雑誌:ジオルジュ2022/12/13 17:29

 日本地質学会の広報誌「ジオルジュ」は、年2回(5月と11月)発行されています。札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡のジュンク堂にフリーペーパーとして置いてあります。手に入らない場合は、地質学会ホームページ>出版物>ジオルジュ から「オンラインストア」で申し込むことができます。

 

 ここでは、2022年後期号から二つの記事を紹介します。

 

<坂口有人:特集1 来るなら来なさい南海地震 高知県民の覚悟>

 1999年に高知県庁の職員が「おらんくの津波防災対策」という論文を発表しています。津波被害を減らすためには、避難のための情報伝達や教育などのソフト対策が第一で、防潮堤などのハード対策は補完であると述べています。

 

 高知市と足摺岬のちょうど真ん中辺りに興津岬があります。その岬の根元の太平洋に向かって開けた低地に四万十町立興津小学校があります。地理院地図で見ると、標高は5m以下です。

 この学校での避難訓練は徹底していて、複数の避難タワーや避難候補地を繰り返し巡ります。そのうちの1回は、完全に抜き打ちで行います。この訓練では「向山に向かうルートは塞がっています。忠霊塔の手前は浸水しています」などの制約条件が避難を始めた段階で伝えられます。児童自身がどこに避難するかを瞬時に決めなければなりません。

 

 Googleマップで見ると、興津小学校の北西には直線距離で約500mの所に2号避難タワー、同じく約350mの所に4号避難タワーがあります。また、北東約400mの所には標高40mの丘(向山)があります。この時の制約条件は、一番安全な向山へは行けないので一番近い避難タワーへ避難しなさいという訓練だと思います。児童達は全速力で4号タワーへ向かいます。

 

 2022315日に行われた抜き打ち避難訓練の様子は、「四万十町立奥津小学校のホームページ>令和3年度 防災教育について」で見ることができます。

 

 東日本大震災では、石巻市の大川小学校では避難が遅れ、悲惨な状況になりました。一方、釜石市の釜石東中学校と鵜住居小学校では、中学生が先頭になって避難場所めがけて走ったために、一緒に避難した小学生も犠牲者が出ずにすみました。

 「つなみてんでんこ」は東北地方に伝わる言葉ですが、率先して逃げる人がいることが非常に大事です。

 

<久松和恵:特集2 温泉水を煮詰めてつくる 「会津山塩」 地層に残る約1500万年前の海洋成分が起源>

 福島県北塩原村の大塩裏磐梯温泉では、温泉水を煮詰めて塩(会津山塩:あいづ・やまじお)をつくっています。中期中新世のグリーンタフの中を通ってきた地下水は、約1%の塩分を含んでいます。海水よりも塩分は少ないですが、鍋で煮詰めて色々な塩をつくっています。この塩の特徴は、海の塩に比べて塩化ナトリウムは少ないですが、カルシウム、マグネシウム、カリウムが数倍から10倍ほど多いことです。

 筆者の久松さんによると『 「あ、おいしい」と思わずつぶやいた。一般的な塩とは違う、とがりのないまろやかさを感じる』味だそうです。

 9世紀の初め頃、ここを訪れた弘法大師が護摩を焚いて願い込めた結果、湧き出した温泉だそうです。

 

 会津山塩企業組合のホームページ(会津山塩)からオンラインショップで買うことができますし、アマゾンで買うこともできます。

 

 私の家では、食卓で使う塩は「アルペンザルツ」というドイツアルプスの岩塩を溶解し乾燥させたものを使っています。普通に売っている食塩(精製塩)に比べて味が良いように感じます。その塩と比べても会津山塩の方がカルシウムなど割合は多くなっています。

 

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