公開講座 海と陸の本当の違い ― 2019/02/26 11:21
北海道総合地質研究センターの第三回公開講座です.2019年2月23日(土)に,札幌市の「かでる2・7」で開かれました.
講師は新潟大学名誉教授の宮下純夫さんです.

写真1 講演する宮下さん
宮下純夫氏:海と陸の本当の違い-砂漠のオマーンで見る海底下40kmの岩石の世界-
日本列島の地質を理解するためには地球全体を知ることが必要です.例えば,新潟県中越地震や北海道南西沖地震は,地球の反対側で起きている大西洋の拡大の結果です.つまり,大西洋が拡大している分,その反対側の日本海東縁では圧縮運動が起きていて大きな地震が発生します.
火成岩の基礎的な分類,地球の高度頻度が岩石系惑星で唯一二極分布していること,地球だけに大陸地殻があること,大陸地殻と海洋地殻の違い,マグマとは,マグマ発生の条件,海洋底を研究する意義,海洋地殻の構造と話は進みました.
アラビア半島の東にオマーンオフィオライト帯があります.オマーン北部の海岸山脈・ハジャール山脈に沿って南北350km,幅50~100kmにわたって分布しています.オフィオライトというのは,陸上にある過去の海洋地殻やマントルの岩石群のことを言います.
図1 オマーンオフィオライト帯
緩く湾曲した海岸線に沿って焦げ茶色のオフィオライト帯が分布しています.南西側にマントルのかんらん岩が分布し,北東に向かってシート状はんれい岩岩脈,玄武岩質枕状溶岩が分布しています.(グーグルアースに加筆)
オマーンオフィオライト帯では,深海底に流れた枕状溶岩,その下のシート状岩脈群,層状はんれい岩,そして地殻とマントルの境界であるモホロビチッチ不連続面までを陸上で見ることが出来ます.
マントルかんらん岩が地下で蛇紋岩に変化するときにカルシウムが溶け出します.このカルシウムを含んだ湧水があり,石灰岩が形成されます.河原の礫を取り込んだワジ堆積物が形成されます.
図2 一億年前の深海底状に流出した枕状溶岩
(「陸と海の本当の違い」のチラシから)
図3 ワジ堆積物の礫
かんらん岩や蛇紋岩の礫が炭酸カルシウムによって固められ,コンクリートのようになっています.出来たのは1万年前くらいだそうです.(当日見せてもらった標本)
オマーンは治安も安定していて,冬は観光に適した気候です.
オマーンを知るための本として
「オマーンを知るための55章」(松尾昌樹編著,2018年2月,明石書店)がお薦めです.
宮下さんが,オマーンオフィオライトを中心に地質について第11章と第12章を執筆しています.
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