「ヤンガー・ドリアス期の寒冷化は彗星衝突による」2010/04/09 11:49

 1万5千年前頃から急激な温暖化に向かっていた気候が,1万3千年前頃から急激に寒冷化した.この寒冷化の時期をヤンガー・ドリアス期と呼んでいる.
 このヤンガー・ドリアス期は,当時北アメリカのローレンタイド氷床の縁辺部にあったアガシ−湖が決壊して北大西洋に真水(海水に比べ密度が小さい)が大量に流入したため,北上してきた温かな海水が薄められて密度が小さくなり潜り込めなくなって海洋の深層水循環が弱まったことが原因で起こったと考えられてきた.アガシ−湖が決壊した時の水の通路や運ばれてきた礫などが証拠とされてきた.

 これに対して,1万3千年前頃,北アメリカに彗星がいくつも落下し,それによって大量のススが発生して寒冷化したという説が唱えられてきた.つまり,K-T 境界と同じ事件がこの時起こったという.そして,黒色の地層がアメリカ各地で発見され,その地層には1)イリジュウムを含む磁性粒子,2)磁性微小球体,3)木炭,4)スス,5)炭素,6)ナノダイヤモンドを含むガラス状様炭素,7)地球外のヘリウムを含むフラーレン,を含まれている.これらは地球外天体の衝突とそれによるバイオマスの燃焼の証拠である.
 約12,900年前の黒色の地層は北アメリカの50以上の遺跡で同定されていて,この黒色の地層の上部には絶滅した大型動物の化石やクローヴィス期の人工物は全くない.つまり,この黒色の地層が形成された時期に一大イヴェント(ヤンガー・ドリアス-イヴェント)があったことを示している.

 一連の論文やウェブサイトを見る限り,かなり説得力のある説である.

<http://cosmictusk.com/video-clovis-comet-theory>
*ヴィデオでの説明.炭素層の露頭も見ることが出来る.

<http://homepage3.nifty.com/a-kitamura/sanko.htm>
<http://www.pnas.org/content/104/41/16016.full>
*Firestone,R.B. et al.(2007)の12,900年前の大型動物絶滅,ヤンガー・ドリアス期の寒冷化,クローヴィス文化の終焉についての論文(上の2列目のウェブサイト)の日本語訳が掲載されている.
 Firestone らの論文では(supporting infomartion(SI))に,黒色の地層の露頭写真を含め詳しい図が載っている.この論文の Fig7に空中写真で見た楕円地形が載っている.この楕円地形は衝撃によって形成されたとされている.グーグルアースで見ると北緯34度40分,西経78度25分から北緯34度50分,西経78度40分にかけて,北西−南東方向にいくつもの湖や楕円地形が分布しているのが分かる.

<http://www.arukazan.jp/bbs/>
*ここで紹介したウェブサイトが載っている.火山,地震,地すべり,洪水などについての質の高い掲示板である.
 
【END】


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