無意根山 ― 2014/07/19 21:06
無意根山は,札幌市で余市岳に次いで2番目に高い山です。ほぼ南北に延びる尾根を持っていて魅力的な山容をしています。
無意根山へは昔夏に一度,冬に二度来ています。夏は,大学院の夏の合宿でしたので,山頂には行かず無意根尻小屋で勉強会でした。
冬の一度は天候が悪く頂上へは行けませんでした。一度だけ冬の山頂に行きました。スキーが下手なので,あまり楽しめませんでしたが,実に気持ちの良い斜面です。
写真1 冬の無意根山(1月末)
豊平峡温泉から見た無意根山です。なだらかな尾根とその前面に広がる広い雪原が特徴です。
写真2 初夏の無意根山(6月中旬)
中山峠から見た無意根山です。尾根の下の植生の薄い露岩部分は巨大地すべりの滑落崖です。比高は約250mあります。地すべりの規模は,奥行きが約3.5km,幅約2kmです。尾根が右に高度を下げている付近は,大蛇ヶ原を含む北隣の巨大地すべりです。この地すべりは,宝来林道のある小川を土石流として流れ下ったと考えられます。
登山道は国道230号の薄別橋のやや峠よりの宝来林道から入る薄別コースと豊羽鉱山から長尾山の脇を通る元山コースがあります。今回登ったのは薄別コースです。
写真3 林道入口
ここには数台の車を駐めることができます。この奥に本物のゲートがあり,その手前が駐車場となっています。
ここから宝来小屋がある登山口までは約5kmの林道歩きです。地形図を見ると,幾つかカーブが連続している個所があります。これは,この沢を流れ下った土石流の末端の急斜面のようです。砂利道で歩きやすいのですが,眺めは全くなく単調な林道歩きが続きます。
写真4 林道の様子
ほとんどが日陰になっていて楽です。しかし,延々と続きます。2個所ほど円弧すべりを起こしていて歩くのがやっとという状態の所があります。礫まじり粘土を盛土した所です。
宝来小屋に近づくと道路の切り割りに粘土質の土砂が出てきます。多分,これが土石流堆積物と思います。粘土の中に変質したものや比較的新鮮な安山岩の礫が入っています。宝来小屋付近までは,ある程度粘性のあるフローだったものが,ここから土石流になったと考えられます。
写真5 宝来小屋手前の土石流堆積物
粘土の基質の中に変質した安山岩などの礫が混じっています。いくつかの段波となって林道入口付近まで到達したと考えられます。粘土は膨潤性でないため,このような切土でも崩壊を起こさないのだと思います。
写真6 宝来小屋
看板の所から登山道に入っていきます。小屋の中に登山者名簿があります。
ここからは,地すべり土塊の中の道です。やはり林の中で眺めは得られませんが,所々で振り替えると札幌岳が見えます。
やがて大蛇ヶ原に着きます。地すべり土塊の,ほぼ真ん中に形成された湿地です。冬は一面の雪原となっていて,夏とは印象が全く違います。
写真7 大蛇ヶ原
湿地と言うより草原に近い状態で,周りはエゾマツに囲まれています。湿地の中を歩けるように木道が造られています。
地すべりの移動土塊の小山を登ったり降りたりしながら,一段高い所にある無意根尻小屋に着きます。この小屋はカギは掛かっていなくて,冷たくておいしい水が台所から勢いよく流れ出ています。是非,ここで水を補給することをお薦めします。
無意根尻小屋を過ぎて,すぐに階段ばしごがあります。最初のはしごは,まだ地すべり土塊の中の分離丘です。しばらく小さな上り下りをくりかえして,二番目のはしごになります。この崖が地すべりの滑落崖です。
この急崖を登るとなだらかな尾根に出ます。一面笹原でカバノキが所々に生えています。
写真8 巨大地すべりの滑落崖
元山分岐手前から見た山頂の尾根と東斜面です。ここからでも高さは約200mあります。左端に見えるのは板状節理の発達した安山岩溶岩の崖です。
最後は尾根の下を斜めに登っていきます。尾根に付くとハイマツの林の中を通って頂上へ到着です。地図では頂上手前の祠のあるところが一番高いのですが,露岩しているのは頂上です。
写真9 頂上の安山岩露頭
青灰色の輝石安山岩でサイコロ状の節理が見られます。右手の尾根が非対称であるのが印象的で,左側の緩やかな斜面は,溶岩の流れた地形を残していると考えられます。中央やや左のお椀を伏せたような山は余市岳で,沢に残っている雪が白く見えます。
写真10 山頂の安山岩
やや白濁した斜長石と黒色の輝石が目立ちます。全体に青灰色をしています。
写真11 薄別川地すべりと国道230号
中央の白く見えるのが2000(平成12)年5月15日に発生した薄別川地すべりです。その左に中山峠に続く国道230号の渓明大橋などが見えます。
写真12 札幌西部の山々
左から札幌岳,狭薄山,頭に雲を頂く空沼岳です。秋か冬の天気の良い日に登れば素晴らしい景色を楽しめます。この日は,羊蹄山は霞の向こうで,頂上は雲に隠れていました。
写真13 中山峠から見た無意根山
一番右が無意根山でその左が中岳です。やや左手のなだらかな山は喜茂別岳でしょう。
帰りは,無意根尻小屋で十分に水を飲んでから帰りましたが,やはり林道歩きが辛かったです。林道入口から登り始めて戻るまでに会った登山者は一人だけでした。
登りは休みを入れて4時間10分,頂上で30分ほど休み昼飯を食べました。帰りは3時間45分かかりました。最近,帰りは転ばないように用心するので時間がかかるようになりました。
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