本の紹介:南部陽一郎物語 ― 2022/01/26 19:49

中嶋 彰、早すぎた男 南部陽一郎物語 時代は彼に追いついたか。講談社ブルーバックス、2021年10月20日。
2008年に小林 誠氏、故益川敏英氏とともにノーベル物理学賞を受賞した故南部陽一郎氏の伝記です。
下の表に南部の輝かしい1960年代の業績を示しましたが、ノーベル物理学賞を3回受賞してもおかしくないほどの業績をあげています。
『南部をリスペクトしてやまない益川は、このあと折りに触れて、「南部先生は日本が生んだ最高の物理学の巨匠。湯川先生や朝永先生以上だ」という見解を口にしている』(本書248ページ)。「このあと」というのは、1978年夏に日本で開催された高エネルギー物理学国際会議の後ということです。
『南部とほぼ同じ時代を生きた米カリフォルニア大学バークレイ校の理論物理学者ブルーノ・ズノミは「南部の研究はつねに我々より10年先んじている。そこであるとき、南部を理解すれば他人より10年先んじられる、と思いついた。しかし南部をやっと理解したと思ったらもう10年の時が経っていた」と絶妙な南部観を科学雑誌で披露している』(本書251ページ)。
表 1960年以降の南部陽一郎
そして、何よりも日本と世界で多くの有能な後輩を育てたこと功績は大きいと思います。さらに、92才で流体力学を応用して宇宙を論じるという研究を国際シンポジウムで発表しています。生涯、現役の物理学者として生きたのです。
読み物としても非常に面白いので、苦労しないで読み進められると思います。
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