、この時期には真っ赤に色づいていました。年々、色づくのが遅くなっているのを実感します。

 

スタート前

写真3 スタート前

 スタートは9時です。4車線道路なのであまり混雑しません。

 

ミュンヘン大橋
写真4 ミュンヘン大橋と藻岩山

 この先、豊平川の堤防道路を左に曲がって少し南(左:上流)へ行き、河川敷に下りてミュンヘン大橋の下をくぐって折り返します。

 


5km付近

写真5 5km付近

 右に見える青いシートが5km地点です。折り返しに向かう人、真駒内公園のゴールに向かう人がすれ違います。

 

応援

写真6 恒例の応援

 毎年、ミュンヘン大橋の下で楽器演奏とフラダンスで応援してくれます。

 

折り返しへ

写真7 折り返しに向かいます

 河川敷を下流に走って折り返しに向かいます。気持ちの良い天気です。

 

あと1km

写真8 段丘面を下ります

 最高点を過ぎ、下りになりました。あと1kmほどです。