本の紹介:「新しい資本主義」の真実2023/03/14 15:10

新しい資本主義の真実

萩原伸次郎、「新しい資本主義」の真実日米における新自由主義経済政策の歴史と転換。かもがわ出版、20232月。

 著者は、横浜国立大学経済学部の教授、同学部長をつとめ、現在は名誉教授です。

 

 202110月に発足した岸田文雄政権は「新しい資本主義」という言葉で政権の経済政策を明らかにしました。その中長期的成長戦略は、1)インベーションと科学技術、2)デジタル田園都市国家構想、3)気候変動問題、4)経済安全保障です。分配政策としては、1)看護・介護・保育の給与引き上げ、2)民間企業の給与引き上げのための支援=税額控除、3)男女が希望通り働ける社会づくり、4)社会保障による負担増の抑制などです。

 この成長戦略の特徴は、経済成長があれば分配があるという新自由主義経済政策の典型です。

 

 しかし、この政策が失敗であることは、財務省の「法人企業統計」に、はっきりと表れています。図1は、長周新聞デジタル版の2021318日の記事からとったものです。配当金は2001年から2019年までの18年間に約6倍になっていますが、一人当たりの労働者賃金は減少しています。2001年と言えば小泉内閣が成立した年です。

 この本の107ページには、2020年までの同じ統計グラフが載っています。ちょっと見にくいので、こちらのグラフを載せました。

 



大企業の配当など

1 資本金10億円以上の大企業の配当金・経常利益・内部留保・役員報酬・一人当たりの労働者賃金の推移

2001年が1.0;金融・保険業を除く:長周新聞、2021318日より)

 

 この本では、J.M.ケインズの考え方の説明から始まり、バイデン大統領の経済政策まで述べています。世界の動き、特にアメリカの経済政策との関係で、日本が採用してきた経済政策が述べられています。


 実体経済を強くすることがポイントだと言うことです。その意味で、「資産所得倍増計画」を世界に宣伝している岸田内閣の「新しい資本主義」は何も新しいものではなく、アベノミクスの延長上の経済政策です。


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