地中熱ヒートポンプシステム ― 2022/12/28 20:57
地中熱ヒートポンプシステムというのは、年間を通じてほぼ温度が一定である地中の熱を利用してヒートポンプで冷房、暖房を行うシステムです。つまり、地中から熱を取りだしてヒートポンプで冷水あるいは温水を作るシステムです。
<ヒートポンプ>
まず、ヒートポンプは、物質が状態変化するときに熱を出したり吸収したりすることを利用します。家庭用のエアコンディショナー(エアコン)や給湯システムはヒートポンプを使っています。普通のエアコンは空気を熱源としています。
原理的に、熱は高いところから低いところへと移動します。熱を低いところから高いところへと移動させるのがヒートポンプです。
ヒートポンプの原理は、1824年にフランスの物理学者、カルノーが考案した「カルノーサイクル」が元になっています。水を低いところから高いところに移動させるポンプと同じ働きをします。
どうやって熱を移すか。
例えば、室内を温める場合は、冷媒(循環物質)を圧縮機で圧縮して温度を上げ、熱交換器で放熱して室内を温めます。この冷媒は膨張弁を通して低温・低圧になり圧縮機に戻ります。冷媒を圧縮するときだけ電力を使います。しかし、電気ストーブのように電力を使って直接室内の空気を温めるわけではないので非常に効率的に熱を移動させることができます。
冷媒は当初、フロンが使われていましたが、代替フロンに代わり、現在は炭酸ガスなど自然冷媒が使われています。
図1 ヒートポンプの仕組み(KOBELCO。2022年12月26日閲覧)
上の図は、室内を暖房している状態の説明です。屋外から6の熱を吸収して電気で1の熱を加え室内に7の熱を放出しています。見かけ上投入したエネルギーの数倍の熱エネルギーが得られます。ヒートポンプの性能はCOP(Coefficient Of Performance:成績係数)で評価します。この値は、一般的には3〜6程度とされています。
<地中熱>
一方、地中熱は太陽エネルギーが地表近くに蓄えられたものです。地表から10mくらいまでは気温の影響を受けて地温は季節によって大きく変動しますが、10mより深くなると地温は、その地域の年間平均気温より2℃ほど高い温度でほぼ一定となります(不易層)。例えば、札幌の年平均気温は、9.2℃ですので、地中の温度は11℃前後で一定しています。
図2 地中温度の変化(地中熱利用促進協会、地中熱 再生可能エネルギー熱利用 より)
図3 ヒートポンプシステム(地中熱利用促進協会のパンフレット、2018年 より)
地面に掘ったボーリング孔にチューブの熱交換器を埋設し、放熱あるいは採熱をしてヒートポンプで冷暖房を行うのが地中熱ヒートポンプシステムです。
この地中熱交換器には色々な方式があります。ボーリング孔を利用する場合、口径200〜300mm、掘削長100〜150mほどのボーリングを掘る必要があります。この初期費用の大きさが地中熱ヒートポンプ普及のネックの一つになっているようです。
地中熱のための地質調査では、伝導や移流などの地盤中の熱移動様式、有効熱伝導率や熱容量・透水係数などの地盤の物性を把握する必要があります。
<参考文献(順不同)>
■北海道大学 環境システム工学研究室 編、2020、地中熱ヒートポンプシステム(改定2版)。オーム社。
■テクの雑学 第95回 空気から熱をくみ出す-ヒートポンプ-。TDK。
( https://www.tdk.com/ja/tech-mag/knowledge )2022年12月27日閲覧
■ヒートポンプとは。KOBELCO。
( https://kobelco-compressors.com/jp/ja-jp/products/heat-pump-chiller/whats-heat-pump )2022年12月26日閲覧
■空調の省エネに役立つ 地中熱の利用。地中熱利用促進協会パンフレット、2018年。
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