「外国語学習の科学−第二言語習得論とは何か」の紹介 ― 2010/03/18 13:32

日本人は全体としてみると英語が苦手というか習得が出来にくいというのが当たり前のように言われている.この本では,そのことも含めて,「第二言語習得(Second Language Acquisition)」の現状を紹介し,外国語を身につけるための科学的方法の概要を述べている.
まず,第二言語を習得する場合,母語と第二言語の「言語間の距離」の影響が大きいという.簡単な話,津軽の人が自分達で話していることをほかの地方の人が理解することはほとんど不可能であるが,言語構造は同じであるので方言話者が東京語を習得するのにそれほど大きな障害はない.アメリカ人が習得するのに時間がかからない言語はフランス語やドイツ語などで日本語や韓国語は最も習得に時間がかかる.
第二言語の習得は12〜13才くらいまでに始めないと成功しにくいという説,「臨界期仮説」がある.日本で小学校のうちに英語教育を取り入れようというのはこの仮説に基づいている.ただし,学習年齢が第二言語習得の正否に強い影響があることは意見の一致があるが,臨界期があるのか,あるとすれば何才くらいなのかという点については研究者の間での合意はない.
日本人の赤ちゃんでも生後数ヶ月は l と rの区別が出来るが,生後6ヶ月から1才くらいで急速に低下するという.これは,日本語で区別されていない音の区別を無視することを学習するためである.母語の習得が第二言語習得の障害となるためである.
第二言語習得論の現状を詳しく述べた後で,最後に「効果的な外国語学習法」について述べている.冷静に,科学的に第二言語を習得する方法を知りたい人にとって,大変参考になる本である.
参考文献が巻末に11ページにわたって挙げられており,さらに勉強したい人にとって役に立つ.
「地震と自然災害」の紹介 ― 2010/03/31 22:18

Earthquakes and Other Natural Disasters( H.Griffey,2010.DK Publishing )
この本の表紙の写真を見て地震災害に詳しい方ならピンと来たのではないかと思う.そう,この写真は岩手宮城内陸地震で落橋した国道342号 祭畤(まつるべ)大橋である.この本の中に岩手宮城内陸地震の記事があるわけではない.地震の例としては1906年のサンフランシスコ地震とリスボン地震が収められている.
1906年のサンフランシスコ地震については,サイモン・ウィンチェスターの「世界の果てが砕け散る サンフランシスコ大地震と地質学の大発展」(早川書房,2006)に詳しく書かれている.このウィンチェスターの本で印象的であったのは,「・・ 道路や建物が巨大な波のように持ち上げられ,ものすごい勢いで,自分や,大きな商業ビルが建ち並ぶ繁華街の方にのしかかってくるように思われた.」と言う部分である.地震波が伝わってくるのを目撃しているのである.
私は一度,調査用の坑道内で地震に遭遇したことがある.この時は,壁に吊したいくつもの電灯が波のように揺れるのを見た.
火山災害としては西暦79年のイタリア,ヴェスヴィオ火山の噴火が取り上げられている.この噴火の時のローマの皇帝は,この年にヴェスパシアヌスの後を継いだティトウスである.この噴火の様子は,小プリニウス(西暦62〜およそ西暦113年)がタキトゥス(およそ西暦55年〜およそ西暦120年)に宛てた手紙で詳しく書かれていることは有名である.手軽に見るには塩野七生著「ローマ人の物語 危機と克服[下]」(新潮文庫)が便利である.火山灰などのおおよその分布範囲も図で示されている.
1755年のリスボンの大地震と津波,1887年の黄河の洪水,1902年のプレー火山(小アンティル諸島のマルティニク島)の噴火,1938年の「ロングアイランド特急」と呼ばれたハリケーン,1970年のペルーのなだれ,1983年の南オーストラリアの山火事が収められている.
48ページの子供向け冊子で,全てカラーで写真や挿絵が豊富である.値段は3.99米ドルでアマゾンで注文できる.
参考資料
秋山充良,内藤英樹,2008,2008岩手・宮城内陸地震い関する橋梁被害調査(暫定版).
http://www.dcrc.tohoku.ac.jp/miyagi2008/report_200618.pdf