本の紹介:知的文章術入門 ― 2021/10/30 10:00

黒木登志夫、知的文章術入門。岩波新書、2021年9月。
がん研究に従事してきた著者が、「筋道を立てて物事を考え、分析し、理解し、判断」して知的文章を作るにはどうしたらよいかを述べた本です。知的文章には、「誰にでも理解できるように、分かりやすく書くことが要求される」のです。
著者が念頭に置いた読者は、「文系、理系を問わず、日本語の知的文章の書き方を正式に習わないまま大学に入ってきた学生諸君、大学でも教えられないまま卒業し、社会に出た人たち」です。
具体的な文例を挙げて述べているので、興味を持って読み進むことが出来ます。
例えば、「は」と「が」の違い。
「桜はきれいだ」と「桜がきれいだ」という文章では、「は」は、どちらかというと「きれいだ」に重点があり、「が」は「桜」に重点が置かれていると述べています。
あいみょんが歌う「マリーゴールド」に「麦わら帽子の君が 揺れたマリーゴールドに似てる」という歌詞があります。麦わら帽子をかぶった君に焦点を当てているのです。
ウィキペディアの使い方も参考になります。英語版では、はっきりとウィキペディアは引用すべきでないと書かれています(Citing Wikipedia)。
世界に通用する言語(普遍語)としての英語と、どう付き合うかについても述べられています。パワーポイントの作り方、発表の仕方、メールの書き方などなど、参考になる事柄が一杯です。
木下是雄の理科系の作文技術(中公新書、1981年9月初版、2021年2月89版)とともに、手元に置いて参考にしたら良い本だと思います。