気候変動に伴う積雪寒冷地の地盤災害に関するシンポジウム2017/06/05 16:45

 表記シンポジウムが,2017年6月2日(金)に寒地土木研究所の講堂で開かれました。

 地盤工学会北海道支部の「気候変動に伴う積雪寒冷地の地盤災害リスクに関する研究委員会」は,2014(平成26年)から2016(平成28)年の3年間,災害事例や対策方法について情報収集を行ってきたました。それらの情報を体系的にまとめた報告書についてのシンポジウムです。
 当日,報告書のプリントしたものとCD(pdf)が配られました。
 なお,この委員会の委員長は,石川達也北大工学部教授(地盤環境解析学研究室)です。

 北海道で発生する気候変動に関連した地盤災害を,1)融雪期災害,2)豪雨災害,3)凍上災害の三つに絞って検討しています。


石川達也北大教授
写真 挨拶する石川達也北大教授

<気候変動について>

 日本気象協会北海道支社の松岡直基防災対策室長が「土砂災害の誘因となる北海道の気象」と題して講演しました。

 従来,北海道に大雨をもたらす気象条件は,前線が北海道付近にかかり,東に高気圧があるという気圧配置のもとで,台風が接近するというものでした,2016年8月の豪雨,特に8月末の台風10号による豪雨は,日高山脈に南からの風がぶつかり地形性豪雨をもたらしました。
 これまで,本州などでよく見られた「線状降水帯」が北海道でも発生しています。2014年9月の支笏湖周辺に大雨を降らしたのがこれです。

 注目すべき現象として,北海道アメダスの記録によると「1時間30mm以上の短時間強雨の100地点当たりの年別発生回数」は,2010(平成22)年以降,それまでの2.1倍になっていることがあります。

 融雪量を加味した中山峠付近の土壌雨量指数(14年間分)と災害発生の履歴を見ると,土砂災害の発生した2012年(国道230号のKP40.6と同40.8での斜面崩壊)は1位,2000年(無意根地すべり)は3位の値となっています。このことから,融雪期の災害については,この土壌雨量指数が有効です。

<気候変動を考慮した治水計画>

 2016年8月16日から8月24日までに台風7,11,9号と3つの台風が北海道に上陸しました。さらに8月29日には台風10号が接近して日高地方に大雨を降らせました。日本の東に太平洋高気圧,西にチベット高気圧が停滞したため,台風が太平洋を北上しました。

 北海道に上陸・接近した台風は,2010年頃までは日本海を通ってくるものが60%以上を占めていましたが,2011年以降は15%に激減し,太平洋を通ってくる台風が55%を占めています。

 集中豪雨をもたらす線状降水帯は,20世紀は年平均 5.8 個に対し,21世紀には同 8.9 個発生していて,2010年には21個発生しています。本州が高気圧性でオホーツク海側が低気圧性の気圧配置の場合に,線状降水帯が多く発生しています。海面水温が高く温暖な空気が日本海側から流入する場合に多く発生しています。

 温暖化が進み,地球全体の平均気温が 2 ℃上昇した場合,石狩川流域では年最大降水量は,1.2 倍となります。これをもとに流域の浸水総面積を計算すると2.2 倍となります。

 将来予測をする場合,観測網の充実とともに1)降雨の空間的,時間的不確実性,2)河川流量・水位の不確実性,3)流域の総貯留量の不確実性,4)堤体内部の土質分布の不確実性(摩擦角と粘着力の関係)などを含めた検討を行う必要があります。
 超過確率と不確実性をかけ算することでリスクを表現する必要があります。


X-rain
図 地上雨量計による降水量の分布(左)と実際の降雨分布のイメージ(右)
 250mメッシュで区切った領域も均質ではなく,実際にはムラがある。このような不確実性が,河川流量・水位や堤防の安定計算でも出てくる。(下記参考文献から)

(参考文献)
 山田朋人,2016,北海道における近年及び将来の豪雨形態。平成28年8月北海道大雨激甚災害を踏まえた水防災検討委員会。
( https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kn/kawa_kei/splaat0000001ht4.html>山田朋人委員説明資料 [2017年6月3日現在])

<リスク評価手法>
 道路や鉄道では降雨時の地盤災害発生を事前に予見して適切な時期に規制を行う必要があります。
 一般的に行われてきた方法は,時間雨量と累積雨量を指標として交通規制・運行規制をする方法です。連続雨量で運行規制がかかると,降り止んでから12時間は運転再開ができないという欠点があります。
 これを修正する方法として,土壌雨量指数を用いる方法,限界雨量を用いる方法,実効雨量の半減期を利用する方法などが開発されています。
 これらの方法で設定した短期雨量と長期雨量を用いて,土砂災害危険度指標図に現在降っている雨を時系列で結んだスネーク曲線を描きます。この曲線が災害発生の危険基準線(CL:Critical Line)を越えた場合,災害の危険があると判断します。CLの決定には,その付近での過去の災害事例が不可欠です。
 
<凍結指数>
 凍結指数は地盤の凍結深さを推定するための指数です。凍結深さは凍結指数の平方根に比例します。凍結指数の算出は,日平均気温を積算していって数値が減少する期間,つまり日平均気温がマイナスの期間の累積幅から求めます。
 帯広,釧路,旭川,札幌などは 120 年以上の気温のデータがあります。このデータを使って凍結指数の経年変化を見ると,いずれの地点も凍結指数は減少しています。帯広で年当たり−4.1℃・days,札幌で同じく−2.7℃・daysの減少です。
 年降水量や最大積雪深などが顕著な傾向を示さないのに比べ,はっきりとした傾向を示しています。

 なお,気象庁のデータでは,日本の年平均気温の1898年から2016年までのトレンドは,100年当たりで+1.2 ℃となっています(2017年6月5日現在)。

 この5年ほどの間に北海移動で発生した土砂災害は,新たな視点で災害を見ることを求めているようです。データの蓄積とともに新しい手法で迅速・正確に予測できるようになり,犠牲者を出さないようになればと思います。


2017カムイの杜トレイルラン2017/05/29 11:47

 5月28日に旭川で行われたトレイルランの10kmに参加しました。

 土曜日から日曜日にかけて雨の予報だったので,カムイの杜でのキャンプはやめて,28日の朝4時半に札幌の家を出ました。この日は全道の学校で運動会があるようで,道路はガラガラでした。2時間ほどで旭川に着きました。

 心配した雨は降らず曇空で,時々日が射す天気でした。条件としては絶好でした。体重を3kgほど減らした影響もあって,快調に走ることができました。持ち物を500ミリリットルのペットボトルと塩熱サプリだけにしたのも良かったみたいです。これまで3回出ていますが,一番良い記録でした。


カムイの杜トレランコース図
写真1 カムイの杜トレランのコース図(当日配布のパンフレットによる)
 赤が5kmと10kmのコース,青は23kmと43kmのコースです。10kmは適度なアップダウンがあり,走っていて楽しいコースです。砂利道なのがちょっと辛いところです。


出発前
写真2 出発前のコースの説明風景
 富沢小学校の山側の広場がスタート,ゴールになっています。


スタート前
写真3 23km,10km,5kmのスタート前
 

山の中
写真4 山の中の道
 みんな速いです。置いて行かれました。


折り返し
写真5 10kmの折り返し手前
 二つの上り下りのあとに折り返しがあります。雨上がりで足を取られる場所もありました。23kmのランナーは,このさらに先で折り返しです。


「社会インフラ メンテナンス学と健康診断」講習会2017/05/24 09:15

 土木学会が出した「社会インフラ メンテナンス学」の講習会が,2017年5月23日に北大工学部フロンティア応用科学研究棟レクチャーホールで開かれました。

 この研究棟の入口ホールには,鈴木彰氏の胸像が置かれています。
 レクチャーホールはゆったりとした座席の配置で緩い階段式になっていて,落ち着いて話を聞くことができます。


鈴木彰氏胸像
写真1 鈴木彰氏胸像
 北大工学部フロンティア応用科学研究棟のエントランスホールにあります。

 社会基盤の維持・運用管理(社会インフラ メンテナンス)については大部前から問題となっていますが,全体として体系立った分野とはなっていないのが弱点でした。
 2012(平成2)年に発生した中央自動車道・笹子トンネルの天端崩落事故は大きな衝撃でした。トンネルの付帯設備である天井板の落下で起きた事故で,9名の犠牲者を出しました。

 この事故が大きな契機となり,第101代土木学会会長の橋本鋼太郞氏(元建設省事務次官)を頭にタスクフォースを結成してまとめたのが,「社会インフラ メンテナンス学と健康診断」(土木学会,2015年12月,I 総論編,II 工学編。同,2016年9月,III 部門別編,DVD付)です。


横田弘氏
写真2 開会の挨拶をする横田 弘北大教授

 トピック的な話題としては,橋梁の健全度判定のために「サンプリングモアレカメラ」の話がありました。
 北大工学部の佐藤靖彦准教授の講演で紹介されました。モアレというのは,編み目の重なりによって生じる「まだら模様」のことで,橋桁に網目模様を張って,車を走行させて写真を撮り,モアレによって変位を見るという方法です。


佐藤靖彦氏
写真3 講演する佐藤靖彦北大准教授

 また,河川管理では,空中あるいは水中でのドローンによる調査,水位計・浸水センサーのデータをクラウドに蓄積し共有する方法,100kmくらい飛行できるドローンでの広域的調査,強風のもとでも安定した飛行をしてデータが取れる全天候ドローンなどの案が紹介されました。

 土木学会では「インフラ健康診断書」の道路部門試行版を公開しています。
 全国のデータを集めて橋梁やトンネル,舗装などの健康度を5段階で評価し,維持管理体制が今後どうなるかを判定するという試みです。
 これは,個々の施設の評価ではなく,構造物毎に国内全体の状況を診断するものです。施設の健康度をA〜Eの5段階で評価し,施設の維持管理体制については上向き,水平,下向きの矢印で表すというものです。その他に,診断結果の簡潔な文章が付きます。道路部門の試行版を下のURLで見ることができます。
( http://committees.jsce.or.jp/reportcard/ )

 基礎資料としては,「道路メンテナンス年報」(国交省 道路局,最新版は平成28年)を使っています。
( http://www.mlit.go.jp/road/sisaku/yobohozen/yobohozen_maint_index.html )


岩波光保氏
写真4 講演する岩波光保東工大教授

 立派な会場に立派な出版物の割に,参加者が少なかったのは残念でした。


水出しコーヒー2017/05/23 09:19

 水出しコーヒーを飲ませてもらいました。
 それだけを飲むと,こんなものかという感じですが,普通に淹れたコーヒーと飲み比べると違いがはっきり分かります。
 後味がすっきりしているのです。全体に平坦な味になり雑味が消えます。ちょうど,評判になったばかりの頃の「越乃寒梅」に似た感じです。越乃寒梅に失礼かもしれませんが。

 1,500円くらい出せば専用の容器を売っていますが,家にあった「お茶パック」にコーヒー豆を入れ,冷蔵庫に4時間程度置いておくとそれなりのコーヒーができます。普通の大きさの「お茶パック」だとカップ2杯分くらいの水がちょうど良い分量です。

 昔,出張や山歩きが多かった時は,ペットボトルに水を入れ「お茶パック」を押し込んで持ち歩いていました。最初のお茶の味は結構いけます。味に文句を言わなければ,水だけ足して2回目も何とか飲めます。
 ペットボトルは口が狭いのが難点です。当時,1社だけ口のやや広いペットボトルを売っていました。これだとお茶パックの出し入れが楽で重宝しました。

 ネットを見たら同じ方法が載っていました。例えば,
( http://lightupcoffee.com/magazine/1181/ )


大英自然史博物館展2017/05/22 15:36

 国立科学博物館で「大英自然史博物館展」が開かれています。2017年6月11日(日)までです。

 1995年の春,イギリスへ家族4人で遊びに行った時,大英博物館に寄ったけれども休館中で見ることができず自然史博物館に行きました。しかし,私はレンタカーを借りるのに手間取って,入ることができませんでした。今回は,181の標本が展示されています。
 その中で,一番の売りは,入場券に印刷されている始祖鳥でしょう。


大英博物館店入口
写真1 大英博物館展会場の入口


三葉虫
写真2 三葉虫
 モロッコで収集されたカンブリア紀の三葉虫です。


濃紅銀鉱
写真3 ジョージ3世の濃紅銀鉱
 ジョージ3世は産業革命時代のイギリスの国王で,科学技術の進歩に関心を持っていました。この濃紅銀鉱は,ドイツのハルツ山地のものです。


スミスの地質図
写真4 スミスの地質図
 ウィリアム・スミスが1815年に出した世界最初の地質図です。現物を見ることができて感激です。


ゾウガメ
写真5 ダーウィンのペットだったガラパゴスゾウガメ
 ガラパゴス諸島のサンティアゴ島のものです。


始祖鳥
写真6 始祖鳥の化石
 ドイツで発掘されたジュラ紀の始祖鳥の化石です。

 このほかにも,見ものが一杯の展示です。

 帰りは,西洋美術館の庭にある「考える人」に会ってきました。いつでも,この像を見ることができるのは素晴らしいことです。


考える人
写真7 「考える人」
 ロダンが制作したブロンズ像です。この像と同じものが,西洋美術館の前庭を挟んだ反対側にある「地獄の門」の頂部に置かれています。


すみだ北斎美術館2017/05/22 10:50

 2017年のゴールデンウィークに「すみだ北斎美術館」へ行ってきました。

 北斎の偉大なところは,もちろんその画業ですが,何よりも年を取ってからも衰えない創作意欲だと思っています。
 一番好きな絵は,長野県の信州小布施北斎館で見ることのできる屋台の天井絵です。
( http://www.hokusai-kan.com )
 北斎が85歳の時(1844年,天保十五年)に半年をかけて描いたものです。

 すみだ北斎美術館は,総武本線の両国駅から国技館の南を通り江戸東京博物館の間の歩道を北に向かい,さらに東へ行った所にあります。町の中に独特の形をした建物があり,どこから入って良いのかしばらく迷いました。

 この時は,開館記念展IIIとして「てくてく東海道−北斎と旅する五十三次−」が開かれていました。
 この美術館がつくった北斎の絵のオリジナル葉書は印刷が非常にきれいで,人に出すのが惜しくなります。


写真1 美術館北側の緑町公園から見た北斎美術館


美術館入り口
写真2 入口


展示場
写真3 展示場


東京スカイツリー
写真4 北斎美術館から見た東京スカイツリー


増田隆一氏講演会2017/05/22 09:43

 地質調査でヒグマに遭うことがあります。
 最初は,歩いている時ではなかったのですが,車で国道277号(八雲熊石線)を八雲町熊石から八雲町市街に向かっている時でした。夜8時過ぎでしたが,かなり大きな熊が道路を横断するように車の前を横切っていきました。
 道道知床公園羅臼線で覆道背面の岩塊除去工事に立ち会っていた時は,削岩機の音がしているにもかかわらず,子どもを2頭連れた熊が斜面を降りてきて,しばらく覆道の付近で草を食べていました。この時は,羅臼ビジターセンターの方が花火などで山へ追い返しました。
 北見の山の中で,下山中に小熊に出会ったことがあります。また,八雲厚沢部線では,道路脇で何かを夢中で食べている,割合小さな熊を見たことがあります。


ヒグマ
写真1 道路脇で食事中のヒグマ

 「ヒグマの遺伝的多様性と移動の歴史」と題する増田氏の講演会がありました。2017年5月20日(土),場所は北大のクラーク会館でした。
 この講演会は北海道自然保護協会が,一般の人も対象として総会後に開いたものです。


在田一則氏
写真2 挨拶する北海道自然保護協会会長・在田一則氏


増田隆一氏
写真3 講演する増田隆一氏

増田隆一・北大大学院理学研究院教授「ヒグマの遺伝的多様性と移動の歴史」

 増田氏の専門は動物地理学,分子系統進化学です。今回の話は,ヒグマをDNA解析によって分類すると3種に分かれるという内容です。

 ヒグマは北海道やシベリア,アラスカからカナダ,チベットやトルコに生息しています。
 北海道では毎年2〜300頭が捕獲されていて,数千頭が生息していると考えられています。
 北海道のヒグマ50数頭のミトコンドリアDNA(mtDNA)の解析から,北海道のヒグマは,道央・道北に棲むグループA,道東に棲むグループB,道南に棲むグループCの三つに分けられることが分かってきました。これは雌のヒグマの生息域で,雄の場合は行動範囲が広いため,これほどはっきりとは分かれないと言います。

 ユーラシア大陸とアメリカ大陸で見ても,この3種に分かれるとのことです。ヒグマのルーツはシベリアにあり,そこから拡散したと考えられます。世界的に見ると,北海道のように狭い地域に3種のヒグマが棲んでいる所はありません。

 熊送りの儀式で使われたヒグマは,道央や道北では春に捕獲した成獣を使いますが,道南では子どもを育てて熊送りに使います。「飼育型熊送り儀式」と言います。どこに住んでいるヒグマを儀式に使ったかが分かるので,その当時の交流範囲を推定することができます。

 今年6月中旬に増田氏の著書「哺乳類の生物地理学」(東大出版会:本体3,800円)が出版されるそうです。


北海道立総合研究機構 地質研究所 調査研究成果発表会2017/05/20 12:44

 2017年5月19日(金),北海道立道民活動センター かでる2・7で表記の発表会が開かれました。
 重点研究「十勝岳」の成果と戦略研究「地域・産業特性に応じたエネルギー分散型利用モデルの構築」の中間報告,それに2つの口頭発表と13のポスター発表がありました。
地質研究所の研究が色々な方面で発展しているのを実感できた講演会でした。


遠藤祐司氏
写真1 開会の挨拶をする遠藤祐司I氏(北海道立総合研究機構 地質研究所 所長)


橋本武志氏
写真2 講演する橋本武志氏(北大地震火山観測センター)

 十勝岳については,札幌管区気象台,北海道大学と共同で研究を進め,火山体内部の構造が浅部,深部とも,かなりはっきりと明らかになってきました。熱水の流動状況やマグマの位置と地震発生域など貴重な情報が得られています。これらが噴火予知に役立つ可能性があります。


鈴木隆広氏
写真3 質問に応える鈴木隆広氏(地質研究所 資源環境部主査)

 北海道の温泉放出熱量については,全道約2,000箇所の温泉の位置と利用可能量をデータベース化することから始めています。
 地中熱については,富良野盆地を例に地下水流道の経路を明らかにし,地下水流同・熱輸送モデルを構築しました。地下水による熱の移流効果を見込んだ採熱が可能になります。


三上智さんの講演会2017/05/20 12:06

 現在の日本をめぐる状況は,国民が選んだ結果です。そんなことも含めて,色々と考えさせられる講演会でした。 

 2017年5月13日(土)午後6時半から8時半まで,かでる2・7で三上智恵さんの講演会が開かれました。

 北海道平和委員会が行っている「沖縄連続講演会 標的の大地 沖縄,そして北海道」の一つです。
 講演のタイトルは「いくさば(戦場)の今,沖縄と不屈の精神」でした。


三上智恵さん
講演する三上智恵さん

 辺野古の新基地は自衛隊が使うことを前提に造られていて,滑走路,軍港,弾薬庫が一体となった基地です。普天間基地の代替基地などではけっしてありません。
 沖縄は,ヴェトナム戦争,イラク戦争で出撃基地となっています。
 また,第二次世界大戦の沖縄戦の教訓は,軍隊がいなければ沖縄で9万4千人という民間人の犠牲はは出なかったと言うことです。
 そして今,先島諸島にも自衛隊の基地を造ろうとしています。

 北海道にも矢臼別演習場があります。古くは長沼ナイキ訴訟などの歴史があります。

i石狩海岸周辺の風車事業2017/05/17 20:56

シンポジウム
石狩海岸周辺の大規模風力発電事業計画の危険性

 世の中には知らないことが沢山あることを痛感したシンポジウムでした。
 低周波音による健康障害は「気のせい」ではなく、人の内耳の仕組みによるものだと言うことでした。

 2017年5月13日,午後1時半から午後5時まで,北海学園大学で開かれたシンポジウムです。ここでは,北大工学研究院教授の松井利仁氏(大気環境保全工学)の講演内容を紹介します。

 なお,北海道自然保護協会の活動については,( http://nc-hokkaido.or.jp )をご覧下さい。
 また,石狩の風力発電を考える会のホームページは,
( https://blogs.yahoo.co.jp/isokomorigumo )です。


松井利仁氏
写真1 講演する松井利仁北大大学院工学研究院教授
 松井教授は,米軍嘉手納基地の騒音による死者は年4人という推計を出しています。裁判の原告側証人を数多く引く受けましたが,全敗だと言っていました。
( 参考:http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/24298 )

松井利仁氏「風車騒音による健康影響と石狩湾新港周辺の3事業の影響評価」
 札幌では騒音で多くの人が亡くなっています。大気中の有害現象で最も死者が多いのは,PM2.5を含む微少粒状物質によるものです。交通騒音での死者は,受動喫煙などと同じ程度で,ベンゼンやダイオキシンなどの化学物質による死者に比べ多くなっています。
 札幌市での交通騒音など環境騒音による死者の推計値は,約21人╱年です。

 低周波音とは何か。
 環境省では周波数が100Hz以下の音を低周波音としています。その中で20Hz以下の音を超低周波音と言います。
 低周波音は,高架橋の揺れによって発生したり,エコキュート(ヒートポンプ式の給湯器)から発生したりします。風力発電の風車も低周波音を出します。
 低周波音の大きな特徴は,減衰しにくいことです。例えば,4,000Hzの音は2km程度で−70dBくらいになりますが,100Hzくらいの低周波音は−30dB程度にしかなりません。
 低周波音は室内にも侵入してきます。部屋の中では分布が不規則で,壁の近くで共鳴した音のレベルが高くなります。縦方向でも床や天井でレベルが高くなります。

 低周波音が健康に及ぼす影響は様々です。1977年の西名阪自動車道の事件で,低周波音が健康に影響を及ぼすことは明らかにされていました。症状は,頭痛,肩こり,めまいのほか,睡眠障害(不眠),イライラなどです。これは,発電風車による健康影響と全く同じです。

 音は,内耳にある前庭を通して蝸牛に届きます。耳は,40Hzくらいの低周波音に敏感で,めまいなどの平衡機能が障害を受けます。低周波音の特徴は,小さな音でも蝸牛に影響し,気になって眠れないという状況を起こします。この「気になる」というのは騒音計では測定が難しいのです。
 蝸牛の前にある前庭への低周波音の刺激では,圧迫感や振動感で眠れなくなります。風車病の特徴である,めまい,頭痛,肩こりが出ます。これは,「気になる」と言うことではなく,低周波音の物理的刺激によって起こるものです。


風車騒音と健康障害
風車騒音と風車病・睡眠障害の因果関係(松井,当日配付資料による)

 日本では,2004年に環境省が「低周波音問題対応の手引書」を出していて,その中で低周波音による物的苦情に関する参照値,心身に関わる苦情に関する参照値というのを示しています(表1)。
 ここで注意しなければならないのは次の点です。
(1)環境省の参照値は,10人に1人が寝室で「気になる」レベルです。
 *苦情者における許容レベルの周波数特性は、全体として一般成人における寝室の許容レベルの 10 パーセンタイル値に近い傾向を示した。(手引,26p)
(2)参照値を下回れば苦情が無くなるわけではないです。1%の人が「気になる」音は,参照値より約10dB低いという結果が出ています。
(3)参照値は対策などの目標値ではありません。しかし,低周波音発生源の事業者は,この参照値よりも緩い環境基準値などを比較対象としています。
(4)室外機など定常的・連続的な低周波音であれば参照値は適用可能ですが,風車騒音は連続的であるものの規則的な変動があり,より「気になる」音です。
(5)広帯域の低周波音は,内耳で加算され,より「気になる」のです。

表1 物理的苦情(上:建具のがたつきなど)・心身に係わる苦情(下:睡眠障害)に対して,低周波音が原因かどうかを判断するための「目安」(松井,当日配付資料による)
 *A特性音圧レベルでは,極めて低いレベルでも「気になる」。
風車騒音レベル


 現在,工事に着工していたり計画されてたりしている石狩湾岸の風力発電所について,公表されているデータをもとに評価すると次のようになります。

<石狩コミュニティウィンドファーム>
(1)圧迫感・振動感を知覚することによる睡眠障害などの健康リスクが,300人以上に発生する可能性があります。
(2)工業団地で,極めて高い健康障害の発症率が予想されます。低周波音の曝露人口1,000人に対して,32人が影響を受け,そのうち18人が就労困難になるリスクを負います。
(3)北側と南側の住宅地で100人に1人以上の健康障害発症率となります。

<銭函風力発電>
 曝露人口は87,250人で,影響人口は384人と推計されます。圧迫感・振動感を知覚することによる睡眠障害などの健康リスクです。

<石狩湾新港区域内洋上風力発電>
 曝露人口は348,876人,影響人口は1,899人という結果になります。

 風車騒音に対する日本の現状は,水俣病への対応と共通点があります。
 水俣病では,経済成長のブレーキになるとして当時の通産省は,「原因は厳密には特定できない」とし,これに多くの科学者が同調しました。1956年に公式に「発見」されたあと,1959年に熊本大学水俣病研究班が原因物質は有機水銀であると発表しました。

 風車騒音被害では,環境省が「原因は厳密に特定できていない」とし,日本騒音制御工学会を中心に科学者が被害を否定しています。

 その特徴は以下のようなものです。
(1)低周波音などによる環境性睡眠障害を「不快感」による睡眠への影響とし,心理的反応であるかのように矮小化しています。
(2)「風車病」は知見が不十分だとしています。
(3)内耳にある前庭がどのような働きをしているのかを知りません。
(4)平均値によって評価して,個人差や高感受性の人たちを考慮していません。
(5)疫学・公衆衛生,過去の公害事件を知らず,学ぼうともしていません。

 風車病を防ぐ方法は八方ふさがりのように見えます。その中で,かなり難しいですが,騒音規制法の指定地域とすることは,一つの方法と思います。これは,自治体(市)の権限でできることです。


総合討論
写真2 総合討論の様子