「トンネル技術者のための施工 DX・地山評価技術」講演会 ― 2026/01/21 19:08
2026年1月9日午後1時から午後5時まで表記講演会が開かれました。
<「トンネル技術者のための施工 DX・地山評価技術」講演会~光ファイバーおよび AI 活用に関する最新技術~> で、主催は(一財) 災害科学研究所 トンネル調査研究会です。
Zoomウェビナーで視聴しました。
プログラムは以下のとおりです。
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開会挨拶 :(一財)災害科学研究所 トンネル調査研究会委員長 松井 保
基調講演:「スマートマイニング技術の土木分野への応用 -スペクトラム、AI、XR 技術- 」 北海道大学大学院工学研究院 教授 川村 洋平
第 1 部:最新の光ファイバー適用事例
「DFOS 技術の現場施工・維持管理への適用」 鹿島建設株式会社 技術研究所 野中 隼人
「DAS の地質調査への適用」 京都大学大学院 工学研究科 准教授 武川 順一15:10~
第2部:AI 活用によるトンネル施工 DX
「機械学習による山岳トンネルの発破余掘り推定技術」 大成建設株式会社 技術センター課長 坂井 一雄
「肌落ち予測及び切羽地質評価」 (一財)先端建設技術センター 審議役 山本 拓治
「AI を活用した発破パターン設計システム」 株式会社大林組 土木本部 西村 友宏
閉会挨拶 京都大学経営管理大学院 特命教授 大津 宏康
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<川村洋平氏>
2003年に北大工学部の資源工学科で博士号を取得しました。鉱山機械の自動化がテーマでした。しかし、研究室が閉鎖となり筑波大学のシステム情報工学研究科に就職しました。筑波大学にはロボティクスの権威である三田教授がいて、重機の自動化を研究していました。情報工学は分野外でしたが、資源工学と情報工学を結びつけようと考えました。
2012年〜2015年までオーストラリア・パース市のカーティン大学へ行きました。ここでは、今までやってきたことは「化石」であると痛感しました。勉強しながら教えるという生活でした。学生の中には鉱山労働者もいるという大学です。
2015年〜2016年、筑波大学のシステム情報系に在籍しました。情報と土木、鉱山工学と情報がテーマとなりました。
2016年〜2021年まで秋田大学に在籍し、資源の分かる人の育成を行いました。
2021年から北大循環環境システム研究室に在籍しています。金価格の上昇もあり、ゼネコンや調査・設計コンサルタントと共同研究を行っています。
スマートマイニングというのは、資源工学と情報工学を結合させたものです。さらに現在は、これに採掘時の公害防止技術という環境対応が加わり、スマートマイニング+となっています。
鉱山とトンネルの違いは、鉱山は設定する安全率が小さいことです。オーストラリアなどでは鉱山労働者の賃金は年間2,000万円〜5,000万円で、医者の次に高いです。
鉱山での機械の自動化によって賃金が減る可能性がありますが、安全確保は進展します。フェイス(切羽)から人を離せというのが基本です。さらに、2050年のノーエミッション・ノーエントリーを目標に、2040年には実装技術を実現することになっています。
AIの進歩により2027年には生成AIが自分でデータを探すようになります。シンギュラリティー(技術的特異点)に達してAIが知識を食い始めます。
サイバー(仮想空間)とフィジカル(現実空間)が融合して超スマート社会がやってきます。AI+IoTの社会です。ソサエティ5.0とかインダストリー4.0などありますが、マイニング4.0ではスマートセンサーで重機や人を動かします。同時にデータを収集します。このデータはテラレベルのビッグデータですので人間には判断ができません。
コマツの重機がオーストラリアで稼働していますが、緊急時のストップボタンの仕組みを完成させるのに20年かかりました。ネットワークがボトルネックとなります。スターリングを使うという方法がありますが、導入を禁止している国があります。
坑道で採掘している鉱山は、採掘場所が深部化していて世界で最も深い鉱山は地下3,500mに達しています。技術の進歩によって金属が低濃集でもペイできるようになってきています。環境に配慮し公害をどう抑えるかが問題です。分野横断の技術革新によって、人が入らない鉱山が望ましいあり方になってきます。
コマツは、資源メジャーであるリオティントなどと提携して自律トラックや自律発破などを開発しています。
情報などの目に見えないサービスを提供するサービスカンパニーに求められるのは標準化されていない物同士の連携を付けることです。
現場のデータはビッグデータです。XYZデータを仮想空間に入れて、サイバー空間とフィジカル空間を連携させる技術の社会実装を試みています。
北海道新幹線のトンネルのボーリングコアを用いて、ヒ素濃度を色で表示できるようにしました。ハイパースペクトル画像を用いています。
ドローンとマルチスペクトルカメラで磁鉄鉱探査を行いました。機械学習で砂浜の砂鉄を判定しました。
切羽からの削孔の時にドリルエネルギー解析を行って切羽背面の地質情報を可視化しました。
AIをベースとして切羽の削孔位置を正確に決めます。ドリルジャンボのブームごとに情報が違うのでドリリング抵抗で修正します。
切羽スケッチもAIを用いて行います。
ズリ運搬トラックの過積載は、ドローンで荷台を撮影することで判定します。
要点を押さえた画像を取得すれば品質は維持できます。
トンネル内でドローンを飛ばしデータを取得してモデルを作成できます。トンネルの場合の問題はライティングです。
これらの作業は300万円くらいのワークステーションでできます。
<野中隼人氏>
光ファイバーをセンサーとして使って温度、ひずみ、振動を計測する研究を行っています。
光ファイバー内での後方散乱光には、ラマン散乱光、ブリリアン散乱光、レイリー散乱光があります。レイリー散乱光では光損失を使って振動、温度、ひずみを計測できます。
分布型光ファイバー計測(DFOS:Distributed Fiber Optic Sensing)でトンネルの支保工や吹き付けコンクリートの応力を測定できます。
応力については、従来のセンサーと同じ精度があります。ボーリング孔内に光ケーブルを設置して岩盤の変位を計測できます。
コンクリートを打設したダム底面のひずみと温度の計測が可能です。
トンネルの維持管理では覆工の載荷試験を行うことができます。
将来的には計測器を低価格にすることや10km程度の長い光ケーブルでの計測を考えています。
<武川順一氏>
京都大学の資源系の研究室で物理探査の研究を行っています。
分散型音響センシング(DAS:Distributed Acoustic Sensing)は高密度のデータが取れ、安価です。計測器はインテロゲータ(光信号の送受信機)です。
光はファイバー内を全反射屈折しながら伝播します。この時、ファイバー内の欠陥で後方反射が発生します。ファイバーが縮むと散乱光の位相が変化します。この位相の変化でファイバーのひずみを計測できます。
トンネルの切羽前方探査を、この方式で行いました。切羽前方の不連続面からの反射波を切羽後方の壁面に設置したファイバーで捉えます。
トンネル方向(X成分)と鉛直方向(Z成分)の受信波形から地震探査で言う走時曲線(時間と距離のグラフ)が得られます。ただし、ひずみ計測には方向依存性があります。これを解消するために光ファイバーを巻き付けてひずみの6成分を計測します。
S波を使った切羽前方イメージングが、精度が高いです。
<坂井一雄氏>
トンネルの掘削作業は、フルオートコンピュータジャンボで可能になりました。自動削孔を行い自動発破設計が可能です。余掘り厚の指標が重要になります。余掘りが大きいとズリが増加し、余掘りが小さいとブレーカーなどによる凸部の除去が必要になります。岩盤条件に応じた余掘り厚を推定するために、余掘り量を目的変数とし最外周の発破孔の削孔条件を説明変数として機械学習を行い、余掘り量を推定しました。この際、削孔ドリルのすぐ後ろに着けたセンサーでジャンボの負荷やドリルの削孔速度をモニタリングするMWD(Measurement While Drilling)データも参考にしました。また、切羽面の描画システムも開発しました。
余掘り厚の測定は、3D-LiDARとプリズムを積んだバギー車で行いました。
機械学習のために余掘り量の定義を行いました。最外周の発破孔を基準に平均余掘り厚を決め、2段階学習法とカスケードモデルを用いて精度向上を図りました。硬質な岩盤ではアタリ(トンネル側に突出した部分)の推定精度が著しく低下します。データが少ないためです。線形補間でアタリの学習データを増やすことや良質なデータを揃えることが必要です。
<山本拓治氏>
AIによって肌落ち予測と切羽地質評価を試みています。切羽の安全確保と切羽評価のバラツキを減らすことが目的です。
トンネル切羽での肌落ち事故を防ぐために肌落ち監視専任者(切羽監視責任者)が配置されています。しかし、事故は発生しています。そこで、最新技術を使って切羽の安全を確保することが求められています。
その基礎となるのが切羽地質評価ですが、観察者による評価のバラツキが大きいのが実態です。1万件以上の切羽観察データをもとにAIによる定量評価を行いました。
53トンネルの16,4238切羽のデータを集めました。画像の前処理、色補正、支保工を隠すなどのマスク処理を行いました。教師データの精度向上のため切羽画像の品質をチェックし、評価のつけ間違いなどを修正しました。こうして新規画像データを作成しました。
切羽画像は、切羽スケッチと同じように左肩、天端、右肩に分けて評価を行いました。一ランクの違いは許容することにした場合、観察結果とAIの評価の一致率は95%でした。
肌落ち予測システムを構築しました。教師データが不足していたので、地質技術者による教師データの作成を行いました。
ドローンやロボットを利用して、人が切羽に立ち入らない切羽観察技術の開発が必要です。動画や生成AI技術の利用が考えられます。
最終判断は人が行うことが大事です。肌落ちは安全側に評価し、経験の少ない技術者でも切羽評価が正しく行えることを目指します。そのためには、切羽観察データベースが必要です。
<西村友宏氏>
トンネル工事では、肌落ちや重機による災害リスクがあり、技能者不足による品質低下のリスクもあります。
掘削はコンピュータジャンボで行い、地山の硬軟と発破孔の孔間隔などのデータ取得、切羽写真での地山評価が行われ、点群データで削孔位置の修正を行います。
発破実績データを分析しました。その際、ドリルの押し出し圧(フィード圧)と削孔速度の489データから、一定のフィード圧での削孔速度(正規化削孔速度比)を指標として単位面積当たりの孔数、発破孔の間隔、単位体積当たりの薬量の相関を取りました。
深層学習を用いた地山評価では、ジャンボのデータは使いませんでした。その理由は、ジャンボのデータはすでに掘削済みの地山のデータだからです。切羽の凹凸など切羽形状に合わせて削孔位置を変更しました。
<感 想>
最新のトンネル技術が分かる講演会でした。私には詳しい内容は分からないことが多々ありますが、急速にトンネル技術が進歩していることを実感しました。
松井 保氏の開会挨拶、大津宏康氏の閉会挨拶も印象的でした。
講演資料(パワーポイント)は、247頁の充実したものです。
本の紹介:絣の着物 ― 2025/12/29 17:00
壺井 栄著、秦 剛編集・解説、絣の着物 壺井栄戦争末期短編集。琥珀書房、2025年6月。

表紙

裏表紙
映画にもなった「二十四の瞳」の作者である壺井 栄が、アジア太平洋戦争末期の庶民の日常生活を綴った短編小説です。「絣の着物」と12の短編のほかに「初夏を待つ」と1945年8月15日までの「茶の間日記」が収められています。
どの短編も、しみじみと心に残る余韻をもたらします。
私は戦前の生活の記憶はありませんが、描かれている風景や登場する人物は子どもの頃の会ったことがあるような人びとです。懐かしさを感じます。
この本の実物は、戦後80年を経た今年、北京で見つかったといいます。国内で発行できず北京で出版されたものが、北京大学図書館外国語学院分館に二冊残っていたのだそうです。1945年6月10日に印刷・発行されたものです。
戦争をしている国の市井の人びとの生活がどんなものなのか、若い人たちに読んでほしいと思います。
市民フォーラム リスク評価の裏側 ― 2025/12/04 14:12
2025年11月26日(水)午後1時半から同4時まで、『高木基金PFASプロジェクト市民フォーラム リスク評価の裏側−PFAS “論文差し替え” で見えた「いのちを守る仕組み」を考える』が、衆議院第二議員会館で開かれました。Zoomで視聴しました。
この講演会の趣旨は以下のとおりです。
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高橋雅恵さんの報告と原田浩二さんの講演のあと、中上祐子さんの司会でパネルディスカッションが行われました。
高橋雅恵さん(高木基金PFASプロジェクト事務局長):
『PFAS評価書』大量論文差しかえ問題で明らかになったこと
内閣府の食品安全委員会(食安委)では、2023年2月から2024年6月までPFASのリスク評価を行いました。水道水については50ng/Lという基準値が設定されました。
この基準を決めるために、いろいろな文献を収集しました。最初、275論文が採用され、その後201論文に減らされ、最終的に268論文が採用されました。
この決定過程の資料の開示請求を2025年4月に行いました。1,300頁の文書が開示されました。その結果、公開会合と非公開会合(打合せ会)とがあり、非公開会合で実質的な評価が行われたことが明らかになりました。
例えば、すい臓がんとPFASの関連については、最初関連が認められていましたが、二転三転して判断は困難とされました。非公開会合で発がん性の判断を変えています。外国の論文ではPFOAは発がん性と関連があるとされています。
PFASによる出生体重の低下については、公開資料は黒塗りで影響は不明となっています。
重要なことは、国際的なリスク評価機関では文献検索方法、選定基準、各研究の質評価を報告書に詳細に記すことが標準となっていることです。
さらに、食品安全委員会の運営規定には、非公開会議の議事録を公開すると明記されています。
原田浩二さん(京都府立大学):世界標準のシスク評価とは−WHOの科学物質リスクアセスメントを事例に−
今回紹介するのは、世界保健機関(WHO)の化学リスク評価ネットワークが作成した「化学物質リスク評価における体系的レビューの利用枠組み」です。
体系的レビューというのは、もともと臨床医学や社会科学で用いられていました。それが環境科学や健康科学に適用されるようになりました。透明性を最大化するのが趣旨です。
専門家の意見、単群研究、非ランダム化比較研究などをシステマティックにレビューします。この際、体系的なレビューに基づくことが望ましいです。利用可能なエビデンスを統合し、透明性の最大化を図ります。エビデンスの矛楯を解消し、透明性を向上させて文書化します。バイアスを低減させるため事前に決められた方法に従います。
計画段階では、プロトコル(手順)を決めます。
検索では、すべての論文を集めます。
選択では、基準に基づいてスクリーニング(篩い分け)します。
評価では、批判的に評価を行います。特にバイアスリスクに注意します。
抽出では、データを体系的に抽出します。
統合では、エイデンスを統合し確実性を評価します。
報告では、詳しく透明性のある内容とします。
研究課題を構造化(PECO)します。
一般的、労働者、動物、臨床など何を対象としているのかを決めます(P)。
どんな種類の物質にどの程度暴露させるのかを決めます(E)。
非暴露対象など比較対象を決めます(C)。
最後に健康影響などのアウトカムを記述します(O)。
プロトコルの開発では公開性、透明性、重複回避、外部レビューの確保が求められます。
文献スクリーニングでは、タイトル・抄録でのスクリーニングで明らかに無関係な文献を除外します。全文スクリーニングでは詳しい包含・除外基準によって判定が行われます。この段階では、研究の質や結果は考慮しません。独立した人が二重に評価して見落としやバイアスを防ぎます。
学術誌に掲載されていないグレー文献は、出版元による偏りを是正する上で重要です。
このようにして収集された文献からデータを抽出します。箇別研究の評価、批判的評価を行います。構造化され標準化されたアプローチを行います。これによってバイアスを除去します。
次に妥当性の検討を行います。これには内部妥当性と外部妥当性があります。内部妥当性は、研究結果の「真実性」とバイアス最小化で評価します。外部妥当性は、研究結果がレビューにどの程度「適用可能か」で評価します。
バイアスリスク評価(RoB)を行います。バイアス評価では、文献の選択時のバイアス、測定精度のバイアス、本当は関連の無い要因の間に見かけ上の「相関関係」が生じる交絡が生じていないか、報告の段階で選択が行われていないか(報告バイアス)をチェックします。
エビデンスの評価を行います。レビュープロトコルで事前に定義されていること、公平性を最大化するように構造化されていること、科学的に正当化が可能であること、文書化され報告されていることが重要です。評価の手段としては、ヒートマップが用いられ、それぞれの文献の評価結果を視覚的に一覧しやすいようにします。
個々の文献についてエビデンスの要約を行い、信頼性の評価を行うことでエビデンスを生成します。これらを記述的に統合する(定性的統合)か、メタ分析により定量的に統合します。
確実性の評価では、エビデンスの強さの格付けを行います。そこでは、バイアスリスクがないか、データなどの不精確さがないか、論理が一貫しているか、試験などに直接関わっているか、そして出版バイアスがないか、などが検討されます。
統合によって異なる証拠源が結合されます。人の疫学調査と動物実験の結果の統合などです。
そして、リスク評価者が持つ不確実性も評価します。
体系的レビューでは、透明性、信頼性と再現性の担保、バイアスと誤りの最小化、信頼性と公平性、ステークホルダーからの信頼が重要です。
そして、知識のギャップやデータの限界(不確実性)を隠さずに記述(透明な開示)することが、リスク管理者が適切な意思決定を行うために不可欠です。
質疑応答の中で原田氏は、次のように述べました。
最初に文献の質を見るのは間違いで、まず集めることが重要です。集めた後で内容を吟味して取捨選択することです。その際、選定プロトコルで選択方法を明示することです。
<パネルディスカッション>
モデレータは弁護士の中下祐子さん、パネリストは高橋さんと原田さんのほかに鯉淵典之さん(群馬大学・特別教授)と菅野 純(かんの・じゅん)さん(国立医薬品食品衛生研究所・客員研究員)でした。
鯉淵さんの発言:
培養細胞での実験を行っていて疫学とは無縁でした。しかし、2020年の末に食品安全委員会から文献を読んでくれという依頼が来ました。分量が多くて正月も休まず文献を読みましたが、信頼が置けるのかどうかを判断するのが精一杯でした。普通は、数ヶ月かけて5〜6論文を読んでレポートします。食安委では私が読んだ論文は全部リストから外されました。その後復活しましたが、いずれもその理由は分かりませんでした。
毒性研究では1回の服薬(ワンドウズ)の結果でも大事です。
菅野さんの発言:
国際がん研究機関(IARC)では発がん性について、人に対して発がん性があるグループ1、動物に対して発がん性があるグループ2、その他のグループ3に分けています。毒性症状が出るかどうかが基準です。
どういう症状を調べるかは最初に決めます。同じ場所でグループに分けて調べ、違う場所で症状が出るかを調べます。症例報告が大事で、データが蓄積されることで意味を持ってきます。
フタル酸エステルの毒性研究では同じ実験を3回行っています。GLP試験(優良試験所基準試験)はOECDで共通化されていて、テスト・ガイドラインが出ています。ラットに2年間飲ませて実験し、6〜7年かけてガイドラインを作成しました。世界中の科学者が集まって議論し、受託実験施設でできる実験を決めます。次世代への影響や神経への影響を検討します。記録を取り、きちんと残して報告できる体制を整えています。
食安委はとりあえず基準値としての数字を出したいという意図が先行しています。
そのほか、いろいろな意見が出ました。台湾は日本と同じ基準値を採用するなど、日本はアジアの標準となっていて、国際的にも責任があるとの発言がありました。
また、日本の食品安全基準の審査は国際基準を満たす内容とする必要があるという意見がありました。
裁判に訴えようにも、まだ被害が出ていないので門前払いとなるそうです。
<感 想>
水道水のPFAS水質基準は来年(2026年)4月1日から適用されます。基準値はPFOAとPFOSの合算で50ng/L以下です。現在、PFASを現場で測定する方法は確立されていません。原則3ヶ月に1回採水して、液体クロマトグラフ質量分析などにより室内で分析することになります。
アメリカの規制値はPFOS、PFOAそれぞれ4ng/Lで、カナダは25種類の PFAS合計で30ng/L、EU加盟国は20種類のPFAS合計で100ng/Lとなっています。
健康被害としては、次のような指摘があります。
「動脈硬化にもつながる血液中のコレステロール値の高さや、腎臓がん、精巣がん、甲状腺疾患、潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)、妊娠高血圧症との間に関連性が高いという結論が発表されました。」(日本財団ジャーナル、2024年10月8日)。
また、低体重出産の危険や子どもの免疫力への影響が指摘されています。
PFASによる健康障害は、第二の水俣病になる可能性があると言われています。分解しにくいため「永遠の化学物質」と言われているPFASは、石綿による肺の中皮腫などの健康被害と酷似しています。フッ素を含む有機物であることから、有機水銀による健康被害をもたらした水俣病に似た面もあると思います。
PFASの水質基準を検討している食品安全委員会が内閣府の所管だということも引っかかります。というのは、水道水の水質基準は環境省が決めているからです。
本当に国民の健康が守れるのか、非常に不安を感じます。
第13回歴史地震史料研究会 ― 2025/11/29 15:00
2025年11月23日(日)12:55〜17:10分まで表記研究会の発表会がオンラインで開かれました。
プログラムは次のようです。
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研究発表 13:00~14:00 セッション1
・齋藤瑞穂・鈴木正博 :仙台湾弥生土器編年と地震津波研究― 仙台湾最古の水田経営と松島湾の縄文/弥生貝塚形成論 ―
・前沢響暉 :遠江国白須賀の「湊」と明応地震
・松岡祐也 :織豊政権期における京都の地震と祈祷
研究発表 14:15~15:35 セッション 2
・矢田俊文 :年代記「横越島旧事記」に関する一考察― 1670 年越後蒲原地震を中心に ―
・片桐昭彦 :近世佐渡の年代記と地震
・西山昭仁・石辺岳男・片桐昭彦 :近世佐渡における被害地震の検討
・原田智也・西山昭仁・石辺岳男 :京都・奈良において有感となる地震の震源・マグニチュードの検討 ― 日記史料中の有感記録の活用に向けて ―
研究発表 15:50~17:10 セッション 3
・原 直史 :1828 年 越後三条地震における村上藩の対応について
・原田和彦 :地震と複合災害 ― 飛越地震を中心に ―
・岡崎佑也 :鯰絵にみる安政期の災害認識~鯰絵に描かれた他の地震の「鯰」について~
・中村 元 :20 世紀前期日本の地方測候所における地震の「管内観測」について
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私が興味を持った発表を紹介します。
<齋藤瑞穂氏・鈴木正博氏>
仙台市の沓形遺跡では弥生中期に遺跡が少なくなります。中期中葉に発生した津波で埋積されたと考えられます。水田の畦の断面に砂層があります。
松島湾沿岸は遺跡が密集していて弥生時代前期までは連続していますが、中期に中断しています。
弥生中期初頭(紀元前400年頃と考えられる)に二度の津波があり、突発的な環境変化が起きたと考えられます。
<原田和彦氏>
地震による複合災害は火災、土砂崩落、津波などがあります。
1858年4月9日に飛越地震が発生しました。同じ月の23日には大町地震が発生しました。1847年5月8日には善光寺地震が発生しました。
常願寺川で山崩れが発生し、山が鳴動して堰止め湖が決壊したとされています。
<感 想>
史料を読み解いて、そこから地震の規模、被害状況を探り出すのは大変な労力を必要とすると思います。
これらの成果が生かされて、住民の防災意識の向上に繋がると良いと思いました。
なお、歴史地震史料研究会は新潟大学 災害・復興科学研究所が主となって行っている研究会で、歴史地震研究会とは別組織です。
本の紹介:千木良雅弘、高レベル放射性廃棄物処分場の立地選定 ― 2025/11/23 18:15

千木良雅弘、高レベル放射性廃棄物処分場の立地選定−地質的不確実性の事前回避−。近未来社、2023年6月。
高レベル放射性廃棄物処分場について著者の思いを綴った本です。
この本から私がまず読み取ったことは、地質をやるなら山を歩きなさいということです。
例えば、2011年の台風12号によって紀伊半島で数多く発生した深層崩壊の調査では、最大厚さ6mの低角の河原樋衝上断層を見つけています。そして、その周辺には数多くの断層が分布していることが分かったのです。
著者は、「付加体は地質的不確実性が高いことから、HLW(高レベル放射性廃棄物)地層処分の立地選定には適していない。」と述べています。
現在NUMO(経済産業省 資源エネルギー庁)が進めている最終処分場の立地選定方法について、著者は疑問を投げかけています。
幾つか問題点がありますが、今の方式では分からないことが出てきたら次に進んで明らかにしましょうという立場なので、途中で後戻りが出来ないことがあげられます。さあ、処分場を建設しますということになった段階で、技術的に解決できない問題が発生して建設を断念する可能性があり得ます。
既存文献の結果を鵜呑みにすることの危険性も指摘しています。過去の文献は、さまざまな尺度、目的で地質調査を行っているので、記載されていない事柄がたくさんあります。
著者が唯一、最終処分場の立地選定の可能性があると考えているのは、花こう岩体の中心部です。ただし、花こう岩体の周辺は柱状節理が発達しています。花こう岩体の上部が亀裂の多い岩盤となっていることをドローンの映像を解析して明らかにしています。
著者は、電力中央研究所に勤めた後、京都大学防災研究所に在籍していました。HLW地層処分にも関わってきました。日本応用地質学会の会長もつとめました。
NUMOの最終処分場選定の業務は、調査設計会社の地質技術者が手伝っていると思います。そこでは理不尽な横やりが入ることを経験していると思います。
地質分野から原子力発電に関わってきた著者が、これだけのことを書いているのです。地質技術者としての矜持を持って仕事に当たってほしいと思います。
この本の「あとがき」に著者の思いがまとめて書かれています。
